- Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103528814
作品紹介・あらすじ
日常に潜む違和感に芸人が狂気の牙をむく、ハライチ岩井の初エッセイ集! 段ボール箱をカッターで一心不乱に切り刻んだかと思えば、組み立て式の棚は完成できぬまま放置。「食べログ」低評価店の惨状に驚愕しつつ、歯医者の予約はことごとく忘れ、野球場で予想外のアクシデントに遭遇する……事件が起きないはずの「ありふれた人生」に何かが起こる、人気エッセイがついに単行本化! 自筆イラストも満載。
感想・レビュー・書評
-
元々ハライチが売れだした頃から岩井さんは好きだった。「はじめに」を読んでビビッときた。
目次を見てうわぁーとソソられた。
「家の庭を【死の庭】にしてしまうところだった」
「組み立て式の棚からの精神攻撃」
「あんかけラーメンの汁を持ち歩くと」
「空虚な誕生日パーティー会場に【魚雷】を落とす」
…言葉選びがうまいのか
なんかめっちゃ面白そーじゃね?
あとがきにある通り、起こっている出来事は大事件ではなく私たちの日常に近い「あるある」というもとばかり。
それが岩井さんがわざとやってるのか、どんどん変な方向に迷って行ったりするから面白い。
どうしようもなくなった時にやらかす【放置】も面白い。大爆笑ではないけど、常にクスクス笑わされる。
「仕方なく会った昔の同級生にイラつかされる」
うーん観察眼すごいなぁ。こんな奴いるいる…
「澤部と僕と」
圧巻。
まず、最低!というレベルの悪口が並んでびっくり。しかしそれは一番近くで澤部さんを見ている岩井さんでしか気づかない事であり、しかも核心を突いており、結果的に深いコンビ愛を感じさせた。
そうそう、私はハライチの漫才で「〇〇の△△」とどんどん変な風になって澤部さんが予想以上のリアクションをした時に、隣で思わず笑っちゃってる岩井さんが好きなんだった。
というわけで私はもっと岩井さんの事が好きになった。
-
【感想】
ハライチの岩井さんと言えば「腐り芸人」としてテレビで有名である。相方の澤部さんとともに「陽の澤部」「陰の岩井」というイメージが付いており、日常生活もさぞかし闇に満ちていそうだ。言いたいこと吐き出したいことをたくさん抱えており、書くネタには困らないと思われがちだが、そんなことは無いという。本文中でも、「自分の人生には特別な事件なんて起こらない」とこぼしている。M-1の決勝に5回も進出しており、テレビやラジオに多数出演している売れっ子芸人が「事件が起きない」なんて、そんなわけないだろうと凡人の私は思ってしまうのだが、これがどうやら本当らしい。中学時代、卒業式の前日に当時好きだった女の子に告白してフラれたことが、芸人になるまでの最大のエピソードとのことだ。
そんな普通の人生の、凪のような日常を編んだのが本書である。岩井さんの宣言通りただの日常生活が書かれているだけで、目新しい事件などは何も起こっていない。
だが、そうした一般人と何も変わらない日常も岩井さん独自の視点が加わることで、どこかクスリと笑えてしまう文章が出来上がっていく。「余談だが、生まれた時から勝ちが確約されているのに、自ら道を踏み外して奈落に落ちていく人間というのがまさに〝クズ〟だと思う」「同窓会を開く奴は私生活に満足しておらず、ただ同級生より上に立ったことを確認したいという理由で同窓会を開く」など、些細な人間模様に毒づく「岩井節」がところどころに見られ、平凡な日常に少しちくっとした面白さが加味されていく。「そうそう、こんな瞬間あるよな」というあるあるネタとして楽しめもするし、人並みの生活を少し穿った目線で捉え直すことで見えてくる面白さもある。
岩井さんが凄いのは恐らくその「視点」にあると思う。普段から「岩井節」によってナナメに物事を見ているからなのか、日常に潜むデコボコをそっと切り取って、「こんなことありましたが、どうですかね?」と読者に提供するのがとても上手い。日常のエッセイにオチは無いし、エピソードの〆も「僕はこう思いました」という感想程度で終わるものが多数だが、そうした些細な出来事が事件に発展せずに終わっていく様子が、まさに特別なことが起きずに一日一日が過ぎていく様子と似て、とても心地よかった。
それと、岩井さんは文を書くのが上手いなぁと思う。
本人は「僕という人間は『ぽい』だけで、ネタやツイッター以外の文章などを全く書いたことがない」と言っているが、ただ、書くからにはきちんと綺麗な文章を書きたいとか、やや高尚でしっかりした文を書きたいだとか、そうした意識によって変に力が入ってしまい、クセが残る文章を書きがちなものだが、そうした粗さがない。あくまで岩井さんの自由な視点でつらつらと文章を書いており、それが「日常エッセイ」のゆるい雰囲気にピタリと当てはまっている。読んでいてスッと頭に入ってきて、とても楽しめる文章だった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【メモ】
30代、独身一人暮らし、相方の陰に隠れがちなお笑い芸人がどんなことを考えながら日々の生活を送っているのか。やはり特別な事件は起こっていないかもしれないが、どうかこれを読んだ後、平々凡々な日常を送っていると思っている人でも、少しでもそれを楽しめるようになってもらえたらと思う。
なぜなら、僕の人生を振り返ると、全くもって〝波乱万丈ではない〟
中学時代、卒業式の前日に当時好きだった女の子に告白してフラれたことがある。驚くなかれ、なんとこれが芸人になるまでの僕の人生において最大のエピソードなのだ。どうだ、何でもないだろう。「ふーん」だろう。「うわ普通~」だろう。
余談だが、生まれた時から勝ちが確約されているのに、自ら道を踏み外して奈落に落ちていく人間というのがまさに〝クズ〟だと思う。
ハマると飽きるまでやってしまうことがある。〝飽き〟というのは恐ろしく、いくら好きだったものでも急に興味を削がれる。飽きなければ好きなことを延々とやっていられるので、どれだけ幸せだろうと考えたこともある。しかし、そうなると新しいものは何も生み出されず、人は進化をやめるだろう。飽きることで前進しているんだという結論にたどり着いた時、これからも〝飽き〟によって前進させられるのか、と思って、ちょっと疲れた。
本当に仕事と私生活に満足している人間は同窓会など開かないということだ。端から見て私生活と仕事が上手くいっていても、どこか楽しくないとか、満足していないとか、もっと人に認められたい人間が、学生時代の楽しさのピークを更新できていないからか、同級生より上に立ったことを確認したいという理由で同窓会を開くのだ。なので、楽しさのピークを更新していて、今を楽しんでいる人間は同窓会など求めていない。
澤部にファンがいなかったり、後輩に憧れられないのは僕が思うに、澤部の返しやリアクション、バラエティでの立ち振る舞いが全てどこかで見たことがあるものだからなのだ。他の芸人がどこかでやっていそうなことで成り立っている。なので「澤部のここがいい!」と思うと、それがもっと上手い誰かが存在するので、結果その人に憧れたりファンになったりするのである。澤部は誰かがやっていたことを吸収して、自分を通してアウトプットするのがとにかく上手いのだ。
だから、普通に生活している日常を面白がりたい。毒にも薬にもならないどうでもいいことが笑えたりする。それが少し視点を変えるだけで全然違うように見えたりもする。
芸能の世界で仕事をするようになってからずっと思っていた。僕の人生には事件が起きない。が、それと同じように皆さんの人生にもそんなに事件は起きていない。そして、テレビで見る芸能人の人生にもどうせ本当は事件など起きていないだろうと。それを皆、化学調味料で元の味などわからなくなるくらい噓のように濃い味付けにして提供してくるのだ。そんなものばかり食べていると、そのうち舌が馬鹿になる。物の味なんてわからなくなってしまう。 -
ハライチの岩井勇気さんのエッセイ。
何か書くとなると生活に題材を見つけていく必要が出て、自分の視点が持てておもしろいものだというまえがきからもあるように大事件ではないが、生活の中で、ちょっとしたことから考えが巡っていく様子がおもしろい。
組み立て棚を組み立てることから始まる思考の巡り方や、ムンク展に行くとなっての話など思考が展開するところがおもしろい。
誕生日パーティーに呼ばれた話やタクシーの運転手さんの話の辺りは、ちょこちょこ伺える精神的な武闘派ぽっさで怖いよという感じだし、あんかけラーメンのつゆの話は、何を考えてるの?というシュールな話、ショッピングモールに話などのちょっとしたことから遭遇したことの顛末の話と多様な話でおもしろい。
個人的には、あんかけラーメンのつゆの話がシュールなおもしろさで好きです。
あとがきで「誰の人生にも事件は起きない。でも決して楽しめない訳ではない」「どんな日常でも楽しめる角度が確実にあるんじゃないかと思っている」と書いている。ちょっとしたことでも文章化するとそういった視点が見えてくるかなと考えさせられた。 -
ハライチの漫才が大好きですそんな漫才のネタを書いている岩井の初エッセイが書店に並んでいて、ずっと気になっていたんですが、ようやく読むことができました!
マジョリティを嫌い、人と同じ事はやりたくない
そんなひねくれ者の岩井が好きだ!
自分も同じような人間だからだ…
タイトル通り、事件というほどのことは起こらない日常な些細なことなんだけど、それに対する考え方、表現の仕方が面白い。
とても共感した部分を抜粋
岩井の考えるクズ人間の解釈
「生まれた時から勝ちが確約されているのに、自ら道を踏み外して奈落に落ちていく人間というのが、まさにクズだと思う。」
そしてここが一番共感して、岩井がめちゃくちゃカッコいい「空虚な誕生日パーティ会場に魚雷を落とす」というエピソード
その冒頭で
「僕は人がたくさん集まるようなパーティや飲み会が苦手だ。社交性がないという訳ではない。
見ず知らずの人間達が集まっているにも拘らず、
さも楽しそうにしていないと「感じが悪い」
だの「空気が読めない」だのと言われかねない雰囲気が好きではないのだ。」
これはまさに、自分自身の言葉を代弁してくれたようでとてもえれしかった!
「恐怖に怯えたタクシー運転手の怪談話」
はカフェで読んでて何度も吹き出して笑ってしまった。
周りからは白い目で見られていたかもしれないので
ゾッとしますが…笑
そして最後の章で岩井が相方の澤部を考察するところは面白かった。
また次作がでたら絶対に買おうと思います! -
エッセイ。
そんなに笑わそうとしている感じでもなく、世間に噛みつくでもなく、のんびり読めて、なんかいい。
組み立て式家具はそんなに嫌か。単に面倒という以上に、それほど恐ろしいものだったとは。
私なんか、組み立てるのが楽しみでうきうきしちゃうのに。
相方のことを分析する目線は、ほお―そうなんだ、という感じ。
こんなの他人が言ったらけなしてるとしか思えないけれど、わざと落として持ち上げるというのでもなく、ただ素直に冷静に見つめているのだろう。
そこに好意と信頼と尊敬が感じられるから、素敵なコンビだなあと思った。 -
今までに読んだ芸人さんのエッセイの中で1番好きでした。
岩井さん独特の価値観から世の中の当たり前が歪んでみえる面白さがあるが、それが綺麗な読みやすい文章でまとめられているのがとても良い。
他と違ったセンスを表現しようとするあまりに、ただただ読みにくい文章になっているだけという本もよくあるが、この本はそうではない。
本当の根っこの部分が良い意味で捻じ曲がっている人の考えが凡人に読みやすいようにまとまっている違和感が最高にグッド。 -
僕の人生には事件が起きない。読んでいて本当にそうなんだな〜と感じた。何でもない普通の日常を、いろんな角度から楽しんでいる。あまり気にしないような細かなところにも目を向け、それを文章にする。器用な人だなと思った。面白かった。
-
なんとなく読み始めましたが、途中で止まらなくなり、一気読みしてしまいました。
めちゃくちゃ面白かったです。
ぜひぜひ読んでみてください。 -
冒頭の二、三篇は文章が堅かったがすぐに小慣れて、後半には一文ずつボケの高速連打、オチも鋭い。
痛烈な指摘あり、ふとした気づきあり。
中でも『棚』、『怪談』、『誕生日パーティー』、『VIP』が良かった。
岩井さん、かっこいいですよねー
(文才もあるし顔も好き)
まずタイトルを見た時のワ...
岩井さん、かっこいいですよねー
(文才もあるし顔も好き)
まずタイトルを見た時のワクワクが半端なかったです!
私とよく似た感覚でこの本を面白いって思っている人がいて嬉しいです!
自分もこの面白さを共有できる人が嬉しくて思わずコメントしてしまいました!
自分の本棚にも登録してあり...
自分もこの面白さを共有できる人が嬉しくて思わずコメントしてしまいました!
自分の本棚にも登録してありますが、ふかわりょうのエッセイも結構面白いので是非おすすめです。
私からもフォローさせてもらいました(*^▽^*)
私からもフォローさせてもらいました(*^▽^*)