脳が壊れた (新潮新書)

著者 :
  • 新潮社
4.05
  • (98)
  • (109)
  • (52)
  • (6)
  • (7)
本棚登録 : 973
感想 : 137
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106106736

作品紹介・あらすじ

養老孟司さん絶賛! 深刻なのに笑える、感動の闘病記。握った手を開こうとしただけで、おしっこが漏れそうになるのは何故!? 41歳の脳梗塞とその後の「高次脳機能障害」。当事者による驚きのリアルドキュメント!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ルポライターの鈴木大介さんが自身が41歳で脳梗塞になり、後遺症として高次脳機能障害になりリハビリしたことを紹介された本です。

    ご自身の症状や「半側空間無視」「構音障害」等専門用語について、分かりやすく、ちょっと楽しく書かれていて、引き込まれて一気に最後まで読んでしまいました。

    体験から、保険やお金も大切だが実際問題として複数の「人の縁というネット」が必要というお話が印象的でした。

  • 脳梗塞からの、高次脳機能障害発症。1973年生まれ。同い年。外見からはわからない障害。感情のコントロールが効かなかったり、発話や呂律がまわらなかったり。フリーランスのライター業であり、貧困にまつわる取材対象は、こんな気持ちだったのかと納得。これは「ケーキの切れない非行少年たち」と同じ気づきじゃないか?発達を再体験、追体験している自分を観察するというルポライターとしての視点が明瞭で、自分や自分の周りを改めて受け入れることができたのだろうか。すごい体験だ。

  • 本書は、「発達障害を抱えるがゆえに社会や集団から離脱・排斥された人々や、精神障害と貧困のただなかに立ちすくみ混乱する人々」などの社会的弱者を取材してきたフリーの取材記者が、自ら脳梗塞を患ったことを「僥倖」と捉えて、脳機能の障害や機能復帰に向けたリハビリの日々を、自らを取材対象として言語化した書。

    著者には、足腰の障害は出なかったものの、左手の麻痺、構音障害(呂律が回らない)に加え、高次機能障害(半側空間無視、注意欠陥、感情失禁など)を負ってしまった。これらの症状を、著者は記者らしく分かりやすく表現している。例えば、「半側空間無視」は「「右駆動力優位」なFFの自動車」、その症状は「よそ見会話病」や「右前方無差別メンチ病」、「感情失禁」の症状は「感情失禁から来る中二病女子的亢進症候群による過剰抑制症状」(高ぶった感情を抑えきれず相手にぶつけることを恐れて言葉をスムースに発せなくなる状態)といった感じ。症状を具体的に想像することができて、とても分かりやすい。

    本書でぶっ飛んでいると思ったのは、著者の奥さんが「発達障害児の成れの果て」で強い注意欠陥であるということ。「掃除炊事洗濯、一切自発的にやらず、部屋は散らかし放題。風呂すら自発的に入ろうとはしないが、たまに入浴したかと思えば床にはズボンとシャツ、下着、股引と絡まった靴下と、脱いだ順番に洗濯物の列ができている」ような人で、しかも「深夜に寝て昼過ぎに起きる」生活スタイル、ときた。こんな女性と何故結婚したのかなぁ?? 著者は「世の中の、面倒くさい人ほど愛らしく、興味深く面白い」という価値観をお持ちのようだが…。夫婦生活で血圧上がりっぱなしだったというのもよく分かる。著者は、自らが脳梗塞を患った原因についても分析していて、「背負い込み体質」「妥協下手」「マイルール狂」「ワーカホリック」「吝嗇」が招いた自業自得、すなわち「性格習慣病」と断じているが、この奥さんとの生活に耐えていたのなら、さもありなん、と思ってしまう。

    著者が最終章で、「脳梗塞を経験しなければ、死ぬまで家族との対話をせずに終わったかもしれない。そう思うと、やはり僕の脳梗塞、そして背負った高次脳機能障害は、最終的に「黒字決算だった」」と言っているのが本書の救い。まあ、著者は後遺症が比較的軽かったのでこう振り返ることができたんだろうけれど。「「頼れる相手」や「頼るべき相手」と「頼りたい相手」とは別物」という言葉も印象に残った。

    脳卒中で倒れた自らをライブ中継するかのように綴ったジル・ボルト・テイラーの名著、「奇跡の脳」を思い出した。

  • 介護の仕事をしていると、“半側空間無視”というフレーズに接することが多々ある。実際にそういった障害を持っている方がたに接するのだけれど、顕著に障害が出ている場面に出くわすことはなかった。

    著者は、脳梗塞を発症し、それに伴う後遺症が残ったのだけれど、ルポライターという職業柄、自分自身を取材し、“高次脳機能障害とはこういうことだよ”をわかりやすく読ませてくれる。
    今まで接してきた方々は、言葉で発信することはなかったけれど、こんな風に見えたり、感じたりしてきたのだろう。

    自分自身を取材するにあたって、リハビリへの熱意が尋常ではなかったようで、その甲斐あって(?)壊れた脳の機能を他の部分で補完できたのだろう。仕事にも復帰し、良い本を書いてくれた。

    介護・看護・リハビリに関わる方にはオススメの一冊。

  • 図書館で借りたけど買ってまた読みたい

  • これまで目に見えない後遺症で苦しんでいる方への配慮が欠けていたことを反省。
    妻の家事を奪ってしまっていたことを反省。

    良い気づきを与えていただきました。

  • 「最貧困女子」でブレイクしたルポライター鈴木大介氏が、若干41歳にして脳梗塞を起こした。その闘病記。

    養老孟司先生もおっしゃる通り、私も一気に読んだ。脳梗塞を起こした本人が、具体的にどこがどう辛いのか、どう不自由なのかを克明に自分の言葉で記録したという点で非常に貴重だと思う。

    妻や仕事仲間の大切さに感謝している点は非常に好感が持てる。

    リハビリの内容も詳細が語られいるが、指導する理学療法士の待遇が低いことに著者は憤りを感じ、彼らの待遇改善を訴えている。私も同感だ。

    また、第4章『リハビリ医療のポテンシャル』の中で、イジメの対象となる児童に対して、リハビリスタッフにより支援の必要性を訴えている。これは非常に注目すべき、重要な主張である。世に広まってほしい。

  • 高次脳機能障害の当事者研究でここまで詳細な記録ははじめて読みました。
    専門職なら必読書としていいのではないかと思えるほどに示唆に富んだ内容でした。

  • 最近、職場で高次脳機能障害になった人と知り合ったから読んでみた。
    体験をこんな風に書けるのすごいなぁ。

  • ★回復記に感じる「面倒な人」との共通点★漫画「ギャングース」を連載中に読んでいるとき、そういえば原作者が脳梗塞で、というのを見た気がした。40代で脳梗塞を発症し、その後の変化を体験記として記す。自分を対象としたルポで、あえて病気の深刻さを和らげようとしているのだろうが、筆致が柔らかく読みやすい。
     何よりも本書がただの回復記とは違うのは、筆者の専門が貧困で、そのときに出会ったやりとりができない人々の様子に自分を重ねることだろう。著者は赤ん坊に戻ったように感情の抑制が効かなくなる。取材相手のことをコミュ障の面倒くさい人だと思っていたが、自分が同じ状況に陥ってみて、そこには脳の問題もあったのではないかと分析する。発達障害は先天的なものかもしれないが、貧困のなかで育つと発達の凸凹をより悪化させるということなのか。もちろん脳梗塞は場所によって差は大きいだろうが。

全137件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1973年千葉県生まれ。文筆業。子どもや女性、若者の貧困問題をテーマにした取材活動をし、代表作として『最貧困女子』(幻冬社新書)などのあるルポライターだったが、2015年、41歳のときに脳梗塞を発症し高次脳機能障害が残る。当事者としての自身を取材した闘病記『脳が壊れた』『脳は回復する』(ともに新潮新書)が話題に。他にも、夫婦での障害受容を描いた『されど愛しきお妻様』(講談社)『発達系女子とモラハラ男』(漫画いのうえさきこ。晶文社)、当事者視点からの実践的な援助ガイドを試みた『「脳コワさん」支援ガイド』(日本医学ジャーナリスト協会賞受賞。医学書院)、当事者と臨床心理士との対話を記録した『不自由な脳』(山口加代子氏との共著。金剛出版)などの著書がある。

「2021年 『壊れた脳と生きる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

鈴木大介の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
都築 響一
三浦 しをん
ヴィクトール・E...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×