ブラック霞が関 (新潮新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106108853

作品紹介・あらすじ

朝七時、仕事開始。二七時二〇分、退庁。ブラック労働が官僚たちを追い詰めている。今の状況が続けば、最終的に被害を受けるのは我々国民だ。霞が関崩壊を防ぐための具体策を元厚労省キャリアが提言。

感想・レビュー・書評

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  • ◯色々な本やネットを見ても、国家公務員は大変だ大変だとしか書かれていない中、具体的に何をやっているのかを示しながら、大変さの本質を開示していこうという姿勢が見られる一冊。とても面白かった。
    ◯どう面白いのかと言えば、おそらく霞が関でしか使われないであろう専門用語や、一般には不可解ですらある形式主義を事細かに紹介している点。改善しようにも大企業病よろしく、直せないのだろうなと感じさせる。
    ◯解決策の具体性、とりわけ国会議員にも提言している点も特徴的。議員と公務員の関係性が一般には見えにくいため、どのように扱われているのかが大変わかりやすく、議員という性質上根深い問題が抉り出されている。国ごとの政治体制が異なるため、一概に比較しにくいと思うが、他国と比べてもちょっと公務員と議員の仕事上の関係が近すぎるのではないか。
    ◯ただこの本を読んでて一番感じたのは、やはり役所に残って後輩達を助けてくれる道を、なんとしても歩んで欲しかったなということ。

  • 素晴らしい、の一言。

    一度は官僚を目指し、多くの友人が官僚となっている私自身の目から見ても、官僚の能力はすこぶる高いし、社会を良くしようという意識も高い。

    それでも上手く回っていないのは、仕組みが非効率で不合理だからだ。

    官僚に、国民のために働いて欲しければ、どう働いているか注目することだ。
    そして、テレビの切り取りではなく、流行りのニュースではなく、時間を掛けて、重要な問題の処置を継続注視することだ。

    それは、政治家にとっては、厄介な国民だろう。

    でも、政治家のためにボクラは生きているわけでなく、僕らのために政治家はいるんだ。

  • このテーマの本として、今まで読んできた中で、一番まとまっていて、問題の構造化や対策の方向性についての提言などが、最もクリアだと感じた。特に、女性、高齢者も等しく働くことのできる社会を追求する上で、今のままでは、組織として体をなさず、期待される役割や使命を果たすこともできなくなる、というのが重い。短時間勤務も、本人にやる気があるのなら(ある程度の)長時間勤務もあってもいいが、無定量無制限の呪いをなかなか拭うことのできない官僚の仕事では、独身・男・中堅に超過度の負担がかかるだけだ。ダイバーシティの議論では、この組織としてのマネジメント困難が論じられることが少ないので気になっていたところである。きちんとメッセージにできている論はあまりなかったので、著者には今後期待したい。
    30年くらい前に、当時の厚生省の「中の人」の告発として、宮本という人の著作がいくつかあったが、そのころと官僚のしんどさは全然変わっていないし、むしろきつくなったように見える。
    pp29-33にある、「典型的な仕事の様子」は、極めてリアル。ITでコミュニケーションのバリアが低くなった分、情報のやり取り密度は組織内で加速度的に上がっており、その一つの細胞としてはたらくマネジャーも担当者もたまったものではないだろう。

  • こんなに忙しくて給料も年功序列だと官僚希望の新卒が減少する理由は明らかだな。

  • 官僚の方々の労働の実態を垣間見ることができる内容でした。
    特に悪い意味で驚いたのが、コピーを大量にとらなければならないことや、それを自転車で配り回らねばならない仕事。
    そして議員の挨拶文作成。(たまたま今日Yahoo!ニュースで記事になっているのを拝見しました)
    そんなものは国民から集めた税金で負担せねばならない仕事ではありませんよね。
    より良い社会をつくるには、国民が霞ヶ関の無駄に目を向けることも重要だと改めて感じる内容でした。

  • 霞ヶ関の実態を赤裸々に述べているだけでなく、日本の政治システムや官僚の仕事内容までしっかりと書かれている。驚いたのは筆者が官僚の仕事にパッションを持っていたことだ。愚痴をツラツラと書いているのではなく、官僚の仕事に魅力を感じているからこそ出てくる意見だと思う。予想以上に読み応えがある新書だった。

  • 元厚生労働省キャリア官僚の著者が、連日深夜に及ぶ国会対応など、ブラック企業も真っ青な霞が関の過酷な労働環境の実態とそれに伴う長期離職者の続出などの霞が関の崩壊寸前の状況を紹介し、官僚が政策をつくる仕事に集中できるようにし、官僚を本当に国民のために働かせるためにどうしたらよいのかについて具体的に提言している。
    著者の問題意識はまさにそのとおりだと思うし、著者の示す処方箋も、即効性があるかはともかく、いずれも取り組むにしくはないことばかりだと感じた。著者の言うとおり、「今の霞が関に必要なのは、昔からの惰性でやっている非効率なやり方を変えて、官僚が働いている時間の多くを、国民のための政策の検討や執行に費やせる環境作り」であり、「霞が関の仕事を徹底的に効率化して、国民の生活と直接関係ない作業を全部やめさせること」である。また、これは霞が関だけではなく、地方公務員にも当てはまることだろう。
    また、法律改正や政策の現場との交流などの著者の官僚としての経験談を読んでいて、改めて政策をつくるという官僚(公務員)の仕事の魅力を感じた。官僚の仕事の本来の魅力が発揮されるために、本書で提言されているような官僚の働き方改革が必要だ。

  • 官僚のイメージが変わりました

    著者のような意識を持って仕事に取り組まれている官僚の方がどれくらいおられるのかわかりませんが、責任逃ればかり考えて仕事されている、という自身の勝手なイメージを恥じたいと思います

    とても非効率な状況で、本来の仕事(国民のために真剣に行政や法案などを考える)にさける時間がほとんどとれなくてバカバカしくなるというお話、とても切なく、もどかしく感じました

    特に、国会議員の横ヤリの酷さには呆れました…そんな国会議員を選んでるのも我々国民。
    しっかり、責任を持って政治に参加しなければと思いました

    とにかく、霞が関の官僚の皆さんの現状がリアルに伝わる内容で、大至急改善が必要、それが、我々国民の生活にも直結していることが切に感じられました

  • 霞が関のブラック問題はSNS上でよく見て興味を持っていたため、改めてしっかりと学びたくて購入。結論から言うと、日本をこれから少しでも良くしていくためにも、全国民に読んでほしいと思える内容。官僚の働き方を改革し、仕事のやり甲斐を向上させることが、日本を良くすることに直結することは疑いようがないだろう。
    まず本書を通して、普段官僚がどのような仕事をしているのかということへの理解が深まった。昔よりも業務が増えているのはどこも一緒で、それだけ世の中の物事に対応するスピードが上がっているということだと思う。しかし霞が関は、それに対応してきてこなかったツケが今きてしまっているのだろう。
    また、最近よく言われる「官邸主導」というのが、どういう経緯でそうなって、どういう意味なのかがわかったのも良かった。ここから学べるのは、何事も方針だけ決めるのではなく、橋下徹の言うところの「実行プラン」が伴わないといけないということ。霞が関はこれが圧倒的に足りていないのだろうが、これは大きな組織ではどこも同じなのではないだろうか。
    自分は霞が関の住人ではないけど、半公務員的な組織で勤めていることもあり、殊更共感できることが多い内容でした。中でも特に、ペーパーレス化の話や、それに対応するためのデジタル機器の整備の話が。。

  • 何かとバッシングされがちな霞が関官僚の実態をリアルに描いている
    霞が関の早期改革が必要だと切に願う

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