蟻の棲み家

著者 :
  • 新潮社
3.09
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感想 : 42
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  • Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103521914

作品紹介・あらすじ

平等が建前の社会に埋れた、理不尽な「階級」。底辺から抜け出すため、男は何を為したのか――。二人の女が別の場所で、銃で撃たれ死亡しているのが発見された。どちらも、身体を売り怠惰な生活を送る母親だった。マスコミが被害者への同情を声高に語る中、フリーの記者・木部美智子は地道に事件を追い続けるが……。格差に美談で蓋する社会と、そこから必死に這い上がろうとする男。骨太なノワール犯罪小説。

感想・レビュー・書評

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  • 思っていたより読むのに時間がかかった。読みづらいというほどではないが、文章が単調なのかも。フリーライター木部の独自取材のほうが警察の捜査より先に事件を明らかにしていく。日本の警察はそんなに無能じゃないと思いたい。結局真相にたどり着いたのも彼女だ。あまり喜ばしくない真相だけど。

  • 初読みの作家さんでした。
    が、フリーライター木部美智子シリーズ第5弾ということを他の方のレビューで知りました笑

    身体を売り生計を立て育児放棄をしている母親2人が射殺された事件。
    生きる為に幼い頃から犯罪に手を染めてきた吉沢末男。父親は医者、大手企業の内定も決まっている大学生の長谷川翼。
    2人を殺したのは末男か、翼か。

    どんな命も平等にあるのか。
    蟻の巣で暮らすものは、どんなにもがいても地上で暮らすことは出来ないのか。

    なんだろう。
    ずっと読みずらかった。
    文章?言い回し?
    わたしの読解力の弱さ(これだろ)

    それにしてもさ、木部美智子 有能すぎなのか 運がありまくりなのか、警察も掴めない事実をどんどん掴みすぎじゃないかい?

  • ストーリー自体に少し疑問点は残るものの、物語を通して末男の生き方を堪能できた。

    母親は体を売って金を稼ぎ、男なしでは生きられないタイプ。そして子どもたちには見向きもせず、借金ばかりを作る。そんな環境から幼い妹を守るため、末男は妹を学童まで迎えに行ったりバイトをして生活を支えていた。
    しかし、借金を返せなくなると万引きをしたり、窃盗をしたりして生活をするようになる。

    末男が27歳の時、売春婦が2人殺される事件が相次いだ。同じ頃、ある企業が強請られる事件が起こっていた。
    その2つの事件はリンクして、警察と記者は末男とその仲間に辿り着く。

    果たして犯人は。


    今の世の中、毎日のように流れる育児放棄やら児童虐待やらのニュース。悲しいし、怒りしか湧かないが、どこか遠くの事件だと思っていた。
    しかし、読んでいくうちに、その渦中に放り込まれたような錯覚を覚え、また、案外ちょっとしたきっかけで起こりうる事件でもあるのかもしれないと、怖くなった。

    ネタバレになってしまうので書けないが、それはおかしいだろう!という部分も。でも、久しぶりにノワールを堪能できた。

  • 【総評】
    星無し。久々マイナス評価本
    大どんでん返しは無い
    帯詐欺本


    【開始から60p】
    他の人たちも感想に多数書いてるが、なんじゃこの読みにくい読み進まない文体は?!
    読む威力気力など全ての楽しむ事への『力』を削いでいく…
    こりゃ、久々の『残念断念駄作』になるかも…

    魅力ないなぁ…
    力もないなぁ…

    この間の柚月裕子の『教誨』も女作家特有の読みにくさあったが、これはそれにしても…だ
    女作家に良くある系の文体なんだろうなとは思っても、それを踏まえてでも先に読ませるってのが全く感じられない…

    島田荘司とは違った意味で読めない進ま(め)ない作家だ…ある意味才能ー(ダメな方で)

    【読後】
    最初と最後の各章は読んで中は斜め読みした

    最悪なのは、斜め読みですら眠くなる進まない単調な文体。
    進まなすぎて「まだそこに留まって何が言いたいの?」と何も伝わらない。

    主人公も魅力無し。
    作家が魅力無いから中の人物も魅力生まれないよな…誰1人魅力無し。

    大どんでん返し?どこが??
    全くありません。はい。まんまです。
    帯は詐欺。購入してたら激怒レベル。
    図書館で良かった…

    学んだ事は
    この作家の本は、もう読まない。

  • 評価は3.

    内容(BOOKデーターベース)
    二人の女が中野区内の別の場所で、それぞれ銃で撃たれ死亡しているのが発見された。どちらも身体を売り、育児を半ば放棄した、シングルマザーだった。マスコミが被害者への同情と美談を殊更に言い立てる中、フリーの記者・木部美智子は、蒲田の工場で起きた地味なクレーム事件を追い続けていたが…。現代社会の光の当たらない部分を淡々とした筆致で深く描き出した、骨太なノワール犯罪小説。

    う~ん。最後まで読むのが大変苦痛だった。えん罪はダメだろう~運が良いとか偶然が重なれば必然だとか言っても。

  • 書評家大森望氏の書評を読み、
    興味を持った初望月諒子本。
    イヤミスなんてカテゴリーには
    括れないぐらいの社会派犯罪小説。
    文字ひとつひとつを取りこぼさないように、
    しっかりと読んでいくうちに、
    自分の内から吐き出したかのような文章に
    気持ち悪くなる。
    善人面した人々に呪いの言葉を吐きたくなる。
    何も見えていないくせに訳知り顔で
    同情する人々を罵倒したくなる。
    吉沢末男は犯罪者ではあるが、
    至極真っ当な人間であるように思えてくる。
    主人公のフリーライター木部美智子が
    物事を俯瞰で捉え、
    常に平常心でいるからこそ、
    よりリアリティがある。

  • 女性連続殺人事件と企業の脅迫事件
    因果関係に迫るマスコミと警察、そして犯人側の攻防

    主人公のフリーライターと警察が事件の真相に迫ろうとするも遅遅として捜査が進まない様子、そしてゆっくりでも着実に犯人に迫っていく様が丹念に、時には歯がゆさを感じる程に丁寧に描かれる。
    「蟻の棲み家」というタイトルは、いわゆる裏の世界に広がる犯罪や反社会的な組織が蟻の巣状に広がる様子を喩えているのだが、調査や捜査に携わるもの達もまた蟻のように働く歯車に過ぎないのだという比喩にも感じられる。

    環境が人を変えるのか、環境を問わず人は転落していくのか
    どちらとも取れる展開が用意されていて、イッキ読みするには重たいテーマだが、克明な描写は読み応えを感じた。

  • 貧困とか売春というような薄暗い話が興味もあって割と面白く、一気に読めた。

    ミステリーとしてはあまり良い出来だとは言えない。序盤の末男目線での『今なら人を殺せると思った』とか、それこそこの殺人で誰が得をするのか考えてたら予想通りだった。ハンカチも分かりやすかったし。だから結末に驚きは全くなかった。

    だけどこじつけてる感じが酷い。1200万円の工面としてはあまりに行き当たりばったりで運任せすぎる。そんな不確かなものに翼の父親は1200万円をかけるようには見えない。

    「2人殺したら間違いなく死刑」ってふうに描かれてるのだけど、それも微妙。警察もあまりに無能に描かれすぎてて現実味がない。

    もう1つの薄暗いテーマの方について。クズな人間を「子供を産んで育児放棄する。安い値段で身体を売る女」で定義してしまって、それ以上掘り下げなかったから浅かったように感じる。

  • 雑誌記者の木部美智子が森村由南と座間聖羅がピストルで射殺された事件の真相を追う物語だが、吉沢末男と長谷川翼の行動がキーポイントになる.末男の生い立ちが縷々語られるが、劣悪な環境で育ったにも拘わらず、妹の面倒を見ていた.翼は父親が医師で恵まれた環境で育ったが、大学で不幸な女性を支援するサークルを立ち上げ、傍から見る限り素晴らしい青年に見える.秋月薫が捜査の前面に立つが、美智子の情報に助けられる場面も出てきた.捜査の結果、末男と翼が逮捕されたが、警察は彼らの巧みな供述でどちらが犯人か決められない.美智子は末男の昔の事件で関わった遠藤弁護士から話を聞き、さらに翼の妹の理央からも供述を得て、推理を組み立てた.最終的に警察は翼の犯行と決めたが、美智子は末男から核心に迫る供述を得る.面白かった.

  • フリーライター木部美智子シリーズ第5弾。
    中野区内で二人の女が銃で撃たれて死亡した。二人とも身体を売り、育児を放棄したシングルマザーだった。
    「売春婦」という事実を隠し、格差は美談で蓋して見て見ぬふりをする社会。命は本当に平等に尊いのか・・・

    前作にもまして密度が濃く、これでもかというほどに問いかけてくる筆致に、一気読みなどできず、思いのほか時間がかかって読了。

    ――貧しいというのと貧困は違う。貧しいというのは金がないだけだ。しかし貧困というのはインフラがない土地のようなもの――

    売春婦の子に生まれ育児放棄された家庭で、妹を守り抜くことを自らに課し、必死で貧困から抜け出そうとした末男。
    ただ妹を食べさせるために盗みを働き、公園のベンチで勉強をした。保護観察処分を受けながら、担任教師の尽力によりやっとのことで就職した鉄工所も、金庫を盗んだ疑いをかけられ辞めざるを得なくなる。
    教師は「運命を切り開け」というが、這い上がっても這い上がっても転ぶ、底のないぬかるみを進むような人生は末男をどう変えていったのか。

    ――空のどこかにあるのかもしれない正義や人権を、あると思わず生きていくこともできるんですよ。そんなものがない世界が、同じ空の下にはあるんですよ。そしてどこにあるともわからぬものをあると信じてかしずくことを、愛ともいうが欺瞞ともいうんです――

    自力ではどうにもならない、決して救われない世界ってあるんだよね、きっと。そして、それが自分たちのテリトリーを侵さない限り、ないものとして扱う、このクソのような社会。私もクソの一員。

    木部美智子の最後の選択は反社会的だけど、なんだかホッとした。

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著者プロフィール

愛媛県生まれ。銀行勤務の後、学習塾を経営。デビュー作『神の手』が、電子書籍で異例の大ヒットを記録して話題となる。2011年、『大絵画展』(光文社)で、第14回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。

「2023年 『最後の記憶 〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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