- Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103502920
作品紹介・あらすじ
『最後の秘境 東京藝大』著者、次なる探検先は「学生競技ダンス」だ! 正装はパンツの上からスクール水着? どんなに激しく踊っても髪を揺らしてはいけません? 究極の笑顔の破壊力とは? 脇の下の筋肉を鍛えてライバルを優雅に蹴散らし、光速スピンで肉体の限界を軽やかに超える。競技ダンスは闘技場で繰り広げられる究極の格闘技だ。キレキレに踊れる小説家が、大学時代を捧げきった異世界にご案内。
感想・レビュー・書評
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東京芸大に関するルポ小説をお書きになった二宮敦人さんのお作。学生競技ダンスについての1冊だ。
身内に競技ダンスの選手がいる。踊りが好きで好きで、バレエにシアターダンス、ジャズ、様々経験して、幼い頃からの踊る生活の後、学連から競技ダンスを始め、ここに書かれている、悲喜こもごもを味わい尽くして、卒部後、アマ戦に進み、現役で踊っている。
身内は一橋大ではないが、学連の競技ダンスというのは、そこに携わる選手の方たち、全部が大きな『競技ダンス選手部』とでも言いたいような、連帯があるように見える。ここに書かれていることは、誇張ではない。勉強や仕事があるにも関わらず、皆さん4時間、7時間、と練習する。睡眠を削り、毎日ウェイトをチェックし、技術を学んで、他のやるべきこともやって、なおかつ踊る。
軟弱なんて、イチャイチャなんてとんでもない。いかに激しい運動量か。互いに泣いて笑って、信じてぶつかって、感謝して。美しい本番に向けて、ひたすらに踊る。
悩んだ時の相談役だった私は、濃密なこの世界の様を、身内を通してずっと見てきた。
「悩みも、苦しいのも、色々嬉しいのも、時期が違ってもよく分かる。他大も自大も関係ない。卒部の時の幸福感と、それでもダンスが好き、ここで踊って来て良かったって思うのは同じなんだよ。」とのこと。そうだろうと思う。
固定カップル制度のことも、勝てた勝てないも、その正否いかんより、その中で打ち込んで悩んで、輝く様が、尊く思え、卒部の時期が全く違う二宮さんの心にも、それは残っているのだろうと思った。芸術スポーツ、あるいはアートとしての舞踊は、どんなものでも、どこか日本では、失笑と共に軽く見られている。でも、もしそうなら、なんで学連の方たちが寝る間も惜しんで、しのぎを削るものか。プロ・アマ共に、こんなにも幅広い年齢の表現者・競技者がいようものか。
興味を持った方が、競技を見たり、実際に踊ったりなさったら、どんな感想を持たれるだろう。チョロくないことに、驚かれるだろうか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
勉強ばかりして、やっと入った学校の入学式でめちゃくちゃ勧誘されて、いい気持ちになって、酒飲まされて、褒められまくって、体験させられ、褒められまくって、突然厳しくされて、突き放されて、でも、優しくされて、プチ達成感みたいの感じさせられて、って行ったことないけど、自己啓発セミナーってこんな感じかな?
巻末の作者紹介が、ALL 一橋大学体育会競技ダンス部卒になっていましたが、自分も授業は寝てばかりで、人生に必要なことは全て部活で教わったばりに思っていました。
アイデンティティが部活と一体化してしまい、試合に勝てたら死んでもいいわくらいに、のめり込む始末。ホントに卒業という区切りが合って良かった。
そんな気持ちを代弁してくれる良作です。
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「競技ダンス」といえば『Shall we ダンス?』や『ボールルームへようこそ』を思い浮かべるけれど、「学生競技ダンス」ということで始終友人のF氏を連想しっぱなしだった。大学時代、こんなふうに部活を頑張ってきたのかなと。「2人で」作り上げる点や、「競技」であり順位が付くという点は異なるけれど、大学オケにも通じるところが多々あって、どうしたって自分の大学時代の記憶と重ねて読んでしまった。一つ飛ばしで親子関係の代になるとかあるよなあ。それでも競技ダンスは、順位が付く点以外にも、自分の不足やミスは唯一パートナーに向かってしまうとか、固定とシャドーに分かれてしまうとかがあって、流石につらそうだ。オケにはオケで別の苦しさが(もちろん楽しさも)あるけれど、オケで良かったよと思った次第。本書にも出てきたけれど、そう言えば、母校のD大の競技ダンス部は強いと学内でも有名だったことを思い出した。HPで最近の戦歴を見たら今でも強いみたい。その昔、オケの合奏をやっていた大集会室で、別の時間帯に、本作のような青春が繰り広げられていたかもしれないと思いを馳せた。
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競技ダンスに打ち込んだ大学時代と10年後の現在が交互に語られる。あの熱さも苦しさも喜びも悲しみも全て思い出してしまう、ずっと蓋をしてきたのに―
競技ダンスの意外な決まり等の雑学的な部分も興味深く面白かったのですが、かなり独特な競技ですね。印象的なのが「固定」といわれるパートナーとの関係性。手をつないで体を密着させ、誰よりも長く一日を共に過ごしているのに恋愛感情ではない(恋愛に発展する方たちも勿論いらっしゃる)という不思議さ。以前にバレリーナ・森下洋子さんが著書の中で述べられていた「愛というものが様々な形をとる」という言葉(細部は違うかも、でも大意はあってる)を思い出しました。 -
「最後の秘境 東京藝大」の著者が振り返る自らの大学生活。一橋大学競技ダンス部での狂乱の四年を回顧する。技術的なことや、パートナーを固定で決められてしまうこと、大会の悲喜交交などが熱い。
知らないことが多く、面白く読んだ。監督やコーチのいる運動部とは違って上級生が後輩を指導する。高校生は、野球部やサッカー部がどんな風かは想像できるだろうし、チャラチャラ系のスポーツサークルまた同じ。しかしかなり真剣にやってる文化系サークルのことはなかなか分からないだろう。大学生活のことを知りたい人にとってもオススメ。
しかし濃厚な熱さに胸焼けしそうにもなる所もある。読んでも、ダンスをやりたいとは微塵も思わせないのはスゴイ。楽しそうというよりむしろ苦行のように感じた。 -
知らない世界で面白かった。ペアを先輩が決める制度は替えたほうがいいと思った。
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大学生が舞い踊る学生競技ダンスの世界。
藝大の秘境を垣間見せてくれた筆者だからと期待したのだが、読みづらかった。
ダンスに染まった大学生活と現在を比較しながら描かれているのだが、競技ダンスの世界を知らない人には少しわかりづらい。
競技ダンスの世界をもっと深堀し、描いて欲しかった。
ラストも「いい思い出でした」って感じで、なんか響いてこなかった。 -
筆者の出身、一橋大学の競技ダンス部の経験を基にした小説。ひたすら部活に打ち込みそして悩む姿、現在と過去の交錯した構成は感動の嵐。
ノンフィクションではなく小説とのことだが、おそらく多くは実体験に基づいていると思われる作品。
きっと誰もが心のどこかに抱えているだろう過去に対するほろ苦い思い。封印していた過去。10年以上が過ぎ、ようやく立ち向かう筆者。過去と現在の両方で主人公が成長していくストーリー。
もしかしたら自分がワンタローだったかもしれないと思いつつ、感情移入して終始楽しく読むことができた。「最後の秘境東京藝大」のような楽しいひたすら楽しい展開を想像するも予想外に哀しいストーリーにハラハラドキドキ、最後まで読めないスジが見事でした。
ダンスに限らず人生で一度でも何かにひたすら打ち込んだ経験のある人は幸せだと思う。 -
キャラ小説「即興ワルツ」(https://booklog.jp/item/1/404070813X)と違い、大学が実在のものだし、コミック「ボールルームへようこそ」みたいにダンスそのものの訴求の描写より、「舞研」と言う組織の運営や葛藤みたいなもの方がメインです。
「はじめに」は軽妙で楽しくて一気に読むモチベーションが上がるんだけど、中身は舞研出身の先生方だったら身につまされて毛穴からなんかヤバいものが出るんじゃなかろうかって、思えました。
これ読んで社交ダンス(競技ダンス)を始めたい、って思う人は少ないかも。
私はごく最近になってから始めたけど、もし舞研スタートだったらどこかで止めてたかもしれないって思えたしんどさ。
でも最後は主人公が色々吹っ切って、それでほっとしました。