- Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106038334
作品紹介・あらすじ
「材料科学」の視点で描く驚異のグローバル・ヒストリー! 金、鉄、紙、絹、陶磁器、コラーゲン、ゴム、プラスチック、アルミニウム、シリコン……「材料科学」の視点から、文明に革新を起こしてきた12の新素材の物語を描く。「鉄器時代」から「メタマテリアル時代」へと進化を遂げた人類を待ち受ける未来とは――ベストセラー『炭素文明論』に続く大興奮のポピュラー・サイエンス。
感想・レビュー・書評
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簡単過ぎず、難し過ぎず。
前著『炭素文明論』は「世界史×科学」の分野があることを指し示してくれた。日常に潜むSTEMに嫌気がさした時、自分が『炭素文明論』を読んだという事実を思い出すと幾分か心が落ち着く。
本書も例外ではなく、大当たり!
世界史上に見られる新素材12種を順番に追い、解説にも簡単と難解の落差が見られない。(つまり全編通して分かりやすい) メモ代わりにしたいところだが、ここに全12種は収まりきらんのでいつもながら数点ピックアップ…
金:貨幣から今やスマホにまで搭載されており、その輝きは「太陽の色に似ている」とは…思わず溜息が漏れた。
相対的に白金(プラチナ)が歴史上持て囃されなかった理由も明らかになる。(20世紀になってようやくカルティエが、貴金属として白金をジュエリーに採用したんだとか)
鉄:世界史の授業でもお馴染みのキングオブ金属。(ヒッタイト…取り敢えず懐かしい笑) 地球上に沢山存在するゆえに民衆も簡単に手にすることが出来たという鉄。それを更に強化した鋼や錆びなくしたステンレスに変えた叡智に改めて感服する。それで人類が繁栄すると早くに分かっていたら、何百年も錬金術に勤しむ必要なんてなかったろうに。(浅い見解…)
炭酸カルシウム:「千両役者」とは、これいかに⁉︎ なるほど、チョークにセメント…、果ては真珠まで⁉︎ セメントと同じ素材を使ったらそりゃ丈夫な貝殻が出来るよね…中身の真珠もそれとは、本当に何にでも化ける。。鮮やかに飛び六方を踏む役者を見送った後みたいに、章が終わっても呆然としていた。
シリコン:別名「ケイ素」。炭素とは兄弟元素…周期表の並びもテキトーではなかったか笑(思えば常識) 炭素と違って生物とは結びつけない分、材料として役に立ってくれている。シリコンバレー誕生秘話も何だか熱量を感じて面白かった。
メタマテリアル(超越物質):初耳…上手く活用できれば「透明マント」の開発も夢ではないらしい。
当時の段階では作り出せない未来の材料・製品を夢見た過去の人達みたいに、自分達も「メタマテリアル」の先にある透明マントを羨望しているのかも。
佐藤氏による「世界史×科学」は、今日もこうして一読者の中に夢ある反応を生み出したのでした。(つづく。つづける!)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
時代は一人の天才による発明や思想、戦争のような外圧などにより大きく変転する。イノベーションにより歴史が変わり、青銅器文明、鉄器文明など象徴的技術で時代を区切る。まさに、初期の世界史は、素材の歴史だったのだ。
雑学では無い、テーマ毎にきちんと整理された知識が学べる。初耳な事も多いし、確かにと合点する論拠も多い。一口に素材と言っても金属類だけでは無い。寒冷期を生き延びる為に毛皮が重要。毛皮はなめす必要があり、加工には唾液から、柿渋などのタンニンを用いるなど、ここでも技術の発展があった。死活問題として、毛皮を扱えた者だけが生存できたという超重要なターニングポイントでもあったのだ。
これだけではないが、もう一つ面白いなと思ったのは紙の話。これが東西の芸術作品の歴史にも影響したのだという。先に紙を使いこなした東洋では、書道や水墨画など紙を画材とする芸術が発展。ヨーロッパにおける紙の大量生産は木材からのパルプ製造法を発明を待つ必要があり、西洋の芸術は彫刻が重要な位置を占めた。
斯様に社会には技術との因果関係があり、それにより随分様相が異なってくる。現代で言えば、インターネットやスマホだろうか。スマホ以前とスマホ以降では、道でヒヤリとする頻度や電車の乗客の首の角度が違う。あらゆる情報が表に出されるせいで、検索に引っかからない店は無きものにされてしまう。これが続くとどういう世界を迎えていくのか。まさに時代の転換点にいるのかも知れないし、いつの時代もその過渡期だとも言えるかも知れない。 -
<目次>
はじめに 「新素材」が歴史を動かす
第1章 人類史を駆動した黄金の輝き~金
第2章 一万年を生きた材料~陶磁器
第3章 動物が生み出した最高傑作~コラーゲン
第4章 文明を作った材料の王~鉄
第5章 文化を伝播するメディアの王者~紙(セルロース)
第6章 多彩な顔を持つ千両役者~炭酸カルシウム
第7章 帝国を紡ぎだした材料~絹(フィブロイン)
第8章 世界を縮めた物質~ゴム(ポリイソプレン)
第9章 イノベーションを加速させる材料~磁石
第10章 「軽い金属」の奇跡~アルミニウム
第11章 変幻自在の万能材料~プラスチック
第12章 無機世界の旗頭~シリコン
終章 AIが左右する「材料科学」競争のゆくえ
<内容>
佐藤健一郎の科学史のシリーズ。これは「材料化学」の世界。「素材」をクローズアップしたもの。周期律表の秘密(縦系列は性質が似ている)とか、地球には鉄よりもアルミのほうが多く存在している(それも倍近く)とか、雑学的な話も面白い。こうした物質が世界史を動かしていたことは、とても興味深いものだ。
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【2021年度「教職員から本学学生に推薦する図書」による紹介】
川村悟史さんの推薦図書です。
<推薦理由>
材料によって作り上げられた我ら人類文明のグローバルヒストリー.金・陶磁器・コラーゲン・鉄・紙・炭酸カルシウム・絹・ゴム・磁石・アルミニウム・プラスチック・シリコンの12種類の材料をカギに人類史を描く.まさに文理融合,教養書としてお勧めです.
図書館の所蔵状況はこちらから確認できます!
https://mcatalog.lib.muroran-it.ac.jp/webopac/TW00365974 -
私は化学がとにかく苦手なのだが、本書は根気強く楽しく、歴史に絡めて説明されているので、とてもスムーズに読み進められた。
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文明を生み、人類を豊かにした様々な素材として、鉄やアルミなどの金属、コラーゲンやセルロース(紙)などの自然素材、陶磁器やゴムなど天然素材に人間が加工を加えたもの、そして、プラスチックやシリコーンなどの人口素材を取り上げ、その歴史や特性・用途について分かりやすく解説されている。サイエンスライターらしく話題も豊富で、読んでいて飽きないし面白い。
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大学院の授業(材料)の課題図書。
材料は専門でないしあまり興味もなかったので読み始めるのに抵抗があったが、雑学的な話が多くとても読みやすかった。 -
[墨田区図書館]
思っていたよりも、豆知識本みたいな作りで面白かった。
同著者の「世界史を変えた薬」を読んだ後だったので、文調も分かっていただけに読み流ししやすかった。
・鉄→韃靼人(タタール)→たたら製鉄→タタルスタン共和国
Painting theForcebridge
・ナノセルロース→セルロースファイバー
・真珠産地は世界に5箇所、うち2箇所は湾、マーガレットやマーガリン、匁は真珠の重さだけには今も国際標準
・桑原桑原、日本書紀頭部から蚕、渋沢栄一、桑畑記号の廃止、スパイダーシルク
・マッキントッシュ、ペニー・レイン
・磁石に種類?俵万智の父、強力なのはネオジム?
・アルミ、ホールとポール・エルー産まれと死去、発明に名前。
・プラスティック、ティベリウスは職人を殺した、プラスティックとは人工的な高分子、だから可溶性が低い、マイクロプラスティの話も、2018年だからか、
・シリコン、半導体、ドーピング、ケイ素の脳な炭素の脳を追い抜く、HPはシリコンバレー最初の会社 -
本書は、世界に大きな変革をもたらした12の材料(金、陶磁器、コラーゲン、鉄、紙(セルロース)、炭酸カルシウム、絹(フィブロイン)、ゴム(ポリイソプレン)、磁石、アルミニウム、プラスチック、シリコン)を取り上げ、材料が生み出された経緯や歴史との関わりを解説した書。「炭素文明論」の続編。
身の回りのありきたりな材料について、実は知らないことばかり。とても勉強になった。例えば、
「コラーゲンは細胞と細胞の隙間を埋め、互いに貼り合わせる役割をも」ち、「神代のタンパク質のうち、三分の一はコラーゲン」であリ、「植物の生み出した最高の材料がセルロースなら、動物が作り出した最高の材料は、コラーゲン」である、
「純粋な鉄自身は、実は銀白色の柔らかい金属」であり「地球全体でいくとその重量の約三割が鉄」、「陽子二六個、ち中性子三〇個が集まってできた鉄の原子核は、全ての原子核の中で最も安定なものの一つであり、これ以上小さくても大きくても不安定に向かう」、
八世紀から一三世紀にかけて世界最高水準にあったイスラム圏の科学技術力がその後衰退したのは「印刷技術の導入に抵抗したため、知識の普及が阻害された」ため、
「昭和初期には、全畑地面積の四分の一をおいて桑畑が占めていた」ほど依然は養蚕が盛んだった、
アルミニウムは地表における存続度が第三位と豊富なのにも関わらず「金属アルミニウムの歴史はわずか二〇〇年にも満たない」のは、アルミニウムの「酸素との結びつきがあまりに強力であるため」、
「地上を走る車両に革命をもたらした材料がゴムなら、航空機の時代を呼んだ材料はアルミニウムである」、
等は常識として知っていないとなあ、と思った。
そういえば、子供の頃住んでいた地域に桑畑残ってたなあ。時々、上に伸びた枝がバッサリ刈られて丸坊主になってた。あの桑の葉は何処に運ばれてたんだろうか? 桑畑でカミキリ虫を捕まえて遊んだ記憶もある。今や遠い昭和の思い出になってしまった。