私の考え (新潮新書)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106108563

作品紹介・あらすじ

「人間、迷ったら本音を言うしかない」。国際政治学者として冷静に、しかし同時に建設的に、言論活動を続けてきた著者が本音を語る。政治について、孤独について、人生について、誠実に向き合った思索の軌跡。

感想・レビュー・書評

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  • バランスをもつこと。
    冷静に伝わるよう、表現すること。
    そうしたことに長けた人だと感じた。

    「女性であること、自由であること」が興味深かった。
    「だから#MeTooの人民裁判は終わらない」の
    「どれほど罵倒され軽んじられ、べっとりとした性的な加害の欲望につつんで支配欲をおしつけられても、わずかでも反応することで相手と交信することの方が耐えられない。
    それでもうちへ帰ると悔しくて、自分が汚れてしまったような気がする。記憶を払い落としたくてビールを呷っても、頭を掻きむしっても、脳裏にべっとりとくっついて離れない。そんな経験をしたことのない人たちが、人口の約半数を占めている。」(p109)
    職場で起こること、上下関係、他部署、あるいは取引先との関係。そうした場では、「性的な加害の欲望」こそ、男性である自分に向けられたことを意識したことはないが、「自らの欲望・意思を通すことのため、理不尽を押し付けられる」ことは日常茶飯事だと感じる。
    こうしたことに起因する悔しさに特に男女差はないのではないか。そうしたことから類推して、少なくとも、この文章が男性である自分の胸に届いたと思う。
    基本的には、女性ゆえの生きづらさを強く主張されると、男性ゆえのそれはないのか、あるいは容姿、健康、年齢、貧富、才能その他もろもろの属性をどう考えるのか、どれに対するどこまでの態度表明が正当、不当であるのかなど、が気になり、ご都合主義に感じてしまう場合が多い。
    しかし、三浦さんの文章にはあまりそれを感じない。
    なぜなのか、もう少し考えてみたい。

  • 数年前、初めて彼女をテレビの討論番組で見た時、正直好感が持てませんでした。
    それから時を経て、私が変わったのか、彼女が変わったのか、はたまたその両方かは分からないけれど、彼女の言葉はすんなりと耳に入るようになり、時に心を打つようになりました。
    同世代として、彼女がどのように世の中を見つめ、何を考えているのかより興味を持ち、本書を手にしました。

    戦争と差別、今私が1番興味を持っているテーマについて考えることのできる一冊でした。
    もちろんそれ以外についても書かれているのですが、彼女の思考の根底にそれがあるのか、私がそれだけを汲み取ってしまうのか、とにかくこの2つに関することが特に印象に残りました。

    多様性を理解し、「ものにしたい」と思いつつも日常のふとした場面で自身の偏った考えに自己嫌悪する私から見た著者は、それを既に自然と身に付け、世の中にアウトプットできるレベルにあるように感じました。
    この点においては素直に憧れます。

    この点に関して印象に残ったのは
    「多様性を裡に持つ家庭は色々なところがフラットだ。」
    「人間にとって、周りに承認されたい、受け入れられたい、という思いはすこぶる強いものだ。それが否定されるの誰にとっても辛いこと。加えて、不器用だったり、根が自由人で集団行動や環境への適応が苦手が子もいる。」
    「その子たちにはその子たちの良さや個性があるのだから、困難だって一つ一つ違う。ただその過程で気を付けたいことが一つだけある。困難を抱えている子たちを美化しすぎるあまり、何か特別な才能と引き換えに困難が与えられているのだと考えてしまいがちなこと。(中略)受け入れているようでいて、どこか優れていることを要求する安易な態度だと思う。」
    という文章です。

    多様性と関連して、差別についても本書では書かれていますが、中でも感謝したいくらい的を得た意見を示してくれたのが女性差別について。
    女性差別やセクハラに関する報道や意見などを見聞きする度にモヤモヤとしたものを感じていたのですが、ようやくそのモヤモヤの一因がハッキリしました(厳密に言えばエマ・ワトソンの言葉ですが)。
    また、セクハラを受けた時に声をあげ(られ)ずに早く忘れてしまいたいと思う一方で何度も思い出してしまいグッと奥歯を強く噛みしめる思いも彼女はうまく言葉に示してくれていました。

    本書にある彼女の考え全てに賛同するわけではないけれど、同世代で育児をしながら仕事をして、このように世の中を見つめ、自分なりの考えを持っている人がいるのだという事実は大きな刺激になります。
    たどり着く考えは同じでなくても、彼女の世の中の見つめ方はお手本にしたいところ。
    そして子どもとの向き合い方も参考にしたいところです。

    読み終わった本は基本的にすぐ手放す主義ですが、とりあえず数年間は手元に残し、折に触れて読み返したいと思います。

    2020年53冊目。

  • 三浦瑠麗さんなので当然政治の話が多いのだが、そこかしこに現れる女として生きる哀しみが文学的でとても素晴らしいので、この人の書く文章はどうしても追ってしまう。思春期の少女の頃の描写も、20代の不安定な大人の頃の描写も、すごく良くて目眩がする。変なフェミニズム本を読むより、ずっと女というものが立ち現われてくる。結局、保守の女の人が、鋭い感性描く女性として生きる軋轢みたいなもののほうが、現実を捉えている気がする。

  • 平和を考える学問は戦争の研究をしないと成り立たない。歴史学やジャーナリズムの助けを借りながら細かな史実を掘り起こして分析を加えるkとおで、はじめて教訓を結晶化できる。ありとあらゆる戦争は悪という結論から始めるのではなくて、何がどのように悪であったのか、どうしてそこに陥ったのかをつぶさに分析することが平和への道。

  • 20220505-3

  • 最近お見かけするようになった三浦瑠麗さん、読んでみました。
    女性が書いたビジネス書が少ないのはなぜだろう。短編集の要素もあって、小説としても良い作品でした。月くんと惑星くんのコラムが好き。

  • テレビでの評論が好きで、
    もっとこの人の考えが知りたいと思い購入。

    ただ正直、私には文章で読むには難しかった。
    言葉で聞いているとストンと胸に落ちてくる納得感が
    文章では得られず、
    ただ表面をなぞる程度にしか頭に入ってこなかった。
    何故だろう。

    理論的な分析と文学的な表現が入り交じっているから
    結局のところ何を言いたいのか入ってこない。

    白か黒かという分かりやすい結論が出るテーマではないものばかりなので、
    この人特有のスタンスや考え方をもっと理解できるなら、
    私にもっと深い読解力があるなら、
    もっと味わえたかもしれない1冊。

  • 国際政治学者という立場なので当然だが、政治や戦争のことなど難しいワードが並んでいる。が、0歳児の子育てをしている身でこれを読むと、どうしても母親としての彼女の側面に目がいってしまう。

    メディアで、おじさん達を論破する姿を目にする機会が多いが、女の子のママでありワーキングマザーでもある著者。
    普段見られない一面を見ることができ、素直に素敵なママだなぁと思ったし、今後は彼女の発言を違う目線で聞いてみようという気になった。

  • 三浦瑠麗さんをテレビでお見かけして興味を持ったため、どんな人物なのか知るために本書を購入しました。
    時事ネタはどうしても情報が古くなってしまいますが、子どもとの向き合い方や夫婦のあり方に、彼女の生き方を感じました。

  • 「朝生」や他のメディアでの、あくまで建設的な議論を維持するための落ち着いた姿勢、穏やかな声音、噛んで含めるような話し方、その言葉選びがどうにも好ましく(あと美人なとこも)、一度この人の書いた物を読まなければなあとぼんやり思っていた。本書は約2年間のエッセイやコラムをまとめたもので、表題のとおり彼女の日々の思索を、時に政治学者として鋭く、女性として凛々しく、そして母として穏やかに綴ったもの。ともかく思ったより早く読めてよかった、2,3年前の時勢なんてすぐに忘れてしまうから。

    自己啓発本のように押し付けがましくなく、ぽつりとした独り言のような呟きなのに決してスルーはさせない強さと存在感が、文学的で瑞々しい文章に溢れていて、その一つ一つの言葉の選び方にも彼女の人となりを感じる。言葉を、そして言葉を媒介に想いを伝える行為を大事にしている人なんだなあという印象。

    話題は多岐にわたる。大学無償化、女性専用車両、リベラル、ポリコレ、配偶者控除、#MeToo運動、浮気報道、ポピュリズム、体罰、教育、家族、etc. 政治的な話題に関しては「見事にメディアに踊らされてんなあ」という自省の念が強かった。勿論三浦さんの意見が絶対的に正しいというわけではないが、それにしても彼女が言及した「世間」の反応と当時の自分を当て嵌めると苦い思いが込み上げる。常に自分の頭で考えることは、心がけていても実行するとなると難しいし、「考えられていなかった」ことを自覚するのはもっと難しい。それだけでも私にとって本書を読んだ価値はある。

    あと、同じ女性性を持つものとしてはやはり、性差別問題や母としての子供・教育への眼差しが印象深い。女性専用車両の問題は、小説「82年生まれ、キム・ジヨン」の「不当に恵まれた性への嫌悪」を彷彿とさせたし、過熱する#MeToo運動に対するカトリーヌ・ドヌーヴさんらの声明や、不当なバッシングを受けたエマ・ワトソンの世間への反論は、日々のちょっとした引っ掛かりやモヤモヤを的確に形にできる人が世の中に存在するのだと、安心と勇気を与えてくれた。そして、大きな愛情に裏付けられつつも冷静さを失わない母としての三浦さんの眼差しは、私もそう在りたいと思わせ、そう在れるように自分を大切にすること、思索から逃げないことを提示してくれる。見え隠れする人間としての弱い部分も、なんだか可愛らしくて魅力的だ。

    どうしても時事的な要素が強いので、あまり間を置くと再読には適さないかなと思うが、彼女の"これから"は追いかける価値があると思う。コロナ禍の今、彼女の目には世界がどう映っているのだろう。

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著者プロフィール

国際政治学者。1980年神奈川県生まれ。東京大学農学部卒業。東京大学公共政策大学院修了。東京大学大学院法学政治学研究科修了。博士(法学)。専門は国際政治。現在、東京大学政策ビジョン研究センター講師。著書に『シビリアンの戦争』(岩波書店)、『日本に絶望している人のための政治入門』(文春新書)、『「トランプ時代」の新世界秩序』(潮新書)。

「2017年 『国民国家のリアリズム 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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