ネトウヨとパヨク (新潮新書)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106108129

作品紹介・あらすじ

「右」でも「左」もない。無知なのだ。無知に気付かず、自らの正義を疑わず、対話を拒否し、ひたすら他者を攻撃する。眩暈のするようなおかしな論理や、無尽蔵のエネルギーはどこから生まれるのか。

感想・レビュー・書評

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  • ネトウヨとパヨクを分析、深堀したものではない。

    ネトウヨとパヨクを対話のできない人として定義
    対話ができないとはどういうことか
    を論じた本。

    論理的な対話は
    トウールミンの議論モデル
    ①事実②理由付け(論拠)③主張
    から成り立つ。

    結論ありきの議論は理由付けがきちんとされていないので、対話にならない。

    本人が正義と思っていることで人の意見を聞かないことがある。
    対話とは他の意見をロジカルに聞き、自分の主張もあくまで仮定といして、建設的に意見をアップデイトしていくこと。

    結論を言い争い、人のロジックを聞かないことは対話になっていない。

    ネットだけではなく、実社会の会社の打ち合わせなども、意外と対話になっていないのではないだろうか。

    また、極端な主張でも、ネットに居場所ができて島世界を作れる現状を説明。

    Twitterのように短い言葉で断言するSNSは、ロジックの組み立てではなく、断言と感情的な共感から成り立つから、ロジカルな対話のようなものは必要とせず、世界を作れる。

  • 【子どもに○○する前に読む本】
    『明確な目的も主張もなく、だた情熱だけが先走る』
    『善意のある悪事』
    『“論理”がない主張は、論理破綻のしようがなく、議論が成り立たない』

    「これ、オレだ!」と言ってしまうのは大げさですが、心の声の語尾が「~すべき。~に決まっている」だった数年前の自分に重なる部分が多く、読んでいて思わずドキッとしました。

    《ネトウヨとパヨク  物江潤 著》

    『ネトウヨとパヨク』と呼ばれる人々。
    著者自身が実際に彼らと接するなかで知る、絶対的な『対話不能』。
    著者いわく『だれでもなり得る存在』と。
    では、自分がそうならないためにはどうすればいいのか。

    著者は提言のひとつとして、議論のルールを守ることを挙げます。

    それは、
    1. 自分の主張は仮説であると肝に銘じること。
    2. 他人の発言権は奪わないこと。
    3. 良い悪いの判断は『根拠』と『事実』ですること。

    良し悪しの判断が『相手の声の大きさ』になってしまいがちな自分にとっては、『根拠と事実』を注視する必要性がとくに大きいと思いました。

    また作中で著者は、真っ白でスポンジのように吸収する子供たちが、インターネットをとおして偏った主張へと容易に接続できる環境の危険性も訴えます。
    対話不能な人々のことを知ると、この危険性は非常にリアル。
    ネットに漂う偏った主張はどうやって生み出されるのか、親として知っておくことが大切なんじゃないかなと、自分も子を持つ身として思います。

    子どもにスマホを持たせる前に、親はこの本を読んでおくべきだと僕は主張したい。
    もちろん、仮説ですが。

  • 「ネトウヨ」はネット右翼、「パヨク」とはその反対の立場の人を批判的にとらえた表現です──本書の2ページ目にこう書かれている。ネトウヨはともかく、パヨクの語源がわからない。ググると、某電脳アイドルが引っかかってきた。く、くだらん! まあ、どちらも概念はわかった。そして本書はこの「対話のできない相手」といかに議論するかという内容だった。①事実→②論拠→③主張という議論のルールは覚えておこうと思った。

  • タイトルと内容が乖離している。
    途中で読むのをやめた。

  • 「ネトウヨ」「パヨク」と呼ばれる彼らのSNS上での大立ち回りに辟易してしまい何か良い心の持って行き方の手立てはないかとこちらを読み始めました。著者のフィールドワークに基づいた考察が豊富で素直に読み進める事ができました。沢山の例が出てきますが結局は「対話のできない人」は放っておくのが良いのかな、というのが感想です。
    自分は「ユーモアと素敵なレトリック」で議論できるよう努めたいと思いました。

  • 友人から虎ノ門ニュースを勧められて以来、彼らのマインドがどうにも受け入れがたく、そういった気持ちをネットで書いてみると「パヨク」認定されることがあって、自分は何者なのかと思い読んでみた。

    本書に書かれてある通り、私に対して「パヨク」認定してきた人たちは対話不能だと感じた。ネトウヨにとって相手を「パヨク」と罵ることは何よりの攻撃あり防御であり、これは逆もしかりなのだろう。そこにはなんの論理もなく、むしろ小学生が言い合いになって相手を「バーカ」と罵る状況によく似ている。
    現実ではあまり「ネトウヨ」も「パヨク」も聞かず、しかしネット内ではこの言葉は頻繁に見られる。それも感情的なシチュエーションで使われる。
    対話が重要だとは思いつつ、ネットの中での対話は難しく、現実世界で「ネトウヨ」「パヨク」と使う人間が私の周りでは皆無だ。そもそも「ネトウヨ」も「パヨク」も互いにそれが良くない言葉だとわかっているので現実で使わないのだろうから、正体がつかめない以上、その溝を埋めていくのは難しいように思われる。

  • ネトウヨ、パヨクは「対話ができない人々」

    彼らは、以下の3つの議論のルールを守れない。
    ① 自らの主張は仮説に過ぎないと確信すること
    ② 人の発言権を奪わないこと
    ③ どれほど奇妙奇天烈に思える主張でも、理由づけ(根拠や事実で、その良し悪しを判定すること

    そして彼らは居心地の良い島宇宙を形成し、彼らの正義(=信仰)を貫くことに生きる。

    ... 私が本書を手に取ったのは、私も言論の二極化と両者の対話不可能性を身近な問題として認識していたからです。私の周りにも、建設的な議論をする意志のない人、自分の正義(=信仰)を貫こうとする人、想像力や共感力に欠ける人... はたくさんいます。

    極右の人らは、あからさまなヘイトスピーチで悪目立ちするので、内からも外からもわかりやすいと思う。そして、極端な自分に自覚的だと言える。
    一方で極左の人らは、極端な自分に無自覚である傾向が強い。世界的に「極左」であることが悪とされない風潮があるので、大学という特殊な環境にいると、無自覚に極左な人がいることに唖然とする。彼らの議論は極右よりも「理性的」なのかもしれない。でも結局は極右と同じように、自らの正義(=信仰)を貫くために壇上に立っており、そのことに気づいていない。日本はまだマシで、アメリカの大学では、研究者と名乗るアクティビストが大学を活動拠点にしている。

    本書は、極右や極左を「客観的に」「批判する」本である。彼らが対話ができないことやその危険性については繰り返し述べられている。だが、問題は、なぜ人々が偏狭な正義感に囚われてしまうのか?ということではないだろうか。その分析が、本書には全くなかった。

    この問題は、アイデンティティの流動化、ポストモダンの現実の島宇宙化、アイデンティティ・ポリティクスの流行、ネット空間の現実化(?)、世界経済の行き詰まりと先進国の右傾化などなど、いろんな要素が絡み合ってると思う。居心地のよい島宇宙の正義に囚われてしまわぬよう、私自身、客観性と教養、多角的視座を身につけていきたい。

  •  右翼と左翼では思想的には大違いだが、ネット上の思考回路や行動様式は驚くほど似ている。ネット掲示板やSNSなどを中心としたその手の人々の画一的、近視眼的なありさまや問題点を並べたてただけの本。分析といえるほどの内容ではなく、ああそういう人いるよね、実社会にもときどきいるわ、という感想にしかならない。せっかく両翼を対比させるのだから十把一絡げに共通点ばかりあげつらわないで、それぞれの発端から現状への展開を歴史的に追うとかの切り口を読みたかったのだが。これではタイトルは「ネトウヨやパヨク」とすべきでは。

  • 主にネット上で「ネトウヨ」「パヨク」と呼ばれている対話不能な人々に対するフィールドワークと社会学的分析の著述です。
    個人的に印象に残った部分は、彼らの言論が若年層(中高生)に悪影響を及ぼす危険性を指摘しているところです。
    正直に言うと、学校教育ではその性質上、それに十分に対応することが難しいと感じましたが、やはりcritical thinkingを普段からあらゆる場面で実践することが大切であると考えます。
    「自分の主張は本当に正しいのか」
    「その意見の根拠は十分であるか」
    「なぜそのように言えるのか」
    私も自戒することを忘れずに生徒たちと接していこうと思います。

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著者プロフィール

1985年福島県生まれ。早稲田大学理工学部社会環境工学科卒業後、東北電力入社。現在は地元・福島で塾を経営するかたわら取材と執筆を行う。著書に『聞き歩き福島ノート――福島のこれからを話そう』(近未来社)、『だから、2020年大学入試改革は失敗する――ゆとり世代が警告する高大接続入試の矛盾と落とし穴』(共栄書房)、『ネトウヨとパヨク』『空気が支配する国』(新潮新書)など。

「2021年 『入試改革はなぜ狂って見えるか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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