百年の散歩

著者 :
  • 新潮社
3.51
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本棚登録 : 392
感想 : 25
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  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104361052

作品紹介・あらすじ

わたしは今日もあの人を待っている、ベルリンの通りを歩きながら。都市は官能の遊園地、革命の練習台、孤独を食べるレストラン、言葉の作業場。世界中から人々が集まるベルリンの街を歩くと、経済の運河に流され、さまよい生きる人たちの物語が、かつて戦火に焼かれ国境に分断された土地の記憶が立ち上がる。「カント通り」「カール・マルクス通り」他、実在する10の通りからなる連作長編。

感想・レビュー・書評

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  • ベルリンのあちこちの通りで「あの人」を待つ。
    けれど待ち人はなかなか来ない。
    来ない「あの人」を待ちながら、のんびりムードでそぞろ歩きしながらの連作短編集。
    目に止まった景色や周囲の人々の観察、街の歴史に思いを馳せながら。
    百年前にトリップして空想に浸ったりして。

    言葉遊びのような文章が楽しい。
    日本語、ドイツ語、フランス語等多様な言語が踊り出す。
    韻を踏んだような言葉遊びにニヤリとなる。
    私はベルリンを訪れたことはないけれど、一緒に散歩した気分になれた。
    百年前に建てられた建物等をゆったりと見ながら、百年前に思いを馳せながらの散歩、なんて贅沢なことか。

  • 最初は彼女の硬い文体が苦手だと思った。感情を排除して、頭の中の連想ゲームを覗き込んでいるような。しかし、読み進めていくうちに引き込まれていく。まるでドイツの硬いパンを味わっているかのようだった。顎は疲れるのに、なにくそと引きちぎって齧り付いて噛み砕く。

  • 「百年の散歩」(多和田葉子)を読んだ。
    読んでいる自分も『あわあわ』とした影みたようになって「わたし」に寄り添ってベルリンの街を通りから通りへ彷徨うその揺らめきが快感となって魂を揺さぶる。
    自分の中のこれまでの多和田葉子さんのイメージよりも今回は少ししっとり華やいている気がする。

  • ベルリンの実在する通りをタイトルとした10編の話を収録した、エッセイ風の小説。

    「あの人」を待ちながら、目に止まった自然や建物、人々などについての思いを馳せていく。その対象は現実のものであったり、過去へと飛んだ想像の世界であったりするのだが、その境界は曖昧でふわふわと漂っている。
    取り立てて大きな筋があるわけでもなく、言葉や文字の遊びを楽しみながら、思考の飛んだ先を作者とともに想像しゆったりと散歩していくような味わいのある一冊。

  • 3/25は散歩にゴーの日
    わたしは今日もあの人を待っている、ベルリンの通りを歩きながら。
    多和田葉子さん『百年の散歩』を。

  • 2023/9/12購入

  • 散歩をしながら頭の中をそのまま書き出してるかのような不思議な文章だった。表現が素晴らしく大理石のことを『ミルクが汚れを巻き込んで固まってできたような石』と表現したり、『若葉がきれいなのは数日間だけだ、すぐに色がくすんでしまう。必ずくすんで、それから先の時間はずっとうしなった色の事が気になっている』と恋愛も似ていると言う。面白い言葉遊びが散りばめられている。


  •  おおせの、通り。

  •  言葉から言葉へ、「音」を介して広がるイメージの面白さこそ多和田葉子、そんなふうに「洒落た」読み手たちはいうのだ。そうなのだろうか、一章「カント通り」から二章「カール・マルクス通り」にかけて散歩しながら居眠りを始めた奇特な方はいらっしゃらなかったでしょうか?
     面白さなど、人それぞれなのですが、ぼくにとって、多和田の面白さといえば、文章の中に多層化して畳み込まれた意識、そこから目の前の風景の底に流れる、多層化した時間を見抜く確固とした眼の力、あるいは、意志と呼ぶべきものが現れてくる瞬間に出会うことなのです。
     「そうだったのか」という納得が何となくやってきて、再び消えてゆく。とても居眠りなどしていられない。たとえば、「コルビッツ通り」にあふれ出す子どもたちを見つけた多和田の喜びの深さ、これは、なかなか出会えない多和田葉子の素顔がのぞいた瞬間かもしれかもしれませんね。そこが面白い。
    https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202002170000/

  • ベルリンの通り名、いろんな場所に、いろんな名前がついている。ドイツ、全然知らないかとことに気づく。再読したい。

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。小説家、詩人、戯曲家。1982年よりドイツ在住。日本語とドイツ語で作品を発表。91年『かかとを失くして』で「群像新人文学賞」、93年『犬婿入り』で「芥川賞」を受賞する。ドイツでゲーテ・メダルや、日本人初となるクライスト賞を受賞する。主な著書に、『容疑者の夜行列車』『雪の練習生』『献灯使』『地球にちりばめられて』『星に仄めかされて』等がある。

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