兵隊たちの陸軍史 (新潮選書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (434ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106038389

作品紹介・あらすじ

私たちは、あの戦争を戦った生身の兵士たちのことを知らない――。巨大な軍隊組織で、ただ一個の兵隊だった祖父や曾祖父たち。入営から除隊まで、彼らはどんな日々を生き、戦ったのか。教練、食事、給与、戦闘行動の実態、知られざる兵隊の感情とは。中国大陸で六年余の軍務を経て、戦後直木賞を受賞した著者が、体験と豊富な資料をまじえ、露悪も虚飾も避けて伝える「戦争と兵隊」の実像。

感想・レビュー・書評

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  • チョイとジャップarmyを美化しすぎ感は歪めないけど、相当実情がわかる良書。
    いや、でもジャップを庇いすぎです、伊藤さん。
    つうか、伊藤さん結構中国人disってますけど、土足で上がり込んで蹂躙しまくったのジャップですから…

  • 旧陸軍の兵営生活にここまで詳しい本は他にあまりないのではないでしょうか。とても参考になりました。折を見て再読予定です。

  • 筆者は従軍経験のある方で、兵士の日常生活や心情などがわかりました。軍隊生活の中では仲間意識がないとやっていけない。上層部の無茶な作戦は、前線の兵士が購うことになる。ゆえに陸大出身者は死傷率が異様に低い。ほとんどイジメに近い旧軍の教育も、これに耐えきれない兵士は戦場ですぐに死ぬ可能性が高い。厳しいのは内務であって、前線ではわりと自由が認められる、などなど。

    日本軍が一般社会のことを「地方人」と呼んで、隔絶された存在になっておかしくなっていった。これは自衛隊の在り方を確認する上でも役立つかと。軍がどれだけ開かれているかがバロメーター。

  • 軍隊生活の不合理性が、戦死を回避するための一方策であったことに、やや理解が及んだ。
    存在自身は、不合理極まりないが、その中で死と直面しながらの兵の心情は、理解できるものだった。

  • 東2法経図・6F開架:396A/I89h//K

  • なぜ「お国のため」には"お"が付くのか。これは丁寧な表現というよりは、軍隊と戦争という逃れられない煉獄の中で、兵士それぞれが家族のために、あるいは恋人のためにと、自分なりに置き換えた大事なものが、お国という言葉に籠もっているのだと言う。そういった機微は兵隊にしか分かるものではなく、著者が実体験あるいは見聞した、これら旧帝国陸軍での生活と戦場での、兵士の心のひだの部分に触れられるような回想や挿話は、一見遠い別世界ながら、その実多くの近親者が経た身近な過去でもあり、同じ人間だったのだという感慨をもたらしてくれる。陰惨苛酷な隊内のしごきも、更に激烈な戦場で生き延びる上では意味があったとある程度肯定する箇所などは、次元は異なるものの、(少なくなったものの)今日の体育会系の伝統に通じる面もあり、また異常に規律を尊び不条理を術なく受け入れる従属性などは、学校教育や日本企業の文化に健在と言える。軍隊経験者はほぼいなくなりつつあるが、その影響が消え去るほどには、実はまだ充分な時間は経っていない。帝国陸軍はまだ生きている。

  •  陸軍の「兵隊の生活史」。これまで読んだ日本軍関連の本とは異なる不思議な読後感だ。兵士からの視点を主に、私的制裁、軍隊内部又は地元住民との小さな心の交流、小さな娯楽、略奪・強姦、慰安婦、英雄、戦死、これらが色とりどりに、悲惨さも崇高さも殊更煽ることなく出てくる。この読後感は、著者が軍隊や戦争体験を善悪以前の現実の生活として描いているからだろうか。
     もっとも著者も軍隊を「運隊」とも表現し、自らを終戦時に有利な地点(上海郊外)にいたと書いているとおり、本書が日本軍の全体像とまでは言えない。それでも軍の一部の、ただし現実の「生活史」がよく伝わってくる。
     著者が「叙事詩的な文学性すら感じる」軍人勅諭と「愚書」戦陣訓を対比させる一節にも目を引かれた。現代からはどちらも同じように見えるのだが。満州事変を間に挟み、軍国主義が強まると共に前線でも余裕がなくなってくる日中戦争と、兵士が「精兵」だったそれ以前を著者は区別しているようでもある。

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