世界文学を読みほどく (新潮選書)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106037993

作品紹介・あらすじ

池澤版『世界文学全集』は、ここから始まった! 「世界が変われば小説は変わる」――稀代の読み手にして実作者が、『カラマーゾフの兄弟』『ハックルベリ・フィンの冒険』『百年の孤独』など10大傑作の面白さや世界との関わりを、21世紀の今に生きる人々に向けて語り尽くす。ロングセラーの京大連続講義に国際メルヴィル会議の講演を増補した、文学観・世界観の集大成。

感想・レビュー・書評

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  • 10冊の世界文学と池澤夏樹本人の「静かな大地」について、京都大学文学部での計14回の特別講義に1つの国際会議の基調講演を追加したもの。ひとつひとつの作品への深掘り度合いが凄い!!!スタンダール「パルムの僧院」、トルストイ「アンナ・カレーニナ」、ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」、メルヴィル「白鯨」、ジョイス「ユリシーズ」、マン「魔の山」、フォークナー「アブサロム、アブサロム!」、トウェイン「バックルベリ・フィンの冒険」、ガルシア・マルケス「百年の孤独」、ピンチョン「競売ナンバー49の叫び」。

    読了日・感想を編集

  • 有名な小説を深く掘り下げて解説してくれている本。謎解きそのもので、楽しく、また読みやすく、厚い本だけど、一気に読み終えました。

  • 読んだことのない本の書評なのに面白くて、分厚い割にすらすらと読めた。途中で脱線していく語り口がいかにも講義という感じで面白い。

  • あらすじがかいてある。

  • 講義を受講するつもりで楽しく読みました。恐ろしいことに10作+池澤夏樹さんの『静かな大地』を1作も読んだことはありませんでしたが、大まかにあらすじや書かれた時代背景などを入れて挑みました。と言っても実際に講義でもあらすじに関する説明もあるので、そのまま読んでしまっても問題ないかと。
    10作中5作品が北南米の作品というのもどこか象徴的。音楽も映画もそうですが、カルチャー全般を牽引するのは文学でも、ということなのでしょうか。

    興味深かったのが、南部に関する話。特に『アブサロム、アブサロム!』と『ハックルベリ・フィンの冒険』。



    それから、アメリカという国にはなぜいまだにあれほど銃がたくさんあって、自分の判断、自分たちの判断で人を殺すことが抵抗なく行われるのか。それは、彼らには、法律と倫理、治安、セキュリティーを自前で賄わなければいけなかったという歴史があるからです。つまり世の中の決まり、世間様、お天道様というふうな考え方がない。

    ヨーロッパ人はそんなこと考えもしません。無理に決まっているのは、長い歴史から見てわかっているこら。そこにいきなり走ってしまうあたりが、アメリカという国の、新しさであり、面白さであり、活力であり、問題点なのです。
    第九回 フォークナー『アブサロム、アブサロム!』より

     では当時、黒人は奴隷にしてもいいし売ってもいい、という考え方を支えていたのはどんなひとびとだったか。白人が主となる社会、といえばそうですけれど、実はそれはその中でも特に、貧しい白人=プアホワイトだったのです。

     自分たちは白人であるけれども、貧しい白人であって、何かと不満の多い苦労の多い生活をしている。だから、白人でないくせに裕福に幸せになっている奴が許せない。
    第十回 トウェイン『ハックルベリ・フィンの冒険』より

    あるいは今の時代になってくると、「もう」それだけでは駄目である。いくつかの視点を持ったうえで、ニュースの信頼性を、個々に、勝手に、勘で判断しなければいけない。
    第十四回 総括より



    今も根深い人種差別問題、BLMや大統領選挙やフェイクニュースにも通ずるようなトピックかもしれません。実際、トランプに票を入れるのってどんな人なのかっていうところを考えると、的を得ている部分もあるように思えました。個人の格差が、差別するために作られた人種によって左右される、という点においても。
    また話は変わりますが、最近観た『市民ケーン』や『Mank/マンク』のせいで、フォークナーの作中内のトマス・サトペンを想起させます。愛を知らない生きかたがだぶるというか、まるでその生き様が、人を象る場のようなものが、フレームごと継承されているみたいでした。
    気づきの多い一冊で、最初は堅い感じかと思いましたが全くそんなことはなく楽しい読書の時間というよりかは講義でした。


     それで結局、真犯人が別にいることが明らかになる。あっ、言っちゃった(笑)。
    第五回 ドストエフスキー 『カラマーゾフの兄弟』より

    お茶目か。

  • 文学への入口に最適。

  • 読み終えてまず、「この読書体験はなんだったんだろう」という、判然としない感覚がある。

    本書では時代・国・言葉・人々の世界観の変化を小説がどのように表現してきたのかを解説され、色んな角度から対象を見た時に一つの作品が形成される、言わばキュビズム的な構成になっている。

    判然としない感覚は、奇しくもキュビズムの絵画に接した時の感覚に非常に近い。

    何らかの大きなストーリーに自分を当てはめて生きることが出来ず、自分の中の小さな世界を生きることしか出来ない我々は、何に向かっていけばいいのか?

    文学を学んだつもりが、不気味な哲学を突きつけられた。いい意味で。

    話は変われど、池澤夏樹さんの脱線話が本当に面白いし勉強になる。小中学校で記憶に残ってる先生のほとんどが脱線話を延々とする人で、「脱線力」ってのは大事だなと思う。この「脱線力」はある意味で、「教養」とも言えるだろう。

  • 世界文学の名作10作品をどう読むかという解説。
    それぞれの作品が文学史上においてどのような意義を持っているか、という視点が印象的だった。
    特に、ガルシアマルケスの百年の孤独の解説。
    その面白さを言い表すのが難しい作品だと思っていたが、
    民話、フラクタル、などの切り口から一つの作品の読み解き方を提示してくれた。読んだことのない作品は読みたくなり、読んだことのある作品はもう一度読みたくなること間違いなし。

  • 世界は細分化して全体像は描けない。
    そういう世界になっていることを意識して色んな物事を見ていきたいなぁと、今さら思った次第。
    ここで紹介された文学読んでみます。

  • 分厚くて読むの大変そうだなーっと思っていたけど、いざ実際に読んでみると意外とあっさり読むことが出来たw1つの小説論として勉強になる。

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著者プロフィール

1945年生まれ。作家・詩人。88年『スティル・ライフ』で芥川賞、93年『マシアス・ギリの失脚』で谷崎潤一郎賞、2010年「池澤夏樹=個人編集 世界文学全集」で毎日出版文化賞、11年朝日賞、ほか多数受賞。他の著書に『カデナ』『砂浜に坐り込んだ船』『キトラ・ボックス』など。

「2020年 『【一括購入特典つき】池澤夏樹=個人編集 日本文学全集【全30巻】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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