国家・企業・通貨: グローバリズムの不都合な未来 (新潮選書)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106038525

作品紹介・あらすじ

中間層が喰われる! 世界で進む「戦慄のシナリオ」とは――。19世紀に誕生した国民国家・株式会社・中央銀行の3点セット。しかし、資本移動を伴うグローバリズムと、AIやブロックチェーンなどのテクノロジーが、3者のバランスを突き崩し、中間層を蝕み始めた。超低金利、株主優遇、財政赤字、タックスヘイブン、GAFA、リブラ、MMT……悪循環に陥った資本主義を再生する道を探る。

感想・レビュー・書評

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  • 金融の世界で起こりつつあること、
    ここに至るまでの経緯、理由
    勉強になります。

  • p31 1620年の終わり ピルグリム・ファーザーズ 先住民グループのリーダーだったマサソイトに助けられた
    彼らが秋の収穫期を先住民たちと祝ったのが感謝祭
    マサソイトはマサチューセッツという名前に残る

    p81 1885 日銀が発券業務 裏付けは金でなく銀 金とリンクさせる自信がなかった

    p192 時間の希少性、関心の欠乏
    関心の欠乏が生じると、企業による関心の奪い合いが起こる

  • 現在の国家財政、中央銀行、株式会社は19世紀に仕組みが整えられた、
    それ以降洗練され、通貨で言えば兌換紙幣が不換紙幣になり、中央銀行の独立性が確立された。

    一方20世紀グローバリズムが進展し、前半では福祉国家を目指した先進国もグローバリズムの進展により企業誘致競争で税金の引き下げ競争に陥り、中央銀行も金融政策は本来は将来の先取りしかできないことから、金融緩和を進めることによってピケティの「r>g」の立役者となってしまっている。(ここがこの著作の肝である)

    FTPLの物価決定式は以下になり、黒田日銀の緩和策は 市中保有国債を現在の通貨で買い上げただけで変えておらず物価にインパクトを与えなかった。
    現在の物価水準= (市中保有国債の現在価値 +現在の通貨発行額)/ 税収など政府における将来収入の現在価値

  • ホントにこれからの社会はどうなるんだろうか…著者の話題の引き出しの多さに舌を巻きました。
    本邦、マイナンバーカードでビッグブラザー目指してるようですが、無理無理、

  • 通貨と国家の未来について書かれている。名著。

  • 競争の海に落ちる国家、人々の心に忍び込むテック企業、漂う通貨と中央銀行という切り口で、現代の姿を掘り出す。こんな流行に敏感、柔らか頭な70才のおじいちゃんになりたいものよ。

  • これまでの著者の本は、貨幣・中央銀行をずっとテーマにしていたが、本書は国家、株式会社、通貨・中央銀行を題材にして、国家と企業、グローバル経済・国家など様々な切り口で、歴史と今の課題を語っている
    それぞれのポイントは著者の博学が感じられて、興味深く読んだが、少し散漫な感じがしたのが残念。雑誌の投稿をまとめたものかと思い、奥書を見てしまったほど。
    それでも、サブタイトルの「グローバリズムの不都合な真実」に囚われず、それぞれの章を独立したものと読んでいくだけでも、十分に価値ある一冊。

  • 世界は“不都合な未来”に向かっている。グローバリズムとデジタル化の進展がもたらす、「国家・企業・通貨」の変容について考察した書籍。

    かつて、国家は企業の支配者だった。だが、グローバリズムの時代に入り、力関係は覆くつがえる。企業が活動する国を自由に選べるようになると、国家は企業を呼び込むため、税率を引き下げる「底辺への競争」を始めざるを得なくなった。

    今日、グローバル企業の経営者や投資家などの富者にとって、国境の壁はないも同然で、彼らは所得税率が低い国へ移動する。国家も富者に選ばれるよう、個人所得税の最高税率を引き下げている。これも、富者に媚こびを売る「底辺への競争」。

    先進各国の個人所得税の最高税率は大幅に下がった。だが、GDP対比で見た個人所得税収は、数十年、大きく動いていない。これは、中低所得層の税負担の増大を意味する。

    今日、多くの国の社会保障負担は、所得スライド負担が基本で、しかも徴収には上限がある。例えば日本では、年間所得が何億円という高所得者でも保険料は年間200万円強。すなわち、多くの国の社会保障制度は、富者が貧者を支えるのではなく、中間層が自分で自分を支える仕組みに過ぎない。

    人が持つ時間は有限。この「時間の希少性」のため、特定の検索エンジンやSNSを使い慣れると、簡単に他に変えようとしなくなる。その結果、IT企業は膨大な履歴データを一手に握ることができ、人々の心と生活に影響力を及ぼしている。

    2019年、フェイスブックは仮想通貨「リブラ」の計画を発表した。リブラの本質は円やドルなどの法定通貨と同様で、中央銀行による通貨発行独占の足もとをすくう動きと言える。

  • なかなか骨太な本…濃厚…


    国民国家、株式会社企業、通貨発行体(中央銀行)の誕生

    あって当たり前だと思う自分がいる不思議さ

    19世紀 フランス革命の人権宣言には女性を国家の主体として認めていなかった。

    国民国家→国家の本質は領域内にいる人々
    国家=王家の時代

    王様がいない→財産の収奪がない、所有権の成立。→蓄財へ
    アジアには皇帝がいた

    国軍に参加できるというのが一つの権利、国家の所属意識を得られる機会だった時代も

    デヴィッドリカード 比較優位論・自由貿易を支持する自明の原理
    しかしこれは国の分岐を招いた説.(収益性の高い企業はそれを投資に回し成長と回収のサイクル)


    グローバル企業の台頭,グローバリズムー>国家は企業を招致したいー>各国の減税競争(底辺への競争)ー>そのツケは一般市民が支払うことに.グローバル企業及び株主はウハウハな裏で.

    リアル財(鉄鋼,綿花,種子etc)に対するデジタル財.後者は無限の再利用が可能.一旦独占して仕舞えば油田や鉱山を抑えるどころでは無い利益の源泉を得られる

    ハーバート・A・サイモン 「情報を持つものが持たないものに優位を持つ時代から情報を持つものが持たないものにすりよって自分のコンテンツを消費してもらう時代が来る」 ー>先見の明すぎる
    事実,今は人々の余暇・関心の奪い合いの時代

    伝統的メディア→編集方針(ステークホルダー,イデオロギーetc)に沿う真実を提供
    非伝統的インターネットメディアー>民衆の関心にそう(関心が一番”心地いいと感じる”)真実を提供

    情報の繭:人は欲しい情報にしか耳を傾けない.同質な意見や主義を持つ人で群れ視野はどんどん狭くなっていく.

    BTCのような仮想通貨=分散化された記録維持管理システム

    ネガティブケイパビリティ:
    不確実なものや未解決のものを受容する能力を記述した言葉。 日本語訳は定まっておらず、「消極的能力」「消極的受容力」「否定的能力」など数多くの訳語が存在する。

    著者最後にPoSを推している?確かに所有者に還元する仕組みがありその経済圏が健全であれば人は集まる.経済圏同士でいい意味での競争を促す

    地獄への道は善意で満ち溢れている

  • 正直読みにくい。
    (字も小さい)
    が、「お金」が歩んだ近代から現代までの歴史を整理してくれていて学びが多いと思った。

    読みにくくて斜めに読んだところが少なくないのでもう一度読んでみたい。

    (追記)
    2回目はなぜかめちゃくちゃ面白かった。
    ラッファーという人が言ったという
    「所得税率がゼロだと、税収はゼロになるが、税率が100%だと(誰も働かなくなるので)やはり税率はゼロになる。だから、最適な税収はその中間にあるはずで、したがって所得税率の引き下げが税収増につながることもある」
    というのは誰かに聞かせてあげたい話。

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著者プロフィール

早稲田大学大学院経営管理研究科教授
1974 年東京大学経済学部卒業。日本銀行に入行し、主として金融制度全般の企画調整を担当。ニューヨーク駐在員、金融研究所などを経て、1998 年から早稲田大学教授。国際会計基準委員会委員や政府の各種委員会の座長や委員を歴任。

「2020年 『ポストコロナの資本主義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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