- Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103513216
作品紹介・あらすじ
日本とヨーロッパの「ファースト・コンタクト」。『逝きし世の面影』『黒船前夜』に続く待望の書、刊行! 大航海時代、日本もまたグローバルプレーヤーだった。世界が海で繫がった世紀を、ポルトガル海上帝国の構築、イエズス会の積極的布教、信長・秀吉・家康や諸大名ら権力者の反応、個性的な宣教師、禁教、弾圧、島原の乱、鎖国というキリスト教伝来をめぐる出来事を軸に、壮大な文明史的視点で振り返る「渡辺史学」の到達点!
感想・レビュー・書評
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大航海時代と日本
この本の目線は当時の日本人ではなくあくまでも来日した西欧人で、まさに渡辺史学!
その意味では名著「逝きし世の面影」と同じだ
幕末日本に文化的優越性を持って現れた欧米とは異なり、対等性を示した日本
この当時もまた、逝きし世である詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
渡辺さんは在野の人である。しかし、水俣での運動を含め世間の評価は高い。ぼくも何冊か読んでいる。本書も、自分の専門と少しかかわるところがあるので、出てすぐに買っていたが、なにしろ大部の本なのでなかなか手つかずであった。ところが、この(2019年)3月にポルトガルへ行ってくると、途端にこの本が身近に思え、読み始めた。渡辺さんによれば、専門の学者は詳しい通史を書こうとしない。それは通史は業績にならないからである。本書はたしかに詳しすぎるほどの通史である。注もない。本書の中で文献名や著者名が出てくるだけである。渡辺さんによれば、日本は幕末の開国の前に、16世紀に一度外国の波をかぶっている。幕末にはたった四杯の蒸気船で日本中があたふたしたが、16世紀においては対等に渡り合った。そんな時代があったのだという。これは名言である。その波は実はスペイン、ポルトガルの世界戦略、つまり、世界をこの二つの国で分けてしまおうという大それた考えのもとに展開されたものだった。しかし、日本の軍事力は朝鮮出兵、明への出兵計画で示されたように、当時のスペイン、ポルトガルに匹敵するものだった。だから、イエズス会はあくまでそれを隠しながらキリスト教の布教につとめた。もちろん、純粋にキリスト教を広めたいという考えを持つ宣教師もいたが。そういうさまざまな思惑をもった宣教師たちを前にして、日本でも純粋にキリスト教に帰依する人々も出てきた。渡辺さんはそれは当時の戦国時代の不安な世情が関係しているのであろうという。これを読んでいて思うのは、もし信長が生きていたら、日本と世界の関係も変わっていただろうということ。信長の頭の中には西洋世界があったのだから。
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グローバル・ヒストリーが密やかなブームらしいですが、これはその観点から書かれたもの(NHK スペシャル「戦国」でまさにこの時代が放映されました)。
1494年にスペインとポルトガルで結ばれた「トルデシリャス条約」はあまり知られていないのではないでしょうか。大航海時代、勢力を競い合っていた両国が、世界を2分して新領土の分割を取り決めたもの。これによって、日本はポルトガルの対象地域となりました。ローマ教皇は、布教することを前提にこれにお墨付きを与え、(ザビエルはスペイン人ですが)ポルトガル系のイエズス会が日本でも布教を開始。その後、宣教師から「布教をまず進めてから、その国を侵略する」ということを聞いた豊臣秀吉は、バテレン追放令を発布。ただ、その後も布教は続き(スペイン系フランシスコ会が参入してイエズス会と勢力争い)、徳川秀忠・家光の時代になって禁教令・鎖国となって弾圧が行われるまでが詳細に記述されています。
諸外国は、当時の日本の武力にはかなわないと見ていたそうで(家康もそう考えていた)、「侵略」までは考えていなかったのではないでしょうか。逆に、日本は欧州からすれば憧れの地であり、日本で殉教することが誉れであったと書かれています(日本で殉教を目指す宣教師もいた)。これを読むと、当時の状況では、「鎖国」も一つの選択肢であったかと思わされます。
じっくりと腰を落ち着かせて読むべき丹念にして重厚な一冊です。前回の「黒船前夜」に続いて、本書は著者86歳のもの。これだけ精緻に調べて書き上げるというのは大変なことと思いました。
因みに、本書には書かれていませんが、スペイン語が多い南米で、ブラジルだけが唯一ポルトガル語なのは、この「トルデシリャス条約」のため。両国の線引きでブラジルがポルトガル側に入ったためですが、「世界2分」とは凄いことを考えたものだと改めて思いました。 -
読みたかった本ナンバーワンをようやく読むことができた。
10年もの連載なので長いといえば長いけど、
エピローグを読んで得心した。
とりわけ、
「アジア宣教は単に、北方プロテスタンティズムによるカトリック世界の縮小を補償するものではなかった。それは著しく後年の共産主義者の世界革命理念に似ている」
という一文に感動した。
ま、エピローグを読んで初めて全体というか、
渡辺氏の考え方が分かるというのも、
自分の拙さなのだが。
単行本にしたとき(2017年)86歳の渡辺氏。
今は90歳を迎えられたか。
肩の力を抜きつも、聡明な文章が私は好きだ。
文句なく星五つ。 -
散在するバテレンの記録を一つの本に集約したもの。
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冒頭、日本の視点ではなくポルトガルの視点から展開されていくのがとてもよかった。どのようにして日本にたどり着くのか、自分が苦難のなか、冒険していく気分になった。
親から勧められて手にしたが、キリスト教は嫌いなのでしぶしぶ読み始めた。しかし、日本での話になると「この人キリスト教が嫌いなんだろうなあ」と思わせる記述が随所にあり、想像したものと反対にすらすら読めた。
為政者がはっきり判断を示さず、忖度を期待するところは現在と変わらないと感じた。司祭たちはさぞ困ったことだろう。そこは同情する。 -
渡辺京二もだいたい見たら買う。これも去年の暮れには入手していたのがなかなか手をつけられないでいたが、読み始めたら一週間ぐらいで読んでしまった。
なんとなく著者には近代史の人というイメージを抱いていたが、本書は近世、キリスト教伝来時の日欧交渉を書いたもので、ずいぶんさかのぼっている。あとがきによれば本書は『日本近世の起源』の補足編的な位置づけだというが、こっちの方がずっと分厚い。10年以上にわたる連載だったというが著者はあとがき時点(2017)で86歳だという。よく根気が続くものだと関心する。