- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784105901240
作品紹介・あらすじ
自分の葬儀が、絶望と悲しみに染まることのないように。そして、愛で満たされるように――。舞台は1991年夏、猛暑のニューヨーク。亡命ロシア人で画家のアーリクの病床に集まる五人の女たち、友人たち。ウォッカを飲み祖国のクーデターの様子をテレビで観ながら決して平坦では なかった人生を追想する。そして、皆に渡されたアーリクの最期の贈り物が、生きることに疲れた皆の虚無感を埋めていく……。不思議な祝祭感と幸福感に包まれる中篇小説。
感想・レビュー・書評
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ロシアから亡命してきた画家アリークの最期を描く。
病床の彼の元には、妻はもちろん、友人、愛人、元恋人など様々な人々が集う。常にたくさんの人に囲まれるということは、なんて幸せなのだろう!
思わず口元が緩むエピソードや、終盤ほろりとしたり、とびっきりハートフルな作品でした。 -
物語最初から主人公の画家アーリクは死にかけてるし、その妻はアル中で、しかもアーリクのアトリエには愛人、元カノとその連れ子、その他ごっちゃごっちゃの人たちがいつも集まる。もう設定がカオス。舞台になったアメリカという国の縮小版みたいな場所。
意味不明な人たちばかりなのに読み終わるとどの人物も愛しく思えるから不思議
「この世界には自分にはわからない人もそこにいるし、(自分も含めてそこに)居ていい」みたいな寛容さが心地よい -
死期が迫るラビボエームな亡命ロシア人画家とそれを取り巻く人々の最後の過ごし方。
うーん、私も陽気に贈られたいものだ。 -
N.Y.にたくさんの移民がいるのはもちろん知っていたが、ロシア人がどう移り住み、暮らしていたかという一例を知ることができた点が、ストーリーとは少し離れた視点にはなるが、興味深かった。
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不治の難病にかかって余命いくばくもない画家のアーリク。ニューヨークにある彼のアトリエ兼住まいには、彼と同じ境遇のユダヤ系ソ連人の亡命者たちが今日もむれ集う。その中にはアーリクの妻、彼の愛人、元愛人、告知されていない実の子、友人、そして誰だかわからない人まで混じっていて、アーリクの死の床を囲んで相当にぎやかだ。
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■アメリカに住む移民、難民の実態を描いた小説っていろいろあって、ぼくのような平凡な日本人からしたらあまりに縁遠いことなので読んでていちいちびっくりしてしまうのだが、ソ連からの亡命者たちっていう世界もあるんですね。う~む、言われるまで知らんかったなあ……。【後記】荻野恭子/沼野恭子共著『家庭で作れるロシア料理』を読んでいたら以下のようにあった、「1970年代、イスラエルに移住するという名目で、ユダヤ人がソ連から出国することが許された。その数は総計20万人をゆうに超えたが、そうしたユダヤ人の一部がアメリカに渡り、ニューヨーク郊外のブライトンビーチに一大ロシア語圏コミュニティを築いた。」と。時代的にも合致するのでアーリクたちもこの流れで渡米してきたのかもしれない。
■舞台はアーリクのアトリエの中だけ(回想シーンは除く)。そこに寝起きするいろんな人たちが入れ代わり立ち代わり登場するものだからあわただしくって、せっかく個性的な連中なのに感情移入する余裕がない。
■しかし、死に臨もうとするアーリクの様子がびっくりするほどていねいに描かれていて、この点強く心に残った。ふつうの現代人なら、突然の事故死でもしないかぎりアーリクのように病床で、自らの死を覚ったうえで静かに死をむかえるものだろう。決して遠い先にあるのではないぼく自身の”死”を、指先でそっとなぞることができた、そんな読書経験であった。 -
すごく魅力的なお話しだった。
本に語られた話の前も後も知りたい。
この作者の他の本も読んでみよう。 -
初めて読むウリツカヤ。文芸フェスに来られなかったことで名前が挙がり、興味を持った。そんな出会いもある。
死にゆく主人公アーリクは、非常に人好きがして女にもモテるということくらいしかわからない。臨終の床に集まった人々が生き生きと描かれ、特に女性は妻、愛人、元恋人など複雑な陣営だ。この輪の中には、宗教や立場の違いや個人間の反目があり、女性達は一人の男を巡って争った間柄だが、愛されたアーリクの人生を反映するように、和やかな融和に包まれていく。
後書きによると、無理解と寛容はウリツカヤのテーマだとのこと。他の小説も読んでみよう。