- Amazon.co.jp ・本 (329ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106036033
作品紹介・あらすじ
「早稲田大学で教えた二年間、教室でこんな事を話していました」-ドラマ、映画、落語、朗読、短歌、舞台美術、音楽…さまざまな表現に"スパークする"小説家の創作魂。「その人でしかありえない」表現の秘術。より深く味わうための心得、「伝える」こと「分かる」ことの奥義。小説家の頭の中、胸の内を知り、「読書」で自分を深く探る方法を学ぶ。
感想・レビュー・書評
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2008年5月新潮社新潮選書刊。早稲田大学文学部での講義録音の一部から、再構成した、読む、書く、の北村薫流の奥義書。あの北村さんの講義なのだからと構えて読みました。実践の難易度は高いですが、内容は、わかり易く、かつ、興味深かったです。三人称小説で、敬語が出てくるおかしさの指摘とか、納得する内容も多かったです。北村さんの博識は無論のこと、編集者へのインタビュー授業を通じて得られる内容は、いずれも、貴重なものでした。
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いろんな形の表現を楽しんでみることを
教えてくれました
人との対話の中で どんどん話が
広がっていくのが面白い
文章を書くというよりも
私にとっては よりよく読むヒントをもらえた本でした -
小説家北村薫氏が早稲田大学で行った講義をまとめたもの。
小説家、歌人、編集者、ナレーターと、創作に関わる人々の普段は知ることはできない舞台裏を垣間見ることができる。
創作とは、書くことのみにあらず、読むという行為もまた創作であり、表現である。些細な日常の中でも、ものを見る目、想像し創造する力を養いたいと思った。
氏の博覧ぶりにより講義の中で古今東西の名著、名作家の紹介がされていたので、読みたい本がまた増えた。もっと古典や文学雑誌を読んでみたくなった。 -
これを読んでほんとに色々吹っ切れた。
北村先生の授業受けたいなあ。 -
帯は宮部みゆきさんの「この本の面白さがわかる人は小説が書けます」ここは小説はかけませんので反応しませんでした。でも「読む」とは「書く」とは、こういうことだ!読書達人の特別講義。で買ってしまったのです。
まず一度読み、それから何度も読んだのですが書く事が纏まらないので、しばらく休み、読みたい本が押せ押せ状態になったので、この本は一度休もうとメモ書きをまとめました。
2005年、6年と早稲田大学で表現の講義をしたものを再構成したのだそうです。
どこを読んでも興味深く「読書」に限ってですが、本物の読書人はこうなのかという好例でした。
小説家とか物語を作り出す、創造する人にとっては又違った掘り下げ方があるようにも思いますが、北村さんの興味の向かった方向が、どの部分をとっても北村さんらしい視点が染みてくるような一冊でした。
参考に挙げてある書籍も多く、少しは読んでいましたが、それを追っていけば一生困らない読書ができそうでした。
内容について、目次はたくさんあり長くなるのですが
1書きたいことは何か
2創作の糸口を見つける
3連想する、想像して創造する
4物語のまなざし ―― 視点と文体
5短編小説を読む
6演習 話を聞いてコラムを書く
7演習 天野慶さんにインタビューをする
8演習 それぞれのコラムを読む
9「伝える」ということ
10独自の表現
11「出会う」体験
12書籍編集という仕事
13作品にふさわしい真実 ―― 表現と個性
14「語る」妙味
15《もの》を見る目 ―― 作家の好奇心
16「分かる」ということ ―― 特別な能力
赤木かん子さんのことp296/ 目覚めの瞬間301/ワクワクについて303/「アマデウス」307/「分かる」ということ309/「読む」という表現312
あとがき ―― 講義を終えて
16だけ小見出しを入れました。赤木さんの自筆の文章が公開されているのですが、子供時代の6年間森の中で暮らした私は、今でもそこの暮らしが帰るところのように思っています。大阪という混雑の中で長く暮らしていても、赤木さんの言葉を味わうと、都会で生きている人と自然体で生きたいと思う自分との本質的な違いがまざまざと感じられ、何か懐かしい思いがしました。
最後にこういった例えが取り上げられていることからもこの一冊が持っている味わいを感じ取れます。
ゲストの歌人天野慶さんの言葉で
わかってもらうこと売れることについて、他からの共感は商品としての歌と作品の境目がむつかしい、共感より共鳴を求める、しかし作家はこれを大きな問題として抱える。と率直に語っています。
編集者の裏話も面白かった。
今回読み直してまた衝撃を受けたのは
浜田到さんの
こんこんと外輪山が眠りをり死者よりも遠くに上りくる月
人と月との心的物的な距離と美しい夜の風景がとても幻想的で、その情感宇宙観に魅せられました。
俳句も好きですが(言葉数が少ない所がよりいいです)歌は素晴らしいと思いました。
また都筑さんのハードボイルド論からヘミングウェイの例等を挙げ、「ハードボイルドとは、人間への向かい合い方であり描き方であるという。映画《裸の街》、見るものの胸に人間存在の切なさを、そっけないだけにいっそう鋭く感じさせる場面でした。あれがハードボイルドです」
最近TVでまた「ファーゴ」を見ました。コーエン兄弟の映画は私なりにハードボイルドの見本のようで大好きです。
「文芸」と「エンターテインメント」「翻訳できない言葉」の例。など興味深い所も多くてまた保存本が増えました。 -
読むことも表現。
文体や人称など、その文章・話が要求する形がある。
編集者やナレーター、歌人などへのインタビュー。
などなど。
面白かった。
私事でいくと、“「考える」コンプレックス”という文章を、数年前のちょうど今くらいの時期(らしい。顔本がサジェストしてきた)に書いた。
自分の書いた記事を見て、そういえば最近はあの頃よりコンプレックスを感じていないばかりか 「子どもに考えさせるには」と考える側にシフトしているなと気づいた。
そんな折、この本を読んでいたら 「ようこそ先輩」のくだりで『テーマとして考えたのが≪はてな、と思うことの大切さ≫』だというではないか。
なんというか、この時期に、原点らしきものに立ち返って繰り返し考える、縁あるテーマになっているのかもしれないなぁと思った。
それも含め、いま読めて良かったです。とても。
紹介してくれたパートナーにありがとう。 -
2015年6月2日読了。北村薫が高校生相手に行った講義を整理した本。TV「ようこそ先輩」で収録・放映されなかった部分なども配置され、語り足りなかったであろう著者の意図を大いに盛り込んだ内容になっている。北村氏は専門が日本文学であり、引用されている短編(塚本邦雄の短編には恐れ入った)やその味わいどころの紹介には「うーん」と唸るものがおおい。また、その道の専門家である彼が「誤読・誤解を恐れない」、自分なりの解釈にこそ自分の物語があり、積極的に空想して自分の「謎」とその答えを見つけていくことが大事、と説くくだりには非常に感心した。作品というのは作者の意図が全てはない、ということは、ある意味作り手にとっても怖いことだと思うが…。
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北村薫さんって男性だったのか……
一人で語ってらっしゃるところは講義らしくてちょっと眠たい。この話題についていける早稲田の学生さんはさすがだなあ。天野さんの歌は素晴らしいね。 -
気まますぎる講義ーー
江戸文学、近代文学、歌人へのインタビュー、ナレーター(朗読家)との対話。掌編を書く課題。
さまざまな趣向を凝らして北村先生は講義を進めていく。
学生がいろんな経験を重ねる事ができるのはいいけど、結局この本は何が言いたいのか。
それが曖昧なまま読み終わったなあ。
読者の私だけ取り残された気分。しょんぼり。
「読む事も表現である」、うーん、よく分からん。
あ、二人の編集者との対話は滅法面白かったよ。
北村先生への私の敬愛は何ら変わらないので、他の本(小説)を読もうと思います。 -
本書に登場した作者別の索引が巻末に載っているが、逆にいえば、これだけ読んでいないと作家としてやっていけないだろう、と軽い絶望を創作初心者に与える本でもある。
(現在の木下古栗のブレイクを既に予見していた)編集者対談も面白い。