- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106107528
作品紹介・あらすじ
コーランの教えに従えば、日本人も殺すべき敵である。イスラム教の論理で見れば、「イスラム国」は正しい――。気鋭のイスラム思想研究者が、コーランを典拠に西側の倫理とはかけ離れたその本質を描き出す。
感想・レビュー・書評
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西欧に住むイスラム教徒は「イスラム過激派はイスラム教ではない」と主張することで、自分たちが批判されることを防ごうとする。西欧の政治家は「イスラム過激派はイスラム教ではない」と主張することで、西欧の価値観に矛盾しないイスラム教だけが「正しいイスラム教」ということにする。
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池内恵さんが絶賛ということで、購入。
イスラム国が支持される理由と、そもそもイスラム教が何を教えとしているかという所は、今まで読んだ本と併せて分かりやすかった。
昨今、耳にするハラル食品やブルキニなども、何を選ぶ(解釈)するかは、当の本人であり、その意味でこちらが「決める」ことには大した意味はないと述べている。なるほど。
民族には民族の、国には国のルールがあり、その中で自分の考えが唯一絶対なのだとは言えない。
だから、自分の信じる考えが唯一絶対なのだという価値観とは、どうしてもズレてしまう。
その上、そうではない考えの者と戦い、改宗させよというオプション付き。
これは、余程の信念がないと成し得ないことだし、イスラム教徒の出産率の高さと相まって、普及させるシステムとしては、ある意味優秀だとも思う。
私の知らない所で、信念が人を襲っている。
そう思って、読むことだけは続けていこうと思う。 -
宗教とは疎遠な人が多い日本では中々イスラム教の世界観を正しく理解するのは難しい。日本人はクリスマスも祝えば、法事でお寺のお坊さんに経を読んでもらうし、子供が大きくなれば七五三で神社へ行く。全く生まれてから死ぬまでに沢山の宗教行事に参加しながら自分(自分の家)は何教です、とはっきり言える方は少ないのではと感じる。我々にとっては普通の感覚だが、世界では中々通用しないらしい。以前に読んだ元外交官が書いた書籍では、無宗教=アナーキスト並に扱われることもあるそうだ。もし、海外の方に質問されたらせめて神道です、ぐらいに答えておいた方が無難とのこと。
そんな日本人だからかイスラム含む宗教の世界観は掴み難い。失礼ながらかなり大雑把に捉えると、政治への宗教の影響を排除する政教分離の原則・立場をとるのがキリスト教、政治や生活に宗教が深く関わる政教一致の形になっているのがイスラム教と言える。イスラム教徒をムスリムと呼ぶが、ムスリムが多い国で長距離移動にタクシーを使うと、運転手さんがたまに全く関係のない場所で車を停止して街の至る所にある礼拝施設に行ってしまうなんて事もある。本書に面白い話があった。エジプトでは敬虔なムスリムが多くいるが、1日のうち勤務に徹している時間はわずかに30分程度でそれ以外は1日5回のお祈りに極力長い時間をかけてると。勿論それでは会社が成り立たないから、幾分誇張もあるのではと疑問を抱くが、筆者はイスラム教の研究者としてはテレビ出演するくらいの有名な方だそうだ。
本書・筆者は基本的にはコーランの記述に従い、ムスリム以外が理解し難いジハードという名の元に行われる自爆テロや、女性の人権の扱いについて解説していく。私も宗教切り口だけでなくイスラム社会の書籍も多く読んできたが、ありきたりのイスラム教は「一番平和と女性を守る宗教」とは正面から対立する立場と言って良い(勿論その様な穏健派の存在も否定はしない)。
特に女性が肌を見せないよう頭を覆っているニカブやブルカの在り方などにも、このコーランの技術とイスラム法学者の解釈を女性の人権の面からも批判的な捉え方で解説する。自らの意思でつけてるのか、周りの目があるからつけてるのか、強制なのか。いずれにせよ全ての答えはコーランとハディースにあり、特に後者は解釈を男性有利に付け加えてきたと捉えられる。平和や人権とは対極的に記載しながらも、本当のことはムスリムになってみないと判らないし、そうなれば二度と後戻りもできない。だから余計に判らない。
世界に18億人を擁するイスラム教徒も2100年頃にはキリスト教徒の数を超えるそうだ。イスラム教は多産を善しとし(ある意味ムスリム化を助長する施策)、女性を含む個人の自由や人権を尊重し、女性の社会新出が盛んな先進社会は出生率が低下するし、その様な社会はキリスト教徒が多い事も一因となる。
本書記載の通りムスリム全員が本来あるべき1人の偉大なカリフに導かれる時には、他の宗教との間に最終戦争が起こるのは間違いなさそうだ。なお本書はそうしたあるべき姿と根拠となるコーランを分かりやすく引いているので理解を深めるにはちょうど良い。敬虔なムスリムは普段から善行を積むが、そうでないムスリムや他宗教からの改宗者は、悪行をリセットするために自爆の道へ走りやすいなど。豚骨ラーメンを食する方もラマダンには断食する。
一時期はイスラム原理主義を危険なテロ組織と同一視する様な風潮もあったが、最近は報道でも大半は原理主義をその様に扱わなくなり、単に過激思想などで表現する様になった。そりゃそうだ。原理主義は単にコーランの記述をしっかり実践している考え方で、寧ろこれが一般的なムスリム、それをテロ組織として扱うのは間違えているし、その様な誘導的な報道こそ世界戦争に近づく第一歩だ。911を引き起こす様なテロリストは原理主義的に宗教には敬虔だが、彼等の言う合理的・経済的・至高の手段を用いただけの単なる過激派だから過激組織と呼ぶ方が相応しい。いやそうであって欲しい。ムスリム全員がジハードを自分の考え意思に依らず、また基づかず、誰かに導かれるままに実践する様になれば宗教戦争が自分にもリアルな形で現実になるのではと読了後に若干恐怖を覚えた。多様性や信教の自由を無邪気に語るのは、考え方によってはコワイ。
とは言えイスラムも民主主義的な考え方を始めから持つので合議制を「我々と同じ様な考え方で」実践していくなら平和の維持も可能だ。その考え方自体が根本的に違うという理解から始まるのだが…。 -
私たちの「普通」の感覚でイスラム教を知ると、常軌を逸した宗教にしか思えない。でも彼らの「普通」では、私たち異教者こそ排除されるべき存在。だってイスラム教は、イスラム教による世界征服を目的とする宗教だから。
過激派と呼ばれるイスラム教の一派だって、別に頭のおかしい集団ではなく、イスラム教の教えに愚直に従っているだけ。
というのが、この本で書かれているイスラム教。
この話を100%信じていいの?と自分の「常識」が訴える。
だってイスラム教って世界人口の20%以上を占めている宗教だよ。
それが事実ならマジで怖すぎじゃない?
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今世界的に起きているイスラム教によるテロや事件は、コーランが説く一つの「論理」に導かれて起きていることがわかる。「テロはイスラム過激派によるもの」というが、本来的にはイスラム教徒はそうあるべきものでもある。
例えば、悪とみなされるイスラム国は、イスラム教の解釈では理想郷なのだ。異教徒を殺すこともイスラム教徒にとっては正義なのだ。
7世紀に成立した教義を現代社会に適用することは時代錯誤だとされようとも、世界がイスラム教による支配が実現されるまではこの教義は生き続ける。
テロや殺害は決して許されるべき行為ではないが、あくまで一つの「論理」に導かれている人々もいるという多様性が同時に認めるべきなのだろうか?そもそも多様性とはなにか?と色々考えさせられる。
本書で述べられていることは、今日グローバル世界に生きる我々が最低限持っておくべき知識だと思う。-
2020/02/03
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2020/02/04
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イスラム教徒からするとこの本は「とんでもない」本であろう。
しかし、冷静で厳しい視点を持つこの本を日本人は読むべきだと思う。
特にこれから異文化との共生を日本が選ぶのであれば、日本人の価値観で異なる宗教やそれを信じる人達を「わかったつもり」になると大火傷することがある。
異なる文化や思考、価値観を完璧に理解することはできなくても、「知る」ということは最低必要条件だろう。 -
【書評】
・本書の長所と短所を指摘したフェアな書評(というか、温情的で礼儀正しいダメ出し)。
[https://www.jstage.jst.go.jp/article/jorient/61/1/61_74_78/_article/-char/ja]
【書誌情報】
『イスラム教の論理』
著者:飯山陽(いいやま・あかり)
http://www.iiyamaakari.com/?m=1
http://blog.livedoor.jp/dokomademoislam/
発売日:2018/02/16
発行形態 新書
ISBN 978-4-10-610752-8
C-CODE 0214
整理番号 752
ジャンル 政治・社会
定価 842円
[http://www.shinchosha.co.jp/sp/book/610752/]
【簡易目次】
まえがき
第1章 イスラム教徒は「イスラム国」を否定できない
第2章 インターネットで増殖する「正しい」イスラム教徒
第3章 世界征服はイスラム教徒全員の義務である
第4章 自殺はダメだが自爆テロは推奨する不思議な死生観
第5章 娼婦はいないが女奴隷はいる世界
第6章 民主主義とは絶対に両立しない価値体系
第7章 イスラム社会の常識と日常 -
イスラム教についてはじめて読んだ。目鱗。
日本人にとっての宗教と全く相入れない。
キリスト教がまだ受け入れられてるのは、教義の所々が日本人の倫理観と合致するところがあるからだろう。
イスラム教の教義の真髄は、イスラム教による世界征服である。
この通りだろう。
それだけだは生きていけないと考えてる穏便派は、過激に走る教義派に文句言えんのだな。
だからどうしようと書いてないところがむしろ好感。 -
理解は難しいが、知ることはできた。