- Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103784098
作品紹介・あらすじ
ラスト数瞬に茫然、愕然、絶叫! 現代人は無事、土に還れたのだろうか――。青葉アルコールと青葉アルデヒド、テルペン系化合物の混じった稲の匂いで鼻腔が膨らむ。一流メーカー勤務に見切をつけ妻の里に身を落着けた男は、今年の光合成の成果を測っていた。妻の不貞と死の謎、村人への違和感を飼い馴らす日々。その果てに、土になろうとした男を大異変が襲う。それでもこれを天命と呼ぶべきなのか……。
感想・レビュー・書評
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今まで福澤彰之シリーズで、漁師の生活や仏教といった変わった題材を描いてきたが、本作では米つくりの農家という日本人にとってある意味普遍的な日常生活を描く。都会に住む自分のような者にとっては異質だが、日本の歴史を通覧すると普遍的であると言え、衆目の目を惹きやすい変わった題材から普通の題材を描く事にシフトしているような気さえする。普通の題材をいかに深く描くか、という事に挑戦しているのか?とも思う。土と共に生き、土に還る。タイトルにはそんな思いが込められているような気がする。ただ単に伊佐夫が土のサンプル収集に凝っていたから、というだけではないだろう。その伊佐夫も、16年前に交通事故に遭い植物状態になって、半年前に死んだ妻の昭代が生前他に男を作って不貞をはたらいていたのではないかという疑惑を払拭できず、うじうじと考え昭代という死者にとらわれている。昭代の妹久代と結婚していればまた違う道を歩んでいたのかもね、とも思う。下巻になって伊佐夫のボケが進み目が開いていても現実と夢の境がなくなる事、記憶の中の風景と現実が混在していく描写には恐怖を覚えた。詳細→
https://takeshi3017.chu.jp/file10/naiyou6711.html -
山村の70代の男が、交通事故で16年意識が戻らないまま死んだ妻が、不貞を働いていたようだということを考えながら、田舎の農作業に取り掛かる、そういう波風の少ないストーリーなのだが惹き込まれる。
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断念
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「現代思想 2020年3月号 特集=気候変動」で紹介されていたので手に取った。高村薫は初めて読み、また小説自体も久々に読んだ気がする。
選ぶ言葉、特に擬音語が気持ちよく、言葉による表現の面白さを味わった。淡々とした老農夫の日常を、飽きることなく毎晩寝る前に少しずつ読んだ。行きつ戻りつする思考と行動がそのままに描かれる様は、普段の自分のようでもある。
人の日常と一生は、そうか、こういうことかと、味わい深くもあり、あっけなくもあり。文学を読むことの楽しさをしみじみと思い出させてくれた。他作品も読みたいが、ミステリー作家なのかな? -
奈良県の奥、吉野の入り口の山林地主。茶畑を育てる老人の物語。何が面白いのか、何も起こらない。これが面白い。
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204上巻
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奈良の田舎のお爺さんの何気ない日常も高村薫の手にかかるとサスペンスに。筆力なのか文体なのか、それとも下巻から疾風怒濤のサスペンスになるのか?