私の少女マンガ講義

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103996026

作品紹介・あらすじ

少女マンガの神様が、ついに少女マンガを語った! 日本の少女マンガは、世界で唯一つのメディアだ――マンガ界をつねに牽引するハギオモトが少女マンガ史をひもといた、イタリアの大学での講義を完全収録。創作作法や『ポーの一族』の新作『春の夢』など注目の自作についてもたっぷりと語り下ろす。少女マンガってなんでこんなに楽しいの? 魅力の秘密を萩尾先生が教えてくれます。

感想・レビュー・書評

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  • 萩尾先生による少女漫画史を読んで、つくづく、少女マンガが大きく花開いた時期にリアルタイムの読者でいられたことの幸せをかみしめた。小学生の頃からずっとほぼ半世紀マンガを読んできたが、今に至るまでどの年代でも、萩尾先生の描かれるものに胸をふるわせてきた。これはすごいことではなかろうか。

    作画のテクニックについて突っ込んで語られている章もあり、とても興味深かった。特にコマ割についての話がおもしろかった。萩尾作品の読みやすさ(これってあまり言われないけど、本当にそう思う)は、考え抜かれたコマ割によるところも大きいのだなあと納得しきりであった。

    萩尾先生が、実によく今のマンガを読んでいて、いろいろなタイプのマンガについて、こだわりなくその良さを認めていることにも感嘆する。それってなかなかできないことだと思うのだ。コマ割の話のなかで、羽海野チカさんの斬新さについて言及されていたが、萩尾先生自身の完成された流れるようなコマ割とは感覚の違う羽海野さんを、きちんと評価しているその姿勢を心から尊敬する。

  • 講義を聞くつもりでじっくりゆっくり読み進めていこう…と思っていたが、あまりの面白さに一気読みしてしまった。深く、濃密なのに、ところどころユーモラスでとても読みやすく、改めて萩尾作品を再読したくなった!マンガ史が語られる中、「グレープフルーツ」や「セブンティーン」の漫画版など、かつてあった雑誌もさり気なく取り上げられていて、懐かしかった!
    「半神」「柳の木」「王妃マルゴ」「春の夢」など…萩尾先生ご自身による作品解説は当然のことながら読みごたえがあったが、他の先生の作品も実にたくさん読んでらっしゃって、本当に頭が下がる。心からマンガが好きな方なのだと改めて思う。どこまで進化していくのだろう、萩尾先生!過去の作品は再読するたび新たな発見があり、新作もまた読むたび度肝を抜かれる。これって本当にすごいことだと思うのだ。
    それなりに少女マンガを読んできたつもりだけれど、まだまだ目からウロコが落ちるものなんだなぁ…と思った次第。少女マンガの素晴らしさを、実感できる一冊。

  • 1970年代〜80年代頭の萩尾望都作品、そしてその時期の少女マンガをリアルタイムで読めていたことは、幸福だったんだな。

    その当時から40年に渡って描き続け、今もマンガが好きで新しい作家の作品も読むという柔軟で貪欲な姿勢には、脱帽しかない。
    また、「どうして同じところで泣けちゃうんだろう?」ととことん突き詰める探究心、実際に本を開かずにほかの作家の作品のページを思い起こせる(それほど読み込んでいる)、など、さすがとしか言いようがない。

    イタリア人向けに完結にまとめられた少女マンガ史、自作の解説など、わかりやすい上に、作者のバックグラウンドが透けて見えるようなところもあって、なんだかとてもお得。
    とても面白かった。

  • 今も現役で漫画家を続けていらっしゃる萩尾望都さんの本。内容は、海外で行われた萩尾さん自身が分析解説された日本少女漫画史の講演をまとめたもの、少女漫画の変遷と萩尾さんの創作作法への質問と解答、新しい作品群についてのインタビューとなっている。
    萩尾さんがたくさんの良作を書き続けている漫画家でありながら、いまも現役の漫画ファンでもあるということがよく分かる。
    特に興味を持った所はやはり創作作法への質問で出てきたコマ割りについて話すところ。コマ割りは小説でいう文体というのを読んで目からウロコ。絵柄やテーマで漫画家を区別しがちだけれどそういった部分にも作家の個性・特性があらわれてるのだなぁと。
    そして、この本の刊行に携わっている矢内裕子さんのインタビューがすごいなと感じた、とても萩尾さんの作品も読まれているだけではなくて、他の漫画作品、文芸作品などにも造形が深い方とみえて、話の広がりや深さが半端なかった。

  • 渦中にいるのに驚くほど冷静に分析された少女マンガクロニクル。「イグアナの娘」「春の夢」などの解説もうれしい。

  • 気がついたら読み終わったいた・・・
    ゆっくり楽しんで読むつもりだったのに、またやってしまった、イッキ読み。おもしろすぎて途中で止められなかった。残念。

    最初の編集者のまえがきを読んで、私はこの矢内裕子さんという方を完全に信頼してしまった。もし私が萩尾望都さんに質問する機会があったとしたら、まったく同じ問いが浮かぶだろうと思う。
    「萩尾さんには、世界はどんな風に見えているのでしょう」と。
    私が聞きたいことはそれに尽きる。

    そして、最後のジョルジョ・アミトラーノ教授のあとがきにも驚いた。これまた、私の心の中そのままじゃないか、と。
    萩尾さんがご自身で決めたという講演テーマ「少女マンガ史」、私も最初に本屋でチラ見した時、教授と同じように「萩尾さんには、そんなことよりもっと話してほしいことがあるのになぁ」と思ったので。
    そして、読み始めてすぐ、やっぱり教授と同じく、「インサイダーの視点からの少女マンガ史、しかも一流の書き手による総括って、実は素晴らしく興味深い」と思った。

    講義を聞いた人たちからの質問も、非常に深くて読み応えがあった。これは日本人がした質問だろうか、それともイタリア人の聴講者だろうか、と質問からは国籍が分からないものもあり、軽く衝撃だった。
    私は心のどこかで「海外の人と日本人では、日本の漫画への受け止め方は違うんじゃないかな」と疑っているところがあるのだけど、この本を読む限りでは、理解しているものはまったく同じ、質だけじゃなくて、読む量まで同じじゃないか、なんて思った。なんだかそんな当たり前のことになぜか感動してしまう。国境ってなんなのかしら、と。

    しかしこのアミトラーノ教授、アン・ライスも読んでるんだな。トワイライトもトゥルー・ブラッドも名前を挙げただけじゃなくてきちんと見てそう。(笑)

    私は今はもう、ほとんど漫画を読まないのだけど、この本に出てくるマンガの9割2分くらいは読んでいた。
    姉がオタクで、私が子供の頃にはすでに古典になっていた古いマンガもよく買っていたし、妹がこれまたオタクで、新しいマンガをせっせと買っていたせいで、私は彼らの部屋に行って、おもしろそうなのをピックアップするだけでいろいろ網羅できた。
    だから、この本で萩尾さんがおっしゃっていることは、知識として、ではなく、「実体験」として知っている、という感じだった。それを萩尾さんの上質の解説つきでタイムマシンで早回しでたどっている、という感じ。まるでタイムトラベルツアーに参加したみたいな読後感。
    昔はネットも携帯もなかったし、子どもの数も多かったし、時代がマンガと相思相愛だったんだな、となんだかおばあさんになったような気分にもなった。
    今の様々なメディアを思い浮かべると、残念ながら私にはマンガはもはや少し色あせて見える。というか、私がマンガの進化について行けなくなったかな。

    最後に夢中になって読んだマンガは、「バガボンド」かなぁ。ポーの一族の新作もまだ読んでない。
    私と違って、萩尾さんは本当に本当にマンガを愛しているんだなぁ、といつもとても驚かされる。彼女にとっては、マンガは色あせるどころか、今も最も重要なメディアのまま進化し続けている。
    「監督不行届」とかまで読んでるし。私も好きなんだよね、あれ。

  • もう様の語る少女漫画史。
    漫画家の中には、人の漫画を読まない人もいるそうですが、もう様は読む派ですね。しかも手広く。
    もう様は当然専門家として他者の漫画も見ているわけですが、
    彼女の語り口からは、彼女が未だにまず漫画のファンであるということが感じられます。いちいち、そんなのあったなと思っちゃうんですよね。もー様が連載を楽しみにしてる漫画って、大振りと、ヒストリエと大奥って同じじゃん。
    技術的には、コマ割りについての話が面白いです。「柳の木」の全ページ上下2コマのコマ割りが、目が悪くなって、体力が落ちて描くための実験から生まれたというのが、目から鱗です。漫画家という、肉体を持つ個人を感じる言葉です。
    一昨年「ポーの一族」の新刊が出て、読んだあと即行で売ってしまったのですが、色々作者としての想いがあったんだとわかり、悪いことしたなと思いました。

  • 萩尾望都が、イタリアの大学で行った講演会と質疑応答、その後の補足インタビュー、3.11後のインタビューとポーの一族を40年ぶりに再開したばかりの頃のインタビューをまとめた本。萩尾望都が幅広くマンガ全般を読んでいて、きちんとその面白さを分析し、若い作家の作品であっても面白い、と言える感性が素晴らしい。インタビューも氏をよく知る矢内さんとあって、質問がとても的確。エドガーとアランが「扉は閉まっていたけど、ずっとそこにいた」という発言にジーンとした。

  • 萩尾望都先生のイタリアの大学での講義やインタビューを記録した本で、とても興味深く読みました。講義らしく自身の作品の解説もあったりで、ファンにとっては中身の濃い一冊だと思います。
    本書の後に先生の作品を読むとまた違った感想があるかもしれません。
     少女マンガの歴史にも触れていて、懐かしい作品名や表紙が登場して少女マンガファンとしては楽しかったです。
    『鋼の錬金術師』の荒川弘先生が女性ということを初めて知りました。ビックリなような納得なような(苦笑)

  • 《『リボンの騎士』を読んだ女の子たちは「もし自分も男の子だったら‪⋯‬‪⋯‬」と思いながら、サファイアと一緒に冒険を楽しみました。この「もし男の子だったら」というテーマは、『リボンの騎士』以降、頻繁に日本の少女マンガの中で扱われます。》(p.21)

    《戦後しばらくは、"お金持ち"や"センスのいい人"イコール外国人というのが一般的なイメージでした。でも九〇年代になると、外国に目を向けなくても身近なところに豊かさがあたりまえに存在するようになり、このような作品が生まれたのだと思います。》(p.41)

    三章中の二章まで読んだ。一ノ関圭先生がスピーチで語ったという「ワクワクしながら描くから枠線と言うんです」という言葉、インパクトあるな。

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著者プロフィール

漫画家。1976年『ポーの一族』『11人いる!』で小学館漫画賞、2006年『バルバラ異界』で日本SF大賞、2012年に少女漫画家として初の紫綬褒章、2017年朝日賞など受賞歴多数。

「2022年 『百億の昼と千億の夜 完全版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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