新潮選書 「3」の発想 数学教育に欠けているもの

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (173ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106036514

作品紹介・あらすじ

数学の世界では、「3」の発想を会得すれば、それ以上の数の事象についても応用によって解けるケースが多い。ティッシュペーパーやドミノ倒しの原理、オモリを使った計測法、3項計算、三段論法、作況指数とジニ係数など、分かりやすい例を挙げ、いかに「3」を学ぶことが重要かを説く。「ゆとり教育」で損なわれた「考える数学力」が本書で身につく。

感想・レビュー・書評

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  • パラパラ読んだ。

    物事の一般的な法則について考えると大体「3」が登場するという話。
    理由は分からないんだけど、たしかに思い浮かべると3が登場する。

    漸化式は3番目から性質を捉えやすい、
    3つの力が働くとバランスが良い(机、じゃんけん)、
    計算規則の基盤となる3(三平方の定理、三角形)、
    ものごとを説明しやすい3(3K,3C,三慧)。

    3つの事象を捉えると一般的な法則が理解しやすいのはそうだなと思った。

  • ナベアツ…とは関係ありません。

    数学的思考において、「3」の発想がいかに肝要であるかについて、多くの事例を紹介しながら説明した本。

    「2」の発想と「3」の発想の違いとは。
    ドミノ倒しの例でいえば、2つのドミノしかなければ、「倒すドミノ」と「倒されるドミノ」の対向関係に終始してしまい、それ以上の広がりが出てこない。
    ドミノが3つになると、真ん中のドミノは「倒されながら倒すドミノ」となる。
    この「倒されながら倒す」という発想があれば、ドミノの数は4,5,6…と無限につながっていく。
    すなわち、「2」と「3」の間には決定的な違いがあり、「3」の発想を会得できれば「4」以上はその応用で如何様にもなる。

    ティッシュペーパー、3桁同士の掛け算の縦書き筆算、あみだくじの縦線の数、3項計算、二人三脚…様々な事例に「3」の発想が適用できる。

    数学教育が専門である著者は、この「3」の発想を養うような教育が、今の日本には不足していることを指摘しています。

    本書で紹介されているもの以外で個人的に連想したのはサッカーのプレーヤーの動き。
    ハンス・オフトが日本代表の監督になったときに、「アイ・コンタクト」などといっしょにチームに持ち込んだと言われていた基本コンセプトの一つが「トライアングル」。
    いわゆる「三人目の動き」ってやつです。
    パスの出し手と受け手、二人だけではそこで動きが完結してしまうところ、ボールを持たないプレーヤーが三角形を作るようにスペースを探して動く。
    そうすることでチームにダイナミズムが生まれ、四人目、五人目と動きが広がっていく。

    それ以外にも、二人兄弟と三人兄弟の違いとか、適用できるかも。

    簡単な数学を使った証明などの事例もたくさん出てきますが、高校までで数学の勉強がストップしてしまった自分には、久々に目にする概念が目白押しでした。
    数学的帰納法、相加平均と相乗平均、漸化式と一般項、結合法則と分配法則、指数法則と対数公式…等々。
    高校数学が頭に甦ってきて、なかなか懐かしいものがありました。

  •  新しい発想かなと一瞬思ったが考えてみれば3基準の物はいろいろと世の中にあふれている。これをうまく利用すれば物事すんなりと解ける訳か。

     着眼点が面白いのだが内容が少しさびしい感じがこれがもっと発展されて応用範囲にどう利用されていくのか知りたい。

  • 3つで考えると、何故か深く理解が出来る。2つで考えるとどうしても応用が利かないという事を色々な例で説明している。最後の方でだから金さえ稼げばという発想は行過ぎな感はあるが、ただ、今学校数学で必要な、何故と言ったことや、少し応用問題が出ても対応できる様になるヒントがあるかもと思った

  • 数学嫌いの私でも、楽しく読める数学の本はないかと探していて見つけた本。
    いかに数学の発展や教育のために、「3」が大きな意味を持つかを、分かりやすく解いている。また、「3」がどれほど生活に染み込んでいるかを書いてる。
    章の最初の部分はゲームなどの親しみやすい題材から入り、後半はその証明、という構成が主。
    数学の面白さが、少し理解できたように思う。同時に、学校の授業が何故面白くなかったのかも、理解できた。私と同じような数学嫌いの方には、是非読んでいただきたい本だ。

  • 数学の中で3つ目の持つ意味が大きいのは分かるのだが、現実世界とのこじつけが不要だった。

  • 世の中の様々な決まりごとの中に「3」があることに驚いた。「3」という数字の持つ安定性を知った。「2」はある反応とそれに対するリアクションという意味で完成された世界であったが、「3」はその反応を次につなげるという意味で媒介が存在する。「3」によって世界が広がるのである。

  • 「3の発想 数学教育に欠けているもの」
    日本の小中学校の算数・数学教育は、かつてに比べ「3」の発想を養う学習が減っている。「なぜそうなるのか」よりも、「より速く解を出す」「より多く解く」ことに重点が置かれているからだ。


    ・ホームに列車が入ってドアが開いて、自由席の車両にお客がどどっと入ってくる。そうすると1列目、2列目には座らない人が多い。不思議なもので3列目に座る人が多い。出口の傍に座りたいが、車両に近すぎるのも嫌。そうした心理が働いているのだろうか?」


    ・マークシートで解答に困ったら、あるいは時間がなくなったら、3番目の答えにマークしろ」


    ・ティシュペーパーのポップアップ方式の凄いところは3枚目に着目しているところだ。


    ・ドミノ倒しでは3つを倒してこそ意味が出る。


    ・あみだくじを幼稚園児年少組に教える時、あみだくじを2本で教えることと3本で教えることには大きな差が生じる。


    ・3桁の掛け算でこそ意味が出る。


    以上が3の存在価値を知る良い実例です。個人的には「3桁の掛け算」は非常に重要であると思います。なぜなら2桁同士の掛け算と3桁が入った掛け算ではルールが全く異なり、ほとんど別物とも言えるからです。実際小学4年生(2006年実施。対象人数3700人)に対する調査では2桁の掛け算、21×32、の正誤率は82%ですが、3桁が入った掛け算、12×321、の正誤率は51.8%に落ちています。同じことが3.8×2.4と2.43×5.6にも起きています。


    何故このようなことが起きたかと言うと、ゆとり教育により現在の小学校算数の学習指導要領には3桁同士の掛け算が外されており、小学生達はもっぱら2桁同士の掛け算ばかりを勉強しているからです。よって3桁の掛け算が出てくると、2桁の掛け算ルールを適用しようとして答えを間違ってしまう・・・。よほど勘の良い小学生ならば2桁の掛け算ルールから3桁の掛け算ルールを見つけることが出来るのですが、多くは困難です。


    この他にも気になる事例はたくさん載っています。例えば「2項計算より3項計算」というトピックはとても大切です。詳しいことは是非読んで欲しいので書きませんが、結論を言うと日本は3項計算の計算練習不足&計算規則の必要性を勉強させていない為に、インドに大きな差をつけられているということです。それもかなりの・・・。つまり、日本の算数教育はかつての栄光をまっさかさまに転げ終わっているということです。


    このように3に関する様々な事象を扱って、著者である芳沢氏は現在の算数教育の大きな問題点を指摘しています。


    昔は海外(アメリカやイギリス)が日本の教育を真似て、追い抜け追い越せ教育改革を行ったそうですが、今や日本は彼らに完全に追い抜かれているそうです・・・。深刻。

  • 三位一体、3すくみ、三脚、三角測量、三段論法、二人三脚、3K、3高…。
    なぜ3なのだろう。
    3には、ほかの数字にない、何かがあるのだろうか?

    ここでは、数学教育の観点から、3を考える。
    1と2だけでは完結してしまうものが、3について考えることで、それ以上の数に応用して発展させていくことが出来る、と言う。

    また、勝ちと負けだけでなく「あいこ」が加わることで成立するじゃんけん。
    会議の発言などで、「ポイントは3つあります」と最初に言うとなぜウケがいいのか。

    最近、3という数字が気になって読んでみたけれど、本書ではあくまで数学教育としてのアプローチ。

  • 主に、近年の「ゆとり教育」における数学の履修範囲の縮小に対する批判です。数学の専門的な話を期待していると肩透かしをくらいます。
    2桁の筆算だけでは一般的な筆算を理解することが難しく3桁の筆算の履修が必須であるとか、2項演算(例えば、35+48)ばかりのドリルではダメで3項演算(例えば、35+48*12)が必要だとか、3という数字を元に展開しています。
    何かを習得するとは
    1)事実として知ること
    2)背景を理解し考えること
    3)身につけたことを説明でき、
    の3つができることだと言っています。特に3番目の項目はマークシート形式による試験では測ることができないので、論術式の試験に改めていく必要があると主張しています。
    識者と呼ばれる人の中にも「社会に出てから数学はまったく役に立たない」とかいっている人がいますが、おそらく項目1)しかできていなかったからでしょう。

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著者プロフィール

芳沢 光雄(よしざわ・みつお):1953年東京都生まれ。東京理科大学理学部教授、桜美林大学リベラルアーツ学群教授などを歴任し、現在は桜美林大学名誉教授。理学博士。国家公務員採用I種試験専門委員(判断・数的推理分野)、日本数学会評議員、日本数学教育学会理事も歴任。著書に『新体系・大学数学入門の教科書』『新体系・高校数学の教科書』『新体系・中学数学の教科書』(各上下)(講談社ブルーバックス)『中学生から大人まで楽しめる 算数・数学間違い探し』(講談社+α新書)『AI時代に生きる数学力の鍛え方』(東洋経済新報社)など多数。

「2024年 『数学の苦手が好きに変わるとき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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