- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103519928
作品紹介・あらすじ
北朝鮮でクーデター勃発。拉致被害者を救出せよ! そのとき、国はどう対峙する? 騒乱に乗じてミサイル発射を企む北の軍部に、米国はピンポイント爆撃へと動き出す。だがその標的近くには、日本人拉致被害者が――。日本の政治家は、国民は、人質奪還の代償として生じる多くの犠牲を直視できるのか? 実戦投入される最強部隊の知られざる内実とは? 日本初、元自衛隊特殊部隊員が描く迫真のドキュメント・ノベル。
感想・レビュー・書評
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「こちらが3人なのは、数が少ない方が居場所を秘匿しやすいからです。能力さえあれば、数が少ない方が有利です」。
自衛隊特殊部隊を巡るシミュレーション小説。
命がかかっているからこそ、とことん体を追い込み、効率的に意思決定する軍隊(自衛隊の現場部隊)と、かかっているのは面子と虚栄心だけの政治家、官僚(自衛隊の高級幹部含む)が見せる無責任、先送り、形式主義があからさまなまでに対比的に描かれる。
多少煽り気味だとしても、日々大企業病の組織で疲弊し、とはいえ結局自分もその一部として事勿れに加担している、といったサラリーマンには身につまされることも多いだろうし、逆に短時間で重い意思決定をする訓練を受けている人にとっても、あるあると感じられることは多いだろう。
軍事作戦のディテールのリアリティ、人体損壊描写のリアリティで読む者を強い緊張感で包み込む。
政治物としてのエキサイトメントも十分すぎる。
これはおもしろい本を見つけたぞ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
自衛隊特殊部隊、この本を読まなかったらずっと存在すら知らなかったかもしれない。北朝鮮から連れ去れられた日本人を奪還する。潜水艦の狭い空間、水の中の静けさまで伝わってきた。自衛隊特殊部隊の愛国心は凄まじい。特殊部隊のリーダーシップは多いに勉強になった。
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伊藤祐靖さんの書籍は、本書が二冊目になる。
自衛隊の特殊部隊創設時から関わってきた著者だからこそ、醸し出される本物の質感を感じることができる小説。ページをめくる手を止められない。
プロフェッショナルの所作を細部に至るまで描くことで醸し出す緊張感、ヒリヒリするような肌感覚まで伝わってくる。
政治家の中にも、国のあり方、国際社会の中での立ち位置などを大局的に見通し、腹の座ったような人物もいてほしいと思うが、そんな人物を登場させると、かえって信憑性が薄れてしまうのが悲しい現実なのかもしれない。
戦闘描写もさることながら、情報を分析する場面も、ドキドキする興奮を感じる。
自衛隊の法的な位置づけについても、学ぶことができる。
読み終わったそばから、また読み直したくなった。 -
フィクションとして十分面白い上にリアリティもある。もしかすると実話なんじゃないかと思うほど。小説家でないので変にオチやどんでん返しを仕組もうともせずストレートなのが好感。
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北朝鮮でクーデターが勃発。騒乱に乗じてミサイル発射を企む北の軍部。事態に介入する米軍はピンポイント爆撃を企図。そこに日本にとって最重要問題が発覚。標的近くに6名の日本人拉致被害者の存在が判明…。
時の政権は、拉致被害者救出すべく自衛隊最強部隊の派遣を決断を検討する。派遣は即ち軍事衝突を意味し、救出の代償として、隊員の生命が犠牲となることは必至。はたして首相はいかなる判断を下すのか…。はたして隊員は拉致被害者を無事救出し、祖国の地を踏むことが出来るのか…。
本書の著者は、元海上自衛隊の特殊部隊『特別警備隊』の創設者のひとり。『だからこそ』描ける、『そうじゃないと』描けなかった、極めてリアルにガチに我が国の安全保障の生態を、現状を、生々しく、時に目を覆うばかりシーンが続出する。
政治家や外務省・防衛省のキャリア官僚たちは、あたかも空手を通信教育で学んだことを何の恥じらいもなく宣うかのような言動を繰り返す。武力による救出は、派遣される自衛隊員の棺桶がずらりと並ぶことでもあることを想像できない政治家、多くの犠牲を払ってでも行う武力行使の目的に訊かれまともに返答できない為政者。
海の向こうの戦争を眺めているかの如くの理念なき覚悟の伴わないか細い方針であり、法の拡大解釈に終始し、なし崩し的に重要問題が決められていく…。
それは、かつて見た景色そのものである。太平洋戦争当時の日本陸軍参謀本部は、そもそも企画立案を行うスタッフ部門(バックオフィス)であって、決定・命令を司る司令部ではない。ところが、参謀本部が全てを決めていく。ゆえに、陸軍は参謀本部と戦線との乖離が著しく生じ、互いが暴走を始めた…。
小説という庇(ひさし)を借りつつも、フィクションのレベルをはるかに凌駕するドキュメンタルなノンフィクション仕立てにし、シリビアンコントロールの脆弱性を浮き彫りにし、安全保障の矛盾点を炙り出し、我々日本人に突きつける。
端的に言えば、『自衛隊員から軍人としての権利を奪っておきながら、義務だけはきっちり強要している』。
昨今の世界情勢や隣国との領土問題に照らせば、北朝鮮との有事が起こっても何ら不思議ではなく、不条理に塗れた我が国の安全保障、標榜する平和主義って何なの?を深刻に考えさせられる一冊。 -
自衛隊の特殊部隊創設に関わったという著者によるフィクション。流石に装備や組織の話はリアルだし、ストーリーも途中までは引き込まれたが…戦闘シーン以降は急に陳腐になった感ある。
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ものすごく面白かった著書だった
リアルである
自衛隊の置かれている立場
日本が決めなければいけない事がわかった
軍隊と言うものは、人を殺すためにある -
自衛隊に特殊部隊が存在することを知らなかった。リアルさに関しては本物を知らないので判別できないが、臨場感は伝わってきた。国のために命を懸けて戦うという理念的なことが、具象化されどういうことなのかが明確に伝わってきた。シビリアン・コントロールとはいえ、腹が座った政治家でないと武力に対する正しいコントロールはできないということがよくわかる。
本書は「武」の面が前に出た小説であったが、その裏にある諜報戦に関するものも読みたくなった。