君とまた、あの場所へ: シリア難民の明日

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (159ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103500315

作品紹介・あらすじ

最初から難民だった人はいない! ファインダー越しに見つめた、難民たちの真実。一瞬にして家族を、生活を、故郷を奪われた人々――残酷な映像ばかりが注目される中、その陰に隠れて見過ごされている難民たち一人一人の“今”にフォーカス。彼らの「置き去りにされた悲しみ」に寄り添い、小さな声に耳を澄ましながら、明日への希望を託してシャッターを切り続ける若き女性フォトジャーナリストの渾身のルポ。

感想・レビュー・書評

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  • 女性フォトグラファーのルポでした。
    なんて 場所に行っているんだろう。
    と 心配してしまう地域ですね。
    でも、そこで暮らしている人達の
    今を誰かが伝えなくてはいけないと 思って
    出向いて 写真を撮っているのですね。

    ヨルダンの難民キャンプは 当初はひどいものだったそうです。
    今では かなり改善はされつつも 複雑な気持ち。
    環境が良くなることは 嬉しいと思いつつも 
    ずっとここにいなくてはならないと 言われてる気がすると 思うそうだ。
    キャンプにいる限りは 働いてはいけないそうだ。
    かといって 外に出て働く場合。家賃など払えるかどうか・・・
    キャンプの中にいるだけの 生活。
    命からがら 逃げてきたので とりあえずは 
    安心して暮らせるのは嬉しかっただろうけど 
    人として 生きていくという事は この環境では 夢も希望もない。

    著者は何度か カメラでは彼らを救えないと 
    カメラを投げ出そうとした事もあったそうだ。
    あるNGO職員に 役割分担と 言われた事。
    NGO職員は 現場にいて 人をサポートするけど その情報を発信するのは難しい。でも 著者のような 人は この現場に 何度も通って それを伝える事ができると。

    私たちも こういう 情報を見ても 何もできないと まずは思ってしまうけど
    高額の寄附ができなくても わずかなら寄附ができる。
    寄附を継続できなくても こういった 現状を知る事も 大切な役割だと思う。
    日本以外の地域では どのような事が 起きていて
    多くの命が 失われている。
    なんと 悲しい事でしょう。
    この 悲しみを 止める為には 
    私たちは これから どうしたら良いのか 考えてみる必要があると思います。

  •  世界でこんなに苦しんでいる人たちがいるのに、それを知らずに今日まで生きてきた自分を恥じた。
     どんな理由があったとしても罪のない人を傷つけ殺すことは許されない。つい最近まで平和な暮らしをしていたシリアの人たちの自由が奪われていることに強い怒りを感じたが、この怒りが戦争の連鎖を生んでいるのかと思うととてもやるせない気持ちだ。
     「ねえ知っているかい?僕たちはチェスの駒なんだよ。チェスって駒ばかり傷つくだろ?そしてチェスを動かす人間たちは、決して傷つかない」シリアの少年の諦めたような悟ったようなこの言葉に胸が締め付けられた。シリアで苦しむ人たちのために自分に何ができるだろうと考えさせられる作品だった。

  • “新しく起きたことを伝えるのが”ニュース”だとすれば、時が経ち、根深くなっていった問題はすでに”ニュース”ではなくなり、伝えられる機会が減っていくのだ。”

    “なぜ世界は無視を決め込むんだ?”

    “同じ場所で、一緒に生きていくことはきっとできる。こうして時間を重ねるごとに、子どもたち自身が自然と気づいていくんです”
    “そんな実感を持った子どもたちがやがて大人になり、社会を築く側になっていく。だからこそ彼が集い、触れ合う時間が、やがて共に生きる道を切り開いていく力となるのではないだろうか。”

    “互いが向き合える場を今、大人たちがどれほど築けるかで、これかはの世代の生き方は、大きく変わるかもしれない。”

    “私たちには、”想像力”という大きな力が残されている。”


  • 東2法経図・6F開架:369.3A/Y62k//K

  •  シリア。2017年の今も戦火が飛び交う。人口2000万人ほどの国で1000万人が避難生活を送っていると言われる。その難民となった人達の思い、叫びを記している。

     掲載されている写真の中の人々、特に子ども達を見ると、1日も早く内戦が終わってと願わずにはいられない。
     内戦が始まる前のシリアの風景、そして破壊されたシリアの風景。心が痛みます。

     シリアの他にも、紛争が絶えない地域は他にもあります。どうして紛争は終わらないの?そう問う著者にイラクの青年の言葉に目を覚まされる。

    「人間だから、じゃないよ。どうせそういうものだって諦めてしまう、人の心がそうさせるんだよ」

    諦めてしまう。それはどうして?相手があまりにも強すぎるから?それもあるだろう。でも、もっと大きな理由は自分たちが"忘れ去られている"と感じてしまうからなのかもしれない。

    「そこに生きる人々の声を伝えることで、彼らを孤立させない」と著者が言うように、忘れてはいけない、無関心になってはいけない。直接には何も出来なくても、世界の何処かにまだ、自分たちのことを気にかけてくれている人達がいる、と分かれば、少しは力になるのかもしれない。そんなことを考えた一冊です。

  • 人間だから、争いはなくならないのかな?
    人間だから、じゃないよ。諦めてしまう人間の心がそうさせるんだ。

    恩送り

  • シリアと聞けば内戦や難民のイメージが強い。もともと気候に恵まれた農業国は、2011年の反政府デモで一気に状況が悪化する。米、露、トルコによる空爆が起き、シリアから大量の難民が国内外に逃れた。残った人は武器を取る他に選択肢がなかった。ヨルダンへ逃れ、先の見えない難民生活に疲弊しているシリア人。難民キャンプの環境の悪さ。負傷した身体。引き離された家族。殺された友人。人間である限り、争いはなくならないのかと問うと、こう返答される。「人間だから、じゃないよ。どうせそういうものだって諦めてしまう、人の心がそうさせるんだよ」

    p85
    反政府デモが広がっていった当初、その多くが武力ではない、言葉や歌での抵抗だった。けれども、容赦なく降り注ぐ爆弾を前に、人々が続けていた非暴力の抵抗の精神は打ち砕かれていったのだ。彼らが望んで武器を手にとりはじめたのではなく、そうするより他ない状況にまで追い込まれているのだ。

  •  ジャーナリストとしてのシリア情勢の分析等ではなく、著者とシリアの関りや、著者自身の想い出や、葛藤などが綴られた、ノンフィクションというより、エッセイかダイヤリーのような内容だった。

     2012年8月ジャーナリストの山本美香氏がアレッポで銃弾を浴び死亡した。その彼女のように
    「シリアに足を踏み入れよう、と考えたこともあった」
    という著者は、先輩フォトジャーナリストからの以下の言葉で現地入りを想い留まる。

    「最前線で取材する人間も、確かに必要だよ。戦争の火花が散っているところは、何とかニュースになる。今日起きたテロ事件だったり、亡くなった人の人数だったりね。だけど本当に声を出せない人たちは、その外側にいるんじゃないかな」

     彼女の立ち位置は、そこからなんだということが判った。また、あるNGO職員には

    「菜津紀さん、これは役割分担なんです」

     と言われ、彼女は現場の少し離れたところから伝えることを自分の役割と任じているようだ。


     まだ成長過程にある著者。またしばらくして、数年後、どのような活躍をしているのか、どのような情報を発信してくれているだろうか。

  • わたしはヨルダンのパレスチナ難民家庭でホームステイをしていた。
    マフラクにも調査の通訳として行った。ザータリ難民キャンプは外から眺めるだけだったが、シリア難民の方々の話を聞き、胸が締め付けられる思いだった。

    ヨルダンで過ごした色々な思い出が頭の中に駆け巡ってきて、終始胸が締め付けられた。

    あまりの興奮で読者メモする間も無く読み終えてしまったが、心に訴えられる本だった。もう一度読みたい。

  • それまで関わりのなかったシリアと「あしなが育英会」の企画を通じて関わるようになった安田さん。2008年初めて訪問して以降、これまで出会った人たちの暮らしや思いによりそったPhotoレポート、先日参加した講演会で購入して読みました。

    講演を聞きながらとても考えさせられた〈「ともに生きる」とは・争いに何故手をつけてはいけないのか〉等々と、誰が彼らをこのような状況に追いやっているかを深く考えないといけないと思いました。「ねえ知っているかい?僕らはチェスの駒なんだよ。チェスって駒ばかり傷つくだろ?そしてチェスを動かす人間たちは、決して傷つかない」と安田さんがシリアに関わることになったアリさんの言葉が印象的でしたし、ひとり一人の人間として尊重されない流れに強い憤りを感じました。決して、日本とは無関係ではないことも…。

    写真ってすごいですね。いろんなことを語りかける力を持っていることを改めて感じました(やってみようかな)。

    サンデーモーニングにコメンテーターとして出演されている時も、とても鋭い指摘をされていることに感心しています。これからも頑張ってほしいなと思います。

    お勧めの一冊です。

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著者プロフィール

1987年神奈川県生まれ。フォトジャーナリスト。認定NPO法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル/D4P)副代表。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『国籍と遺書、兄への手紙―ルーツを巡る旅の先に』(ヘウレーカ)他。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。

「2024年 『それはわたしが外国人だから?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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