「反権力」は正義ですか (新潮新書)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106108464

作品紹介・あらすじ

「マスコミ的正しさ」を疑え。「権力と闘う」ことに酔いしれ、経済や安全保障を印象と感情で語る。その結論ありきの報道は見限られてきていないか。人気ラジオパーソナリティの刺激的ニュース論。

感想・レビュー・書評

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  • よくぞ! 飯田さん、Good Job!
    ニッポン放送飯田アナウンサーの初著書。
    日頃からずっとモヤモヤしていたものをすっきりと言語化してもらったという読後の印象。

    特に現状日本の報道番組は、ニュースと、夕方のニュースショー、ワイドショーが混然一体となり、ふわふわと感情的に「ニュースを消費」しているので、辟易していたところ。
    新聞は社によって立ち位置の違いはあれど、他の媒体も含めて大差ない。 

    不安や嫌悪や怒りを煽って、生業としているのではと勘繰りたくなるほど。
    遡れば敗戦に端を発して、国家権力に対して常に懐疑的であることの重要性は理解できる。

    しかし何もかも白黒の二元単純化し、伝える内容はメディアの「権力と戦う自分たちの物語」にすり替わっているという飯田さんの表現は、安藤優子女史や宮根氏、或いは若手の男性アナウンサーが緊急時になればなるほど、嬉々として画面で暴れる?様子を思い出した笑。

    東北の被災者に関しても、多くのメディアはいつも衝撃的かつ典型的な荒廃の光景を探し求め、いつまでたっても「かわいそうな被害者像」を呈し続けることで、復興や自立を妨げてはいないかと考察に首肯。

    分かりやすい「それっぽい絵」を各局垂れ流し、街頭インタビューで「それなりの声」を拾って繋げて「世論」形成。もう街録やめようよ。

    ニュースもワイドショーも、エセ学者やそれっぽい文化人や芸能人を交え「国民目線」で進行するスタイルが定着しているが、本当にこのままでいいのだろうか。
    その道の専門家ではない人が論じている。

    そもそも「国民」は国家権力に相対する一枚岩なものか。
    国民はひとくくりできるほど、単純ではないはず。
    ある時は消費者対生産者が対立するし、ある時は若者と年配者、都市部と地方として利害が対立する。

    国民がもろ手を挙げて、全員一致などない。
    「国民」=弱き存在=庶民=「民意は一つで正しい」という安易な伝え方は、社会に混沌をミスリードする。

    弱き存在である国民を代弁する素人コメンテーターたちが、知見を装い、番組で期待されるさらっとした、曖昧な愚痴や不満を垂れ流すのは御免だ。

    彼らは常に「ちゃんとしほしい、しっかりやってほしい」を連呼するだけだ。ちゃんと、しっかりという精神論だけで社会は維持できるような単純なものではない。

    飯田さんは著作の中で、自衛隊の存在や、沖縄の基地問題、財政収支等々を例に挙げて、丁寧に説いている。
    日々、メディアから伝えられる重複した情報の陰で、伝えられていない重要な側面がこれほどあるのかと改めて驚く。

    叩いてばかりいては、優秀な若い人材は政治や行政から離れていってしまう。日本全体を俯瞰して、牽引できる優秀な人材は日本の宝なのだ。

    メディアも立派な権力の一端であるということも鑑みて、是々非々で情報を咀嚼してきたいものだ。
    飯田さん、期待しています!

  • 刺激的なタイトルに惹かれた。

    書店で平積みになっている人気の新書。

    図書館でも数十人待ち。

    それも頷ける読み応えのある、そして読みやすい内容だった。

    基地問題に「分かりやすさ」を求めるな。

    「軍靴の響き」ってもうやめませんか。

    安全保障を感情論で語られても。

    「メディアは反権力であれ」への懐疑。

    それでも現場に行く理由。

    右か左か。
    白か黒か。

    安易で感情的な言い合いに過ぎない報道に辟易していた。

    YES or NO でくくれないもの。

    「or」の間にある微妙なものこそを伝えること。

    「現場でしかわかり得ない熱気や迫力、空気こそが起こっている事象の本質を知る手がかりになる」とは、現場を歩き抜いた著者の実感なのだろう。

    安易に権力の揚げ足をとり続けるのは楽だ。だが何も生まない。

    「マスコミの自意識とは関係なく、もはや誰もマスコミを上には見ていません」との自省とも思える言葉も、本書で取り上げるテーマを読み進めていくと、確かに頷ける。

    「議論は戦わせるものでなく深めるもの」なのだ。

  • ザ・ボイスやOK cozy UPのラジオ番組で知られたニッポン放送飯田アナの著書。マスコミ側の人間としては珍しく、現在のマスコミの偏向報道をおかしいと批判する。
    反権力という旗を掲げれば全て正義だというマスコミの風潮を、自らの取材を通じて得た事実を基に反論する。良識派。
    普段からラジオを聴いているので、本の内容は聴いたことがあるような中身で目新しさはなかった。しかし、飯田アナの考え方や主張がスッキリまとめてあってとても読みやすい。全章通じて紋切り型の結論ではなく、質問を呈すような終わり方で、もう少しズバッと言い切ってもいいんじゃないかと思った。

    それにしても飯田アナはよく勉強してるし、現場もきちんと取材するし、信頼に値するマスコミ人だなぁ。取材もせずに思ったことばかりを主張する評論家さんは見習うべきだ。

  • いつもの飯田アナの主張を読むことが出来る本。「反権力」は正義ですか、については8章で取り上げてられているのみで、どちらかというと既存のマスコミの偏向報道に対する怒りのようなものを感じます。タイトルがイマイチなので-1。
    何を信じるかはあなた次第なんですが、一つの情報ソースばかりに頼っていると見誤る可能性が高くなる、そんな警告をしてくれているのかなと思います。

  • 情報をどう捉えるべきか見直すきっかけになりました。
    もっと早く読むべきだった

  • マスメディアのあり方を論じた好著。
    これほどメディアに携わる人の肉声や思いに触れたことは最近なかった。

    問題のまとめ方、その複雑さの伝え方が秀逸。
    スタンスを含めいちいち同感である。

    「マクロ経済の舵取りを誤ると個人レベルではどれだけ頑張ろうとも弾き返せないことがある」重い言葉だ。

  • 「権力批判報道」を単に「批判」するのではなく、そのような報道が行われる背景についても分析の上、処方箋が記されている。筆者の真摯・丁寧な姿勢に非常に共感できた。

  • ラジオ番組「飯田浩司のOK! Cozy up!」はパーソナリティの人柄も番組内容も好きで、通勤時間にPodcastで聴くのが日課となっている。注目すべきニュースを深く掘り下げるだけでなく、重要なのに扱いの小さなニュースを拾い上げて丁寧に解説したり、ラジオ番組だからこそ可能な内容がとても気に入っている。左右のどちらかに偏ったバイアスも薄く、自分の経験と感性を基にした言葉でしっかりと話す飯田アナは、いま自分が最も信頼するキュレーターの一人。そんな飯田アナの信念や立ち位置を改めて知ることができた一冊だった。

  • 「反権力」は正義ですか。飯田浩司先生の著書。人様に何かを伝えたり教えたりする立場にある人間は誰よりも謙虚な姿勢で努力して現場を知らなければならない。人様に何かを伝えたり教えたりする仕事は尊くて価値があることだからこそ、その姿勢は忘れてはいけない。飯田浩司先生から学ぶことは多い。

  • ほぼ毎日聞いているOK Cozy-upの飯田浩司氏の初の著書。中身は毎日聞いているだけあって、うなずけることばかり。日本人の文化として(もしかして人類全体にもあてはまるのかもしれないけど)2元化して物事を考える/評価する傾向にあり、それに思いッキし迎合しきっているマスコミがどのように見られているかというのを内側から綴ってくれています。安倍首相のある断面を評価→安倍支持者!→ネトウヨ!→夫婦別姓賛成!みたいな飛躍を容易にしてしまうし。そのような単純化された図式を求めるようになり、無批判に受け入れるワイドショー見ている人たちの劣化が激しい。そのような層に向けた番組を作るので、作りての劣化も激しい。
    是々非々で評価するのは難しいけど、それやらないと衰退は止まらないよ。

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