ぼくがいま、死について思うこと

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 301
感想 : 70
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  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103456216

作品紹介・あらすじ

今まで突っ走ってきたけれど、ふと気づくと多くの人を亡くしていました。肉親の死。十代の頃に経験した親友の自死。ここ数年相次いだ友人たちとの離別。あやうく死にかけた体験の数々。世界の旅先で見聞きした葬儀や死。孫を持って気づいたこと。死に急ぐ若者たちへのメッセージ。そして、思い描いてみた自身の最期――。今年、69歳になる椎名誠が、はじめて死について考えた一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 椎名誠さんの『イスタンブールでなまず釣り。』を読んでいる最中に、図書館でタイトルが目に入った。
    『イスタンブールで・・』では元気いっぱいの30代の椎名さんだが、年を重ねるとどのような死生観を持つのだろうか、と興味がわき、同時並行で本書を読んでいった。

    結果的に言うと、この本を書いている時点で椎名さんにとって死はまだ遠く(当時67歳)、なんだか得体のしれないものだからとにかく情報収集しよう、といった段階であると感じた。

    本書では、身近な血族の死や友人の死、その時に感じた日本の葬儀に対する不信感に始まり、これまで訪れた世界各地における葬儀と死への考え方、自分が体験した死をめぐる不思議な体験や、自身が死に近づいた時のことについて述べられている。

    若い頃から服のサイズが変わらず、体力の衰えを感じつつもまだ元気な椎名さん。
    妻に言われてしぶしぶ人間ドックを受けるものの、数値は悪くなく、昔から指摘されていた高血圧も玉ねぎを大量に食べることで正常化したという。
    若い頃に自分の判断ミスから死にかける体験を何度もしたという椎名さんは、逆に判断力のついた今の方が死ぬ確率は少なくなっている、と感じている。
    死と隣り合わせの冒険を繰り返してきた椎名さんにとって、死とは突然訪れるものであり、じわじわとやってくるものではないのだろう。

    死に対する考え方の違いは、男女差もあるのかもしれないと思う。
    女性は、生殖機能の衰え、閉経など、男性よりも短いスパンで体の変化が訪れる。幸い私自身は死にかける経験をしたことがないこともあり、死は突然ではなく、徐々に近づいてくる、といったイメージの方が強い。
    しかし、冒険以外にも、若い頃の友人の突然死や自身のうつ病などを経験した椎名さんにとって、死は突然断ち切られるもの、という印象を強く持っているような気がする。
    また、葬儀やお墓のことについても詳しく言及されているが、こういったどちらかというと死んだ本人のあずかり知らないことについて気になるのは、健康な人間の考え方なのだと思う。

    67歳なんて、ある意味そのくらいのものなのかもしれない。私が67歳を迎えるころにはまだ定年にもなっていないのではないだろうか。

    本書は2013年発行。椎名さんは最近また死に関する本を書いているようで、そちらも読んでみたい。

  • ブクログのお仲間さんのレビューでこの作品を知り、興味津々で読んでみた。
    椎名さんが「死」について語るとは、その違和感に驚いてしまうが、古希も間近と分かりなるほどと納得。
    身近にお孫さんがいるのだもの、【健康で生きていくことに責任を持つ歳になったのだ】と、奥様に言われて人間ドックに行くあたり、なんて可愛らしいオジイチャンぶりだろう。
    はじめと最後に個人的な体験としての【死】が描かれ、真ん中のほぼ8割くらいは著者が世界を旅して目にした、葬儀の仕方が紹介されている。
    未見の地に関しては、ご自分の娘さんの手を借りて調査したりと、相変わらず現実感覚が優れている。
    ありきたりの【死】についての哲学的な考察を期待すると、ややアテがはずれるが、その世界各地の葬送の話が実に興味深いのだ。

    風葬、鳥葬(これは奥様の著書で読んだことがある)、水葬、土葬にいたるまで、それぞれの気候風土や宗教の違いによるところがいかに大きいかが分かり、まるでモニターの映像でも見るようにイメージがわいてくる。
    かたや日本の葬儀と言えば、その高額なこともさることながら、あまりにも形骸化していて大切なことが置き去りにされている感がある。
    私自身も早くに両親を亡くしているので、葬儀の実態には一言も二言も言いたいことだらけだ。
    親しかった編集者さんの葬儀に、斎場に流された録音の音声に腹を立てる場面があるが、そこで大きく頷いてしまった。
    死者を亡くした悲しみは個別のもので、赤の他人があざとく悲しみを見せ付けるものではない。それも、計算された画一的なものを。
    だが突き詰めていくと自宅で葬儀をするしかないので、皆押し黙って耐えているのだ。
    今は家族葬なるものが主流になってきたらしいし、直葬を望む遺族も多いらしい。
    「葬儀の沙汰も金次第」にならないように、元気なうちに考えて話し合っておくのも必要だし、そして日本の葬儀会社さんもよくよく考えられた方がよろしいのでは、などと思う。

    14ページに及ぶ「少し長いあとがき」では、しっかり【死】について語られる。
    たぶん、椎名さんはこの部分を一番書きたかったに違いないのだが、愚直なあまり終盤にいたってようやく勇気をふるった感がある。
    自死した友人のことと、子供の自殺についての考察は実に的を得ている。
    年配者の尊厳死についても、常日頃思っていることと一致していて共感。
    独居老人の孤独死、などと言う表現はあまりに非礼である。
    死にゆく者は、誰しも壮絶な孤独と闘うのではないか。
    そして最後は、親友の西川良さんの死について。ここは、もらい泣きだ。
    お孫さんと交わした【じいじは死なないよ】という会話があったかい。
    少しでも長く、その約束が守られますように。
    椎名さんらしい、さすがのできばえの一冊。
    教えてくれたブクログのお仲間さん、ありがとう。

    • tsuzraさん
      nejidonさん、こんばんは。
      読み終えての深い満足感が伝わってくるようです。
      椎名さん、いい作品を書いてくれましたね(^ ^)
      nejidonさん、こんばんは。
      読み終えての深い満足感が伝わってくるようです。
      椎名さん、いい作品を書いてくれましたね(^ ^)
      2013/08/09
    • nejidonさん
      tsuzraさん、おはようございます♪
      はい、楽しく、時に考えながらあっという間に読むことが出来ましたよ~
      どうもありがとうございました。
      ...
      tsuzraさん、おはようございます♪
      はい、楽しく、時に考えながらあっという間に読むことが出来ましたよ~
      どうもありがとうございました。
      (大阪のおばちゃんの箇所は失笑しました・笑)
      自分の死出の旅についても、考える時間が出来ました。
      日本人なので、この風土での葬儀しか選べませんけどね。。。
      また面白い本に出会ったら教えてくださいね!
      2013/08/10
  • 椎名さんのことはずっと“大人の男の子”として追いかけてきた長年の読者です。(#^.^#)

    お父さんであっても良き少年だった椎名さんはお孫さん3人に恵まれて初めて「死」について考えるようになったんですね。
    .
    冒頭、

    「死」について考えることにした。

    とあり、

    そのあとに、

    孫ができて、しきりに可愛がっていると「健康で生きていくことに責任を持つ歳になったのだから」と妻は僕にいい、彼女に連れられて強制的に人間ドックに行かされるようになった。

    と語られる。

    大好きな「岳物語」では、ホントに素敵なお父さんであると同時に、息子さんとは良き仲間という関係だったのが、岳さんのお子さんたち3人のことを書かれた「三匹のかいじゅう」では小さき者たちが椎名さんらしさをたっぷり残しながらも愛おしくてならないのがよくわかる。

    この本の後ろにも“近所に住む三人の孫たちと過ごす時間が今、一番エキサイティング”とあるのが、シンプルに素敵だなぁ、と思えてしまう。(#^.^#)

    で、一冊丸々使っての「死」についての考察は、とてもとても面白いものだった。

    子どものころからの無鉄砲で(あはは・・坊ちゃんみたいだね。)幾度となく死にかけた体験。
    普通、こんな話は自慢混じりの武勇談になりがちなのだけど、そこは椎名さん、ありのままに状況を読者に伝え、その本当に危機一髪だったあれこれによくもまぁ、今までご無事で!と思わずにはいられない。

    そして、世界中を旅しながらなんとなく通り過ぎ、見てきた葬送を、いま、初めてきちんと気持ちの中でまとめてみようと思ったことも自然の流れとして感じられ、

    特に、奥様の渡辺一枝さんが経験したチベットの鳥葬の話は敬虔な気持ちでとても興味深く読むことができたし、

    その他、風葬、水葬、土葬、火葬、などについても、その土地土地の自然環境、宗教、死者(死体)に対しての考え方(簡単に言うと死体は敬うべきものなのか、“捨てる”ものなのか)といった違いを踏まえ、丁寧に語られているところが好ましかった。

    もちろん日本の葬儀や、親族・親しい友人の死、そのものや葬儀、お墓についても椎名さんらしい述懐があり、それぞれ、うんうん、と頷いたり、痛切な思いにとらわれたり。

    4歳のお孫さんに
    「じいじいも死ぬの?」と聞かれ、
    「じいじいは死なないんだよ」と、“少し考えて嘘を吐いた”椎名さん。

    大きな嘘の約束だったけど、今はできるだけその嘘をつらぬきたいと思っている。

    という文にも、なんていうか、これまでの椎名さんの歴史を思うとこちらの気持ちがシンと静かになるような感覚が。

    死についての、国民性、風土性への考察が特に面白く、これは何度でも読み返したい本になるはずです。

    • tsuzraさん
      じゅんさん、こんにちは。
      本当に、死について、国や風土によりこんなにも様々な捉え方や扱いがあるというのが興味深かったです。
      それを椎名誠さん...
      じゅんさん、こんにちは。
      本当に、死について、国や風土によりこんなにも様々な捉え方や扱いがあるというのが興味深かったです。
      それを椎名誠さんの著作で読むというのがなんとも胸に染みるのですよね。
      こころに残る作品です。
      2013/07/28
    • じゅんさん
      tsuzraさん、どうもありがとうございます!(#^.^#)
      同じ本を読んで感想を語り合えるって楽しいものですね。
      ここのところ、ついつい読...
      tsuzraさん、どうもありがとうございます!(#^.^#)
      同じ本を読んで感想を語り合えるって楽しいものですね。
      ここのところ、ついつい読みっぱなしになっていたじゅんですが、うん、やっぱり読んだら感想を書かなくちゃ、って思ってます。(#^.^#)
      2013/07/28
  • ☆5つ

    いつになくとても真面目な内容なのです。いやシーナ兄いだっていつも真面目なのでしょうけどね『怪しい雑魚釣り隊』や『ナマコ』や、連載が終わってしまったけど『赤マント』などに比べて真面目、という意味ですので。

    テーマに見合うというか、とっても内容の濃いお話を書いてくれている。わたしの贔屓作家シーナ兄いという事を差し引いても「死」をテーマにした文章でこんなにすらすらと読み進められるものには出会ったことが無い。

    いつものちょっとおふざけ口調は影をひそめ、ひたすら世界の死と葬儀/宗教に関わることをほとんど自分と奥様一枝さんの実体験だけを題材に綴っている。

    シーナ兄い自身の鬱体験にまつわることや、武蔵野の隣家の異常さゆえ東京へ引っ越したことなど、非常に面白い内容盛り沢山です。そしてシーナ兄いはこれからもづっと生き続けて、おそらく100歳を軽ぅく超えてヘタすると200歳まで生きるかも、と思た(さすがそこまではいかないかw)

    久々に読み終わった後づっと手元に置いておきたい本に出会ったです。拍手パチパチ。

    • ほんやだワンさん
      タイムラインを1~2日分ずりずり~っとスクロールさせてチェックしているアルです。
      だもんで、たまに数日間見てないと追っかけられなくなるアル...
      タイムラインを1~2日分ずりずり~っとスクロールさせてチェックしているアルです。
      だもんで、たまに数日間見てないと追っかけられなくなるアル。
      2013/06/04
    • ryoukentさん
      なるほろ、努力のたまものというわけですな。
      おぉーいブクログくん聞いてるかぁい。そういうことをしなくても済むようにならんかいのぉ~。
      なるほろ、努力のたまものというわけですな。
      おぉーいブクログくん聞いてるかぁい。そういうことをしなくても済むようにならんかいのぉ~。
      2013/06/04
    • ほんやだワンさん
      そーだそーだ。
      おー!
      そーだそーだ。
      おー!
      2013/06/05
  • 椎名誠さんの新刊。本のタイトルに引き寄せられます。
    67歳になって「死」について考えることにしたことから書かれたという、かなり異色の本。すごく良かったです。

    親や兄弟、知人との別れが綴られ、世界を旅してきた中で出会った葬儀や遺体の葬り方、文化や民族に関する考察が多岐にわたり、みっちり詰まった濃い内容でした。
    人類に思いを馳せ、死について思う椎名誠さんの、真面目であたたかい人間性を感じます。

    今まで語ることのなかったことが書かれていたりする。
    危うい青年期、激変の代償、隣人の話。
    振り返って語るそれらのことに胸が締めつけられる思いです。

    最終章の「じいじいも死ぬの?」と「友よさらばー少し長いあとがき」を読んで、感傷的になりました。
    椎名誠さん自身の死についてや、友人の死について。切ないなぁ…。
    率直で偽りのない文章と心情がぐんと迫ってきて、胸が熱くなりました。

    • tsuzraさん
      nejidonさん、こんにちは。
      いつもと少し違う椎名誠さんの本でした。
      積み重ねてきた歳月を思い感慨深いです。

      図書館にあると良いですね...
      nejidonさん、こんにちは。
      いつもと少し違う椎名誠さんの本でした。
      積み重ねてきた歳月を思い感慨深いです。

      図書館にあると良いですね。
      ぜひレビューを載せてください(^_^)/
      2013/07/26
    • じゅんさん
      tsuraさん、こんにちは。
      私も昨日の夜読みました。とってもよかったですね。
      tsuraさんのレビューに、うんうん!と頷きまくり。
      椎名さ...
      tsuraさん、こんにちは。
      私も昨日の夜読みました。とってもよかったですね。
      tsuraさんのレビューに、うんうん!と頷きまくり。
      椎名さんがこの年齢になられたからこそのお気持ちだなぁ、とホント、胸が熱くなりましたよ。

      私も感想書きますね。(#^.^#)
      2013/07/27
    • tsuzraさん
      じゅんさん、こんにちは。
      おんなじ時期に同じ本を読み合っていてウレシイです(^_^)

      実は、この本を読んで私は、不吉なけしかからんことを思...
      じゅんさん、こんにちは。
      おんなじ時期に同じ本を読み合っていてウレシイです(^_^)

      実は、この本を読んで私は、不吉なけしかからんことを思ってしまいました。
      ずっとこの先、いつか椎名誠氏が亡くなられたら。
      わかりませんがその頃自分もかなり年を取っていたとしても、お弔いの意を伝えに献花か記帳に伺いたいと…。
      とんでもない不埒なつぶやきでした。
      2013/07/27
  • シーナ隊長も来年は古希…。うーん、怪しい探検隊の頃からずいぶん時間が流れたんだなあ。そんな感慨を覚えずにはいられない一冊。

    ごくストレートに、経験してきた身近な人の死や、世界のあちこちで見聞きした死や葬送にまつわること、自らの死への考えなどが述べられている。まさにタイトル通りの内容だ。

    初めて書いたというクレーマーの隣人のことや、若い日の交通事故の一件など、椎名ファンには見逃せない話も出てくる。

    たいそう共感したのは、斎場で業者が流す放送への怒りが述べられているところだ。「ひとは、生まれる時に、両手をかたくにぎりしめているといいます……」なんていう調子の「あざとい」「ビジネスの声」。椎名さんが言うとおり、あれは何かを絶対間違えている。

    「三匹のかいじゅう」で、「じいじい」としての活躍が楽しく書かれていたが、ここでも「孫のちから」についてふれられている。「じいじいも死ぬの?」と訊かれた椎名さんは嘘をつく。
    「『じいじいは死なないんだよ』『ふーん。よかった』 四歳の小さな男の子はそう言った。大きな嘘の約束だったけど、いまはできるだけその嘘をつらぬきたいと思っている。 歳をとるとあらゆることが辛く変化していくというけれど、でもその変化がすべて辛いわけではないかもしれないぞ、とぼくはいま柔軟にそう思っている」

    じーんとしました。

    • じゅんさん
      私も昨夜読みました。
      (実はなぜか一睡もできずに朝を迎え、電気を点けたり消したりしながらの読書だったんですよ。汗)

      椎名さんの率直なお気持...
      私も昨夜読みました。
      (実はなぜか一睡もできずに朝を迎え、電気を点けたり消したりしながらの読書だったんですよ。汗)

      椎名さんの率直なお気持ちがこれまでの歴史を踏まえて吐露されているところが、ファンには胸にしみいるものでしたね。
      ホント、とてもよかったです!
      2013/07/27
    • たまもひさん
      じゅんさん、コメントありがとうございます(^^)

      七月の初めに新潮講座の一つとして椎名さんの「ぼくが今死について思うこと」と題した講演があ...
      じゅんさん、コメントありがとうございます(^^)

      七月の初めに新潮講座の一つとして椎名さんの「ぼくが今死について思うこと」と題した講演があり、東京まで行ってきました。長年ファンだったシーナ隊長を間近で見て、それだけでもう大感激でしたが、お話もとても良かったです。じゅんさんのおっしゃるように、率直に真情を吐露されている感じが本と同じでした。
      Tシャツにジーンズというスタイルもぴたっと決まっていて、軽やかに年を重ねていくお手本のようだなあと思いました。
      2013/07/27
  • はじめと終わりに個人的なことが書いてあって、真ん中は読んだ本や、自分や近しい人の体験談(死に関する)で構成されている。不眠症の本もこんな感じだった。だから、はじめと終わりは椎名誠の死についての考えてのエッセイで、真ん中は世界の様々な弔い方や死についての考え方が紹介されている民族学的な内容。
    繋がっているので違和感はないが、椎名誠のエッセイをガッツリ読みたい人には物足りないかな。
    先日読んだ『生き物はどのように土にかえるのか』で、地面の上に放置、禿鷹などの大型の肉食の鳥がいる場所なら鳥葬が一番効率的処理だと書いてあったが、世界でいまもそれを実践しているところは多いということがわかる。
    土葬は放置より時間がかかり、火葬は森林資源が豊かな場所でないと難しいという大園享司の解説を裏付ける内容で、個人的には面白かった。
    若い頃から五十代までたくさんの危険を乗り越えた(もちろん運も良かったのだろうけど)サバイバーの言うことだから重みもあった。
    二十歳で自死した親友の話といじめで自殺する子どもについて書かれたあとがきは、若い人にも読んで欲しい。

  • タイトルに惹かれて手に取り、一日半ほどで読了。ごく身近な人たちの死にまつわるプライベートなことも淡々とした語り口ですが赤裸々に語られています。また、内容の大半は国や地域、自然環境や宗教観による世界の墓(遺体の処置方法)の在り方・考え方という、「全ての生物が必然的に迎える死という現象」についての「ぼく」の考察なのですが、日本で生まれ育った者にとっては驚愕の、墓を作らない方法(鳥葬や風葬など)についても詳しく書かれており、しかも友人がその方法で葬られたときの私的な体験も付されており、ぐいぐい引き込まれて読みました。結びは改めて身近なところに戻って来て、お孫さんとのやりとりなど、で終わりました。大変興味深く、しみじみと味わいながら読みました。面白かったです。

  • 椎名氏の本は『さらば国分寺書店のオババ』以来かも!(古い、あまりにも古すぎる…汗)
    あ、他にも読んだかな…でもとっても久しぶりなことに変わりはない。
    新潮社の「波」に連載されてたものらしい。そうか、私が購読をやめちゃった後なんだな…。

    とても淡々と、でもまっすぐに「死」というものを考えたエッセイ。
    ご本人もあとがきで書かれているが、これを書くにあたり結構な文献を読んだとのこと。その成果というべきか、半分くらいは文化や国の違いによる弔いについて触れられていて、なかなか興味深い。
    国それぞれの自然環境がそれぞれの文化の基礎になっているとつくづく認識させられる、というようなことをと繰り返し書いていて、私も(数は少ないが)異国を訪れるたびにそれは感じている。環境の影響は絶大!
    このあたりに関連する書籍がいくつか挙がっており、ちょっと面白そう。

    椎名氏はどうやら、10年に1回ずつくらいの割で、生きるか死ぬかの瀬戸際を経験しているようだ。まあ、あんなことずっとやってたらそりゃそうかもね…。
    孫もいる古希間近の老人(といっていいのかしらん)だから当然と言えば当然、友人知人の訃報もそうそう珍しいことでもないらしい、そんな年齢。
    だからなのか、死について語るその語り口はとても自然で、構えがなく、すうっとこちらに届いてきて、どこがどうだったというわけでもないのに、なぜだか読んでいて泣けてきた。

    今どれだけぴんぴんしている人だって、自分だって、明日死ぬかもしれない。何が起きるかわからない。
    生と死はいつも隣り合わせなんだよな、と、ふっと考えてしまった。

    う~ん、でも年取ったなあ、椎名さんも自分も。

    追記。
    過日読んだ『エンジェルフライト』で取り上げられていたエンバーミングについても少し触れられている。復活のために肉体を残しておくというキリスト教信仰のため、土葬にされるアメリカが一番進んでいるとのことだが、エンバーミングされた遺体はそのケミカル度が高すぎて、「土に還らない」ことがままあり、墓を暴いて泥棒がそのミイラ化した(保存状態の良すぎる?)遺体にびっくり仰天、なんてこともあるらしい。
    微生物も寄り付かないほどのケミカルって…。

  • 2013年、当時67歳。世界各地を巡って、少なくとも10回は「確率50%以上」死にそうな目にあっている。

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著者プロフィール

1944年生まれ。作家。1988年「犬の系譜」で吉川英治文学新人賞、1990年「アド・バード」で日本SF大賞を受賞。著書に「ごんごんと風にころがる雲をみた。」「新宿遊牧民」「屋上の黄色いテント」「わしらは怪しい雑魚釣り隊」シリーズ、「そらをみてますないてます」「国境越え」など多数。また写真集に「ONCE UPON A TIME」、映画監督作品に「白い馬」などがある。

「2012年 『水の上で火が踊る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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