友だち (Shinchosha CREST BOOKS)

  • 新潮社
3.45
  • (9)
  • (19)
  • (18)
  • (8)
  • (2)
本棚登録 : 514
感想 : 31
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105901639

作品紹介・あらすじ

物言わぬ犬の哀しみを抱きとめて、わたしは静かに言葉を紡ぎつづける。誰よりも心許せる初老の男友だちが自殺し、大きな空洞を抱えた女性作家の狭いアパートに、男が飼っていた巨大な老犬が転がり込む。真冬のニューヨーク。次第に衰えゆく犬との残された時間の中で、愛や友情のかたち、老いること、記憶や書くことの意味について、深い思索が丹念に綴られてゆく……。2018年全米図書賞受賞作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 語り手の師でもあり30年来の友だちでもあった老教授の自殺、彼の飼っていたグレートデーンの老犬アポロとの生活、作家としての葛藤という三つのテーマがランダムに綴られる。リルケの「守りあい、境界を接し、挨拶を交わしあうふたつの孤独」という愛の定義に沿って亡き友、そしてアポロとの交感の日々が描かれる。アポロの心を推し測る場面では、「あなたのペットが病気になり、あきらかに具合が悪いのだが、それが何か、どこが悪いのかわからない。ペットは自分では説明できないからである。あなたを神だと信じている犬が、あなたは苦痛を止める力をもっているのに、なぜかそうしてくれないと思っている、という考えほど耐えがたいものはない。」と心を傷める。物語の終わりの方で、唐突にメタストーリーが挿入されるが、物語の転換させるこの挿入の必要性に戸惑いを覚えた。

  • 久しぶりの外国ものでした。学生時代はよく読んでいたけれど、最近は日本人作家さんのものばかりだったので翻訳になかなか慣れず、苦戦しました。原文の表すことを取りこぼさないようにするほど読みにくい訳になるし、読みやすくしようとすれば何かが原文と変わってしまうし、やはり翻訳で読むのは違和感が付きまとうなと改めて感じました。

     語り手は、一人暮らしの初老の女性作家。親密な友達だった先輩作家の男が不意に自殺し、深い喪失感にとらわれていたところ、その男性作家が飼っていた巨体の老いた犬、グレートデンを引き取ることになる。

    主人を亡くして失意の老犬の、晩年にあたる時期を共に過ごしながら、彼女は生きること死ぬこと、自死、作家であることなどを考察し、散文のように書き綴る。

    〈 わたしたちがその不在を寂しがるもの、それこそわたしたちを心の底でほんとうにわたしたちにしているものではないか。〉

    という提示が心に残りました。

    小説として読むとしっくりこず、頭に?が溢れてしまうけれど、一部フィクションを交えたエッセイのような物として読むと、心の奥を少しだけ揺さぶられるような面白さがありました。

    私にとって、認知症で夜中吠え続ける、自身の愛犬の側で、老犬の最晩年を描くこの本を読んだ記憶は、後に忘れ難い思い出になると思います。

  • なんと表現したらいいのか悩む内容で、実は半分も理解できていないかもしれない。大切な男友達を失った女性作家の、フィクションともノンフィクションともつかぬ内省的な独白が延々と続く。それは2人で過ごした日々であったり、仕事でもある文学や教育に関することであったり、犬や猫についてだったり……。膨大な人名(作家、音楽家、俳優等々)や作品名、そこからの引用などがページを埋め尽くす。それを通して浮かび上がるのは彼への哀悼の念で、その深さに息苦しさすら感じる。

  • 初老の女性作家が、友人であり自殺した男性作家の愛犬を引き取ることになる。
    というあらすじからぼんやり浮かんだほのぼの動物ものとはまるで違った。
    書くとはどういうことなのか、それによって何を得て誰を傷つけるのか。
    フィクション、私小説、エッセイ…プールのコースラインをくぐって泳ぐように、思考が巡らされ、会話が交わされる。
    私も共にぐるぐる思考する感じが面白い。
    衝撃もあるのだけど、読後感は良かった。
    たくさんの引用元、全部読みたく/見たくなるー!

  • 5歳くらいのグレートデンのアポロと暮らすようになった女性作家のお話です。

    いろいろなことについて、多くの本、映画を引用して独特な世界観を醸し出しています。

    特に犬についてどうこうというものではありませんでした。

  • ・・・最近のテレビのドキュメンタリー番組で、郊外のモーテルを根城にして働いていた元売春婦がいちばん忙しいのは月曜日の午前中だと言っていた。妻や子供たちと週末を過したあとほど、このビジネスは活況を呈するらしい。・・・

  • 表紙の犬、そしてシンプルなタイトルにひかれ。仲の良かった男性小説家が亡くなり、彼の飼っていた犬を引き取った女性小説家。犬と女の友情の話。と単純に言い切れるものでもなく。物語は終始、主人公のモノローグ、日記のような形で進み、犬はそこにいるだけ。そして月日の流れと共に犬は次第に年老いていく。

  • かつての恋人は自殺し残された老犬を引き取る羽目になった女。アパートの一室で大型犬との暮らしは恋人の不在を懐かしむが…回想的な展開で終わると思いきや結末で絶妙な仕掛けがあり、小説としての面白さが一気に増大する。老犬というフィルターを通した人間の営みを風刺しているようでもある。

  • 犬との穏やかで充実した関係性は、人間同士の関わり合いよりどんなにわたしらしくあれることか。
    死や老いが日常に溢れる日々のなかで、思考を逡巡させる。

  • なかなか読んで考えてしまうところのある小説だった。物言わぬ動物との関わりについても。アメリカにはライティングという学問の分野がしっかりあって、大学のゼミとかも当たり前にあるよなあと。日本もあるのかな?

全31件中 1 - 10件を表示

村松潔の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×