未完の西郷隆盛: 日本人はなぜ論じ続けるのか (新潮選書)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106038204

作品紹介・あらすじ

明治維新は「国のかたち」を間違えた――。アジアか西洋か。道徳か経済か。天皇か革命か――日本人はいつも自らの理想とする「国のかたち」を西郷に投影し、「第二の維新」による「もう一つの日本」の実現を求めてきた。福澤諭吉から中江兆民、頭山満、丸山眞男、橋川文三、三島由紀夫、江藤淳、司馬遼太郎まで、近代化の是非を問い続けてきた思想家たちの一五〇年。

感想・レビュー・書評

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  • スゴい⁉️

  • 自分にはまだ早い。
    西郷隆盛について知ってから読むべきだった。

  • 東2法経図・6F開架:289.1A/Sa18s//K

  •  日本思想史研究家が西郷隆盛を読み解く。

     福沢諭吉、中江兆民、頭山満、橋川文三、江藤淳の5人の西郷隆盛観を追っていく。
     どの人物も明治維新の立役者の西郷に明治の革命の反対側の立ち位置を見てるのが興味深い。
     西郷隆盛は政治家として見るとピンと来ないが、思想家として見るともっと人物像が見えてくる気がした。『西郷どん』で西郷像がまだ見えて来ないのはそのためかもしれない。

     西郷隆盛から近代日本のオルタナティブを見つめる一冊。読めば『西郷どん』をより楽しめるようになりそう。

  • 【書誌情報】
    シリーズ名 新潮選書
    装幀:新潮社装幀室 
    発行形態 書籍
    判型 四六判変型
    頁数 270ページ
    ISBN 978-4-10-603820-4
    C-CODE 0395
    ジャンル 日本史
    定価 1,404円

    明治維新は「国のかたち」を間違えた――。
    アジアか西洋か。道徳か経済か。天皇か革命か――日本人はいつも自らの理想とする「国のかたち」を西郷に投影し、「第二の維新」による「もう一つの日本」の実現を求めてきた。福澤諭吉から中江兆民、頭山満、丸山眞男、橋川文三、三島由紀夫、江藤淳、司馬遼太郎まで、近代化の是非を問い続けてきた思想家たちの一五〇年。
    http://www.shinchosha.co.jp/sp/book/603820/


    【目次】
    はじめに

    第一章 情報革命――福澤論吉『丁丑公論』と西南戦争
    1 情報革命の到来
    成島柳北と福地源一郎/西郷と福澤の「危惧」/西郷と福澤のつながり/新聞報道への違和感/大義名分と政府見解の同一視/政府の情報統制とその帰結/「文明の利器」と「文明の精神」/廃藩置県と旧士族の不満/征韓論の挫折/戦争を煽る新聞
    2 世界史的事件としての西南戦争
    『民情一新』と官民の軋轢/後発資本主義国家ロシア/ロシアという先例/ニヒリストという帰結/明治日本との類似性/情報革命がもたらすもの/何を処方すればよいのか

    第二章 ルソー ――中江兆民『民約訳解』と政治的自由
    1 西郷・兆民・ルソー
    西郷伝説と恐露病/「恐露病」の時代/西郷を愛する中江兆民/凡派の豪傑/非凡派の豪傑/「西郷隆盛の反動性と革命性」
    2 経済上の自由放任主義と道徳の解体
    「経済革命」への危機感/普仏戦争の分析/自由主義経済批判/文明社会の姿/経済上の自由と政治上の自由
    3 フランス革命と『社会契約論』
    フランス革命の経過/『社会契約論』の読み方/共同体のつくり方/「君」という訳語
    4 日本社会への処方箋
    日本の時代診察/自由民権の帰結/「浩然の気」/個人道徳と習慣/西郷隆盛の「国家」観

    第三章 アジア――頭山満『大西郷遺訓講評』とテロリズム
    1 西郷隆盛とアジアの匂い
    反転する西郷評価/一九六〇年代と文化大革命/西郷の二重性/『南洲翁遺訓』の文明観/「アジア主義」の特色
    2 玄洋社と有司専制批判
    頭山満の『大西郷遺訓講評』/玄洋社の国権と民権/有司専制批判による統一行動/天皇親政と征韓論/玄洋社の大アジア主義
    3 敬天愛人とテロリズム
    佐藤一斎と「敬天愛人」/敬天愛人が含みもつ「毒」/植木枝盛と西郷の共通性/玄洋社と長崎事件/来島恒喜とテロリズム/「天道是か非か」

    第四章 天皇――橋川文三『西郷隆盛紀行』とヤポネシア論
    1 天皇と革命
    三島由紀夫の西郷論/三島の陽明学論/天皇が担う「文化」/天皇と革命/「西郷」を発見する橋川文三
    2 「菊池源吾」の南島時代
    安政の大獄と入水事件/南島の西郷/ゆらぐ「皇国」観念/島尾敏雄のヤポネシア論/「もう一つの日本」と多様性/「かってゆ騒動」と西郷
    3 ヤポネシアと革命
    島尾敏雄の南島生活/西郷の「奇妙な想念」/吉本隆明の問いかけ/吉本南島論の射程/大嘗祭と聞得大君/西郷と天皇をつなぐ思想

    第五章 戦争――江藤淳『南洲残影』と二つの敗戦
    1 江藤淳の『南洲残影』
    「視察」か「刺殺」か/尋問之筋有之/猪飼の西郷観/丸山眞男が評価した「近代化」への「反逆」/西南戦争と天皇親政/江藤にとっての「文学」/勝海舟への肯定的評価/江藤の政治家像/『海舟余波』から『南洲残影』へ
    2 天皇を超える国家
    天皇を批判する西郷/天皇を超える「国家」/二つの敗戦
    3 文学から見た西南戦争
    明治二〇年の『孝女白菊の歌』/漢詩文の流行が持つ意味/アメリカとは何か/「近代」と日本語の危機/坪内逍遥と二葉亭四迷の挫折/リアリズム文学の限界/夏日激石に見る「近代」/乃木希典の「近代」/二つ目の敗戦――「抜刀隊」の調べ/西南戦争と「近代」/「西郷南洲」という思想

    終章 未完――司馬遼太郎『翔ぶが如く』の問い 
    反近代の偶像/司馬遼太郎からの「問い」/征韓論と革命への嫌悪感/西郷隆盛に、死生観を問う

    あとがき

    主要参考文献

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著者プロフィール

1975年東京都生まれ。東京大学文学部倫理学科卒業。東北大学大学院文学研究科日本思想史専攻博士課程単位取得修了。フランス社会科学高等研究院に留学。文学博士。日本大学危機管理学部教授。専攻は近代日本思想史・日本倫理思想史。
主な著書に『高山樗牛――美とナショナリズム』(論創社)、『ナショナリズムの復権』(ちくま新書)、『違和感の正体』『バッシング論』(ともに新潮新書)、『未完の西郷隆盛――日本人はなぜ論じ続けるのか』(新潮選書)、『維新と敗戦――学びなおし近代日本思想史』(晶文社)、『吉本隆明「共同幻想論」』(NHK100分de名著)、現代語訳と解説に福澤諭吉『文明論之概略』(ビギナーズ日本の思想・角川ソフィア文庫)などがある。

「2020年 『鏡の中のアメリカ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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