サブリナとコリーナ (新潮クレスト・ブックス)

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  • Amazon.co.jp ・本 (287ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105901677

作品紹介・あらすじ

母も、祖母も、その母も、私たちはこの胸の痛みと生きてきた。黒髪でとびきり美人のサブリナ。あなたはどこで道を間違えたの? コロラド州デンバーのラテン系コミュニティ。女たちは若くして妊娠し、男たちは身勝手に家を飛び出す。従来の移民文学「らしさ」にとらわれず、やるせない日常を逞しく生きる彼女たちの、声なき叫びを掬い上げた鮮烈なデビュー短篇集。全米図書賞最終候補作。

感想・レビュー・書評

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  • サブリナとコリーナ カリ・ファハルド=アンスタイン著 ラテン系家族の切ない日常 :日本経済新聞
    https://www.nikkei.com/article/DGKKZO64244080V20C20A9MY6000/

    KALI FAJARDO-ANSTINE
    https://www.kalifajardoanstine.com/

    カリ・ファハルド=アンスタイン、小竹由美子/訳 『サブリナとコリーナ』 | 新潮社
    https://www.shinchosha.co.jp/book/590167/

  • 大好き。素晴らしい短編集でデビュー作とは見事。主人公はいずれもヒスパニック系の女性達、一話の中に複数の女性たちがメインで登場するという意味で複数形(男たち+ヒロイン、という男社会の構図ではない)。貧困、男からの暴力、搾取、差別、若すぎる妊娠がある厳しい社会、そこから死してぽろぽろと脱落していく女達も少なくないが、生き残った女たちは手を取り合い生きていく。生き抜いたおばあちゃんは逞しい。すべての女性達に寄り添う文章はやさしい。
    「トミ」がよかった。家族に面会されぬまま刑務所を出所したニコールは、兄の息子、甥のトミと不器用に関係を築いていく。過去、ニコールはトミの教育費となるべき金を盗んだのだった。触れたものを金に変えるミダス王ならぬニコール、自分が関わると何もかもだめにしてしまうと嘆く場面に目頭が熱くなった。

  •  西加奈子の裏表紙コメントに惹かれて読んでみたら、とてもオモシロかった。著者はチカーノ系でデンバー在住らしい。多くのアメリカの小説や映画を見てきたけど、この組み合わせの風景を見たことがなく新鮮だった。デンバーと聞くとなんとなく山間部みたいなぼんやりしたイメージしかなかったけど、ここにもジェントリフィケーションの波が訪れていて、その風景が何度も出てきたので生まれ育った筆者としては相当思うところがあるのだろう。
     本作は短編集でどの話もハズレなしでかなり完成度が高い。そして本作の最大の特徴はどの短編も女性が主人公で、しかもそれが大体二人という点だと思う。友人、家族とさまざまな女性同士の関係性を描きながら、その結果として男性の不在を描き出し彼女たちが社会でストラグルする姿がカッコよくて魅了された。物語として大きな展開はそこまでないものの何気ない風景描写が多く、生活がそこにある感じがしてぐいぐい引き込まれる。個人的には「ここで終わるの?」みたいな断絶タイプのオチが好きなんだけど、この作品はドヤ感を抑えつつ良い雰囲気でしっかりオチがついていて好きだった。これは訳者の方の力だと思う。全体にかなり読みやすい訳でもあった。
     タイトルになっている「サブリナとコリーナ」は傍若無人だったあいつが自死してしまったその後と過去の関係を描いている作品。よくある設定だけど人物描写が丁寧でまるで映画を見ているようだった。好きだったのは「チーズマンパーク」という短編。カルフォルニアからデンバーへ出戻りした女性が階下の女性と仲良くなっていく過程が微笑ましいなと思っていたら思ってもないエンディングを迎える。愛されたり、愛したりの関係について短編でこれだけ考えさせられる点がオモシロかった。最後にその短編から引用しておく。
    「世界が変わったのよ。あんまり差し迫った感じがしなくなって、なんとなく広がって、そしてあたしは、愛されてるのだろうかってことをあんまり気にしなくなったの」

  • 米国デンバーのヒスパニック系の女性たちの短編集。祖母の伝える民間治療法、妹のダブルデートに付き合い事故に遭い視力を失った姉。アングロサクソン系の優位社会や横暴な男性、彼女たちを取り巻く社会は厳しい。これもアメリカ社会の一面なのか。

  • アリス・マンローみたいな、とどなたかが呟いていたけど、それがちっとも誇大広告ではないと感じられる短編集。
    アメリカ、デンバー。
    私はそこの人種の問題をよく知らないし、
    ほぼ1民族ばかりの国では普段意識しないことかもしれない。
    不安さ、自信のなさ、悔しさ。
    それ以上にあたりまえの人生のあり方や希望、愛への普遍的とも言えるものへの感情、感覚が、日常を切り取るように描かれている。

  • 短編集。著者のデビュー作とのこと。デンバーのラテン系のコミュニティというのはこういうものなのか......?

  • この本の繊細さと静けさが好き。悲しい話だらけなのに、それが珍しいことではなく、彼らにとっては日常の一部だということを認識させてくれるトーンだなと思う。

    「西へなどとても」の引っ越し先で恋人を作る母とその娘の話や、「シュガー・ベイビーズ」の時々しか帰ってこない母とその娘の物語は、娘を思うととても切ない気持ちになり、「姉妹」の姉に待ち受ける結末には腹がたった。

  • バックグラウンドを一言で表すのが難しい女の子たちの話で、繊細な感情が文から滲み出ている感じ。訳者あとがきにもあったが、それぞれの話に出てくるおばあちゃん達が、どこか諦めも含めて人生を達観しているよう様子がまたリアル。

  • 具体的な背景はわからないのだけれど、理不尽に感じる人種差別的な状況で、たくましく生きている人たち。
    悲しみを抱えながらも人は生きていくのだと、
    生きるとはそういうことなのかもしれない。
    生き抜いたばあちゃんたちが強いのはそういうことだ。
    生まれながらに人は平等ではないし、何かを抱えながら生きていくのだから。
    でも、哀しいね・・・

  • 遠いアメリカの日本とは全く違う文化、環境、人々の話。
    背景を知らないと分かりにくい部分もあるが、自分も登場人物と似たような経験をしたり、共感することも多かった。

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