- Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106036668
作品紹介・あらすじ
格差と貧困、通貨危機、バブル、デフレ、そしてハイパーインフレ…いまの貨幣には何か本質的な欠陥があるのではないか。四千年の経済史から、「右肩上がりの成長を前提としたシステム」の限界に鋭く迫るスリリングな論考。果たして、マイナス成長時代を生き抜く処方箋はあるのか?日銀を飛び出した異色の経済学者が辿り着いた「貨幣多様化論」。
感想・レビュー・書評
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人類史の中で貨幣システムがどのように出来上がったのか、そして、今の中央銀行による金融政策やシニョレッジ(通貨発行益)が、どのような時代背景のもとで可能になったかを、興味深く読めるようにまとめてくれている本。
「我々の通貨制度は成長とインフレを前提にしている」という主張には驚きを感じた。
ぐんぐん読み進められる一方で、ちゃんと理解するには骨が折れそうな本だという印象は、先日読んだ「金融政策に未来はあるか」と共通する。
余談ながら、各所に出てくる喩えなどから、著者の岩村さんの「知識人」的空気を感じる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
貨幣は、価値の乗り物。
貨幣の進化
パンの実、美しい貝殻、貴金属、兌換紙幣、不換紙幣。
自然利子率=お金の利子ではなく、モノの利子=モノを貸し借りした時に一年後にどのくらい増えたら文句がないか。
シニョレッジ=鑑定料=貨幣発行権=シニョールとは領主のこと。
旧約聖書では利子を禁じている。利子は神の時間が産んだモノ。ただし異教徒への貸付はとっても構わない。=ユダヤ教徒に金貸しが多いのは、異教徒が多いから。ただしリスク・プレミアムの部分はよい=インテレッセ=インタレストの語源。
初穂料は、種籾のお礼としての利子と同じ。
江戸時代はゼロ成長だったため、時々徳政令でリセットしないと、偏った社会が収まらない。
ゲゼルのスタンプ付き貨幣=現金にマイナス金利をつけることができる。
自然利子率は資本の限界効率で決まる。
レンテンマルクの奇跡=5日間でインフレが収まり、その後はワイマールの黄金の日々、とよばれる繁栄があった。
フランスではポワンカレの奇跡=為替相場を操作しておいてフラン安のときに新平価で金兌換に復帰した。ポワンカレ予測のポワンカレは従兄弟同士。
日本とイギリスは、対戦前の平価で金兌換に復帰。しかし高金利にせざるをえなかった。
アメリカはロアリングトゥエンティーズ=雄叫びの20年代=1920年だいのアメリカは世界の経済大国になった。
高速道路、映画、ラジオ、電話、水道、T型フォードなど。
暗黒の木曜日で、イギリスと日本に通貨売り圧力。
金兌換離脱。最後にフランスも離脱してブロック経済化。ブロックの拡大競争が第2次大戦に。
プレトンウッズ体制では、金と交換できるのは通貨当局だけ。
トリフィンジレンマ=基軸通貨であるためには信任が必要。しかし国際決済に使うためには十分な通貨が供給されなければならず、国際収支は赤字になるはず。プレトンウッズ体制は矛盾がある。
BISは第一次世界大戦後のドイツの賠償金の受払機関として発足、BIS規制とは、実質的にBISが会議室を用意した会議、といった程度のもの。
パンコールとSDRの違い=パンコールは決済のために貸与されたもの。SDRは与えられたもの。
ドイツのハイパーインフレは、インフレというより貨幣崩壊のようなもの。
日本の戦後インフレは、凍結されていた預貯金が一斉に不足する生活物質に向かったため。通貨の信任が失われたわけではないから、貨幣崩壊ではない。
ドッジ・ライン=IMFの政策と似ている。
朝鮮戦争の特需。
スターリン暴落。
高度成長。
民生財生産設備は破壊されたが、資本財生産設備は優先的に疎開していたため、温存されていた。
1ドル360円は最初はきつかったが、だんだん楽になってきた。最初は国際収支の天井に成長を抑えられた。
現代の貨幣は、政府への信頼が貨幣価値をつなぎとめている。
穴をほって埋める公共事業でも景気対策になるか。=ヘリコプターマネーが有効か、と本質は同じ。お金をばらまいたあと、それを人々がどう判断するか。貨幣錯覚がどう働くか。
貨幣のネットワーク効果。一般受容性。=統合のベクトル
離散のベクトル=マイレージ、ポイントカードなど。
ハイエクの貨幣発行自由化論。貨幣発行にも信用創造の競争をさせる。 -
貨幣や通貨が素人の人にもわかりやすく解説されている良書だと思いました。ただ一つ文句を言うとしたら、第1章の架空の島の物語は質が低い。私は個人的に、このくだりは不必要かつ本の水準を落としていると思いました。そして第2章から金本位制への道が示され、第3章ではついに貨幣の価値が金から離れて、変動相場制の通貨システムへといたる歴史が説明されていました。貨幣の価値が金という実態から離れても問題なく流通した背景には、その貨幣を発行している政府に対する信頼があるからです。そして第4章では、我々の経済の前提が変化しつつあること、成長ではなく横ばいあるいは収縮が当たり前になる世界においては、これまでのような「インフレとプラス成長を前提にした貨幣制度」は修正すべきという主張がなされます。
素人的に納得感があったのは、インフレターゲットはインフレ時にこそ有効な策であって、デフレ時にはいわゆるシルビオ・ゲゼルが提唱した「減価する貨幣」つまりマイナス金利が付く貨幣制度を導入することでデフレを制御できるのだ、という主張でした。ゲゼル型貨幣は管理が極めて複雑になりますが、デジタル化が進んでいる社会においては実現可能であること、またさらにいえば減価させるだけでなく、いざとなれば増価させることもできるような「全天候型貨幣」を生み出すべきという主張は興味深く感じました。思考実験という意味でも頭の体操になりますし、正しい/正しくないという軸からではなく、社会の前提が変わりつつある時代の貨幣はどうあるべきか、という問いを考える意味で多くの気づきがありました。 -
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貨幣とはそもそも、という話。大学教養レベルでしょうか。
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貨幣の仕組みと歴史が良く分かる。個人的には金ドル本位制の説明が凄く腹落ちした。
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自分の歴史観の狭さを知ることができる一冊。今後のあり方について考えさせられる良書。
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わかりやすく書いていると思うが,難しかった。もっと金融のことを理解して再読しようかと思う。
流動性の罠の状態にあるとして金融政策に限界があるとしたら,保有期間を付けた紙幣の流通しか対策はないのだろうか。自分には未知の世界すぎてわからなかった。かといって財政政策に頼るわけにもいかないし。。。
とりあえず理解できていないので,再読したい。 -
日銀出身者の本は変に感情的なところがなく落ち着いて読めるのがいいところだと思う。金融政策に過剰な期待を寄せる向きには「日本だけがデフレで国益を目減りさせている、早くデフレを止めろ!」と息巻く者が多いが、本書は冷静にデフレが遅かれ早かれ日本だけの問題ではなくなることを指摘している。日本は特殊なのではなくフロンティアを走っているに過ぎないということだろう。また「自然デフレ率」を前提に最適システムを模索することを示唆する辺りは、アベノミクスを経た今読んでも全く色褪せたところを感じさせない。逆に言えば、本書でも繰り返し言及があるように、金融政策には貨幣と物価に関する問題の発生の時間軸を前後ろにずらす効果しかない訳だから、アベノミクス前だろうが後だろうが、いずれは我々は「自然利子率の長期的低下=成長鈍化」という避け難い事実に直面せざるを得ないのだ。
内容は貨幣と各国中央銀行のクロニクルの中で貨幣経済に関する基本的論点に触れていくというスタイル。「そもそも貨幣って?」という根源の疑問にも丁寧に立ち入っていて理解が進む。特にパンの木の島での物々交換経済から国際的な貨幣経済に移行する仮想物語が解りやすい。貨幣価値と株価のアナロジーの指摘も目からウロコ。貨幣経済や金融政策に関する書籍は結構読んだつもりだったが、まずこの本に手を付けていればより理解がスムーズだったのに、と思わせられた。