凶悪犯罪者こそ更生します (新潮新書 579)

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  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106105791

作品紹介・あらすじ

「落ちるところまで落ちた」からこそ、反省は深くなる。誰もが「更生不可能」と判断した極悪人たちが、次々と「心からの反省」を表明! 従来とは全く異なるメソッドで、受刑者教育に革命を起こした驚きの授業を初公開。

感想・レビュー・書評

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  • 著者の前著にあたる『反省させると犯罪者になります』を面白く読み、続いてこちらに当たった。過ちをおかした人間に対し、ある種の「反省」が抑圧として働いてしまう、まずは負の感情を吐き出させることが必要、といった主張の根本は前著と同じ。犯罪者支援の観点と、教育の観点の両面ある前著に対し、本書の焦点は犯罪者支援のみに絞られている。受刑者の実情や詳細な実例を加えたうえで、刑務所への提言を添える。

    受刑者の更生支援に携わる著者の情報からは、刑務所内で本音を話すことができない受刑者たちは反省できないと知らされる。なかでも第二章すべてを割いて紹介される、獄中の作家、美達大和氏の生涯とその思想は象徴的である。終章で著者が示す提言については共感できるのだが、理想的すぎるがゆえに、現実には前時代的ともいわれる日本の刑務所が取り入れるには容易に困難が想像できる。

    美達大和氏をはじめ受刑者たちの実例を知るにつけて、一般に善きものとされる「正義」についても、一個人があまり深く内面化してしまうことは、人生を阻害する足枷として働いてしまうと感じた。人間は弱く不完全で、助け合うことこそを本質とわきまえることこそが健全な思考なのだろう。自己責任を強く求め、「逃げ道」を奪いがちな風潮は人間の本質と乖離しており、結果的に社会全体にとってもマイナスではないかとも思わされた。

    タイトルについては、短期の受刑者が一日でも早く刑期を終えることを目的化してしまうため、それに比べて長期受刑者(凶悪犯罪者)のほうが自分の内面を見つめ直す心境に至りやすいという事情を意味している。
    本書で紹介されていた『獄窓記』も、興味深く読めた。

  • ある裁判官は、反省を「自分のしたことに正面から向き合い、重大性を認識し、それを二度と繰り返さないための具体的な方策を持つか、検討していること」と定義した。本書は前著に引き続き自分の犯罪行為に「向き合い、重大性を認識」するには、まず自己理解と他者との繋がりを得て、自分が「倖せ」になることがその「具体的方策」だという。人は皆弱い。だから、自分の心の弱さは犯罪の理由にはならない。むしろその弱さを受け入れ、さらけ出し、頼れる他者を得ることこそが必要だ。出所者の外部の支援員として雇用するとの筆者の提言は実現したい。


    本来、愛とは無償の愛であるべきで子供は生きているだけで愛される存在。引きこもりになる原因は、どんなにダメな自分でも愛してくれますか?という親へのメッセージでありうる。条件付きの愛は、親の条件を行動の判断基準となった子供の生き辛さの要因となる。これまで形成されてきた単眼的価値観を一旦受け止め、新しい複眼的視点を入れることで、犯罪行動による得失を考えた上で、その行動以外のいかなる選択肢があったのかに考え至る。選択肢がなければ、選べない。逃げる・相談する、を人生のオプションにできる人が増えたらいい。


    筆者の5つの提言①個別レポートを課して、希望者に個別面接を実施②教育処遇日にグループワークを実施③出所した元受刑者を外部の支援者として雇用④一定の刑期の経過・一定の条件が揃えば一定期間社会内ホームステイ⑤受刑者教育の前に刑務官の教育を。

  • 同氏の「反省させると犯罪者になります」を読み、納得できるところが多かったので本書も購入した。
    これも良かった。
    奈良少年刑務所、竹下先生の後輩だった。

  • 凶悪犯罪者こそ更生します。岡本茂樹先生の著書。凶悪犯罪者、受刑者に上から目線でお説教して自己反省ばかりを強要しても何の解決にもならない。凶悪犯罪者、受刑者がなぜそのような犯罪を犯したのか、凶悪犯罪者、受刑者の気持ちに寄り添い、共感しなければ、真の更生はないことがわかりました。子供の教育、子育てにも応用できるお話であると思います。

  • 反省させることで、ちっとも犯罪者自身は内面が変わらないということが、未達氏の著作の詳しい著者分析から、とても納得させられるものだった。

  • 犯罪者が辿って来た道を生育環境にまで迫ると、問題点は明らかになり、更生する事があるらしい。幾つかの事例を挙げつつ、美達大和氏の著書から読み取れる心の闇に迫ってもいる。普通なら避けて通りたい犯罪者の心に問い掛ける著者の慈悲心には感動すら覚える。

    善人なをもて往生をとぐいはんや悪人をや、とはまさにこれか。本当に往生を遂げる人には、その辿って来た堕落と更生の経験が有ったのを親鸞は見知っていたのかも、などと考えてしまった。

  • 話を聞くことが大事

  • 前作「反省させると犯罪者になります」の実践編として書かれた今作。
    おやと思ったのが矯正保護の世界ではおなじみの格言「反省は一人でもできるが更生は一人ではできない」をつかまえて「反省も一人ではできない」との批判を加えている点。
    「反省は一人でも~」の言葉にいう「反省」は筆者が前作で批判した上っ面の(本心からでない)反省であり、筆者の望むところとする「反省」はむしろ格言にいうところの「更生」に近いのではないか、とも考えられます。
    ここで疑問が。筆者のいう「反省」は「更生」とどう/どれだけ違っているのか。さらには、筆者の望む「更生」と一般の人が考える「更生」には何か差異があるのか。

    個人的に、岡本氏の考えるメソッドは更生保護のあり方として十分に「アリ」だとは思うのですが、筆者の指摘する通り大半の受刑者は本音を吐いたり反省する気がない現状があるのと、筆者自身がお亡くなりになってしまったことで、筆者の提唱する更生保護システムの実現にはまだ程遠いのかな、と思ってしまいます。


  • 中澤先生おすすめの本の同著者

  • 自分用キーワード
    昼夜独居(単独処遇) 拘禁病 篤志面接委員 万引き=愛情飢餓 改善指導

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著者プロフィール

立命館大学教授

「2012年 『ロールレタリング』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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