明治維新の意味 (新潮選書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106038532

作品紹介・あらすじ

いまからおよそ百五十年前、日本ではこれほど果断なる政治が行われていた! 世界史に類を見ないスピード感をもってなされた国家制度樹立。それを可能としたのは、議論を尽くしつつも真に能力ある者が政策を選びとり、時には手続きも飛び越えて最重要の改革を実行することへの合意だった。日本を代表する政治学者が、大久保利通や伊藤博文らの言動にあらためて光を当て、維新史の新たなる解析を試みる。

感想・レビュー・書評

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  • 政治史や外交史の碩学である著者の明治維新論。1912年9月、まだ無名のジャーナリストであった石橋湛山(当時28才)が『東洋時論』(東洋経済新報社が出していた雑誌)で明治時代の最大の事業は、日清日露の戦争に勝利し、植民地を拡大したことではなく「政治、法律、社会の万般の制度および思想に、デモクラチックの改革を行ったことにあると考えたい」と書いていることを紹介しつつ、著者も湛山の意見に賛成であると言う(p.11)。著者は講座派的な明治維新を低く評価する立場を批判しつつ、明治維新革命の意義を丁寧に世界史的な文脈の中で考えていく。現在、JICA理事長として感じている途上国の発展の困難さの実感が背後にある。

    本書は、序章以下終章まで13章構成。第1章「江戸時代の遺産」から第11章「議会政治の定着」までがここで考えられている広義の明治維新の範囲である。全体の叙述は最新の研究成果にも目配りが行き届いていて、かつ平易にバランス良く叙述されている。大久保利通や伊藤博文、原敬や福澤諭吉への評価が高いが原資料からの直接の引用などに基づいており、素晴らしい。とくに大久保の評価は高く、彼の政治家としての資質の高さには驚かされる。残念ながら、大久保も伊藤も原もみんな暗殺されてしまった。

    明治維新の成功は、最良の人材が徹底的に議論し、国益のためにベストを尽くしたことであり、それが大久保の言う「公議輿論」だった。しかし、「日露戦争以後、様々な集団において制度化、合理化(マックス・ヴェーバー)が進み、それとともに、リーダーの凡庸化、平凡化が進んだこと」(p.322)が昭和の失敗につながっていったと著者は考えている。これはまた現代の私たちになお突きつけられている課題であると言える。

  • 明治維新の意味をもう一度考え直すことは今の日本を考えることの助けになると思う

  • 近代日本の歩んできた道がわかりかけてきた。 西洋においては宗教が国家の基軸をなしているが我が国聞において基軸とすべきはひとり皇室あるのみ。この精神が、戦争に負けた日本をも支えている。
    日本国憲法制定前後の政治状況についてもこの著作のように分かりやすく解説してほしい。

  • 明治の政府がどのように成立していったが詳細な内容が理解できます。特に岩倉使節団が2年にも及ぶ欧米視察を行っていたというのは驚きでした。

  • とても面白かった。
    誇張なしのこの時代の迫力が凄すぎる

  • 明治維新はどう論じられてきたか/江戸時代の遺産/開国と幕府の崩壊/新政府の成立/権力・国力基盤の整備/岩倉使節団/明治初期アジアの国際関係/大久保独裁の現実/自由民権運動と明治一四年政変/朝鮮問題と条約改正/明治憲法の制定/議会政治の定着/明治革命の終わり

  •  大久保―伊藤―(原)史観というのは言い過ぎかもしれないが、ここらの政策については、ほぼ肯定されている。むろんキチンと議論を整理してからではあるが。
     
     明治維新は、始まりはオールスターであったが、段々と欠けていく過程が淋しい。元老がいなくなるとともに、結局、セクショナル・インタレストを振りかざすようになったという指摘は重い。

     

  • 明治にどんな変革がなされたか、それが日本をどんな国家にしたかを俯瞰する。世界史全体においても新鮮なのは、新しい権力者達が(岩倉使節団のような大胆な研修旅行含め)新国家建設に対し責任感を持って取り組み、速やかに着実な成果をあげた事。一冊では足りないテーマがよく纏まっているのがポイント。

  • 幕末から明治維新については、何となく知っている気がしていたが、改めて当時の国際関係を含む政治史についての本書を読んで、大久保利通の偉大さや伊藤博文の博学さなどを認識した。明治維新は、無血とは言わないが、旧体制の指導者も取り込んだ革命であり、後に元勲や元老と呼ばれる有能な下級士族の個人的資質や能力に大いに助けられて実現したものと言えそうだ。当時の政治指導者の国際感覚や内政に対するバランス感覚がすごい。その明治維新という偉業が制度化・合理化され、天皇大権の絶対視と軍の政治介入が進んでいくというその後の展開は、明治維新に胎蔵されていたものなのかどうかについて、著者は否定的だが、そこは色々な意見があるところだろう。

  • 明治維新を問い直すような論調の書籍を目にする。それはそれで面白いが、一般人にとってはどこまで本筋で、どのくらい異端なのか分からなくなることもしばしば。
    その点で、本書は政治学者の北岡教授が自身で改めて調べ直した江戸終盤から明治中期までの歴史を綴ったもの。楽しみながら読める本ではないが、改めてこの時代を読み直すのにピッタリだ。
    日本中から有意な人材を集め、国家のために正しきことをやろう歴史の大転換を成し遂げた。日本の歴史の中でも希有な時代だったのだ、と改めて思った。

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著者プロフィール

国際協力機構(JICA)特別顧問、東京大学名誉教授、立教大学名誉教授

「2023年 『日本陸軍と大陸政策 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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