岩場の上から

著者 :
  • 新潮社
3.77
  • (3)
  • (6)
  • (2)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 64
感想 : 5
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (428ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104444083

作品紹介・あらすじ

噂される町。そこに聳える伝説の奇岩――。日本の行方を見据える壮大な長篇。二〇四五年、北関東の町「院加」では、伝説の奇岩の地下深くに、核燃料最終処分場造成が噂されていた。鎌倉からきた十七歳の少年。平和活動をする既婚のカップル。不動産ブローカー。役場勤めの若い女とボクサーの兄。海外派兵を拒む兵士たち。そして、奇岩から墜落死した少年の母……。日本の現在と未来を射抜く長篇小説。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • よくないわけではない。でも今から30年も先の話なのに、ほとんど「進歩」が描かれていない。せいぜい自動運転車が走るくらい。まずその違和感があった。
     人物が複数出てきてなぜか「アキさん」だの「めぐみちゃん」だのと地の文に書く意図が分からない。真壁とかいう男が何のために出てきたのか。何よりシンの母親は何をしようとしていたのか、何故死んだのか。
     はじめはいろんな複線かと思ったが、これはもしかしたら描く技術の問題なのではないかと思った。
     せっかく原子力発電所の問題点を正面から捉えたのにねえ。もったいない作品というべきか。

  • 2045年が舞台の近未来小説。言葉が今の世界と違って都合良く言い換えられている。戦争が『積極的平和維持活動』戦死が『活動死』、民間人が巻き込まれて死んだ場合は『事故死』。そのくせ陸上自衛隊は陸軍と明確になっている。今の社会の延長線にこうした事態になりそうで怖い。小説では、日本は宣戦布告を行う。テロ支援諸勢力に対しての宣戦布告は憲法の効力を停止させる。これも本当にこんな事態になりそうで怖い。これからの未来が描かれたシミュレーション小説のようで怖い、怖い小説だ。

  • 面白かった。現(安部)政権をモデルにしていると思われる、政府の ろくな説明をしないままに(むしろ国民に知られたくないがために)秘密裏にいろいろ決めてしまうところとか、傍受用の建物だって、建ってしまえば景色の一部と認識して 考えることを止めてしまう国民性とか、各方面に向けての批判が存分に込められている。

  • 重苦しい小説です。
    途中で息苦しくなって何度も閉じてしまいたくなりました。
    それでも、やはり気になってまたページを開いてしまう。
    使用済み核燃料の処理の問題、
    それに関する市民運動への弾圧、
    「積極的平和維持活動」という名の軍隊、そして参戦、
    軍の施設から脱走する兵士、それを手助けする人たち
    ー戦場に行くのはいやだ、家に帰らせてもらいたいー
    というただ一つの要求を掲げて原発に籠城する兵士、
    その生々しさに辟易しながらも、
    まさにそれらが起きてしまう可能性を重ねながら読み進めてしまう
    「この先、人類はもう滅びるしかないないでしょう」、と籠城する兵士の言葉が哀しい。

  • 予言小説にならないことを願う、が…?

全5件中 1 - 5件を表示

著者プロフィール

作家。1961年京都市生まれ。同志社大学文学部卒業。1999年、初の小説『若冲の目』刊行。2008年『かもめの日』で読売文学賞、13年刊『国境[完全版]』で伊藤整文学賞(評論部門)、14年刊『京都』で毎日出版文化賞、18年刊『鶴見俊輔伝』で大佛次郎賞を受賞。主な作品に『もどろき』、『イカロスの森』、『暗殺者たち』、『岩場の上から』、『暗い林を抜けて』、『ウィーン近郊』、『彼女のことを知っている』、『旅する少年』、評論に『きれいな風貌 西村伊作伝』、『鴎外と漱石のあいだで 日本語の文学が生まれる場所』『世界を文学でどう描けるか』、編著書に『〈外地〉の日本語文学選』(全3巻)、『鶴見俊輔コレクション』(全4巻)などがある。

「2023年 『「日本語」の文学が生まれた場所』 で使われていた紹介文から引用しています。」

黒川創の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×