AI監獄ウイグル

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105072612

作品紹介・あらすじ

新疆ウイグル自治区は米中テック企業が作った「最悪の実験場」だった。DNA採取、顔と声を記録する「健康検査」、移動・購入履歴ハッキング、密告アプリ――そしてAIが「信用できない人物」を選ぶ。「デジタルの牢獄」と化したウイグルの恐るべき実態は、人類全体の未来を暗示するものだった。少女の危険な逃避行を軸に、圧倒的な取材力で描き出す衝撃の告発。成毛眞氏、橘玲氏、驚愕!!

感想・レビュー・書評

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  • 【まとめ】
    0 ウイグルで起こっている虐殺の概要
    2017年以降、推定180万人のウイグル人、カザフ人、そのほかの主としてイスラム系少数民族の人々が、「思想ウイルス」や「テロリスト思考」をもっていると中国政府から糾弾され、地域全体にある何百もの強制収容所に連行された。収容所の多くは高校などの建物が再利用されたもので、そのような一般的な建物が拷問、洗脳教化のための拘留施設に変わった。 それは第2次世界大戦中のホロコースト以来、史上最大規模の少数民族の強制収容だった。

    たとえ収容所送りを免れたとしても、新疆での日々の生活は地獄だ。あなたがウイグル人の女性なら、政府から派遣されてきた見知らぬ人物の隣で毎朝目覚めることになるかもしれない。その男性は、収容所に連行されたあなたのパートナーの代わりを務める人物だ。毎朝の出勤まえにこの監視員は、忠誠心、イデオロギーの純粋さ、共産党との友好関係という国家の美徳をあなたの家族に教え込む。監視員はさまざまな質問を投げかけてあなたの成長をチェックし、政府が呼ぶところの「心のウイルス」や「3つの悪」(テロリズム、分離主義、過激主義)に感染していないかをたしかめる。

    出勤のまえに車でガソリンスタンドに寄っても、夕食の食材を買いに食料品店に行っても、どの場所でもあなたは、入口に立つ武装警備員のまえでIDカードをスキャンすることになる。カードをかざすと、スキャナー横の画面に「信用できる」という文字が表示される。それは政府によって善良な市民だと判断されたという意味であり、そのまま入店することが許される。
    信用できないと判断された場合、警察官による尋問が始まる。警官たちは「一体化統合作戦プラットフォーム (IJOP)」と呼ばれるプログラムを使い、スマートフォン上で男性の身元を確認する。IJOPのデータベースには、何百万台ものカメラ、裁判記録、市民の内通者などから政府が集めたマスデータが格納されており、それらすべてのデータがAIによって処理される。

    「予測的取り締まりプログラム」にもとづいてAIは、その男性が将来的になんらかの罪を犯すと判定し、強制収容所に送るべきだと勧告する。警察官たちは同意し、男性をパトカーで連行する。男性は再教育の期間を終えてどこかの時点で戻ってくるかもしれないし、あるいは二度と戻ってこないかもしれない。

    仕事が終わって車に乗ると、道中また10ヵ所以上の検問所を通過し、自宅のある地区の入口ゲートでIDカードをスキャンする。そこは、IDカードをスキャンせずに出入りすることが許されていない、フェンスやコンクリート塀に囲まれた隔離地区だ。自宅では子どもたちが、学校でその日に学んだ愛国心と協調という党の美徳について話をする。子どもたちが学んだことを否定してはいけない。反対意見を言う親がいる場合は報告しろ、と教師が生徒に教え込んでいるからだ。


    1 ウイグルでの日常
    ウイグルで広まっているのは「国家による過剰な管理」である。
    たとえばガソリンを買うときには、IDのスキャンが必要になる。IDをスキャンし、システムによって本人や家族の誰かが「信用できない」と判定された場合、ガソリンを購入する権利が剥奪されることになる。さらに警察には、その種の判断を自分たちで独自に下す権限も与えられていた。

    ある日のこと、地元のいつもの場所でメイセムが親戚や友人たちと会っていると、警察がやってきて全員のIDをチェックし、疑いの眼差しを向けてきた。 そして、なぜ来たのか理由を言わずに去っていった。それは不穏な監視であり、地味ではあるものの執拗な脅迫だった。

    2014年8月、夏の終わりにかけて警察の監視がさらに強化されると、人々は本心を隠すことを余儀なくされた。診療所、銀行、ガソリンスタンドではしばしば、ふたつの列ができた。ひとつは、事実上の多数派である漢族のための優先レーン。もうひとつは、ウイグル族とほかの少数民族用の進みの遅い官僚的な列。ウイグル人はつねに笑みを浮かべ、行儀よく振る舞わなければいけなかった。さもなければ、サービスを受けられないことさえあった。

    また、教師ではないのに大量の本を所有しているだけでもIJOPに報告され、ふだん5キロ分の化学肥料を買う人が、突如として15キロの肥料を買ったとしたら、地元の警察官を派遣してその人物を訪問し、使用状況をたしかめるケースもあるという。

    当時の新疆ウイグル自治区では、各家庭が10世帯ごとのグループに分けて管理されていた。グループ内の住民は互いに監視し合い、訪問者の出入りや友人・家族の日々の行動を記録することを求められた。
    メイセムが体調が悪くて日課の散歩が出来なかった場合は、班長が朝の見回りで散歩しなかった理由と診断書を要求し、警察当局に提出していた。また、家の居間に政府のカメラを設置させられた。一ヶ月後、一家全員で地元の警察署に出向いて、DNAと血液型情報、声紋情報を提供させられた。

    その後、メイセムは海外留学の経験があるというだけで、市民教育のクラスと週2回の出頭を求められた。市民教育のクラスでは、「党を愛しています!習首席は偉大な最高指導者です!」と何度もノートに書かなければならなかった。毎週月曜日には、警察が3時間に渡ってメイセムの思想について尋問した。

    2016年、カシュガルの旧市街の地区が、突如としてフェンスで囲まれた。閉じ込められた住民たちは、身分証明書を提示しなければ出入りすることができなくなった。「突然、なんの知らせもなく建設作業員がやってきて、一晩のうちにフェンスを張り巡らせた。眼を覚ました住民たちは、びっくり仰天ですよ」とメイセムは言った。

    新疆に新たに赴任した指導者の陳全国は、より活発な警察活動を展開する。外国からの帰国者は全員再教育センターという収容施設に送られ、メイセムはその中でも隔離度合いの強い拘留センターに送られた。拘留センターの中には監視カメラの設置された教室があり、中国政府を称賛するような洗脳教育が行われていた。食事はカビの生えたパンや茹で野菜だけであり、各人は房に入れられ、囚人のように命令されて行動することを義務付けられた。
    職員の話によれば、床にはセンサーが埋め込まれていて、人がどこを歩いているかを感知することができる。また、学習中の囚人が上の空なのか集中しているのかもAIで判断できるという。

    収容されている人数は最低でも10万人、最大で100万人強にのぼると考えられている。100万人強というのは、新疆ウイグル自治区に住む1100万人のウイグル人の約 10分の1に相当する。

    捕らえられたウイグル人の存在は、労働力を再活性化し、経済成長を助け、被収容者に規律を教え込むための中国の解決策になった。 2017年、政府は「援疆」と呼ばれる計画を拡大し、ウイグル人被収容者を中国全土の工場に派遣しはじめた。この計画について政府は、「民族間の融和」と「貧困の緩和」を目指す取り組みだと主張した。派遣プログラムで恩恵を受けた企業の中には、アマゾン、アディダス、カルバン・クライン、GAPなどが含まれていた。

    2017年12月に共産党は、100万人の党幹部をウイグル人の家庭に配置する「家族になる運動」をはじめた。政府のプロパガンダでは、「この人員配置は家族の再会」と呼ばれた。 しかし実際のところその取り組みは、ウイグル人の住居に政府職員を送り込み、寝食をともにしながら住民を監視するためのものだった。

    実験的に行なわれた「家族になる運動」は、やがて本格的なホームステイ・プログラムへと拡大した。政府職員は、2カ月おきに5日間にわたってホストファミリーとなる一般家庭の家で生活した。対象となる家庭が参加を拒んだ場合、その家族はテロリストとみなされ、強制収容所送りになった。


    2 スカイネットの構築
    中国が完璧な警察国家を作り出すためのステップは次のとおりだ。
    第1段階は敵を特定すること。少数派、移民、ユダヤ人、イスラム教徒などの敵を選びだし、市民が抱える問題を彼らのせいにする。これらの敵があらゆる場所に存在し、「国の力と名誉にたいする脅威となる」と人々を説得する。
    第2段階は、敵を監視する技術を管理すること。顔の特徴、DNA、音声記録、ウェブ上の行動履歴など、敵のデータを収集できるカメラやソーシャル・メディアを利用する。敵についてのフェイク・ニュースをソーシャル・メディアやアプリで広め、ヒステリー、非難、被害妄想に満ちた空気感を作りだすのが狙いだ。
    第3段階は、カメラ、人工知能、顔・音声スキャナーを使って国全体をパノプティコンに変えること。事実や真実から遮断され、つねに監視下に置かれると、多くの人は敵と味方を区別することができなくなり、政府に対抗するために必要な情報も得られなくなる。友人が友人を裏切り、上司が部下を密告し、教師が生徒の秘密を暴露し、子どもが親を攻撃する。すると、誰もが政府に庇護を求めるようになる。

    2017年から2020年にかけてインタビューしたウイグル人の全員が、少なくとも複数の家族と3人以上の友人が姿を消したと証言した。

    2017年、中国は少なくとも260の強制収容所(いわゆる職業教育訓練センター)のネットワークを新疆ウイグル自治区全域で構築しはじめた。高校、体育館、政府施設が収容所として再利用されることもあった。政府は、人々が自発的にこれらのセンターに行き、みずからの意思で離れることができると主張した。しかし実際にははるかに悪質なものだった。政府は「脳からウイルスを取りのぞいて治療・浄化し、正常な精神を回復させる」という医学的説明のもと、人々を収容所に収監し教化や強制労働、拷問を行なった。


    3 AIと監視装置の融合
    2014年に中国政府は、民間企業を通じてある試験的な計画を全国で展開しはじめた。 この計画で構築されたのは、購買履歴やウェブ閲覧履歴を監視し、すべての国民の信用度をランク付けするシステムだった。
    ここに組み合わさったのが顔認証ソフトウェアと監視カメラデバイス、AIソフトウェアである。例えば、顔認証ソフトウェアFace++は、カメラのレンズで人々を見つめ、その顔と声を結びつけ、住民を監視するために必要なスマートフォンとアプリを警察に提供し、 AIによって処理される大規模な監視ネットワークにすべての情報をリンクさせる。機械の高性能化によって、当局が住民を管理するための仕組みができていった。

    IJOPの詳細について、ヒューマン・ライツ・ウォッチは次のように報じている。
    ――IJOPは、複数の情報や機械の「センサー」から情報を収集している。情報のひとつは CCTVカメラで、なかには顔認証機能や(暗視のための)赤外線機能を備えたものもある。カメラの一部は、警察が危険だとみなす場所に設置されている。娯楽施設、スーパーマーケット、学校、宗教指導者の自宅などだ。もうひとつの情報源である「Wi-Fiスニファー」は、コンピューターやスマートフォンなどのネットワークに接続された機器の固有のアドレスを収集する。くわえてIJOPシステムは、地域一帯にある無数の検問所、出入りが管理された共同体の「訪問者管理システム」をとおして、車のナンバープレート番号や市民の身分証明書番号などの情報を受け取っている……車両検問所はIJOPに情報を送信し、「IJOPが発する予測的警告をリアルタイムで受信し、調査・規制するべき対象者を特定する」ことができる。

    メイセム「ウイグル族への弾圧がそれと(一九八四年の世界と)異なる点はなんだと思いますか?」「テクノロジーです。『一九八四年』が出版されてから、たしかに数多くの独裁政権が生まれました。ソ連、毛沢東の中国、北朝鮮、鉄のカーテン。でも、新疆がそれらと異なるのは、テクノロジーがついにSF小説を模倣できるレベルに達したという点です。過去の作家たちが予測していた技術は、いまや完全に現実のものになった。むかしの指導者たちは、力と暴力を利用して人々を抑圧した。テクノロジーが発達した現在、かつてのような暴力は必要ありません。指導者たちはテクノロジーをとおして人々を支配し、洗脳し、人間性をはぎ取って従属させることができる」

  • ジョージオーウェル 一九八四年
    が発表されたのが1949年 今から75年前

    私がその本を読んだのが
    古典SFとして同じく75年たつ先月のこと

    ありうるかもしれない未来に
    恐ろしくなった感情が消えないうちに
    現実に
    当事者さえも抗えないうちに
    起きていたことに驚愕

    さらに最悪なことに
    世界はもっと利得のために複雑に絡み合い
    わたしたちが知り得る手段のマスメディア
    報道も規制がかけられてるものである可能性もあり
    真実を見極めるのがとても困難な状況
    さらに
    私が使うスマートフォンや
    ネットショッピング、インターネット
    AI、chatGPを効率的ともてはやす
    それ自体、私たちの情報を与え続けてる事実

    これからどう生きるべきなのか
    わからなくなります

    先日量子コンピューターの特集のテレビをみました
    詳しいしくみは難しいけど
    量子コンピューターがあれば
    難読なパスワードやセキュリティも
    解読できてしまう
    それを防ぐのも量子コンピューターだと
    だから、各国が競争して開発をしてると。

    私には難しいことはわからないし
    いうこともできませんが
    誰もが、どんな考え方も尊重し合える世界を
    作れるのが人間なんじゃないかと。
    誰もが、少しでももっと自分自身の時間を
    自分自身のために使える時間を増やせる
    楽しみを持つ機会をもたらしてくれるのが
    科学の発展でいいんじゃないかとおもいます。

    誰かだけが得をしたり
    誰かだけが権力を得るための
    社会を作るために技術を使われたくないし
    そんな技術はいらないです

    平等ではなく、それぞれの違いを
    ただ許容していくべきだと。

    長く備忘録的になりましたが、
    ここまで読んでくださった方
    ぜひ、一九八四年をよんだあとに、この本を
    手に取っていただきたいです。

    2024年
    この本が書かれた時から2年
    さらに世界は違う方向にむかっているのに
    私が知らないだけかもしれませんが
    読んで無駄にならないと思います。

  • ウイグルで起きている、弾圧と監視による、ディストピア建設。

    あれ程広大な面積を有する国が、もっともっと、とあちこち手を伸ばすのか。
    その理由の一つが、地下に大量に眠る
    レアアース等、デジタル化に欠かせない、資源の確保。
    そして一帯一路の途上にある為、テロ等で邪魔されない為。

    中共は、いずれ海外でも国内の様に、強い振る舞いをするだろう、と書いてある。

    メイセム、という優秀な女性が、北京の大学へ行くと、漢民族以外、という理由で差別される。
    地元にかえると、警察に呼ばれ、全てのDNA情報をとられる。
    党は、膨大な数のウイグル人のDNA情報を有するという。
    強制収容所へ、収監されたメイセムは、
    4か月後、収容所を脱出する。
    母親の命懸けの行動により、一人でトルコへ脱出するが、収容所で受けた心の傷により、周りが信じられなかなり、一年間、寝たきりで過ごす。
    「心の牢獄」と書いてある。

    女性達は、不妊にされ、人口はどんどん減っている、という。

    今現在も、監視、弾圧は続いている。

  • 中国政府による新疆ウイグル自治区での大規模な人権侵害について描いたノンフィクション。「1984」のようなフィクションの世界の話にも思えてしまうが、現実に起きているなのだから恐ろしく、悲しい。
    邦題には「AI監獄」とあるが、AIを駆使した購買履歴の監視(ある商品をいつもより多く買っているのは怪しい)や、街中の至る所に設置した監視カメラと顔認証技術を用いた監視、だけではなく、住民を10人程度のグループに分けてお互いの行動を報告させ齟齬があれば尋問する、共産党幹部を一週間家庭に送り込んで寝食を共にして監視するなど、テロ予防を名目にあらゆる手段で監視を行なっている。
    本書では北京大学を卒業し海外の大学院に留学していた女性の過酷な経験を中心に、監視や尋問、更には「再教育センター」での過酷な思想教育について語られている。
    自分に何ができるか考えても残念ながら何も思い浮かばないが、せめてこの本を広めることはしたい。
    そして、本の著者、リスクを承知でインタビューに協力された方々、翻訳者や出版に携わった方々に、この本を世に出してくださったことに感謝します。

  • ウイグルの現状を知ることで、自分が日本人として生まれたという幸運を心の底から感謝したくなる。もしウイグルに生まれていたら、または中国に生まれていたら…想像するだけで恐ろしい。家にはカメラと盗聴器を仕込まれ、近所の住民同士で監視し合い、何を買い誰と会いどこへ行ったかすべての行動を監視される世界。さらに「家族になる運動」と称して共産党の幹部をウイグル人の家庭へ送り込み、寝食を共にしながら住民を監視するという完全にイカれた政策が罷り通っている。そしてあなたが危険分子(予備軍も含む)かどうかの判断は、政府側が用意したバイアスにまみれたAIが行うという…もはや自分の頭の中にしか自由な場所がない。インターネットという大海においても、政府の検閲によりコントロールされており、自由に泳いで助けを求めることができない。パスポートの発給も止められ、運良く国外へ逃亡した者へは家族を人質に取り自国へ呼び戻し、洗脳か殺害する。女性へは避妊治療を施し、ウイグル人を根絶やしにする。中国共産党よ、いったいウイグル人が何をしたというのか。かつてのユダヤ人に対するホロコーストのような惨劇が、なぜ現代でも行われていて許されるのか。我々は外から何もすることができないのだろうか。せめてHUAWEI製品は今後一切買わないようにしようと誓った。なにがファーウェイ(華為・中国のため)だ。

  • 勉強になるし怖い。華為はクロですね。

  • 新疆ウイグルにおける人権問題がニュースなどで話題になるが、その実態はよく知らなかった。本書は、この問題に関するリアルな実態を伝えてくれる。オーウェルの「1984」は読んだことがないが、監視カメラ、顔認証技術、SNS監視、メール傍受などによる完璧な監視、そして、AIによる犯罪予測に基づく取り締まり。そのAIがお粗末なもので、犯罪とは無関係な者も、AIが危険と判断しただけで連行・拘留されるこの不可解な事態。住民どうしの相互監視と内部告発もあり、街中が監獄のようで、誰も本当のことが言えない。再教育センターでは思考停止になるまでマインドコントロールされる。
    知るほどに恐ろしい。

  • 衝撃的な内容だった。人間をデータ化しそれを分析するAIと警察国家は相性抜群で、ウイグルで起こっている現実にただただ怒りや哀しみを覚える。本書に書いてあることは西側から見た一方的な内容ではあるので、中国側の立場に立ったりこの目でウイグルの地を見てみたいとも思った。

    その上で問いたいのは、なぜ中国を止められないのか。
    内側(中国人自身)と外側(外国や外国人)の両方に問題があり、つまるところ経済第一主義に陥ってないだろうか?
    中国人が自国が行なっている非人道的な政策に無関心、無対応でいられるのは自身の安全が1番だとは思うが、それ以上に経済的安定を得ているので身内を批判できないのではないか。
    また、日本を含む外国も経済的に中国の存在が大きく、「自身が損をしないために」ウイグルのことを声高に批判、あるいは批判はしても実際的な影響力のある制裁ができないのではないか。

    非人道的な行いを正すために、経済的な損失は覚悟しなければいけない。自分の生活にも降りかかってくるとは思うが、その覚悟を持たないと悲劇は続いていってしまうと思った。

  • ーーテクノロジーは自由など与えてくれなかった。ぼくたちはデジタル化された牢獄のなかで暮らしている。(p.327)

    ここで描かれたディストピアが日本の未来ではないと誰が言い切れるだろうか?
    本書はウイグルの現在を描くドキュメンタリーであるとともに、テクノロジーに諸手を挙げて投資を続ける現代社会の黙示録でもある。
    アマゾン、アップル、グーグルを始め、本書で名指しされるテック企業の世話にならずに暮らすことは、もはや不可能になっている。それらへの依存の先にあるのは支配であり、しかもネットワークテクノロジーがかつてないほど完璧な監視体制を築きうるのだという事実が、ここにまざまざと示されている。
    監視を自らの安全のために必要なことと捉え、プライバシーの流出を必然とみなす人々は、ウイグルの事態をどう見るのだろうか?『やばいデジタル』を読んで感じた不安が、より一層、掻き立てられる。

  • 2022/2/20
    事実を知ることは時にとても気が重くなる。
    しかし決して他人事ではないのできちんと向き合わなければならない…そういう内容だった。
    単なる差別ではなく隔離と洗脳、そして事実上の奴隷扱い(それを利用している外の世界も同罪である)という人権の問題、さらには先端技術が人間を虐げる手段に用いられている(人間がAI判断に操られているというべきだが)というウイグルだけに限らない問題。
    『希望の歴史』のような前向きな視点もある一方で、同じ世界でのこの現実(事実ではないという主張も出てくるだろうが)をどう捉えるべきなのか。
    読みながらナチスによるユダヤ人迫害を連想したが、もしナチスが滅ばなければその事実は公式には認められなかったかもしれないと思うと、当面の現状打破は難しいのかもしれない(そして時間が歴史の中に葬ってしまう?)
    国、組織(公私を問わず)のためには人権を無視し、それを正当化する権力は国内外を問わず至る所にあるが、組織は人によって成り立っているということを思えば、いつ、その線引きが違うものになって、中にいたはずの自分や家族・友人が枠外に放り出されるかもしれないという考えには至らないのだろうか、子や孫の世代まで安泰だと考えているのだろうか。
    ウイグル族対漢族がいつか漢族Aと漢族Bの構図になるかもしれないとは考えないのだろうか。
    AIにしても結局最初のアルゴリズムは人間がインプットしたもので、そこに絶対的な基準などない。
    シンギュラリティの有無が議論されるが、そのずっと前の段階で既存AI設計者の意志によって被害を被る者が出てきてしまった場合、それが犯罪かどうかをどうやって判断するのか。
    もし今後AIが学習を重ねて組織中枢のトップ、幹部に疑いを向けた場合に彼らは素直にそれを受け入れるのだろうか、もしそれができないのなら今の判断自体信用できるものなのだろうか…。
    それに依存している多くの取り巻きは何を考えて何のために生きているのだろうか。
    「国のため…組織のため…」と言い訳を口にする者の大部分は、結局自分自身のことだけしか考えていないのだろう。

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