私たちの幸せな時間

著者 :
  • 新潮社
3.82
  • (17)
  • (16)
  • (19)
  • (1)
  • (2)
本棚登録 : 127
感想 : 29
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105055516

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 修道女の叔母さんに連れられて行ったのは、ある死刑囚が収監されているソウルにある拘置所。
    幼児期より劣悪な家庭環境の中で育ち、三人を殺害したとされるその死刑囚。
    思春期の時の事件により、心に傷を抱えていて、母親ともうまくいかず、自殺もなんどか試みた元国民的歌手のユジュン。
    最初はいやいや拘置所に通っていたが、面会を重ねるうちに、お互いのことを知り、だんだん理解を深め、心を通わせるようになる。
    そして二人とも初めて真剣に生きたい、願う。
    これはやはり恋愛小説なのだなぁ。

  • 1997年12月30日に、
    韓国の拘置所で合計23人の死刑が執行された
    このニュースをきっかけに、
    死刑制度について考えさせられたのが
    この本の執筆動機だった、と著者が語っている。

    死刑囚と面会を繰り返すうちに
    自分の中の怒りや殺意を表出できるようになる主人公
    貧しく教育も受けておらず身寄りもない死刑囚と
    裕福で大学教授で立派な家柄の主人公が
    同じような理不尽な痛みを抱えている

    (子どもをレイプした)人間のクズを私が殺せば
    それは殺人になる。
    でも、殺人をした私を殺人犯として処刑すれば
    それは正義ということになる。
    人間が人間を殺すことに変わりないのに、
    一方は殺人になり、もう一方は刑の執行と呼ばれる。
    一方は殺人犯としてその罪で死に、
    もう一方はその手柄で昇進する・・・
    それが果たして正義なの? (P. 198)

    この小説の死刑囚は、実は殺人犯ではなく、
    あまりに人生に絶望していて、
    濡れ衣でも死ぬことを選んでいた、と分かる。

    死刑は、取り返しがつかない。
    それはとても重い事実だ

  • 蓮池 薫さん翻訳でなければ、たぶん読もうと思わなかったであろう本
    法学部なのに訳がお上手だわー

    内容はとっても悲しい、辛い
    韓国の知られざる現実の数々も重い

    でも主人公が今まで見ていなかった事実、景色、人、すべてのものに徐々に色がつき、自分の変化にとまどいながらも心を取り戻していく・・・辛いだけじゃなくて、救われます

    キリスト教の話ですが、ノンクリスチャンでも読めると思います

  • 死刑囚の男性ユンスと自殺未遂3回の女性ユジョン。女性の叔母モニカ修道女が教誨師のように死刑囚を訪問していることから縁が出来た出会いと心の通い合い。韓国社会の陰の部分を見せられる、非常に陰鬱な展開なのだが、最後に男性が処刑される時の印象は爽やか。ここまでして死刑は行われなければならないのか!死刑問題について考えさせられる。「石がパンになり、魚が人になるのは魔術だが、人が変わるのは奇跡!」「分からないという言葉は、免罪の言葉でなく、愛情の反意語。正義、憐れみ、連帯感の反意語」印象に残る言葉だった。

  • 過去のレイプ被害で自殺未遂を繰り返してきた女性と、冤罪で死刑判決を受けた男性、そして2人を見守る教誨師の叔母の物語。面会交流を通じて、男女とも、自分の生い立ちとこれからの人生を見つめなおしていきます。「他人を赦す」とはどういうことかを考えさせられる著。

  • 2014年7月韓国に出張するさいに 携行し 読んだ本。

    韓国はよくしられているようにキリスト教信者の数が多い。
    この本は何度も自殺を試みた自分で不幸だと思っている
    主人公が、キリスト教のシスターである叔母につれられて死刑囚と定期的に面会を重ねるようになるなかで、人生の意味をみつけていくという話である。

    死刑囚が他の受刑者と同じところに入っているというのは日本とは違う。日本は刑務所でなく拘置所におかれる。また常に手錠をさせられているというのも人権軽視で問題だ。


    この本は人生をいきるとはどういうことかを追究したかったのだが、人にどのようにみられるか、どう自分はおもったかが描かれており、日本の小説のメンタリティーに近い。しかし、語られる出来事は、強姦、冤罪、貧困と重い材料ばかり。

    低い材料で同じテーマを追究したほうが日本人受けはよいだろう。

    それでもなかなかの佳作。
    蓮池さんの翻訳も読みやすい。

  • 2014年3月18日読了

    死刑囚という題材で、ラストは見えていて、読み進めて行くうちにどんどん辛くなった。
    キリスト教の概念がないせいか、それとも小説のために極端に描かれているからなのか、理解しずらい点も多々あったけれど、学ぶところや、反省するところがたくさんあった。
    なによりも、濃く描かれているわけではないけれど、伝わるユンスとユジョンがお互いに惹かれあっていくところが切なかった。
    映画はカンドンウォン。ちょっと気になる。けど悲しいから見たくないかも。。> <

  • 残虐な死刑囚ユンスと自殺未遂を繰り返すユジョン。
    生きる希望を見出せない2人が運命的に出会い、生きる意味を
    みつける物語。
    世の中の理不尽が胸を締め付ける。
    貧富の差や、人々の無関心が生んだ悲劇。
    キーワードは『赦し』。
    ユンスの死刑を食い止められなかったことが読んでいてももどかしく、
    息が苦しくなるくらい泣きました。
    死刑制度のことや、人生についていろんなことを改めて考え直す
    よい機会になりました。
    蓮池薫さんの翻訳が素晴らしいです。

  • 配置場所:摂枚普通図書
    請求記号:929.13||K
    資料ID:50700202

    2007/07/14公開『私たちの幸せな時間』原作

  • 改めて、死刑制度について考えさせられた。韓国と日本は違うけれども。日本は死刑制度は多くの国民が賛成だ。私もその一人。刑を受けることで、もちろん改心する受刑者もいるだろう。死刑と無期懲役ではあまりにも極端すぎるから根本的に変えるべきであるとはずっと思っていた。他の国みたいに刑200年とか100年とかをつくるとか。ほかに、この本を読んで韓国という国が抱える闇も見えたような気がした。これはあくまでフィクションなので本当にあったことではないが、警察に通報してもいつまでたっても来ない。逆に通報した人が警察に逆ギレされるなんて、日本では考えられないようなことが(→たぶん)あるのだろうか。性犯罪も韓国は多いらしい。小説の内容ももちろんすばらしかったのですが、韓国という国全体が少し見えたような気がしました。

全29件中 1 - 10件を表示

孔枝泳の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×