子供時代 (Shinchosha CREST BOOKS)

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (124ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105901189

作品紹介・あらすじ

中庭のあるアパートに住んでいる子供たちが出会った奇跡。六つの物語からなる大人のための絵本。遠縁のおばあさんに引き取られた、けなげな孤児の姉妹の話…「キャベツの奇跡」、ほとんど目が見えない時計職人の曾祖父が、孫娘にしてやったこと…「つぶやきおじいさん」、いじめられっこのゲーニャのために母がひらいた誕生会で起きた思いがけない出来事…「折り紙の勝利」等六篇。静かな奇跡に満ちた、心揺さぶられる物語集。

感想・レビュー・書評

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  • 中庭に面したアパートに住んでいる子どもたちが主人公の、緩やかなつながりを持つ六つの物語からなる短編集。

    作者ウリツカヤと同世代の(しかもご近所さんだったそう)画家リュバロフの挿絵は、最初見た時は、なんだか、おどろおどろしいような印象だったが、物語を読むうちに、郷愁とユーモアも感じられるようになった。

    「釘」よかったな。少年セリョージャが、ひと夏を田舎で過ごすお話し。田舎に慣れず、親戚の子どもたちのなかに入れなかったり、蚊の鳴くような声になってしまったり、涙があふれ出てしまったり。愛おしい気持ちになる。ひいおじいさんと過ごした、かけがえのない思い出。

  • ロシアで活躍する人気作家リュドミラ・ウリツカヤと、画家のウラジミール・リュバロフのコラボによる短編集。全6編。
    この、ウラジミール・リュバロフの絵が何だか出久根育さんの絵に似ていて、ちょっとグロテスクでユーモアのあるところに、親しみを感じる。
    お話に合わせて描きおろしたものではないらしく、各々別の世界のもののはずなのに妙に融合しているのが面白い。

    舞台は1945年のソ連。
    子どもを取り巻くごくささやかな毎日の描写だが、それが抜群に上手い。
    この巧みさは何だろうと考えていて、はたと思い当たった。語りすぎていないのだ。
    TVを見ても最近の小説を読んでも、とにかく語りつくす・ 喋り倒す、というのが風潮であるらしい。
    それでこちらには、想像の余地さえ残されていないことが多い。
    しかしこの書き手は導入から終盤まで、端的な表現で実に鮮やかに場面を想像させるだけでなく、読み手を自分の子ども時代に甘やかに誘うことさえするのだ。

    『中庭のあるアパートに住む子どもたちが出会った奇跡』と帯にはあるが、同じアパートに住む子どもたちの話だったと気づくのは最終話でのこと。
    そこまでの展開も心憎いほど上手いため、5編を総括するような充足感でいっぱいになる。
    子どもたちは、決して繊細なだけではなく、したたかでたくましい部分もある。
    違う国の子どもたちのはずなのに近しい気持ちになるのは、子供の頃に特有の寂しさや戸惑い、何かに憧れた時の気持ちなどに共通のものを読み取るからだろう。

    珠玉の、などという定番の表現さえしたくない、珠玉の短編集。
    外国のお話が苦手な方にもおすすめ。極めて薄いため、短時間で読み終えられる。
    『鍵』でじわっときて、『折り紙の勝利』で思わず感嘆の声をあげてしまった。

    • yumiieさん
      nejidonさんこんにちは!
      ご無沙汰しております。お元気でいらっしゃいますか?^^
      先日..といってももう一月近くになってしまいまし...
      nejidonさんこんにちは!
      ご無沙汰しております。お元気でいらっしゃいますか?^^
      先日..といってももう一月近くになってしまいましたが
      私の久しぶりの投稿にコメントしてくださってありがとうございました。
      とっても嬉しかったです♪^^
      多分...私の見間違いでなければなんですが、今日になってようやく
      また少しばかりブクログに向かえそうな時間が取れたので
      nejidonさんにお返事を~と思ったのですけど、記事が見当たらなくなってしまい
      ほんとうにごめんなさい。遅すぎちゃいましたね。申し訳ありません。
      少し前から身体の不調でブクログに向かうことがままならなくなってしまって
      それでも本だけはなんとかぼちぼち読んでいます。

      nejidonさんの本棚のどこかにコメントを~とお邪魔しましたら
      こちらが目に留まりました。
      春頃だったかしらと記憶しているのですげど、図書館で一度手に取り
      借りてみようかな読んでみようかなと思った本でした。
      表紙の絵が独特で覚えていたんです。結局借りなかったんですが...。
      nejidonさんのレビューを拝見して、やっぱり今度読んでみようと思いました。

      まだしばらくブクログはぼ~ちぼ~ちと歩みがのろくなってしまいそうなんですけど
      こうすることも健康維持の一つと思っています。
      どうぞこれからも楽しいお付き合いをよろしくお願い致します♪

      お互い身体に気を付けて楽しんでいきましょうね~!^^
      2018/11/11
    • nejidonさん
      yumiieさん、こんにちは(^^♪
      コメントありがとうございます。とっても嬉しいです!
      確かに、タイムラインでyumiieさんのお名前...
      yumiieさん、こんにちは(^^♪
      コメントありがとうございます。とっても嬉しいです!
      確かに、タイムラインでyumiieさんのお名前を見つけてコメントしたのはワタクシです。
      久々だったので、つい嬉しくなってしまったのですね。
      でももし具合でも悪くてお休みされていたら、コメントも負担になるかしら・・
      と考え直して削除しました。ごめんなさいね。
      かえって気を遣わせてしまったらすみません。
      もう体調はよろしいのですか?
      ブクログはお仕事ではないので(笑)どうか無理されませんようにね。

      私も、もうやめてしまおうかと何度も考えることがあります。
      楽しいはずのものが、時々とても負担に感じるのです。
      そんな時はたぶん、身体の調子も悪い時です。
      たまにお休みするのも必要かもしれませんね。
      今回はyumiieさんからコメントをいただいたので、急激に元気になってます・笑

      ところでこの本、とても良かったですよ。
      新潮クレスト・ブックスは品ぞろえが良いので大好きです。
      時間が許せば、もっともっと読みたいと思うラインナップです。
      yumiieさんもぜひこの本を楽しんでくださいませ♫
      こちらこそ、またぼちぼち&ゆるゆるのお付き合いをよろしくお願いします。
      2018/11/11
  • ロシアの作家
    イラストもよかった
    奇跡のキャベツ
    ひいおじいさんの話
    折り紙の話
    がよかった

  • どの話にも、何故だか不安になる雰囲気があるがバッドエンドにはならない。挿絵のせいかもしれない。
    ひいおじいちゃんが時計治してくれたり、一緒に棺桶作ったり、嫌われ者の少年が唯一の特技・折り紙で友だちを作ったりする。とんでもない事件が起きるわけじゃないけど、登場人物の世界や価値観を変えるような事が描かれている。
    読みやすくてよかった。子供が主人公なのが良い。

  • 六編からなる連作短編集。各話独立した話としても読める。
    リュドミラ・ウリツカヤの幼少期の記憶をもとに綴られた作品で、読み終えたあとに中にはぞっとした物もあったが、ほとんどほんわかしてしまう。
    特にラストの「折り紙の勝利」は小学校の教科書で取り上げて欲しい作品。人にはそれぞれ短所と長所が備わっており、それを認めて助け合い育んでいるのだと思った。
    前回読んだ「ソーネチカ」もそうだったが、真っ白な雪景色にほんのり暖炉にオレンジ色の火が見えるさりげない優しさを感じる。本当に温かみを覚える作品ばかり。

  • ウリツカヤと近くで育ったという画家リュバロフの子どもの頃のソ連を描いた話

    戦争で両親を亡くした小さな2人の少女がおばあさんの家に住むことになり初めてのおつかいに出る。古びたコートはポケットに穴があき…想像どおりのことがおこる。そこに起こった奇跡とおばあさんの待っている様子…話の終わりは結末まで描いていない。そこがいいのだが、なぜか少女たちが椅子にすわってイパーチエワおばあさんの帰りをひたすら待っている様子が、足をぶらぶらして待っているように思ってたら、そんな描写は無かった…
    キャベツの奇跡

    蝋でできたカモ
     ガラクタ屋さんのベランダから盗んだマットと蝋でできたカモ

    つぶやきおじいさん 
     時計の修理を昔していた目の見えないおじいさん。孫のアリクが学校に行くとき忘れたのを小さな妹が手にして外で遊び、バレーボールが当たって壊れてしまう。持って帰っておじいさんに。見えないはずなのに修理し、ひび割れたところを教えてくれる。見えるのは大事なものだけなんだよ、と。


    釘 妹が生まれるときにひいおじいさんの家に預けられた子。釘を何本も打たせてくれる(抜くことも、釘を真っ直ぐに戻すことも)


    幸運なできごと

    折り紙の勝利
    病気がちで生まれつき足も悪く学校でいじめられているゲーニャ。母親がお誕生日に同年代の子たちをよんでそこでゲーニャの得意な折り紙をみんなに作り、みんなにリスペクトされていく

  • 大人のための絵本。とのこと。挿絵がなんとなーく不気味。挿絵はこの物語に合わせて描かれたものではないとのことだが、妙にしっくりくるのはなぜかしら。

  • ロシア文学。
    1949年ごろのお話。
    子供と老人との関わりが多かった。
    全てがハッピーエンドではないにしても、その時代の生き生きした子供たちがいた。
    『キャベツの奇跡』『折り紙の勝利』がお気に入りです。

  • 20世紀半ばを舞台にしたソ連の生活、そして子供たちが描かれている。
    戦争は終わったが、全国土は一部の権力者を除き、貧しい。父も母も繰り返すのは「慎ましく、日々の糧に感謝し、健全に暮らすこと、そして勉学に励む事、お祈りを忘れない事」だろう。
    何処も同じとは思えない、日本とは違う文化が随処に見られ面白い。必ずと言い位出てくるのは「母親にぶたれまくる」こと。若い頃は細い母も、時が流れるとこん棒みたいな腕になっているから、さぞや痛いだろう。
    面白かったエピソード~「ベートーベンはファシズムの国の作曲家」だから母親の教えによると評価を下げられてしまう。国と人物を一体化しているが、それでも子供は素直に従う・・ここは何処も同じかな。

    絵が温かい・・どいつもこいつもにこりともしていない、可愛くないが・・何かしら温もりが。文にもあったが藤田嗣治の絵と妙に共通するものを感じた。

  • 田舎の人は基本ツンデレなんだよね。素直に自分から優しく振る舞えない。子供からしてみたら、逆らったりわがまま言ったりはできず、常に距離感を計算しながら、そういう荒れ道のような不器用な大人と渡り合っていかなくてはならない。そういった茨の道筋の片隅にほっこりあったかい日だまりのような優しさが見えてしまい、泣かせるんだなあ。挿し絵はなんだかキモいところが、長崎出版が倒産する要因になった「こびとづかん」を思いだした。

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