- Amazon.co.jp ・本 (315ページ)
- / ISBN・EAN: 9784104752065
作品紹介・あらすじ
あの夏の約束を捨て、私は外交官になった。-初めての任国で親友になった12歳の少年。政治に巻き込まれるなと警告してくれた同期。秘められた友情と別れを追想する告解の書。
感想・レビュー・書評
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外務省に入省した佐藤優さんが語学研修でイギリスの家庭にホームステイし,その家族の内グラマースクールに通うグレンとの中身の濃いやり取りが詳細に記載されている.日本の高校生程度の年齢のグレンだが,26歳の優さんと対等に会話ができているのが驚きだ.食べ物の話が随所に出てきてイギリスの食事,特に家庭の食事の内容が分かって面白い.
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佐藤優が外務省に入ってロシアの語学研修のため英国に留学した際に、ホームステイ先の家族の少年の育んだ友情物語。ノンフィクション。
紳士協定とは、佐藤が少年の宿題を手伝ったり、知識等を伝える代わりに、少年は佐藤に英語を伝えること。
少年を子供と思わず対等の友人として、いろいろな思いを語っていくそのやりとりは魅力的だ。
食べることが好きな佐藤らしく、いろいろなグルメを食する記述は、とても食欲をそそる。
知的好奇心にあふれ、将来大学へ進むことも考えていた少年が、結果的にはそうでない人生を歩む。
佐藤と外務省同期の武藤氏との友情も心があつくなる。
人との会話を大切にしていきたい気持ちが自然とわいてくる一冊。 -
鈴木宗男議員の事件で一躍有名になったけど、この人の著作を読む限り、とても悪い人には思えない。この本は、外務省に入って、イギリスでの研修時代の話。著者の人を思いやる優しさ、友人の著者への優しさ(助けることはできないが、裏切ることもしない)。そして、読書家、勉強家でもあり、分野こそ違うが刺激を受ける人である。
甘く苦い青春の終わり、本の帯に書いてあるこの表現は読み終わってからは納得できるけど、読む前なら誤解されそう・・・。 -
情勢分析やテクスト読み解きが多くなってきた佐藤優氏の久々のメモワール。もともと佐藤氏は『国家の罠』『自壊する帝国』『私のマルクス』と自らの体験を回顧する著作が評価されてきたし、本書を読むと、やはり氏の真骨頂はここにあるのではないかという気がする。これまでの著作では、ロシアの知識人や日本の政治家、官僚たちとの関わりが描かれてきたが、本書では12歳のイギリス人少年グレンとの年齢を超えた友情が描かれる。少年との対話では、佐藤氏が12歳の異国の少年に分かるように言葉を選び、かみ砕き、表現を工夫しているので、氏の思想や考え方がとても分かりやすく語られる。周囲に理解者のいない少年グレンの孤独はきっと同じように悩む日本の少年にも共感可能だし、既に大人となった人々にも、自らの中の孤独な少年の部分に響くものがあると思う。
佐藤氏とグレンが二人で『戦場のメリークリスマス』を観る場面が最も印象的だった。過ぎ去った青春を追想する優しさと切なさに満ちた作品。 -
同志社大学にはユング派の樋口先生という方がいらして、佐藤氏もその薫陶を受けたらしいのですが。
佐藤氏も人間だし、どちらかというとまじめな方ですから。自分にも間違った点がなかったかどうかなどと、拘置所内でいろいろお考えになったのだろうと拝察します。
作品としてみれば、佐藤氏の例えば「国家の罠」なんかに比して、弱弱しい感じにまとまっています。でもまあこれはこれでよいのではないかと思います。グレン君はかわいいし。
靴を20足もっててポルシェを乗り回す、佐藤さんの後輩さんはその後どうなったのか、興味があります(笑)。
あと「戦場のメリークリスマス」ねえ。あの映画は日本人なら、ああ大島監督はこういうことが言いたかったんだろうなと、推察することができると思いますが。外国人にはそれ、無理じゃないのかなと常々思っておりました。なんかジャパニーズピーポークレイジーとしか思ってもらえない気がしますけど。
佐藤さんの解説がなかったら、グレン君はあの映画を率直に言ってどう思ったのか。本当のところを聞いてみたい気がします。
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本書は著者の体験なのだろうが、30年以上たっていることを思うと余りにもディティールが精密、迫真性に満ちている。
イギリス料理に詳しいのも読み応えがあるし、読み進んで表題が「紳士協定」となっている理由がわかると思わず微笑んでしまう。
「15の夏」の続編としてワクワクドキドキのイギリス体験が満載。イギリス階級社会の実態をリアルに描いている本書は、わかりやすく説得力がありしかも面白い。
最後がやや物足りない印象を持ったが、それも小説ではなく実体験ならではのものなのだろう。著者の人間性と内面が仄見える本である。知的刺激を追求する佐藤青年の姿は読んでいても心地良いと思った。 -
【由来】
・図書館の佐藤優検索で
【ノート】
・最近、傾倒している佐藤優さんが、外交官になって最初に語学トレーニングでイギリスに留学している時の記録。ホームステイ先の少年との交流を軸に、彼がどのような生活をイギリスで送ったかが描かれている。彼が他の著作で、ロンドン留学時にチェコの古本屋に出会ったとか、ロシア語の本が安価で入手できるのに喜んだ、と記述しているのだが、その実情が分かるのは、ファンには嬉しい。
・可愛くて聡明だった少年との再会はちょっと切なかった。だが、佐藤さんが最も書きたかったのは「あとがき」に書かれていた当時の同僚へのメッセージだったのではないかという気がした。あれを読んだ本人は泣いたのではないか。 -
2015年12月1日読了
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語学研修の為に滞在したイギリスでの経験を中心に、佐藤氏が外交官となっていく準備段階の物語。ホームステイ先の少年グレンとの交流を通してイギリスの社会が、外務省ロシアスクールの同僚との交流を通して外交官の立場が見えてくる。そして、佐藤氏の目標が、外交官となることにあったのではないことや、学びの姿に圧倒された。12歳の少年とも対等な立場に立ち、学ぼうとし、与えようとする様子はやはり、外交官というより、学究の徒としての貪欲さを感じた。
グレンとの交流も、同僚との交流も、疎遠になっていく様がさびしく感じたけれど、人と人とは、そういうものなのかもしれない。 -
佐藤さんが外務省に入った後、イギリスに留学の頃の話。
頭が良くても大学に行かないと決めてしまったグレンを悲しく思った。
佐藤さんは、すごく魅力的な人間だと思うが、武藤氏の
「深い人間関係を作るのが上手だ。他人の心理を読むことがとてもうまい」
という言葉で納得。
佐藤さんの本を読むと、勉強をもっと頑張ろうと思えるのがとても良い。