- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106108488
作品紹介・あらすじ
人間にとって建築とはなにか? 圧巻の半自伝的文明論、登場! 1964年、丹下健三の国立代々木競技場に憧れ、建築家を志す。バブル崩壊後の10年間、地方を巡る中、工業化社会の後に来る次なる建築と出会う。そして、2020年――
感想・レビュー・書評
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隈研吾の 生い立ちから、建築家を目指し、
そして、建築家とは何かを 問いながら、建築家として行動する。
自分の中にある、真摯な心の叫びを 自分なりに受け止めながら現在の在りようを、真摯に認めて、どうあるべきかを問う。
自分の中にある建築家としての自己矛盾。
実に 思い切って、赤裸々に語る。その姿勢が尊いと思う。
高度経済成長は、自動車産業や家電製品の急速な発展だけでなく、自分の家を持つという住宅産業とそれを後押しする政府の政策に成り立っていた。
あまりそのように考えていなかったが、言われてみればそうだ。
近代化、高度経済成長は、鉄とコンクリートによって、大きさと高さを目指した。
しかし、それにも限界がある。その限界を突き破るためには、アフリカのサハラ砂漠の集落を見ることで、住処とは何かが理解できたのだが、それを現実に作るためには、バブルが弾ける。
アメリカの メトロポリタンアーキテクチャーを知ることで、反オブジェクトを目指すが、それにたどり着くには 都市ではなく田舎の木の手触りと木を扱う大工たちの技術によって、初めて再生する。
木造原理主義ではなく、木をどう生かすかの中で苦闘する。
ある意味では、これまでの鉄とコンクリートに折り合いをつけながら地元の木を使って組み立て直すという曖昧な方法でしか 対応できない状況にあった。
木造によって高さを競うというのも、過去の延長戦にあるかもしれない。
隈研吾が求めている 隈研吾の建築家として、建築とは何か?
が、言葉だけでなく、建造物でどうやってできるのか?
それが、私にとっても、大きな楽しみであることははっきりしている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
近現代の社会と建築との関係を、著者自身の経験から語る一冊。
建築の知識が全くなくても、大変面白く、興味深く読むことができた。
建築がこんなにも社会に影響を与えてきたものだったのか、政治的な面をもったものだったのかと思った。 -
【新着図書ピックアップ】いやー、隈研吾さん。どこもかしこも隈研吾さん。建ったと思ったら隈研吾さん。で、東京五輪もやっぱり隈研吾さんなのよ。隈さんが、二度の東京五輪と建築、そして自らの半生を語ります。
【New Book!】Of course you know him. Kengo Kuma. We can find a lot of buildings created by him here and there in Japan. He tells his own story associated with the Tokyo Olympic Game. -
建築士というと、斬新で奇抜なデザインとお洒落の極みの印象があった。
本書によれば、実際そのように思考する物もいて経済システムの一部としての割り切りでいることも確かなようだ。
それはどこか窮屈さを感じることもある。
そのような中でビジネスとは違い、その時、その場所に最も適した建築を思考してきた著者のスタイルにすごく共感した。
その源泉は幼き日の原風景であったり、地域の大工との語らいであったりと肌で感じた経験に基づいている。
日本は歴史ある古い国であり、多くの自然災害から学んだ建築技術がある。その極みは余す所なく使い倒す木造技術だ。
残念ながら、文明開花によって古くさいものとして扱われた。
迎えた大量生産、大量消費の工業化の中でコアとなったのは「家」でありいわゆる三種の神器は従属品に過ぎないとする着想は新鮮に響いた。
日本の里山や日本家屋に見られる縁側など自然との距離感の曖昧さや一体感が実は豊さなのではないかと感じた。
新国立競技場のコンセプトが自然ありきであることは、日本人のDNAに刻まれた我々は自然の中の存在に過ぎないことを再認識させてくれそう。
そのような視点で新国立競技場を訪れてみたくなった。 -
建築のことはよくわからないけれど、建築物を見るのが好きな私にとって、めちゃくちゃ面白かった。
隈研吾さんの建築に対する考え方、大きなプロジェクトを成功に導く極意、建築史を垣間見ることができた気がします。
ナラティブな語り口なので知識のない私にも読みやすかったです。 -
自伝
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新国立競技場のコンセプトを創造する過程を、幼年期からの様々な経験をベースに記載したユニークな著書だ.コンクリートと金属での建築から、日本の感性をふんだんに取り入れた木材を中心とする構成を押し通す、強固な意思を感じる著述が多数見られて、非常に楽しめた.10種類の日本人が住む10酒類の住宅という切り口で書かれた『10宅論』で次の10派を列記している.ワンルームマンション派、清里ペンション派、カフェバー派、ハビタ派、アーキテクト派、住宅展示場派、建売住宅派、クラブ派、料亭派、歴史的家屋派だ.巧みで奥の深い指摘だと感じた.
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2時間くらいで読み終わってしまった。筆者の体験談が面白い。そして、建築の側から資本主義を眺める視点が、他の著者には無くて、面白かった。建築系に進みたい人は一度読んでみたらいいんじゃないだろうか。
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「負ける建築」よりもかなり読みやすい 知識がなくても読める