フェイクニュースの見分け方 (新潮新書)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106107214

作品紹介・あらすじ

噓つきテレビ、無能な記者、テキトー評論家……。「オピニオンは捨てよ」「主語のない文章は疑え」「ステレオタイプの物語は要警戒」「虚言癖の特徴とは」――ポスト真実時代を生き抜くための正しい情報選別法。

感想・レビュー・書評

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  • 良書。

    CIA情報の95%は公開情報
    池上彰氏も似たようなことをおっしゃっていた
    公開情報を徹底して調べているからこそ5%の非公開情報を得られるし、その質が高まる。
    本書はその公開情報の見極め方のノウハウを具体的に解説されていて興味深い。

    オピニオンは捨てろ
    フォロワー数は信用とは無関係
    ビックピクチャーをあてはめよ
    などなど、普段、ぼんやり感じていたことが言語化され体系化されていて頭がスッキリした。

    加えて、
    主語のない文章を疑え
    など、知らなかったノウハウも学べた。

    今まで読んだ同種の書籍の中で
    最も興味深かった。

  • 現代社会は、情報の洪水というよりも、もっと複雑なカオスの状態になっています。
    何かを判断する上やより良い生活をしていく上で、
    これほど、多くの判断材料(情報一般)やどうでもいいニュース・情報が、
    日々垂れ流されている時代もありません。

    幸か不幸かわかりませんが、情報は、これからも、爆発的に増えていきます。
    そこから、自分にとって、有益な情報を拾い上げるのは、ますます難しくなるでしょう。
    よって、必然的に情報のリテラシーが必要ですが、
    それを教えてくれる人は、あまりいません。
    それを教えると、不都合な人が出てくるからです。

    本書は、情報カオス社会(ニュースや新聞、書籍、雑誌から発信される情報)で、
    個人がよりよい人生を気づく上で、
    また、ひどく騙されないために必要な情報リテラシーを私たちにレクチャーしてくれます。

    自分にとって良い情報とは何か?
    それは、一人ひとり違います。
    自分が接する情報が事実かどうかという判断は、
    どれくらい自身にとって、重要なものなのか、
    正直な所わかりません。

    ただ、何を自分が知りたいのかという「明確な目的」と、
    その価値は、やはり、事実による情報の方が、
    価値を高いかもしれません。

    事実でない情報であっても、それを、どう解釈するかで、
    受け取り方が違います。騙されたふりをして、話を聞くのか、
    ほんとに騙さているのか、わからないまま話しを聞くのかでは、
    その後の反応が全然違います。

    残念ながら、現在は、騙されたふりをして聞く機会の方が、
    圧倒的に多いかもしれません。
    情報が何も姿形を変えず、自分に有益な情報を与えてくれると思うのは、
    あまりに無知です。

    ただし、権力者や既得権益を所持している集団は、
    無知な人が増えれば増えると、喜びます。今の日本がそうでしょう。
    権力の監視を目的としているマスメディアの腐敗は尋常ではありません。権力者とすれば、最高の環境です。

    そのため、自ら接している情報は、
    一体どういう特性のものなのか、
    見極める必要があります。
    また、どういう特性のものでないのかという判断も大事です。

    一番恐ろしいのは、その情報の特性を、しっかりと判断することなく、
    素直に受け取ってしまうことだと思います。
    それが、国、社会、組織、個人に対して、
    致命的な結果を生む可能性もあるからです。

    311における一連の報道と過去そして現在まで続く、
    「情報合戦」は、発する側と受け取る側が、
    共に思考停止になった、最悪の例だと思います。

    ヤフーニュースを開くと、ニュースが頻繁に更新されています。
    自分の興味の湧く記事を見ると、そのコメントも見たくなります。
    時間の無駄だとは、重々承知していますが、ついつい見てしまいます。

    キンドルを開くと、数秒で書籍を読むことができます。
    また、読み終われば、その著者の作品群が紹介され、
    ついついまた、読んでしまいます。

    定期的アマゾンからはレコメンドする書籍がメールやサイト内で紹介され、「興味ある」と思える本は、減ることなく、爆発的に増えています。アマゾンからすれば、良い顧客でしょう。

    自分は、何をしたいのかと、なんで、たくさんの
    情報に接するのかわからないことがあります。

    いったい自分は、何に興味があって、その書籍やニュースを元に、何をしたいのか?と考えてしまいます。学業に活かせるのか?仕事に活かせるのか?はたまた、そういう活字媒体を見ると、人生が豊かになるのか?単なる娯楽なのか?ただ、思考停止になっているだけなのか。

    もちろん誰も、その一番重要な「自分がしていることの意味付け」をしてくれません。

    また、現在はありがたいことに(ある見方では、不幸かもしれませんが)、
    個人が自身の考えや感想を表現する媒体がたくさんあります。ブログからツイッター、YOUTUBEにいたるまで、
    他人と共有するのが簡単になりました。

    また、他人からの反応もダイレクトに返ってきて、はまる人は、はまります(いい意味でも、悪い意味でも)。

    こういった状況の中で、自分が接する情報は事実なのか、また、事実ならその根拠となるものは何なのかという視点は、とても重要だと思います。

    それは、私みたいに、ネットニュースやキンドル、発信媒体をよく使う者にとっては、かなり重要なリテラシーだと思います。

    著者が言うように、匿名の情報や、発信者が定かでない情報は、「重要でない情報」です。はっきりと、「発信者が誰かわからない情報は捨ててかまわない」と書かれています。発信側には、責任が全くともなっていないからです。

    その意味で、こういったレビュー投稿も、完全なる自己満足で、重要でない情報です。

    ただ、不思議と、レビューにまとめてみると、
    どういう本が、自分にとって、どれぐらい重要かは、わかってきます。完全なる本人都合です。ただ、こういういった能力も、情報をリテラシーをつける上で大切なことかもしれません。

    著者流の情報リテラシーの上げ方も非常に参考になりますが、やはり、著者のやり方を、参考程度にして、自分なりの方法論を構築するのが良いのかもしれません。

  • 客観的な視点というより本人の経験則に基づく基準なので評価が難しい。参考になるところもあります。

  • 各章のまとめは、時々読み返そう。
    公開情報を十分に分析しているか確認。Gサーチ使ってみる。匿名情報には最低限の信頼を与える。反論再反論は自自が何かを読者が判断する材料を提供する。強い修飾言葉に注意。主語がない時注意。検証には、時間軸、空間軸を広げる。メディアはわからないといいたがらない。嘘でも本当でもないこともある。アキュラシーでなく真実性。なぜ誤ったのかを考えるために、間違った主張もなされる必要がある。編集者や校閲者を置いている媒体には一日の長あり。この人は精度の高い事実に基づいて発言する、という人を分野ごとに見つけておく。日本ではステマは法規制されていない。発問のゴールを動かさない。

  • 【本書の概要】
    世の中にはフェイクニュースがあふれている。
    以前は新聞・テレビなどの旧メディアが発信者であったが、SNSの台頭により、誰もが気軽に発信できてしまうようになった。そうした世の中では、フェイクニュースを見分ける目を持つことが何よりも大切である。
    フェイクニュースの見分け方の基本は、「ファクトを信じること」である。本書ではこれに沿って、具体的な事例を交えながら見分け方の詳細を解説していく。


    【本書の詳細】
    ①ただの主張しかない記事は捨てる
    ・証拠となる事実の記載がない主張(オピニオン)は全部無視する。
    →記事中に主張を補完する根拠(バックデータ、いつ誰が発言したか、等)の無いもの。
    ・代理話者(コラム、識者、コメンテーターなど)の発言が掲載されているものも無視する
    代理話者の話が載っているということは、「裏付けとなる事実の取材ができなかった」という敗北宣言に等しい。新聞社はたいてい、自分たちの主張に沿った内容を発言してくれそうな代理話者を抱えており、自分達がしたい主張の方向に誘導した記事を書かせている。

    言論の根拠である事実だけに注意を払う習慣を持とう。


    ②実名で発信しているかに注意を向ける
    匿名者が発信した情報は捨てる。
    その人が情報の主体とどのような距離にいるか分からない。中には又聞き情報や空想を喋っている可能性もあり、情報の精度が落ちるからである。同様に、主語がはっきりしない情報も信じないほうがよい。ネットの発言が最たる例である。

    ex.) 「事実」は何かをジャッジするためには、反論→再反論(対論という)を続けることで、真実の輪郭をクリアにしていくことが必要である。対論を「正誤、善悪、勝負を決める」ための目的としてはいけない。公に開かれた対論は本来、読者が「何が真実なのか」を考える判断材料を提供するプロセスである。
    日本の新聞は筆者の著名が排されているが、これは「新聞社」が記事に対して責任を取るというスタンスであり、読者の反論の相手方は「組織」として担保されている。


    ③書き手の価値判断が混じった言葉を使った文章には疑いの目を向ける
    意気込む、決意を語る、胸を張る、反旗を翻す、反発するといった言葉は、「喋る」ことに対して書き手のニュアンスを加えた言葉であるから、注意して読んだほうがいい。
    このような言葉を使いがちなのは、新聞やテレビに限らず、根拠となる事実が弱いと、修飾語を過剰に強く大げさにする傾向が人間にあるからだ。

    ④ビッグ・ピクチャー(視野)を当てはめる
    ある報道がされたときに、その問題を取り巻く背景を調べたりその問題が属する時間軸を拡大することで、異なった視野から情報を見つめ直すのがよい。ビッグ・ピクチャーを当てはめるのは難しい作業であるため、まずは「記者が何を書いたか」ではなく、「何を書かなかったか」に注目する習慣を身につけよう。新聞、テレビ、ネット記事は、「たしかにその記事にウソは書いていないが、本当のことも書かれていない」のである。


    ⑤フェアネスチェックを持つ
    人間は完全なる善人や悪人などいない。大抵、過去の行いと今の言動が矛盾する生き物である。現実の人間を「善人」「悪人」「英雄」など一面的な記述をする情報ほど疑ったほうがいい。
    人々は、マスメディアに「現実と反対の、単純化あるいは理想化された物語」を求める。発信する側も「その方が人気が取れる」と、価値判断がそちらに傾斜する。するとどんどん論説が二項対立に寄っていく。これを防ぐために、正反対の立場の記事、書籍に目を通すことで、フェアネスな視点を持つことを心がけよう。


    ⑥SNSで信頼できる発信者を見分けよう
    旧メディア時代、マスメディアで情報を発信できる人の数は限られていた。マスメディア企業自身が、「この人の言うことは、事実という前提で信用していいですよ」という価値を担保し、責任を請け負っていた。
    しかし、インターネットの台頭で誰しもが発信できる世の中となり、信用を担保する組織やゲートキーパーがいなくなった。

    そんな時代にあって、SNSで信用できる発言者を見分けるコツは以下の通りだ。
    ・正確に引用をしているか
    ・言葉の定義が明確か
    ・専門の著作はあるか
    ・具体的になんの専門家なのか

    コツは、「ニュースが載っている媒体」よりも「発信者は誰か」に注目して情報を信用することだ。また、専門家が事実に正確あるいは中立とは限らないため、なんの専門家かを意識するのがよいだろう。


    【感想】
    筆者の烏賀陽弘道氏はもともと朝日新聞社の記者であったため、新聞の裏側に熟知した視点から「このように書かれている記事はこうした意図がある」ということを詳細に解説しており、とても参考になる一冊だ。

    私自身がなるほどと思ったのは「代理話者」の部分だ。
    「代理話者の話が載っているということは、『裏付けとなる事実の取材ができなかった』という敗北宣言に等しい。」と筆者は述べている。
    確かに、東京新聞と日経新聞を読んでいると、同じニュースでも扱われ方が全く違う。新聞社によって右か左かの違いがあるので当然ではあるが、右左以前に、記事の方向性が、データ主軸と代理話者主軸(「〇〇で働く△△氏はこう語る」という形式)で真っ二つに分かれている。
    結局のところ、「新聞社」というニュースの信頼性が一定程度保障されているメディアであっても、会社の色に沿った言論に誘導されていることが分かる。しかも代理話者形式の記事は、実際に取材を行った上で掲載しているため、厳密には「フェイク」ニュースではなく偏向報道だ。だからなおさらタチが悪い。
    (ちなみに、東京新聞は読んでて気持ちがいいぐらい言論の誘導を行っている)

    では、旧メディアを無視してネットのニュースだけを信頼するべきかというと、こちらは新聞社以上のウソと偏向報道である。いつの日も真実に続く道は嘘によって舗装されている。

    嘘かホントか分からないながらも、より多くの視点から情報に触れ、「真実の輪郭をクリアにしていくこと」が大切であるとあらためて意識したものの、同時に、時間の無い現代人にとっては何ともハードルが高い話であると実感した。

  • 課題であったので読む。
    読みやすくてかなり勉強になったので普通に読んでよかったと思えた。



  • ネット、SNSの時代になり、旧メディア媒体が衰退して久しい。いや、根拠なき流布が蔓延するネット社会が急躍している。
    3.11以降、SNSによるフェイクニュースがより急拡大したように感じる。
    報道と権力はいつの世も変わらないが、昨今では真実を掴む洞察力、分析力、調査力が重要な時代だ。

    本書には常日頃思っていたことを、正しく代弁していてくれて気持ちが良い。
    書籍を読んでいても、〜らしい、〜と思われる、〜と語られる、など丸々一冊伝聞系で書かれ、引用元もなければ、参考文献もない、著者の主観だらけの作文じゃねーかという、よくも編集者、校閲、校正を通して出版にこぎつけたなと思う、低俗なものに出会う。

    久しぶりに、胸が晴れる痛快な一冊でした。

  • ・タイトルは「フェイクニュースの見分け方」だが、どちらかといえば既存マスメディアのニュースの信用度をはかる話ばかりで、フェイクニュースの話題は出てこない。これは「ニュースリテラシーの身につけ方」である
     ・ここに書いてること全部守りつつ、完全に嘘っぱちなフェイクニュース作られれば対処は難しそう

    ・ニュースリテラシーに関する本としては誠実だし良い感じだが、看板には偽りがある

    ・お、6章で発信者の話題になった。ここからはいよいよフェイクニュース特有の話題になるか?
     ・…が、結局、マスメディア上などで発言する人の信用性の話題にシフトしていった…うーん

  • 情報化社会でデマに騙されないために読んでみた。
    趣旨としては、時間軸と空間軸で類似の情報を収集し、俯瞰して比較することでフェイクかどうかの判断ができるというもの。分かってはいたが、他人の言葉で聞かされると頭に腹落ちしやすい。

    <アンダーライン>
    ★★★
    もし発言者が他者を説得したいなら、「なぜ聞き手である私はあなたを信じなくてはならないのか」の理由を提示しなくてはならない。

    ★★★
    一般に、根拠となる事実が弱いと、修飾語が過剰に強く、大げさになる傾向がある。

    ★★★★
    「記者が何を書いたか」ではなく、むしろ「何を書かなかったのか」に注意を向ける習慣を身につける

    ★★★★
    メディアは「わからない」と言いたがらない

    ★★★★★
    「ファクト」ではなく「オピニオン」

    ★★★★★
    フォロワー数は信用を保証しない

    ★★★★★
    「何か分からないが、重要な要素がまだ発見されていないと仮定するとすべてに合理的な説明がつく」という要素を英語で「the X factor」という。

  • 070-U
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著者プロフィール

1963年1月京都市生まれ。
1986年、京都大学経済学部を卒業し朝日新聞社に入社。名古屋本社社会部などを経て1991年からニュース週刊誌「アエラ」編集部員。
1992~94年に米国コロンビア大学国際公共政策大学院に自費留学し、軍事・安全保障論で修士号を取得。
1998~99年にアエラ記者としてニューヨークに駐在。
2003年に早期退職。
以後フリーランスの報道記者・写真家として活動している。
主な著書に『ヒロシマからフクシマヘ 原発をめぐる不思議な旅』(ビジネス社 2013)、『フェイクニュースの見分け方』(新潮社 2017)、『福島第1原発事故10年の現実』(悠人書院 2022年)、『ウクライナ戦争 フェイクニュースを突破する』(ビジネス社 2023)などがある。

「2023年 『ALPS水・海洋排水の12のウソ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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