灼熱

著者 :
  • 新潮社
4.14
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感想 : 51
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  • Amazon.co.jp ・本 (672ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103542414

作品紹介・あらすじ

「日本は戦争に勝った!」無二の親友を引き裂いた「もう一つの戦い」の真実。デマゴギーの流布と分断が進む現代に問う、渾身の巨篇。沖縄生まれの勇と、日系二世のトキオ。一九三四年、日本から最も遠いブラジルで出会った二人は、かけがえのない友となるが……。第二次世界大戦後、異郷の地で日本移民を二分し、多数の死者を出した「勝ち負け抗争」。共に助け合ってきた人々を駆り立てた熱の正体とは。分断が加速する現代に問う、圧倒的巨篇。

感想・レビュー・書評

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  • 1934年、ブラジルの日本人入植地「弥栄村」で出逢った沖縄生まれの勇とこの地で生まれ育った日系2世のトキオ…2人は無二の親友となる…。その後、太平洋戦争が勃発…1945年に終戦を迎えるも、ブラジルでは「日本は勝った」と信じる「戦勝派」と敗戦を認める「認識派」の「勝ち負け構想抗争」が勃発…、勇とトキオも巻き込まれていく…。

    圧巻のストーリーでした。「もうひとつの戦争」と言っても過言ではないと思います。実際に当時あったんですね、知りませんでした…。でも太平洋戦争って、こういう思想が当たり前にあってそれを信じて疑うこともない…そんな時代があったと思うと怖くもあり、でもそれだけ日本って気高い国民性を持っていたんだなって…そんな風に感じました。そして思うのは、今は??なんだか…いいように流されてしまっているんじゃないかなぁ~とか、思ってしまったり…。この作品では、このストーリーが描く時代背景と、あと勇とトキオの友情の行方が一番の読みどころかな…この作品を手に取れて、知らなかったことを知ることができ、よかったと思います。

    • ヒボさん
      かなさん、こんばんは♪

      読了お疲れ様でした。

      外出ついでに「灼熱」探してみましたが、見つけられませんでした‎( т т )

      絶対買って...
      かなさん、こんばんは♪

      読了お疲れ様でした。

      外出ついでに「灼熱」探してみましたが、見つけられませんでした‎( т т )

      絶対買って読みます!!
      2023/05/07
    • かなさん
      ヒボさん、こんにちは!
      連休最終日は雨、
      結局連休中にしたかったことは後回しで
      今日も本を読んで過ごしました(^^ゞ

      ヒボさんが...
      ヒボさん、こんにちは!
      連休最終日は雨、
      結局連休中にしたかったことは後回しで
      今日も本を読んで過ごしました(^^ゞ

      ヒボさんが「灼熱」を手に取れることを祈ってますよ!
      ホント、沢山の人に読んでほしい作品です。
      2023/05/07
  • 感無量の一冊。

    ブラジル、日本移民、勝ち負け抗争。
    知らなかった歴史がここにあった。

    トキオと勇、二人の友情を軸に日本人社会の分断を、揺れまくる心情を描き、揺さぶり引き摺り込んでくる展開に終盤は息つく間もない緊張感が溢れるほど。

    日本を愛する気持ちは一緒なのに現代にも通ずる情報操作による分断の恐怖と虚しさの風が絶えず吹き荒ぶ中、友情の熱を黒瑪瑙だけをただ信じたくなる。

    男達だけでなくこの地で生きる覚悟を決めた女達をそっと添えてくれたのも良かった。

    読後は感無量の想い伴う熱が身体を駆け巡る感覚。紛うことなき大作で傑作。

  • 日系二世としてブラジルで生まれ育ったトキオと日本からの移民としてブラジルに渡った勇。親友となった二人は終戦を勝って迎えたと信じるか、負けて迎えたと信じるかの二択によりブラジルにいる全ての日本人と共に分断されてしまう。日本にアイデンティティがあるからこそ生じた分断だ。

    親友として同じ想いを共有しながらも、真逆の思想を持ってしまった二人の戦後数年の生き様が見所だった。

    終戦記念日を迎えたばっかりの今の時期にぴったりの本なので、是非おすすめしたい。

  • ブラジル移民の間で起きた勝ち負け抗争。そのようなことが起こるのか?という興味で、この本も読み始めました。

    ブラジル移民の過酷さの中、親友となるトキオと勇。戦争により、次第に離れていく二人が、さらに戦後の勝ち負け抗争の中に巻き込まれていく。ベースとしては、お互いのコンプレックスなどパーソナルな部分での葛藤があり、それが抗争とも結びつきという感じではある。

    抗争の過程も描かれるが、フィクション部分とも結びついていて、トキオと勇の二人の物語という中でもあるので、もう少し詳しく知りたいと感じた。原因として情報が入らない、都合よく解釈される、ポルトガル語の情報がわからないといったことが触れられる。そうすると時代のせいと思わされるが、ちょっと前に読んだトランプ信者潜入を思い出すと、時代のせいだけでもなく、起こりうることであるのかもしれない。

    二人を中心とした物語はおもしろかったが、歴史的な事実としての部分をフィクションと切り離して、深く読んでみたくなった。

  • 戦後ブラジルの日本移民を二分した「勝ち負け抗争」事件が題材。あの「凍てつく太陽」と同様骨太でエンタメ性も高く、何より史実の重みを感じる、期待通りの新作だった。8・15以降、満州、東南アジアや北方領土だけでなく、地球の裏側ブラジルでも“戦争”は続いていたという事実、いつの世も変わらないデマの怖さを今改めて思い知らされる。600ページ超の大作だが冗長さはない。特に分断が進む第2部からの展開はスリリングで、ミステリー的要素もあって一気読み。最後は胸が熱くなった。葉真中作品にハズレなし!

  • 第二次世界大戦後、ブラジルで起きたもう一つの闘い「勝ち負け抗争」の史実に基づいた600ページを超える大作。
    日本の移民政策で1934年にブラジルに渡った沖縄出身の勇とブラジルで生まれた日系二世のトキオ。
    同い年の二人は親友となるが、第二次世界大戦が始まり、日本が不利になる中で、二人も離れ離れになる。
    そして、戦争が終わった後も日本が勝ったことを信じる植民地の勇たち。
    一方街で暮らすトキオは、日本政府に近しい人たちと過ごしていたことから、きちんと敗戦を受け止めていた。
    「本当は日本は戦争に負けたのではないか」と揺れ動く勇の気持ちが、読み進めていくとどんどん心に響いてきて、もっと幸せなラストがあっても良かったんじゃないかと思った。
    遠いブラジルの地で起きていたこの史実を、この作品を読むまで知らなかった。
    日本に帰ることを最後まで諦めなった二人の友情が、本当に熱い、いい作品だった。

  • 舞台はブラジル。大正時代からブラジルに移民してきた人達の話。

    主人公は勇とトキオ。物語は2人の目線から進んでいきます。

    ブラジル移民の子供として、ブラジルで生まれて育ったトキオと、日本で生まれ、ブラジルに移住してくる勇。

    弥栄村という、ブラジルの殖民地で出会い、親友となります。

    そこから戦争が始まり、遠く離れたブラジルにもその影響が。

    終戦になるも、戦争に勝ったと思う派と、負けたと思う派が別れて争いに。

    テーマは、認めてしまう事の恐怖だと思います。

    戦争に負けたと、何となくわかっている。でも、それを認めてしまったら、自分は?家族はどうなるのだろう?という恐怖。

    そして、移民してきた事が間違いだったかもしれないと思ってしまう恐怖。

    長い話でしたが、別の視線から戦争を知ることができ、良かったと思います。

  • 凄かった。今まで読んで(知らされて)きた歴史は何だったのかと、今更ながらの無知さを恥じるばかり。あるメディアで、戦争は軍人ばかりでなく、狂信的な国民の後押しがあったから〜と言う様な事を知ったが、正にこんな事がそこかしこであったのかと戦慄と共に660ページ超えを一気に読んだ。
    1人でも多くの人に読んで欲しい一冊。

  • 人の愚かさ、否、戦争の愚かさに何度も叫び出したくなる。垣根涼介さんの『ワイルドソウル』とは違った切り口のブラジル移民の物語。1940年代、日本は戦争真っ只中。ブラジルの田舎の集落で移民となった日本人たちにはなかなか戦況が入ってこない。遠く離れた異国でも大和魂を持ち続ける勇とトキオの2人の青年。やがて戦争が進むにつれ、2人の仲もすれ違い思わぬ方向へと進む。デマ拡散・同調圧力・妄信・視野の狭さが生む自滅、今でも学ぶことが多々あった。勇とトキオの複雑な男の友情も心に響く。ほとばしるような熱さを感じる大作だ。

  • 「灼熱」をその名の由来に持つ国、ブラジル。日本からの移民がそこに多く暮らすことは知っていた。
    年末恒例の某歌合戦で中継されるブラジルの様子を見ても日系人の多い国という認識につながる。
    なんならもう付き合いもないような遠い遠い知り合いがブラジルに住んでいるかもしれない。
    でも、新天地を求めて海を渡った移民たちの戦争による苦難もあまり意識してこなかった。そんな国で戦後に起こった「勝ち負け抗争」についても、今回初めて知った。

    一言で言えば、第二次世界大戦での敗戦を認めようとしなかった、日本は勝ったのだと思い込んでいる移民たちと、いち早く負けを認めその後のことを考えようとしていた移民たちとの「戦争」のことである。
    今では考えられないような情報弱者たちの妄信。けれど、日本に住んでいる日本人でさえ最後の最後まで日本の勝利を信じ込まされていたわけなのだから、遠く離れた国ではさもありなんとも思う。けれどその対立によって引き裂かれた家族、友人、隣人たちの苦悩は想像を絶するものだった。

    「私たち」という同じ集団が、「私たち」と「私たち以外」に分かれていく、いや、分けられていく。
    そこにある「分断」が生むのは悲劇。
    祖国を離れて寄る辺ない者たちの誰もが国のため家族のため必死に信じようとしたもの。
    そして信じるために棄てようとしたもの。自分のルーツを、その存在を、ゆらぐ信念を必死につかもうともがく彼らの叫び声が業火となる。
    たどり着く先を知っているからこそ読みながら苦しくなる。それでも読み続けることを止めることはできない。痛む頭を押さえつつ彼らの未来を信じたいと声にならない声で叫ぶ。

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著者プロフィール

葉真中顕

1976年東京都生まれ。2013年『ロスト・ケア』で第16回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞しデビュー。2019年『凍てつく太陽』で第21回大藪春彦賞、第72回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。

「2022年 『ロング・アフタヌーン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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