- Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103985082
作品紹介・あらすじ
独りだから、できたことがある。独りだから、諦めたことがある。あの震災で独身は何を考え、どう動いたのか。「家族の絆」が強調される一方でほとんど報道されなかった独身者の声を聞くため、作家は旅に出た。激務の末に転職、特技を生かして被災地に移住、震災婚に邁進、答えを求めて仏門へ――非日常下で様々な選択を迫られた彼らの経験から鮮やかに描き出す、独身と日本の「いま」。
感想・レビュー・書評
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3.11で子供や家族を優先する人が多かった中、独身の人たちは他人の分まで働いていたのです。なのに、もてはやされるのは家族、家族。。彼らはどんな思いで暮らしていたのか。
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東日本大震災後に語られたのは「家族の絆」だった。
震災を経て大切なものに気づいたこと。それが儚くも失われてしまうものであるということ。震災は人生を見直すきっかけとなったはずである。斯くいう自分もそうだ。
そんな美談の裏で、忘れられていること。
語られていないこと。
あのとき“独身者”は何をしたのか。
絆が語られて続けた影で独身者が完全に忘れられていた。忘れられていることすら忘れていた。それに光を当てたのがこの作品だ。
震災はいろんな物語を浮かび上がらせたが、まだまだ見えていないものがたくさんある。それをこの作品は品を持って告発しているようだ。
何と言っても酒井さんの文体が素晴らしい。
作品は独身者たちが震災において何をしたのか、何を感じたのかをインタビュー形式で辿っているのだが、その文章から伝わる各人への“リスペクト”感。これがとても素晴らしい。煽るわけでない、同情するわけでもない。ただ、尊敬の念を持って受け入れ、感謝しているのである。著者のその姿勢がこの作品に品を与えている。
それは一方で影に隠れ続けていた“独身者”たちのプライドを静かに立ち上がらせてくれているようでもある。
独身者たちが震災を経て何を思い、何をしたか。それは当たり前だが千差万別。この中には自分の人生だって書かれてもいい。私も災後を生きる独身者だ。
何かを考えて、何かを感じて、何かを決断する。それを覗くことがこんなに尊いとは。自分のために生きて他者のために生きる。
独身者だからこそ出来たことがあり、救えた人生がある。その逆もしかり。
言葉を尽くしてもあまりに多彩な人生に対して私は首を垂れるしかない。
「スゲーよ人生は」と言いながら自分も進むしかない。
この作品は震災の記録としても、人生賛歌としてもずっと読み継がれていけばよい。とてもいい作品だ。 -
東日本大震災のときに、独身の人はどのように感じどのように行動したのかを、被災者だけでなく地震のあと被災地入りした人や遠くに避難した人など多くの人にインタビューして書かれた本です。
報道ではやはり配偶者や子供などの家族のいる人が取り上げられることが多いですが、この本では独身の人に絞って書かれているところが、著者ならではの視点で、多くを考えさせられます。
血縁だけが大切というわけではないと、多くの人が思える世の中は住みやすいだろうなと思います。どこに住んでも誰といても、他者といい関係を築けて、それでいて身軽でいられたらいいなと思いました。
今日3月11日に読むにふさわしい1冊でした。 -
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2014/03/12
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阪神淡路大震災含め、たくさんの方々が犠牲になったので、命ある私達が忘れない事は大切だと思います。阪神淡路大震災含め、たくさんの方々が犠牲になったので、命ある私達が忘れない事は大切だと思います。2014/03/13
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この方の事は、一時期耳目を集めた「負け犬の遠吠え」で知った。
ちょうどこの頃、中年独身女性作家達が世間に向けて気を吐く、というような作風の書き物が次々と発表されていたっけ。
このタイプのはしりは佐藤愛子さん辺りだったように思っているけれど、当時”女性は影で男性を支えてこそ”、”男性にズケズケと物申すなど粗野の極み”
という空気感の中で子供心に爽快感を覚えたものです。
時代は移り、男女雇用機会均等法が成立されて、女性たちも社会進出の可能性を与えられた、その第一世代の女性達がこの酒井順子さんや群ようさん達ではなかろうか。
「負け犬の遠吠え」を読んだ時、全くの当事者である私は、佐藤愛子さんのエッセイを読んだ時のように心の中で快哉を叫んだ訳では無かった。
作品は私にとっては少し痛々しくもあった。独身シングル女性の看板をひとりで背負って戦っているような勢いに
『そんなにハッキリと線引きするほどのことか?
あからさまにして価値のあるものと、あからさまにする必要も無いものもあるのでは?』
という思いを抱いた。
「負け犬」のヒットから、女性誌に度々エッセイなどを投稿されていたが、その後の作品をいくつか読んだあと、興味を失って遠ざかっていた作家さんだった。
この度能登半島地震の影響か、災害関連のテーマの中にこの作品が置かれていた。
「負け犬の遠吠え」から10年後、東日本大震災後の独身たちをテーマにしたノンフィクションレポート。
そしてその11年後に再び酒井さんの作品を手に取ったことになる。
20年前の私は『そんなに勢い込んで書かずとも』と思った。もちろん酒井さんか伝えたいことは十二分に伝わってきたけれども。
受動的か能動的かの違いはあっても、女性として選択したものの違いと言うだけであり、それぞれに痛みや喜びがあるのだと思っていた。
でも、この度このレポートを読んで、これはもう種族が違うくらい違うな、と思った。
独身を選んだものと既婚者では。
核が「大規模震災」というものだったから、余計にくっきりと浮かび上がったのかもしれない。
もちろん固定されたものでは無いのだから、ここに登場した独身の方達が、その後結婚という形に変化することも可能だけれど。
いくつものケースを通して伝わってくるものは、実はタイトルとは関係ない。
やはり私にとって痛い作家さんだった。 -
守るべき子どもがいない独身者が東日本大震災で何を感じ、何をしていたのかを調査したエッセイ。
インタビューに登場してきた「独身」が、フリーターや自称「音楽をやってる」などの自由人、根無し草の方ばかりで正直言って偏った話のようにも思えたけれど…。
とにかく心が疲れたときはアンパンマンのテーマ曲を聴くと良いらしいことはわかりました。
参考にします。 -
東日本大震災
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震災からもう3年以上たったのですね。
この本を読みながら、当時のことをいろいろ思い出しました。
正直、ちょっと苦しく思ったときがありました。
震災直後、そしてその後年月を経て、みなそれぞれ考え方が変わってきたと思います。
この本にはビックリする例が載せられていますよ。
自分については、震災二か月後に予定していた初のヨーロッパ旅行をキャンセル。
とても行く気になれなかった。一生行けないかもと思った。
でも翌年から行くようになりました。
「日本人が海外に行けば、海外からも日本にきてくれる」と専門家のかたが言っていたのを聞いたし、「この先何があるかわからないから、できるときにやりたいことをやろう」と思ったからです。
もしかしたら私たちの世代…戦後生まれた人たちすべて、一番影響を受けたのは、あの震災だったのではないでしょうか。
酒井順子さんはこの本の印税すべて震災の被害にあわれたかたに義援金として寄付されるそうです。 -
よかった。独身といえば酒井さん、というくらいに思っているので、地震についてを「独身」を軸に取材して本にするというのを酒井さんがしてくれてよかった。地震関連本はたぶん何も読んでこなかったと思うけど、地震から5年経った今、これを読めてよかった。まえがきを読むだけでなんども頷き、読みたい!気持ちが高まった。印税の一部でなく全額を寄付というのがかっこいい。