世界中が夕焼け: 穂村弘の短歌の秘密

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  • 新潮社
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  • / ISBN・EAN: 9784104574025

作品紹介・あらすじ

穂村弘の〈共感と驚異の短歌ワールド〉を新鋭歌人・山田航が解き明かし、穂村弘が応えて語る。ほむほむの言葉の結晶120首を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 山田航さんの穂村弘さんの短歌批評に穂村弘さんがさらにコメントを付した本。

    穂村弘は平成最大の歌人だ。穂村以前、以後とすら言えるほど、現代短歌に与えた影響は大きい。
    現代短歌シーンにおいての二つの顔。
    「ニューウェーブの旗手」としての顔。
    「短歌の啓蒙者」としての顔。
    穂村弘が書いてきたエッセイはすべて、自らの短歌に対する膨大な注釈である。
    穂村弘の短歌を読まなくては、エッセイの真の魅力にも気づけない。     (山田航さんの解説より)


    穂村さんの短歌はひょいひょい出来ているのかと思ったら、凄く頭を使っていて難しそうな内容でした。
    一度読んだだけでは理解しがたいところも多々ありました。
    辻一朗が穂村弘さんの本名だと初めて知りました。
    解説を読んでいると短歌の奥深さを感じました。

    ・『普通の意識の中に「ない」ことを書かないと「あるある」にはならない』というのが印象的でした。

    山田航さんの解説もまるで御自分の歌であるかのごとく鋭く、それに答える穂村さんも「これはただの言葉遊びではないのだ」とうのがすごく伝わってきました。
    この歌集はもっと勉強してからもう一度読み直したいと思いました。

    歌集帯より「穂村弘が本当に心の底から叫びたいこと、それは短歌のなかにある」
    一首の短歌を読むとき、そこに収められた時間と思いが、まるで解凍されたかのように、束の間、蘇るー
    思いは時を超えて、響き続けるのだ。<穂村弘>



    以下、全120首の中から主に取り上げられた50首より好きだと思った歌(意味がわかった歌です)なんか相聞歌ばかりになってしまいました。(一首を除く)よく引かれるという歌が多いのでご存知の方も多いかと思います。



    ○校庭の地ならし用のローラーに座れば世界中が夕焼け

    ○「酔ってるの?あたしが誰かわかってる?」「ブーフーウーのウーじゃないかな」

    ○冷蔵庫が息づく夜にお互いの本のページがめくられる音

    ○体温計くわえて窓に額つけ「ゆひら」とさわぐ雪のことかよ

    ○フーガさえぎってうしろより抱けば黒鍵に指紋光る三月

    ○教会の鐘を盗んであげるからコーヒーミルで挽いて飲もうぜ

    • 5552さん
      まことさん、こんにちは。

      穂村さんの本名を知り、衝撃を受けました。
      私が穂村さんをエッセイで知ってから20年くらい彼はずっと「穂村弘...
      まことさん、こんにちは。

      穂村さんの本名を知り、衝撃を受けました。
      私が穂村さんをエッセイで知ってから20年くらい彼はずっと「穂村弘」だったので、ペンネームだと知って戸惑っています。
      エッセイだけではなく、歌集も読まないと本当の「穂村弘」を知ったことにならない感じですね。
      素晴らしいレビューをありがとうございました。
      2023/02/22
    • まことさん
      5552さん。こんばんは♪

      素晴らしいなんて、とんでもありません。なんか、もっと他に書くべきことを書き残しているような気がしています。

      ...
      5552さん。こんばんは♪

      素晴らしいなんて、とんでもありません。なんか、もっと他に書くべきことを書き残しているような気がしています。

      私は、エッセイが苦手なため、あまり、穂村さんの、エッセイは読んでいない気がします。
      講座の受講の予習として、何冊か読んだのは、『短歌ください』とか『手紙魔まみ』をよく知らずに読んで、これは一体何だろうと凄く不思議に思ったのを覚えています。
      穂村さんの、本名はレビューに書いていいものか、迷ったのですが、歌の中に、ご自分の本名を詠まれたものも、発表されているので、いいだろうと思って載せました。やっぱり衝撃受けますよね。

      5552さんの、レビューも楽しみにしています。
      2023/02/22
  • 「短歌の“読み”の正解とは何か」

    そんなことを考えながら読んだ。

    この本は歌人の穂村弘の短歌を、同じく歌人の山田航が解釈し、そのあとに穂村本人が解説を入れるという構成。

    まず、穂村の短歌を一首提出。
    読者にポンと差し出された歌はすべて読者自身の解釈に委ねられる。
    短歌慣れしていない私のような読者は、ぐにゃぐにゃと頭を捻る難解な歌も多い。
    とりあえずの感想を得てページをめくるとそこには山田による“スリリングで強気な”(穂村談)“読みが”待っている。
    なるほど!と、一応納得してまたページをめくると、最後に穂村自身が山田の読みを受けての、自作解説。
    ……ん?山田さん、“読み”が外れてる…?

    当たり前である。
    たとえ同じフィールドで活躍する歌人同士でも、他者の作ったものの真意をそう簡単に読み解けるはずがない。

    最初こそ、山田の批評をふんふんと聞いて(読んで)いたが、読み進めるにつれ、「待って!山田さん、その“読み”は違うと思う!」とか、調子に乗りつつ一緒に感想戦をやっている気分になった。
    一首だけ、山田さんの“読み”が外れてて、私の“読み”が、穂村さんの解説に近いときがあって、超気持ち良かった。
    …いつのまにか、勝手に戦いを挑んでいたらしい。

    でも、著者解説=正解とは限らない。
    ときには、山田さんの解釈が穂村さんご本人の自作解説を上回って素晴らしい出来のときもあり、他者に読んでもらうって面白い、と思った。
    伝わると思ったことが、誤読されたり、逆に伝わらないと思ったことが、意外とそのまま伝わったり。

    穂村さんは好きだけど、穂村さんの短歌は難しい、と、思っていた私にはとても面白く、ひとりで穂村さんの歌集に対峙する勇気も少し頂きました。

    • まことさん
      5552さん。こんばんは♪

      読了されたのですね!
      穂村さんの歌は、難しいですよね。
      関係ないけど、私、明日、桝野浩一さんの『ドラえもん短歌...
      5552さん。こんばんは♪

      読了されたのですね!
      穂村さんの歌は、難しいですよね。
      関係ないけど、私、明日、桝野浩一さんの『ドラえもん短歌』をレビューしようと思っています。
      5552さんも、レビューされていましたよね。
      私は先に『世界中が夕焼け』を読んだので、『ドラえもん短歌』に、辻一郎の名前がちょこちょこ出てくるのに、気づきました。
      一首挙げると
      ○青空の入道雲はそれはもい配色としてドラえもんです
      なんか、他の方とは、やっぱり一味違うなあと思いました。
      2023/03/14
    • 5552さん
      まことさん、こんにちは。

      穂村さんの短歌、魅力を解剖してくれる山田さんのおかげで、前よりは少し理解できたかもしれません。
      『ドラえも...
      まことさん、こんにちは。

      穂村さんの短歌、魅力を解剖してくれる山田さんのおかげで、前よりは少し理解できたかもしれません。
      『ドラえもん短歌』懐かしいです。
      4、5年ほど前かな、レビューしたのは。
      穂村弘さんが本名で投稿されたということですか。
      それは、ものすごく豪華な歌集だったんですね!
      手元にはもう無いのですが、もう一度読み直したくなりました。
      2023/03/15
  • 穂村弘氏の短歌を山田航氏が選んで紹介しどのように鑑賞解釈、その後穂村氏が種明かしのようなお返事のようなコメント。1首とその歌に関連する歌も紹介があったりして3,4頁に及びじっくり味わう時間。
    紹介の出だしの文がまず秀逸。

    オール5の転校生がやってきて弁当がサンドイッチって噂
    「近年の穂村作品に特徴的な、昭和ノスタルジー風の歌」
    その甘い考え好きよほらみてよ今夜の月はものすごいでぶ
    「穂村弘お得意の会話体の歌」
    冷蔵庫の息づく夜にお互いの本のページがめくられる音
    「しずけさの美学にあふれた、大人の相聞歌」
    夏の終わりに恐ろしき誓いありキューピーマヨネーズのふたの赤
    「『シンジケート』の頃の穂村弘は結婚に対する恐怖心を強く持っており、恐怖とともに描かれるのがことごとく結婚のメタファーである傾向にある。」

    「穂村弘が書いてきたエッセイはすべて、自らの短歌に対する膨大な注釈である。自分の歌はこうよんだらいいよという補助線であり、ヒントである。」
    エッセイではほっこりしたり笑ったりと楽しんでいたが、穂村さんの歌をいろんな解釈で新たな発見ができ、もっと穂村さんの短歌の世界にどっぷり触れたいと思った。

    • 111108さん
      ベルガモットさん、こんにちは

      穂村さんと山田航さんのやりとり、たまらないですね!この前山田さんの短歌鑑賞の本を読んでいいなぁと思いましたが...
      ベルガモットさん、こんにちは

      穂村さんと山田航さんのやりとり、たまらないですね!この前山田さんの短歌鑑賞の本を読んでいいなぁと思いましたが、この本はそれに穂村さんのお返事コメントも載ってるなんて‥ぜひ読みたいと思います。
      2021/07/04
    • ☆ベルガモット☆さん
      111108さん、メッセージ嬉しいです!そうなんですよ、山田さんの穂村さんの歌を愛しく推理読み解く鑑賞を優しく「そうかもねえ、ほんとはねえ」...
      111108さん、メッセージ嬉しいです!そうなんですよ、山田さんの穂村さんの歌を愛しく推理読み解く鑑賞を優しく「そうかもねえ、ほんとはねえ」という声が聞こえてきそうなやりとりなんです。感想お聞かせくださいませ。
      2021/07/04
    • 111108さん
      声が聞こえてきそうなやりとり、いいですね〜ますます読みたいです!
      声が聞こえてきそうなやりとり、いいですね〜ますます読みたいです!
      2021/07/04
  • 短歌なんて学生時代に授業でやった俵万智の『サラダ記念日』以来。
    なかなか面白かったです。

    印象的な情景や、はっとする場面を巧みな言葉、表現、韻で切り取ったものは馴染みやすく心に残る。
    母への挽歌や恋人同士の奥深いやりとりも、ふむふむなるほどと、その間、光景に心の奥をくすぐられるような情を憶える。

    ただ半分以上はなかなか難解。
    山田さんの読みとと穂村さんのアンサーという”種明かし”があって、なるほどそんな真意や裏の意図があったのかと、初読時の”?”が解消されるものもあるが、「~~性」とか「xxxxティ」とか「狂気」とか「昭和とは何だったのか」とかは深過ぎてちょっとまだ消化不良。

    ただ、直感的に面白いもの多くあるので、今後も少し素人読みしてみようかなと思いました。

    • fukayanegiさん
      ベルガモットさん、こんばんは。

      そういえばいつのことなのだろう。。
      高校時代なんてろくに授業聞いてなかったので、たぶん中学のときでし...
      ベルガモットさん、こんばんは。

      そういえばいつのことなのだろう。。
      高校時代なんてろくに授業聞いてなかったので、たぶん中学のときでしょうね。
      でも憶えているのは「この味がいいね」の一首くらいなので、そんな深い詠みの時間ではなく五七五七七という定型があって~とか、そのくらいだったと思います。

      そうは言っても自分の中学生時代もいつのことやらで、「短歌」の単元は今もあるはずで、今ではどんな方が読まれているのか気になりますね。
      穂村さんとか、木下さんとかが中学生にふと読まれる日もくるのでしょうかね。



      と思ってググってみたらなんと「世界中が夕焼け」の一首は中学教科書に載っているとの情報が。
      え、すごい。
      でもこの歌ならありかもなぁ。
      2023/02/04
    • ☆ベルガモット☆さん
      fukayanegiさん、おはようございます!

      学生時代の短歌について覚えている感じがfukayanegiさんの学生時代にタイムトリッ...
      fukayanegiさん、おはようございます!

      学生時代の短歌について覚えている感じがfukayanegiさんの学生時代にタイムトリップしたようで何だか素敵ですな~
      確かに現在の短歌の取り上げ方が気になります。
      なんと、中学教科書に載ってるとは!!!
      すごい貴重な情報ありがとうございます♪(探しきれませんでした)
      『校庭の地ならし用のローラーに座れば世界中が夕焼け』
      確かに中高生の世界観が表現されてますよね~
      2023/02/05
    • fukayanegiさん
      ベルガモットさん、おはようございます。

      よく見たら、中学高校の教科書に載っているとなっていたので、高校かもしれません。

      でも、今...
      ベルガモットさん、おはようございます。

      よく見たら、中学高校の教科書に載っているとなっていたので、高校かもしれません。

      でも、今地ならし用のローラーってあるんですかね。
      あんまり見かけないようなw
      2023/02/05
  • 自作の短歌に自分で直接解説を加える"時には冷めた"やり方ではなく、まずは別の歌人に評論してもらいそれから本人登場して追加の議論、という形式をとっており、読み方の視点の広がりがあって面白い。

    短歌に正解の読み方がないのはもちろんそうだが、やっぱり精通してる人の読み方の方がかっこいい、おもしろいケースが多いわけで、それを見て真似するのも立派な手だとおもう

  •  穂村弘さんの代表的な歌を、若い歌人の山田航さんが「読む」という設定ですが、山田さんの感想、解釈に対して、穂村弘さんが返信するというというと心が、ある種、スリリングで面白いという「本」の作りになっていました。
     で、どうだったか?「本」を作った人の目論見通り、山田さんが「コネコネ」と論じている解釈に対して、あっけらかんな穂村さんがいて、なかなか楽しく読みました。
     アレコレは、ブログに書きました。読んでみてください。(1)から(3)まで、こっちも「コネコネ」書いています。
      https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202101090000/
      https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202101100000/
      https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202101120000/

  • 詩は勿論詩人がいて成り立つわけなんだけれど、
    山田さんの解説を読んでると色んな捉え方があって、本意を隠して世に送り出したんだから人のいいように自由に考えてしまっていいんだと思った。
    だから、穂村さん自身が山田さんの解説を読んでその受け止め方いいですね!みたいに言ってるところもあるし。
    著者本人が正解ではないし、解釈に不正解はない。
    なかなか、味わい深いです。

  • 穂村弘さんの短歌を、山田航さんとともに評論している。
    警察とか宗教とか、常識的なものへの冒涜ともいえるエッジの効いた作品には、思わずニヤリとしてしまう。ディズニーアニメすら、穂村ワールドにかかれば、笑いの切り口が見えてきてしまう。想像をかき立てる言葉、常識を打ち破る言葉、リズムの心地よさがあって、楽しめる。

    サバンナの象のうんこよ聞いてくれるだるいせつないこわいさみしい
    赤、橙、黄、緑、青、藍、紫、きらきらとラインマーカーまみれの聖書
    (せき、とう、おう、りょく、せい、らん、し)

  • いつもの空。
    いつもの道。
    いつもの曲がり角を曲がって、
    いつもの信号を渡る。

    まるで、何も無い様な風景。

    そこで目に止まるものがあるとすれば、
    何か異質なもの。

    馴染んだ風景にそぐわぬ物。

    例えば
    金色のいしころ、
    とか
    ピンクのコインとか。

    穂村さんの歌はそんな風にして、私の目に止まる。
    当然、手にする。

    何だろう?
    これは、何だろう?

    もちろん、私の宝箱の中へは入れる。
    珍しい色彩、
    心地よい調べ、
    奇妙な感触。

    その謎の秘宝をプロが分析する。

    さすが。
    なるほど、と感心せざるを得ない。

    しかし、解読が困難を極めた事もしみじみと良くわかる。

    「難解だ。」
    第一声で思わず本音を曝け出すしかない歌もまた少なくはない。

    しかし、なんとか解読作業を無事終える。

    それを、

    穂村さんが読む。

    読んでコメントを述べる。

    三十一文字の小さな小さな秘宝。

    その謎を説く為に要された言葉の粒子もまた、一粒一粒がキラキラと輝きを放ち、
    世界中が、そうなる秘密がわかった様な気がした。

  • 現代短歌を先頭で走る穂村弘の初期作品ベスト(?)に同人の山田航が解説、穂村自身がコメントしている。作者による解題というネタバレが好き嫌い分かれるところですが、自らの作品を「異化衝動」と見ているところに深く納得!穂村さんの作品理解の一助となりそう!

    卵産む海亀の背に飛び乗って手榴弾のピン抜けば朝焼け

    が今の気分のベスト!

    また、解説の山田航の鋭い読みも面白く、思わず続けて読んでしまった作品集『さよならバグチルドレン』も合わせておススメです!

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著者プロフィール

穂村 弘(ほむら・ひろし):1962年北海道生まれ。歌人。1990年に歌集『シンジケート』でデビュー。短歌にとどまることなく、エッセイや評論、絵本、翻訳など広く活躍中。著書に『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』、『ラインマーカーズ』、『世界音痴』『もうおうちへかえりましょう』『絶叫委員会』『にょっ記』『野良猫を尊敬した日』『短歌のガチャポン』など多数。2008年、短歌評論集『短歌の友人』で伊藤整文学賞、2017年、エッセイ集『鳥肌が』で講談社エッセイ賞、2018年、歌集『水中翼船炎上中』で若山牧水賞を受賞。

「2023年 『彗星交叉点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

穂村弘の作品

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