ベージュ

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (109ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104018079

作品紹介・あらすじ

18歳のとき、詩人は湧き上がる言葉を大学ノートに書き留めた。あれから70年――。文字でも声でもない詩を/伝書鳩のように虚空に放ってみたい/詩はどこへ飛んで行くだろうか――第一詩集『二十億光年の孤独』以来、つねに第一線で活躍する詩人が、未収録の作品から自ら選び、書き下ろしを加えた31篇。誕生と死。時間。途上の感覚。忘却の快感。声のひびき――88歳の傑作詩集。

感想・レビュー・書評

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  • 2020年刊の谷川俊太郎さんの最新詩集。

    『ベージュ』というタイトルは88歳になられたので米寿と、薄茶色のベージュをかけ合わせたものらしいです。

    この詩集は、私には難解なものも多かったです。
    今までに読んできた、選詩集のような、読んですぐに意味がわかる愛読したくなるような親しみを覚える詩は少ないように思いました。
    ちょっと考えるような詩が多かったです。

    あとがきで谷川さんは、年齢に無関係に書けている詩と年齢相応の詩があるということをおっしゃられ、ひらがな回帰という現象についても触れられています。


    「あさ」

    めがさめる
    どこもいたくない
    かゆいところもない
    からだはしずかだ
    だがこころは
    うごく

    めがみる
    ゆきがふっている
    みみはきく
    かすかなおと
    ひとじちが
    いきをしている
    どこかで
    いま

    だれでも
    しっている
    いきものはいつか
    しぬ
    いのちは
    いつもあやういのに
    きもちはまぎれる
    そらのくもに
    そよぐさきに
    うたに
    よろこびに

    そんな
    じぶん
    そんな
    いきもの
    しぬまでの
    とき…

    しんだあとの
    ときへと
    うごく
    からだに
    しばられながら
    からだを
    よろこんで
    どこも
    いたくない
    あさ

    からだは
    ここにいて
    こころは
    うごく
    どこまでも
    いつまでも

    • まことさん
      ベルガモットさん

      初めまして。フォローありがとうございます。
      そして、明けましておめでとうございます。

      谷川俊太郎展があったの...
      ベルガモットさん

      初めまして。フォローありがとうございます。
      そして、明けましておめでとうございます。

      谷川俊太郎展があったのですね。
      いいですね!行ってみたかったです。
      この作品も悪くはないと思いますが、一番お薦めなのは岩波文庫の『自選 谷川俊太郎作品集』または集英社文庫の『二十億光年の孤独』あたりが一番、有名な詩が中心でいいかと思います。
      単行本は装丁がみな素晴らしくいいのですが『おやすみ神たち』が私はとても好きです。
      まだ、あまり作品を読まれていらっしゃらないなら『そんなとき隣に詩がいます』も読みやすいかと思います。

      私もベルガモットさんの本棚から早速『短歌の友人』を読んでみたいと思っています。穂村弘さんは、他の本を持っていますが、『短歌の友人』は賞を受賞されているみたいですね。
      また、これからも、素敵な本がありましたらご紹介いただければ嬉しいです。
      2021/01/02
    • ☆ベルガモット☆さん
      まことさん
      お薦めの本を他にも教えてくださり本当にありがとうございます!迷いますねえ。あまり作品を読んでいないので『そんなとき隣に詩がいま...
      まことさん
      お薦めの本を他にも教えてくださり本当にありがとうございます!迷いますねえ。あまり作品を読んでいないので『そんなとき隣に詩がいます』か『二十億光年の孤独』などをじっくり選んでいこうと思います。
      これからもよろしくお願い致します!
      2021/01/04
    • まことさん
      ベルガモットさん。
      いいえ、とんでもありません。
      気に入っていただけると、いいのですが。
      こちらこそ、どうぞよろしくお願いします。
      ...
      ベルガモットさん。
      いいえ、とんでもありません。
      気に入っていただけると、いいのですが。
      こちらこそ、どうぞよろしくお願いします。

      追伸 『短歌の友人』早速、読み始めたのですが、既読でした。もう一度より楽しんで読もうと思っています。
      2021/01/05
  • 米寿、姿、表現方法は違っても、この年齢を重ねたかたはこういう心持ちで過ごしておられるのかな…。過去現在そして、老いについて、枯れてゆくことも生き様だという限りのないなにかを感じました。
    特に「にわに木が」という詩、心掴まれ何度も読んでしまいます。
    「わたしは
     うん
     どこか
     とおくへいきたいのだ
     ここから
     とおい
     しらなのに
     なつかしいどこか
     そこには
     はやしがある
     ちいさなかわがながれている
     そこへ」
    (にわに木が)の一連より
    瑞々しい言葉に目の前に情景が浮かびます
    自分がもっと歳を重ねたら、体の変化と共に思考はどうなるのだろうって思いました
    「にわに木がたっていて そのうえに そらは ある ありつづける わたしが うまれるまえから わたしが
     しんだあとまで たぶん 
    わたしが そういうと あなたは うなずいた 
    だまってうなずいた あなたが すきだ」

  • 『イル』

     今日
     私がイル
     のである
     昨日も私はイタ
     姿かたちは違っていたが
     八十七年前もイタらしい
     のである
     犬でも
     猫でもない
     私が
     …

  • 『ベージュ』読了。
    初めて谷川俊太郎の詩を読んだ。米寿ならぬベージュ。なんて素敵な言葉に色。お米の色。
    米寿まで生きた方の詩がどんな意味を持つか感じ取ろうにも分からず。けど空気感はなんとなく分かったような気がする。
    自分の祖母も今年で米寿。祖母もこんな感じ生きてんのかなと思った。

    2021.4.13(1回目)

  • 年を取ってみる、わけにはいかないけれど。米寿のおじいちゃんの気持ちをちょっとだけ今の女の私がのぞいてみる。違うことだけは、わかる。読めてるものが、きっと違うだろうことも、わかる。

  • 詩全体に共感はしなかったんだけれど、はっとさせられる表現がちょくちょくあった。
    私も年齢を重ねて作者と同年頃になったらまた違う感覚で読むのだろう。
    とはいえ、いま現在の世界の事情を考えると発行された2020はすでに隔世の感があり、この先年を重ねても共感できるかどうか。ほんのつい最近のことなのに。

  • 谷川俊太郎さんの、88歳の詩集。エッセイのようでもあった。
    装丁は淡いベージュと水色。好きな組み合わせです。
    (もちろん米寿とかけてるのだろうけれど)
    詩は難解そうだな、と読んでいくと、次第に頭の中に情景が浮かんできた。
    身の回りのことだけでなく、詩人には世界のどこかで起きている悲劇も詩にした。
    ある詩人の最後を知った詩は、その不滅を明言した。
    どこか異世界に入り込むような気持ちにさせる詩もあった。メロディがあったら、もっと自分に染み込んできそうに思える詩もあった。
    子供が小さい時に読み聞かせた、「めのまどあけろ」のように、声を出して読んでみると、耳に心地いい詩もあった。
    耳で聞くと、また違った印象になる。

  • 2020.10.29

  • 感受したことを言葉にできることって、難しい。

    言葉と別れて より

    広々とした青空のどこかから
    白い雲のひと刷毛が現れて
    風に流れるいとまもなく
    すぐ消え失せるのを赤ん坊が見ている

    老人の私もそれを見ているが
    赤ん坊と違って私はそれを言葉で見る
    その情景は私の内部から外部へ跳ぶ
    私の中ですでに時は止まっている

    書かれた情景は一枚の水彩画のように
    意識の額縁に収まっている
    赤ん坊を抱いて私は散歩から帰る

    日常が当然のように戻ってきて
    やがて西陽が家並みの向こうに沈む
    詩が言葉と別れて闇に消える

  • 上質な、詩世界。
    詩も、余白も、美しい。

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著者プロフィール

1931年東京生まれ。詩人。1952年、21歳のときに詩集『二十億光年の孤独』を刊行。以来、子どもの本、作詞、シナリオ、翻訳など幅広く活躍。主な著書に、『谷川俊太郎詩集』『みみをすます』『ことばあそびうた』「あかちゃんから絵本」シリーズ、訳書に『スイミー』等がある。

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