素顔の西郷隆盛 (新潮新書)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106107603

作品紹介・あらすじ

人間像と維新史を、わし摑み! 今から百五十年前、この国のかたちを一変させた「大西郷」とは、いったい何者だったのか? 後代の神格化を離れて史実をひもとき、意外な素顔と波乱の生涯を活写する。

感想・レビュー・書評

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  • 質素倹約・自己犠牲をいとわない、他者を自己と同一化する優しさと、調査・分析を怠らない冷徹さを持った革命家の一生を描いたノンフィクション。

    司馬遼太郎「翔ぶが如く」やNHK大河で終わっていた革命家としての西郷隆盛を深掘りしてくれた作品。

    家族にとって困った長男坊という著者の指摘には苦笑いしかできないぐらいその通りだと思う。

  • 史料に基づいた考察などは相変わらず読ませるが、タイトル通り人物像を浮き彫りにする内容なので、歴史の本というよりは大河ドラマのネタ本というべき。中世以前の様な陋習が残る一方、近代化を躊躇なく進める薩摩の複雑性は、時には英雄、謀略家、時には隠者といった多面性を持つ西郷隆盛その人とも通じていて興味深かった。

  • 今回も磯田先生の本です。大河「西郷どん」で時代考証も担当されました。

    西郷については「翔ぶが如く」を読んだし、「西郷どん」も見たのですが、何か人物像がモヤモヤしてはっきりつかめません。
    本書を読んでも結局、西郷には色んな側面がありモヤモヤ感はとれなかったです。

    そんな中、印象に残ったのは、「瑕ある黄金の玉、瑕なき銀の玉」という言葉ですね。
    これは薩摩の有名な人が残した言葉で、前者を西郷、後者を大久保で評したものです。
    愛すべき欠点はあるがすごく愛される西郷と、完璧だが愛されない大久保。うまく言ったなと思いました。

  • 薩摩藩主・島津斉彬を尊敬心酔した西郷隆盛は、明治維新の最大の立役者であったにも拘らず、西南戦争で賊軍の将として自決するに至ったのか。歴史学者【磯田道史】が、西郷隆盛の素顔の人物像と、維新の舞台裏に迫った興味をかき立てる歴史読み物。天下の豪傑は誰かと問われた西郷曰く〝味方だけでなく、敵にも信頼されるのが豪傑。先輩では藤田東湖(水戸)、後輩では橋本佐内(越前)だけである〟と。その佐内が生きていたなら(安政の大獄で斬首)、新時代に西郷が生きられる場所を見つけてくれていたかもしれない、という著者の見解に共鳴する。

  • 磯田全盛が描く、明治維新の立役者にして「愛すべき異端児」、西郷隆盛の生涯。

    西郷どんは「敬して遠ざけたい」ぐらい面倒でややこしい人、自他の区別がなく他人に共感し一体化してしまう人、しばしば遁世してしまうムラの多いリーダー、月照との心中未遂以降「緩慢な自殺」を遂げたと言える死生感、二度目の遠島で身に付けた「大きな目的のためには少々汚い部分、つまり闇があっていい」非情さ、民主主義は夢物語であり法治より人治を旨とする政治思想の持ち主(プラトンの哲人政治と同じ)。水鏡先生の西郷・大久保評「西郷は黄金の玉に瑕があるような感じ、大久保は銀の玉に全く瑕がない感じだ」が、大久保との対比で西郷の人物を上手く言い表しているのだという。

    本書で西郷隆盛の人物像がクリアになった感じがする。

    意外だったのは、西郷を嫌いながらも重用し続けた久光を「凡庸なリーダーではなかった」と評価している点。確かに、狭量で暗愚な殿様という久光のイメージは間違っているのかも。

  • 西郷隆盛についてはいろいろな見方がある。この本はその理解しにくい西郷の人物像がわかりやすく書かれており読んでよかった。

  • 今や司馬遼太郎の後継者として引っ張りだこの著者であるが、本作も実に西郷を調べ尽くしている。西郷の周りでは多くの人間が死んでいくというのは言い得て妙である。司馬遼太郎の「翔ぶが如く」でも地元では西郷はあまりよく思われていないと書かれていたと思う、多分西郷は時代の破壊者として生まれてきたのであろう。ところで本作はひとつの論文としては面白いのだけれど、これを「翔ぶが如く」や「花神」のような歴史小説とするにはもっと筆力が入りそうだが、最近の史実を無視したトンデモ歴史小説を書くぐらいならやめたほうがよさそうに思う。

  • 磯田氏のこの本と司馬遼太郎氏の翔ぶが如く読んだ。もちろん磯田氏は古文書から日本歴史家として歴史を忠実にかかれている。それに対し司馬氏はあくまでも小説家であるため、史実は忠実に再現され、それに創作部分をくわえられている。両書に描かれている共通部分が史実として私は捉えている。
    この歳になって、古文書から読み通すのは極めて困難なため、複数の本を読んで自分なりの西郷隆盛像を作り上げることしかできません。ただし、真実と創作の部分の見極めが出来ないといけませんがね。
    そのためにも、歴史家の磯田氏のこのような本が大変貴重です。

  • 毀誉褒貶の多い(「毀」「貶」の割合が勝ってるかな?)今年の大河ドラマ『西郷どん』。その時代考証を担当している磯田道史氏による「大西郷とは何者か?」論。
    その生涯を軸とし、幕末の薩摩藩の状況、取り巻く人々、歴史の流れなど、史料を駆使してさまざまな視座から“西郷どん”の人となりを語り下ろす。

    【以下、ネタバレあり】





    やはり西郷さんは「純」そのものの人だったんだな。と言うのが率直な感想。ただ、「純」という言葉にもいろんな意味があるわけで、まさにつかみどころがない。文中にもあるとおり「面倒くさいヤツ」だったのだろう。
    けっこう躁うつ気質だったみたいだけど、そのあたりを中野信子先生にも解き明かしてもらいたいと思う。

    ところで、ドラマの時代考証では史実と脚本とのせめぎ合いがあるみたいで、時代考証担当者も妥協を強いられることが多いのだとか。(歴史が得意ではない)脚本家にまかせたツケは、当の脚本家や制作者、時代考証担当者だけではなく、視聴者含むすべての関係者にも回ってくるんだぞと戒めておきたい(何様?)。

  • 西郷の生涯とその時代をかなり平易に解説されている書。

    西郷の思想原点の一つは、奄美大島。中世で取り残されたこの地では「ヒザ」という奴隷身分が存在した。平等思想を信望していた西郷はこれを「奴隷解放」した94

    新政府軍として江戸城に入った西郷には、唯一欲しいものがあった。それは二宮尊徳の農書。これを天下に刊行したいと思っていたという168

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著者プロフィール

磯田道史
1970年、岡山県生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(史学)。茨城大学准教授、静岡文化芸術大学教授などを経て、2016年4月より国際日本文化研究センター准教授。『武士の家計簿』(新潮新書、新潮ドキュメント賞受賞)、『無私の日本人』(文春文庫)、『天災から日本史を読みなおす』(中公新書、日本エッセイストクラブ賞受賞)など著書多数。

「2022年 『日本史を暴く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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