土の記(上)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 407
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103784098

作品紹介・あらすじ

ラスト数瞬に茫然、愕然、絶叫! 現代人は無事、土に還れたのだろうか――。青葉アルコールと青葉アルデヒド、テルペン系化合物の混じった稲の匂いで鼻腔が膨らむ。一流メーカー勤務に見切をつけ妻の里に身を落着けた男は、今年の光合成の成果を測っていた。妻の不貞と死の謎、村人への違和感を飼い馴らす日々。その果てに、土になろうとした男を大異変が襲う。それでもこれを天命と呼ぶべきなのか……。

感想・レビュー・書評

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  • わ~何?この言葉の羅列。
    主人公が老人の男性であり、(伊佐夫という名前)その伊佐夫の独り言というか胸のうちでつぶやく言葉が延々と続くわけです。
    あ~とっつきにくい、興味のあること何も出てこないし、全然進まへん。
    もう断念しようかな。
    いやしかしここで負けるわけにはいかない(?何に?)
    ここは気を取り直して、集中するべく夜寝る前に読むのはやめて、昼間わざわざ時間を設けて読むことにする。
    すると不思議、この羅列文にも慣れて、伊佐夫のつぶやきによって、舞台が奈良の山間の集落であること、代々続いた養子の家系で伊佐夫で4代目であること、交通事故によって植物状態になった妻を年明け早々なくしたこと、何より、偏った情熱で農業に取り組んでいること等などが分かってくる。
    よし! 下巻も頑張って読んでみるか。

  • 奈良の農村のやもめ老人の物語。

    上巻は、16年前に事故にあったまま植物状態だった妻が年初に無くなった年の6月から12月までのお話で、疎植栽培への意気込み、自然茶木への愛着が描かれている一方、亡き妻、家を出た娘の過去の姿の幻を現実の中に重ねて夢想する心理が丁寧に語られていました。
    事件という事件が起きるわけではなく、妻が倒れてから専業農家になった男が過去の業と農業に向かい合っている姿が淡々としていて、作者の新たなる境地のような気がしました。
    ただ、アメリカに渡った離婚した娘親子、夫をなくした妻の妹家族、双子を出産した近所の出戻り娘、跡継ぎのいない本家を継ぐ予定の分家との関わりが下巻のテーマになっていくのかもしれませんね。

  • 今まで福澤彰之シリーズで、漁師の生活や仏教といった変わった題材を描いてきたが、本作では米つくりの農家という日本人にとってある意味普遍的な日常生活を描く。都会に住む自分のような者にとっては異質だが、日本の歴史を通覧すると普遍的であると言え、衆目の目を惹きやすい変わった題材から普通の題材を描く事にシフトしているような気さえする。普通の題材をいかに深く描くか、という事に挑戦しているのか?とも思う。土と共に生き、土に還る。タイトルにはそんな思いが込められているような気がする。ただ単に伊佐夫が土のサンプル収集に凝っていたから、というだけではないだろう。その伊佐夫も、16年前に交通事故に遭い植物状態になって、半年前に死んだ妻の昭代が生前他に男を作って不貞をはたらいていたのではないかという疑惑を払拭できず、うじうじと考え昭代という死者にとらわれている。昭代の妹久代と結婚していればまた違う道を歩んでいたのかもね、とも思う。下巻になって伊佐夫のボケが進み目が開いていても現実と夢の境がなくなる事、記憶の中の風景と現実が混在していく描写には恐怖を覚えた。詳細→
    https://takeshi3017.chu.jp/file10/naiyou6711.html

  • 山村の70代の男が、交通事故で16年意識が戻らないまま死んだ妻が、不貞を働いていたようだということを考えながら、田舎の農作業に取り掛かる、そういう波風の少ないストーリーなのだが惹き込まれる。

  • 断念

  • 「現代思想 2020年3月号 特集=気候変動」で紹介されていたので手に取った。高村薫は初めて読み、また小説自体も久々に読んだ気がする。

    選ぶ言葉、特に擬音語が気持ちよく、言葉による表現の面白さを味わった。淡々とした老農夫の日常を、飽きることなく毎晩寝る前に少しずつ読んだ。行きつ戻りつする思考と行動がそのままに描かれる様は、普段の自分のようでもある。

    人の日常と一生は、そうか、こういうことかと、味わい深くもあり、あっけなくもあり。文学を読むことの楽しさをしみじみと思い出させてくれた。他作品も読みたいが、ミステリー作家なのかな?

  • 農業。
    『波』2016.12にて。

  • 奈良県の奥、吉野の入り口の山林地主。茶畑を育てる老人の物語。何が面白いのか、何も起こらない。これが面白い。

  • 204上巻

  • 奈良の田舎のお爺さんの何気ない日常も高村薫の手にかかるとサスペンスに。筆力なのか文体なのか、それとも下巻から疾風怒濤のサスペンスになるのか?

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著者プロフィール

作家

「2022年 『ベスト・エッセイ2022』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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