弱者の戦略 (新潮選書)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (171ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106037528

作品紹介・あらすじ

強い者が勝つのではない。勝った者が強いのである。海洋全蒸発や全球凍結、巨大隕石の衝突など、地球環境が激変しても多くの生命はしぶとく生き残り続けてきた。そして今でも、強者ではない動植物などはあらゆる方法で進化し続けている。群れる、メスを装う、他者に化ける、動かない、目立つ、時間をずらす、早死にするなど、ニッチを求めた弱者の驚くべき生存戦略の数々。

感想・レビュー・書評

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  • 植物学者の稲垣栄洋先生の著作です。

    稲垣先生の著作を何冊か読ませて頂きましたが、どれも植物学研究から派生したありとあらゆる生物に関する溢れるような知識が、少しだけ専門的な内容も含めて、人間の世界に様々に当てはめられて解説されています。専門的でありながら素人にもとても分かりやすい内容です。

    大自然という弱肉強食の世界における厳しい法則と調和の中では、決して一番強い者が全てを得るわけではなく、弱者には弱者の賢い生き残りの戦略があり、その具体例が生命力に溢れて、かつ奇想天外でとても面白い本です。

    タイトルから、自身や自身の所属する組織が、強い人や大企業と張り合う時のヒントを探して読む方もおられると思います。
    そのヒントも、たくさんの生物の生き残り戦略の中に、見つかるかもしれません。

    たとえば、こんな感じの事がたくさん書かれています。

    イネ科の植物
    食うか食われるかの弱肉強食の関係の中で、食べられるものが弱いとすれば、もっとも弱い存在は植物だろう。多くの生き物が植物をエサにしていて、植物は食べられる一方なのである。草食動物はもちろん、小さな虫けらさえも、植物をエサにしている。。。。それでは、植物はなんの抵抗もできないまま、食べられるに任せるより他ないのだろうか。

    草食動物に食べられることによって進化した植物のひとつがイネ科植物である。
    通常の植物は成長点が茎の先端にある。こうして細胞分裂した新しい細胞を上へ上へと積み上げていくのだ。しかしそれでは草食動物に茎の先端を食べられてしまうと、成長が止まってしまう。そこでイネ科植物は、全く逆の発想で成長する仕組みを身につけた。それは成長点を下に配置することである。イネ科植物の成長点は株元にある。。。

    また、こんなストーリーもある。

    同じ場所を棲み分ける-草原の草を食べる動物について

    アフリカのサバンナには様々な草食動物がいる。シマウマは草原の草を食べている。キリンは地面に生える草ではなく、高いところにある木の葉を食べている。(同じ場所に生息しながら)争わないようにエサ場を分けているのである。

    ウマの仲間のシマウマは草の先端を食べる。次にウシの仲間のヌーはその下の草の茎や葉を食べる。シカの仲間のトムソンガゼルは、地面に近い背丈の低い部分を食べている。こうしてサバンナの草食動物も、食べる部分をずらして棲み分けているのである。

    などなど。

    こういった自然界の生き残りや共存戦略をいくつか知ると、散歩で出会う植物や昆虫を見つめる気持ちさえも変わってくる気がします。

    得た知識で目に映るものの姿が違って見える、楽しい読書です。

  • 書評・エッセイバックナンバー | 波 -E magazine Nami-|Shincho LIVE!(新潮ライブ!)| 新潮社のデジタルコンテンツライブラリー
    https://www.shincho-live.jp/ebook/nami/2014/07/201407_20.php

    弱者が強者に勝つ「たった一つの戦略」…「雑草」はこうして生き残った(稲垣 栄洋) | マネー現代 | 講談社
    https://gendai.ismedia.jp/articles/-/76313

    稲垣栄洋 『弱者の戦略』 | 新潮社
    https://www.shinchosha.co.jp/book/603752/

  • 食物連鎖の下位にいる生物は擬態で敵を欺くということは知っていたが、
    同じ種属の中でもそのようなことが行われていることを初めて知った。
    それは体が小さくて弱い生物が遺伝子を残すための戦略だ。
    暗闇で息を潜めて待ち構え、強いオスの鳴き声に引き寄せられたメスを横取りしたり、
    メスに擬態して強いオスを油断させ、その隙にメスに近づいたり。
    移動することができない植物も、鳥や昆虫に種を運んでもらうために、
    甘い蜜や木の実を用意する。まさに戦略である。

    生物が自分の遺伝子を次世代に繋ごうとする、果てしない努力。
    それはビジネスや人間の生き方にも通じるものがあり、
    したたかで力強く、いじらしささえ感じた。

    • 夢で逢えたら...さん
      まっき〜♪さん、こちらこそいつもありがとうございます。

      そうなんです!
      かよわい生き物がこんなに(いい意味で)したたかで、
      自分の...
      まっき〜♪さん、こちらこそいつもありがとうございます。

      そうなんです!
      かよわい生き物がこんなに(いい意味で)したたかで、
      自分の遺伝子を残そうとする様に、いろんなことを重ね合わせて考えさせられました。

      面白いのでオススメです♪
      コメントありがとうございました。

      2016/03/01
  • 強い者が勝つのではない。勝った者が強いのである。まさにその通り。さまざまな生物が生き残るためにどのように進化していったのか、ニッチな場所を求めて行ったのかがわかる。実生活、特にビジネスには各生物の戦略が活きるのではないかと感じた。

    1番強い者は、自分の弱さを忘れない者だ。この西洋の諺が引用してあったが、印象的である。

  • タイトルに興味を持った。弱者でも勝ち抜いていく方法があるのか、あるのならぜひ参考にしてみたいと思って読み始めた。戦を略すこと、土俵・視点・発想をズラすことで、オンリー1=特定分野のナンバー1=希少価値の創出に繋がると勉強になった。

  • 読みやすく生存戦略を考える切っ掛けに。

  • 明らかに日本の家紋の方がシンボル姓が高い。マンダラパワーのようなものが窺える。また西洋が特別なものに価値を感じるのに対し、日本はありふれたものに眼差しを注(そそ)いだ。
    https://sessendo.blogspot.com/2019/08/blog-post_39.html

  • 生物界における平均は子孫を残すことができないという点に、まさに自分が物事に取り組む時の姿勢が問われているように思えた。

  • サイエンス

  • vol.283 生物界の「おきて」から戦略を学ぶ!本当の強さとは何か?http://www.shirayu.com/news/2014/

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著者プロフィール

稲垣 栄洋(いながき・ひでひろ):1968年静岡市生まれ。岡山大学大学院農学研究科修了。農学博士。専攻は雑草生態学。農林水産省、静岡県農林技術研究所等を経て、静岡大学大学院教授。農業研究に携わる傍ら、雑草や昆虫など身近な生き物に関する記述や講演を行っている。著書に、『身近な雑草の愉快な生きかた』『身近な野菜のなるほど観察録』『身近な虫たちの華麗な生きかた』『身近な野の草 日本のこころ』(ちくま文庫)、『植物はなぜ動かないのか』『雑草はなぜそこに生えているのか』『イネという不思議な植物』『はずれ者が進化をつくる』『ナマケモノは、なぜ怠けるのか』(ちくまプリマー新書)、『たたかう植物』(ちくま新書)など多数。

「2023年 『身近な植物の賢い生きかた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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