- Amazon.co.jp ・本 (618ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103534174
作品紹介・あらすじ
村上春樹、80年代の記念碑的長編。
感想・レビュー・書評
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ストーリー云々以前に、やはり表現の一つ一つがいちいち面白い。
余りある表現の中から自分の好きな表現をいくつかでも心に留めておけば、それだけで村上春樹の小説を読んだ意味があるんじゃないかと思う。
個人的には〈世界の終わり〉の僕が心の存在や影の意味を知り始めてからの話や〈ハードボイルドワンダーランド〉の私が自分の生の終わりを意識して最後の1日を過ごすシーンが素敵だった。
2人の主人公が自分の殻を突き破って世界の美しさをしっかり見つけている様子がよく描かれていて、そうなる前と後で世界は変わっていないのに見え方がこんなにも違うのかと考えさせられた。
世界が変わらなくても自分の考え1つで捉え方がこんなにも変わる、というのは現実でも案外そうなのかもしれない。
また、〈ハードボイルドワンダーランド〉の地下で繰り広げられる場面などは、暗闇という他の情報がなく表現が難しいだろう状況をよくもまあここまで文章で伝えることができるなあと感嘆としてしまう。
どんなに突拍子のないシーンでも表現の多様さでありありとシーンが思い浮かべられる凄さが村上春樹がファンを熱狂させる理由の1つだと思う。 -
何が何だかわからない感じ、ファンタジーのような現実的なような、突拍子もないような、、でも心地よく、引き込まれていくかんじ。
最後まで読み切れた達成感。でも感想といわれると難しい~
以下、なぜか気に入った会話───────
「今日は何曜日だっけ?」と私は娘に訊いてみた。
「わからないわ。曜日のことなんて考えたことないもの」と娘は言った。 「平日にしてはどうも乗客が少なすぎる」と私は言って首をひねった。「ひょっとして日曜日かもし れない」
「日曜日だとどうなるの?」
「どうにもならない。ただ日曜日だっていうことだけさ」と私は言った。
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1文でも心に留まる文があると、読んだ甲斐が有るなぁと思える。
自分は毎日毎日、一日に何度も今日何曜日だっけ。と思ったり口にしたりしてるなぁ。そして休日までカウントダウンするように生きていて、なんかそれってもったいないよなぁ。と思った。 -
完読したのは20年振り。
どうでもいいディティールしか覚えていなかったので、かなり新鮮に読んだ。
まずは、この2つの物語の主人公、私と僕が、同じ人物だってこと、すっかり忘れていた。
だって、ねじまき鳥クロニクルも、カフカも、1Q84も、いくつかの物語が交錯したイメージだったから。。
それから、博士の言ってることがよく分からなくて手こずったww
どちらの世界も素敵なエピソードと、困難に溢れているけれど、やはり世界の終わりの、美しさは特別かしら。図書館の彼女の夢が優しく光るシーン、そしてその夢を読む所は美しかったなぁ。
春樹節と、スプートニク並の素敵かつエキセントリックな比喩の数々に惚れ惚れする。以下
*夏の朝のメロン畑に立っているようなにおいだった。
*サンドウィッチを食べているときの老人はどことなく礼儀正しいコオロギのように見えた。
*わたしはたまに街に出るたびに、十一月のリスみたいにこまごまとしたものを山ほど買いあつめてしまうのだ。
*私は地球がマイケル・ジャクソンみたいにくるりと一回転するくらいの時間はぐっすりと眠りたかった。
*私はだいたいにおいて春の熊のように健康なのだ。
*海底の岩にはりついたなまこのように、私はひとりぼっちで年をとりつづけるのだ
*私は水路標識灯の底についたおもりのように暗く愚かなのだ。
*時間のことを考えると私の頭は夜明けの鶏小屋のように混乱した。
*洋菓子屋の店員はもみの木のように背の高い女の子
*「まるで小さな子が窓にたって雨ふりをじっと見つめているような声なんです」
*ウエイターがやってきて宮廷の専属接骨医が皇太子の脱臼をなおすときのような格好でうやうやしくワインの栓を抜きラグラスに注いでくれた。
* 誰も彼もが秋のいなごのように私の豊潤な眠りを奪っていくのだ。
サリンジャー。
ツルゲーネフ、ドストエフスキー、サマセット・モーム。
音楽。
ボブ・ディラン、ダニー・ボーイ
やれやれ は、たぶん13回。 -
物語の終わり、世界の終りに窓の外を見ると雨が降っていた。
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「街とその不確かな壁」を読んで、再読せざるを得なかった一冊。数十年前に読んだ時より楽しめたと思うのは、おそらく誰もがそうであるように、長い間には個人的に私も自分の意識とか心の在りようとかを考えざるを得ない状況というのが、何度もあったからだろうと思う。
弱い人間だから、環境とか周囲の意見、雰囲気に流されることも少なくないけれど、それでも「心の持ちよう」や自分なりの確固たる考え方を、面倒を避けるために無視しないこと、自由であるために背負わねばならない重荷や苦痛を受け入れること、など、初読の時よりはるかに明確に、自分の経験に照らして考えさせられることが多かった。
「街とその不確かな…」に比べてスピード感がある。二作を読み比べると、著者が歳を重ねたことも何となく感じられて面白い。 -
街とその不確かな壁のあとに読んだ。面白かった!!
ハードボイルド・ワンダーランドの、地下の暗闇をひたすらに歩く場面で私の頭の中がつらつらと描かれてる文章がわたしは特に面白かった。
他も全部、ずっと読んでいたいような文章。比喩がすごい。
街とその不確かな壁よりも、疾走感があって冒険チックだったなと思う。
あと、村上春樹さんの本はわたしはワインやビールを飲みながら読みたくなる。