政治改革再考 :変貌を遂げた国家の軌跡 (新潮選書)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106038549

作品紹介・あらすじ

あの改革は、憲法改正をも凌駕する時代の画期だったのか? まさに平成が始まろうとしていた頃のこと、政治シーンのあちこちで「改革」の二文字が見られるようになった。以来30年、日本の統治システムは改革の名のもと、静かに、しかし激しく変貌を遂げてきた。選挙制度、行政、日銀・大蔵省、司法制度、地方分権……現在の政治を作り出した壮大な理念とその帰結を読み解く。

感想・レビュー・書評

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  • 待鳥聡史『政治改革再考』新潮選書 読了。選挙制度を皮切りに、平成期に公共部門で行われた改革。そこには「近代主義」というアイデアが通底していた一方、各領域における土着化によってマルチレベルでは不整合が生じたことが指摘される。予期しない帰結を避けるためには、土着化の視点が参考になる。

  • ふむ

  • 90年代以降、時に熱狂的になりながら、政権の命運をも左右した政治改革。選挙制度や行政改革は思い浮かびやすいが、それ以外にも日本銀行・大蔵省、司法制度、地方分権にも一連の改革が行われてきた。
    選挙制度や行政改革は政治関連のメディアでも分析報道がされるが、なぜ一連の改革が一時期に起きたのかを問うたのを読むのは初めて。
    日々のニュースを追うだけでなく時間をおいて考えてみるのも良い物だと思った。

  • 90年代から取り組まれた政治改革の過程と帰結を検証し考察した内容だが、領域横断的、俯瞰的記述で一般向けではないかもしれない。
    ここ30年に渡る様々な領域における一連の政治改革を『実質的意味での憲法改正』と評していて、膝を打つ思いだった。

    一口に政治改革と表しても多岐に渡る。選挙制度改革(小選挙区比例代表並立制)。行政改革(省庁再編と内閣機能強化)。日銀・大蔵省改革(日銀法改正と大蔵省の影響力低下)。司法改革(法科大学院と裁判員制度)。地方分権改革(地方分権一括法)。これは30年前の政治風景と全く違う変化を起こす。
    政治改革を支えた時代認識と理念。著者はそれを近代主義右派のプロジェクトと総括する。「近代主義」とは、自律的な個人が社会を作り合理的に行動するなかで、集団化や意思決定において、より合理化することが望ましいとする考え方を指す。
    バブルと冷戦後の国内外の環境変化のなか、変化に即応できる統治機構の応答能力の向上と、新たなルール作りへの時代認識と熱気が体制内統治者たちに共有されていた。そうした時代認識と「近代主義」が重なった近代主義右派の理念が政治改革の基底にあったという。広範囲に及ぶ改革の理由もここにある。

    さて、政治の風景は変わった。内閣機能強化は官邸主導として今日定着している。選挙制度改革は党総裁の力を強めた。司法では行政官僚制との関係では自律性が強まった。地方分権改革後の中央と地方の意思疎通には依然課題が残る。本書は総花的な内容だが変貌を遂げた「国のかたち」を知ることができる。

  • 90年代からの政治改革を総論とそれぞれに章ごとに分けて書いてある
    なるほどと思うことが多かったし、知識を得たり議論をするのに最適な本だと思った

  • 1990年代以降進められた「選挙制度改革」、「行政改革」、「日本銀行・大蔵省改革」、「司法制度改革」、「地方分権改革」という実質的な憲法改正ともいえる「政治改革」について、それらを「近代主義」という「アイディア」が通底していた一方で、その具体化の過程で各領域での「土着化」が生じ、マルチレベルでは不整合がみられる結果となったと指摘している。
    「近代主義」が政治改革の様々な分野を通底していたというのはちょっと後付けの理屈のような気もしたが、本書は、政治改革の全体像について一貫した説明を与えるとても(知的に)面白い試みだと感じた。
    本書のキーワードの1つである「土着化」は、過去の改革を読み解く上でも、今後の更なる改革を考える上でも、非常に重要な観点だと感じた。著者が指摘するとおり、今後の改革に当たっては、「改革過程では土着化の動きがほぼ確実に生じるため、想定された帰結を導くためには、改革の全体像とそれを支える理念を明確に定め、土着化による影響をできるだけ小さくすることが必要である」。

  • 東2法経図・6F開架:312.1A/Ma16s//K

  • 平成の時代に進行した政治改革について、その経緯と帰結がまとめられている。近代主義右派の観点から各改革を横断的に理解しようという流れは説得的だった。過去を振り返るだけでなく未来への示唆にも富む良書。

  •  80年代末から2000年代初頭にかけての多くの領域の政治改革を扱う一方で、改革の結果よりも背景の理念や各改革の経緯、特にマクロな点に重心を置く。個々人がより自律的・主体的に行動して社会が合理化することが望ましいと考える近代主義、そのうち右派が一連の改革の背景にあった、とする点が本書の特徴の1つだ。
     本書が指摘するように、戦後日本では近代主義の担い手の多数が左派だった。そのためか近代主義右派と保守主義を混同しがちなことには自分自身気を付けなければならない。著者がいう近代主義右派は自由主義に近いものとされ、名が挙がるのは高坂正堯などだ。また著者は、大企業やエリートの利益重視とされがちでそれ故に党派性を帯びる新自由主義とも、近代主義右派を区別する。この考え方に立てば、たとえば選挙制度改革は単なる腐敗防止以上の意味を持つ。
     理念を具体的に実行に移す際には各領域ごとの「土着化」があった、との概念を使うのが本書のもう1つの特徴。この土着化の過程で、同じ理念から出発しても領域間での不整合が出たとする。
     当時の政治改革の結果自体については本書ではそれほど明確な価値判断は見られない。ただ、課題が残ったり新たに出現したりしている現在でもなお改革が必要、と述べて本書は終わる。

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著者プロフィール

待鳥 聡史(京都大学法学部教授)

「2020年 『ポリティカル・サイエンス入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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