習近平の中国 (新潮新書)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106106194

作品紹介・あらすじ

元中国大使がここまで書いた! 総書記就任以来、習近平が猛烈なスピードで進める改革によって、共産党一党支配の基盤は崩れつつある――。「習近平を最もよく知る外交官」による中国論。

感想・レビュー・書評

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  • 読んでみたい本だった。チャイナスクールの出身とされ、
    北京駐在も三回で、中国の現代史をみてきたからだ。
    読みながら、言葉の選び方が、浅すぎるとおもった。
    中国共産党の『隠したがり体質』と『相手を過酷に倒す仕組み』
    という表現に、まったく インテリジェンスを感じない。
    おじさん的表現だよ。
    それに、テレビでの戦争ドラマを単純に見ている。
    あぁ。その背景をもっと、あばけよ。と言いたくなってくる。
    中国のインテリジェンスに取り組んできたとしては、
    もう少し、言うべきことがあるだろう。
    『大地の咆哮』での、すざましい執念みたいなものが感じられない。
    習近平と一番たくさん食事をした 経験を持つには
    『中国流大人』というだけでは、おもろくないだろ。

    ゾウが 急速に走っている、そのスピード感。
    そこで、常に問われる 中国共産党の統治の正当性。
    鄧小平が 一番気にしていたところを、江沢民は 汚職まみれを容認して、
    胡錦濤が おとなしく 文書だけで、行動に移さなかった中で、
    習近平が 実行に移しているのが 
    お父さんの習仲勲の思いを大切にしているというところは、
    なるほどという分析だった。
    習近平が 習仲勲88歳の誕生祝いの時におくった手紙。
    『人となりを学び、成し遂げたことに学び、信じることをあくまでも追求する精神に学び、民を愛する気持ちに学び、質素な生活に学ぶ』という紹介がいい。
    ただ、習近平の評価をそれだけにとどめるには、見えてこないなぁ。

    もっと、語るべきことがあるはずなのだが、語れないのだろうか。
    とにかく、インテリジェンスの浅さと残念の書だった。

  • 2016.6.10 ブックいとう2019-5-3

  • 非常に読みやすく、良くまとまっている。中国の政権に対し手厳しく批判を加えているが、良いところと悪いところ双方に目を向け、冷静に分析しようとする姿勢は好ましい(ただし、一般的な日本目線ではあり新奇性はないかも)。トウ小平~習近平までの共産党内部の政治ドラマが、ルポルタージュのように描かれ非常に面白く勉強になる。他書に触れる必要はあるだろうが、本書は知識整理に活用できる点で価値が高く、個人的に要再読の一冊となった。

  • 中国共産党の歴史的経緯を踏まえた上で習近平やその政治を語った一冊である。

    習近平だけでなくそれ以前の中国共産党の政治の歴史を記している。そのため無学者でも理解がしやすい内容であった。強いて言えば読み仮名が欲しかった。

    毛沢東というカリスマ溢れるリーダーが共産党を設立。その後、鄧小平や江沢民と受け継がれていく中で段々と腐敗していく中国共産党。派閥争いやその構造上の問題、方針の問題など様々な問題を抱えた状態の政府を任された習近平は具体的な目標を掲げ実行していく。

    本書を読む前は中国の強行姿勢は「自国の利益」だけを重視したものだと考えていた。しかし、中国国民は日本人とは意識の段階で「世界における大国」という解離があることがわかった。このことから中国はただ自分のためだけに動いているわけではないということがわかった。それでも他国からすれば脅威であることに違いない。だから、中国との歩み寄りによる相互理解が重要なのだと感じた。そんな一冊である。

  • 元中国大使の著者が、中国の政治体制や中国共産党の抱える課題、軍事力を増強する理由等を分かりやすく解説した書。2015年執筆。

    改革解放路線により、資本家を含めた国民「みんなの党」となった中国共産党は、あらゆる層を満足させなければならない、というおおよそ不可能な課題を負うこととなった。民主的な手続きをへた政権でない中国共産党は、国民全体を満足させられなければ、統治の正当性を維持できない(むしろ、末端組織まで張り巡らされた党による支配体制が腐敗を生んでおり、国民の不満が溜まっている)。そのような中、対外強硬姿勢をとり、ナショナリズムという国民感情に訴えるのが、統治の正当性を支える安易な手段になってしまっている、というのが現状のようだ。

    また、「近代中国の屈辱の歴史がトラウマとして残っている」ため、多くの中国人は「とにかく中国は強くなければならず、大国にふさわしい軍事力を持つべきだ」と自然に考えているという(中国共産党自体にも、大国への根強い不信感゛弱者メンタリティー゛がある)。国内統治の手段としての中国共産党の対外強硬姿勢と、軍事強国たるべしという国民感情が相俟って、我が国をはじめとする近隣国への軍事圧力が増大している、ということのようだ。

    今後経済成長が鈍化していくなかで、中国はあくまで経済優先でいかざるをえない、というのが著者の見立てだが、果して…。

  • 【189冊目】2010年まで中国大使を務めた著者による現代中国の分析と未来予想図。明快な筆致と、基礎的な知識を網羅した内容で、必読の書だと感じた。
    以下、備忘。
    ・現在の体制は習・王体制と呼ばれるほど、紀律担当の常務委員の王岐山の重要性が高い。
    ・2017年の共産党全国代表大会では、その王岐山が引退するかどうかが注目される。
    ・中国民衆は、環境汚染と食の安全の2つに本気で怒っている。
    ・共産党の基層単位は、学校や企業、軍などあらゆるところに及んでいて、「共産党の指導」による統治が全国に及ぶよう作用している。
    ・現在の共産党による統治の正当性は、高い経済成長により支えられている面が大きい。
    ・強力な指導者であった毛沢東から、党総書記ではないのに実質的な指導者として振る舞った鄧小平より後の世代では、指導者個人の力による統治の余地が徐々に狭まり、制度や法が統治の重要なツールとなりつつある。

  • 中国共産党の組織体制からその思考方法の概略をつかむことができる。鄧小平以後の指導者についての説明も多い。

    習近平についての記述は後半でやっと出てくる。中国が抱えているジレンマや共産党についての知識を学ぶことが出来る。ネトウヨはじめ中国を毛嫌いしている人こそこういった本を読んで知識を身に付けるべきだろう。

  • 当たり前だが、習近平氏が国家主席に就任した際には、歴代の国家主席のようなカリスマ性を感じなかったが、本書を読んで共産党の腐敗を打開するために本腰を入れていることが理解できた。数十年後、習近平氏の偉業として振り返られる日が来るのだろう。

  • ようやくマトモな中国論に出会った。特にトラ退治の対象になっている人物の背景や繋がりがよく理解できた。
    チャイナスクールの代表たる著者は中国に好意的な見方をしているが、逆に本書を読んで中国の限界が見えた気がする。共産党一党独裁体制のままで中進国のワナから抜け出せるとは思えない。これからも社会は複雑化する一方であり、先進国になった段階で統治能力を越えるだろう。その意味で著者の洞察は的確である。
    外交と軍事の将来についても、中国びいきが過ぎて正しい認識ができていないようだ。2016年現在の南シナ海の状況をどう説明するのか?尖閣とは異なり、南沙諸島での軍事基地建設は資源確保=生き残りが目的ではない。西太平洋の支配を狙った大国的野心が背景だ。世界秩序の維持が自国の利益にもなるのだから一国の指導者は紛争を避けるはず、というのはあまりにもナイーブに過ぎる。80年前の日本の姿をお忘れか?

  • 冷静で客観的。やっぱり現場を知っている人は違うなと思う。

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著者プロフィール

宮本アジア研究所代表、日本日中関係学会会長、日中友好会館会長代行、日本アジア共同体文化協力機構理事長

1946年生まれ。京都大学法学部卒業。69年外務省入省。87年外務大臣秘書官、90年中国課長、94年アトランタ総領事、2001年軍備管理・科学審議官、02年ミャンマー大使などを経て、06年より10年6月まで中国大使。


「2022年 『東アジア 最新リスク分析』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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