- Amazon.co.jp ・本 (409ページ)
- / ISBN・EAN: 9784104594030
作品紹介・あらすじ
昭和六年生まれの鬼-その筆名とうらはらに、団鬼六の生涯は純粋さと赦しに貫かれていた。伝説の真剣師と交わり、商品相場を追い、金を持ち逃げされ、妻の不倫に苦しみ、がん手術を拒否し、その全てから小説を産んだ。「異端の文豪」団鬼六の出生から最期まで、波乱万丈の生涯を描ききる感涙の長編ノンフィクション。
感想・レビュー・書評
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いやあ、おもしろかったー。「破天荒」という言葉はこういう人のためにあるんだなあと、つくづく感じ入った次第。そしてまた「鬼才」の名にこれほどふさわしい人もそうはいないだろう。将棋を通じて親交のあった著者にしか書けないであろう、血の通った評伝になっていて読み応えたっぷりだ。
団鬼六その人については、その波瀾万丈の人生自体が一編の小説のようだ。人生の大きな転変の節目節目で、不思議にも思える頼りない偶然に導かれて、希代の作家「団鬼六」ができあがっていく。その過程が実にスリリング。世に出るべき器の持ち主、ということなのだろう。虚実入り乱れる驚きのエピソードの数々から、人生を愛し、人を愛し、また愛されたスケールの大きな人物像が浮かび上がってくる。最後の葬儀の場面ではしみじみ泣けてきてしまった。
本書が面白いのは、鬼六を巡る人々がこれまた並みの人間ではなく、そのアウトロー的な逸脱ぶりに奇妙な爽快感があることだ。鬼六の父母しかり、鬼六がかわいがったたこ八郎しかり。しかし、何と言っても群を抜いて鮮烈な印象を残すのは「真剣師」小池重明だろう。
いやまあ、この人の天才ぶりと、それをしのぐダメ人間ぶりは本当にすごい。恵まれた才能をうまく制御して生きていくのは難しいものなのだなあと思う。でも、その愚かな生き方には抗いがたい魅力があって、鬼六も自身をしのぐ彼の破滅型の人生に心ひかれたからこそ、何度裏切られても面倒を見ようとしたのだろう。
私もそうだが、多くの人は世間の一定の枠からあまりはみ出ずに生きている。そんなもの無視して欲望のままに突っ走りたい気持ちがないわけではないけれど、やはり現実は重いのである。だから、ちまちました分別をうっちゃってしまった、小池重明や団鬼六のようなアウトロー的存在に、どこか胸のすく思いをするのだと思う。
また、本書は、著者大崎善生さん自身の人生についても一定のページが割かれていて、ここがまた面白い。小説家を目指すが、まったく書けずに一度は挫折。将棋にのめり込み、将棋雑誌の編集者から、再び作家を志していく歩みには、一人の青年の生き方として胸に迫るものがある。
団鬼六晩年の傑作とされる「真剣師 小池重明」「不貞の季節」などをわたしはまったく読んでいなかった。早速読もうと思う。楽しみだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
団鬼六ってこういう人だったんだと初めて知りました
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いや〜〜長かったわ
どうにも集中できないままで・・・
面白さがイマイチのままで・・・ -
大崎氏の控えめな文体。何人もいる赦す人たち。秀行氏が父のことを語るのを聞いたが、赦す人だった。
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H29/8/30
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素材がいいと面白い、読んで損なし。
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誰かが紙面で「大崎善生の作品はどれもいい、特に”赦す人”は誰にでも勧めたい一冊」のような記事を読み、私も本著者が好きだが、本作は読んだこと無かったので、内容も確認せず読んでみる。
団鬼六氏の評伝じゃねーか、誰にでもオススメな物かね?
とびっくりするが、興味があり読み進む。最初は、どうしてだろう文章に入り込めない。対象者と思い入れが強すぎるのか、距離が近すぎるのか、著者自身の説明も多く、混乱してしまうなぁと思っていた。
氏の
が途中からこれは団鬼六評伝と言うだけでなく、大崎善生氏の自伝なのだなと思い腑に落ちる。
中学校で英語を教えているのに、締切が近付くと、授業を自習にして、教壇でSM小説を書くくだりは流石に参った。
団鬼六氏が透析を受けるくらいなら死を受け入れると言っていて、私と同じだなと思ったが、意見を変え透析を受け、それに慣れると、「受けて良かった」と言っていたので、私もまあその時にならないとわからないが、もう少し頭を柔らかくして考えても良いかなと思った。
【読みたくなってしまった本】
不貞の季節
花と蛇
真剣師 小池 -
団鬼六の伝記。年末から読み進めたがやっと読了。団鬼六としてやっていくことを決断したところは、仕事を選択するという事がどういうものなのかを指し示すようであり、道に迷うものとしては突き刺さるものがあった。周囲から求められること、仕事に貴賤がないとはつまるところ、求められるからあるのだなと思い、その求めにただ応じるということの潔さみたいなものは純粋にいいなと思う。徹底的に遊んで、最後、悟れないということを悟るあたり、鬼六らしくてしびれる。破滅的に全てを受け入れる、一言で言うと、大きな男である。団鬼六の本は読んだことが無いが、とりあえず、花と蛇あたり読んでみることにする。
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SM、女、将棋を愛した「団鬼六」の傑作評伝である。「小説新潮」連載時から楽しみにしていたが、期待に違わず面白い。
・相場師、元書生・女優の父母の元に生まれる
・教師!と結婚し、自身も教師となりつつSM小説を書きまくる
・性豪なはずなのに、20年ほど連れ添った妻に浮気をされ離婚
・スペアな愛人と再婚
・自身が立ち上げた会社を黒字なのに赤字と勘違いし廃業
・将棋雑誌で赤字を出し数億円の御殿を失い借金にまみれる
・自身のSM小説が警察の摘発を受けないことに真剣に悩む
・孫ほど年の違う最後の愛人の自死
・真剣師小池重明やたこ八郎との関わり
これで面白くないはずはない。
加えて、著者は、元将棋編集者で小説家の「聖の青春」の大崎善生。晩年の団鬼六に寄り添った。
大崎は、団鬼六逝去時に、「紳士そのもの」だったとのコメントを残しているが、まさにそのとおり。本書で浮かび上がるのは、茶目っ気があって、おっちょこちょいで、アホな人・アホなことが大好きで、何とも大らかで、人生・人間の全てを愛した団鬼六像である。また、本書に通底する大崎の団鬼六に対する愛情、友情も、この本の読み心地をよいものにしている。将棋界を通じ人生が交差してきた2人が、数十年を経て、互いに大へぼ手を応酬しあう将棋を指す場面が素晴らしい。
久しぶりに読み応えのある本であった。
(週刊文春の先崎学の本書に対する評も素晴らしい) -
『花と蛇』の著者として有名な団鬼六さんの一生を描いたノンフィクション作品『赦す人』を読了。確かに豪快な人ではあるが赦す人と言うタイトルは悼む人のタイトルを波パクった感じがあり団鬼六さんに失礼な気もした。まあそれはわて置き、生い立ちから死のときまでほんとうに快楽主義というか本当に生ききった人だ。将棋の世界に使った無駄金などなど普通にしていれば成功者なのだが、いろいろな人と関わるうちに人生のいろんな場面で博打をうってします。そして最後には死は夜逃げだなといって冗談をいいながら死んでいった団鬼六氏。凄すぎる人です。一読の価値あり。