幻のアフリカ納豆を追え! : そして現れた<サピエンス納豆>

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 47
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  • Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103400721

作品紹介・あらすじ

究極の納豆は、アフリカの辺境に存在した――。知と食欲を刺激する前人未踏のミステリー冒険譚! アジア辺境の納豆の存在を突き止めた著者が、今度は、IS出没地域から南北軍事境界線まで、幻の納豆を追い求める。隠れキリシタン納豆とは。ハイビスカスやバオバブからも納豆がつくられていた!? そして、人類の食文化を揺るがす新説「サピエンス納豆」とは一体。執念と狂気の取材が結実した、これぞ、高野ワークスの集大成。

感想・レビュー・書評

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  • 高野秀行さん、ごめんなさい。
    あなたが7年かけて研究し、
    たくさんのかたがたの協力を得、
    お金と労力をかけて完成させたこの作品、
    私は二日間で読んでしまいました。
    しかも税金を払っていない
    よその自治体の図書館で
    真っ先に借りてです。

    でも私にも苦労がありました。
    一日目、夕食というか晩酌までに
    韓国の章までは読み終えようと
    空腹状態で、美味しそうな食べ物の羅列は
    本当に辛かったです。

    私は呑んでしまったら読んだ内容をすっかり忘れてしまうので。
    その点高野さんは酒を呑みながら
    取材をされていて、尊敬に値します。

    いつもどおり、高野さんの描かれた土地に
    行ってみたい気持ちには全くなりませんが
    食べたいものは山ほどあります。
    日本でアフリカ料理は食べられないのかしら?

    私自身もう一年半以上旅行していないし
    県外に最後に出たのは春分の日頃。
    (明日は秋分の日)
    韓国とアフリカの旅行記、
    臨場感があってとても楽しかったです。
    くれぐれも命を大切に、
    これからも楽しみにしています。

  • 納豆って実はアジアやアフリカにもあるのか・・。原料の豆がそもそも大豆では無いということもあるのか。

    人類が豆類をどうやって加工し、食べてきたのかということも考えることができる。

    それにしても、納豆を探す旅が危険な探検の旅になる過程は文章を追うだけで緊迫感が伝わってくる。

    激変するアフリカの食文化についての紹介、シェフと呼ばれる人の立場についての記述もあり、非常に面白かった。(地域の王様なんですね。)
    あとセネガル料理、美味しそう。

    韓国のチョングッチャンを探す旅も面白かった。また、DMZという非武装地帯に隣接する地域が自然豊かな場所というイメージがあり、大豆の袋にも印刷されているということも驚きだった。

    今回まったく言及はないけれど、中東やヨーロッパでは豆類をどうやって加工してきたのか、納豆と似た加工品はどこかに存在しているのかが気になる。

  • アジア納豆に続いて韓国納豆とアフリカ納豆。
    もはや納豆の起源がどこかなんていう話ではない。人のいるところに納豆あり、とさえ思う。
    肉や魚が手に入りにくい地域ではタンパク源として納豆に行き着くという、人の知恵がどこでも同じように働いているのが面白いと思った。
    そしてやっぱりそれぞれの国について知らないことが多く、それぞれに興味深い。ナイジェリアのカオスっぷり、韓国の隠れキリシタン、ブルキナファソの王様など。
    特にアフリカは地図もよく分かっていないほどなので、もっと知りたくなった。

  • 長年の高野ファンである。その著作や人となりをこよなく愛することにかけては人後に落ちないという自負がある(そんな力んで言わなくてもいいことだけど)。何を読んでも面白いのだが、今回は「高野ワークスの集大成」ときた。さてさてどう驚かせ笑わせてくれるのか、期待度マックスで手に取った。

    読み終えて胸に浮かんできたのは、「高野さん今回は成功しちゃったんだ」という、いわく言いがたい複雑な感慨であったことを正直に告白します。

    いつも通り、高野さんの探索行は、パワフルかつ等身大的。アフリカ納豆の実態をとことん追いかける姿をずんずん読み進めていくうちに、まったく縁遠い世界であったアフリカのリアルな有様が目の前に像を結んでいく。このあたりは著者の独壇場で、アジアの辺境もイスラム社会もソマリ社会も、私は高野さんの書くものによって「知る」ことができたと思う。高野さんのノンフィクションには、いつもちゃんと人がいる。

    そしてそして、高野さんと言えば期待してしまうのが、スットコどっこいな失敗談なのだった。「謎の独立国家ソマリランド」が代表的だが、硬派なルポと脱力してしまうトンチキさが絶妙に同居していて、これはもう他にはない唯一無二の高野ワールドと呼ぶしかない。そのスットコ成分が今回は少なめ。納豆の真実の姿を追求していく姿勢は、研究者そこのけで(まったく高野さんは学究肌だと思う)、きちんと結果も出して見事な結論にたどり着いている。それはすばらしいと本当に思うのだが、欲深なファンは少しばかりもの足りない気がしたりなんかしちゃったりして…。まことに申し訳ないけど、ズテーンと転んでる姿が一番高野さんらしいなあなんて思ってしまいました。

    • niwatokoさん
      こんにちは。この本はまだ読んでないのですが、そうですか、成功しちゃってるんですね……。なんだかちょっと嫌な予感(そう言ったら失礼だけど)がし...
      こんにちは。この本はまだ読んでないのですが、そうですか、成功しちゃってるんですね……。なんだかちょっと嫌な予感(そう言ったら失礼だけど)がしていました……。わたしも、なにより「スットコ成分」が高野さんの魅力と思っているので。なにやってんだか、みたいなところが好きで……。
      2020/08/31
    • たまもひさん
      ですよね~。この微妙な気持ちをわかってもらえて嬉しいです(笑)。
      確か以前、高野さんの本では「ウモッカ」が一番好きだと書かれてましたよね。...
      ですよね~。この微妙な気持ちをわかってもらえて嬉しいです(笑)。
      確か以前、高野さんの本では「ウモッカ」が一番好きだと書かれてましたよね。私も大好きです。ほんと、探索に行くことさえできないという大失敗をあれだけ楽しく読ませるのは、高野さんならではだと思います。
      2020/08/31
  • 主に東南アジア内陸部と日本古来の納豆文化を調査した『謎のアジア納豆』に続く、本書の大まかな流れとして、今回は西アフリカ(ナイジェリア、セネガル、ブルキナファソ)と、書名には表れない韓国も訪れ、現地の人びとと交流を深めながら各地で食される納豆文化の調査を進めます。終盤は帰国後に、前回調査地も含めた世界各地の"納豆菌ワールドカップ"と題した食べ比べを開催し、今回の調査全般に対する考察を経て、エピローグにおいて、とある仮説を導き出すことで、世界を股にかけた納豆調査の有終の美を飾ります。

    まとまった感想を書きにくかったため、以降は箇条書きで雑感を綴ります。

    ・著者一流のひょうきんで親しみやすい語り口は健在で、案内役も含めた現地の人びととのやり取りの愉快さを楽しめる点は相変わらずです。
    ・調査紀行そのものとしては、高野氏の作品に多く見られる先の読めないハラハラさせるような冒険的要素は控え目ですが、テーマそのものの性格と、西アフリカについては調査地がイスラム過激派が活動する地域に近いことから安全性に万全を期した関係上、致し方ない部分だと思われます。
    ・『謎のアジア納豆』に引き続いてですが、食文化への造詣が浅い私にとっては、他の著者作品に較べてやや引き込まれにくいテーマではありました。とはいえ、所々で読んでいて食欲をそそられるような、各地のユニークな食の魅力を伝える描写を味わうことはできました。
    ・紙幅の半分ほどが割かれる西アフリカでの調査に関して、ブルキナファソの人びとの「争いごとが嫌いで自己主張も強くな」く「ムスリムとクリスチャンが和やかに同居し一緒に酒盛りする」様子や、村の首長への人びとの敬意や関係性、取材に協力したセネガルに暮らす人びとの鷹揚な姿と美しい女性たち、写真に収められた人びとの豊な表情など、調査対象からすれば副次的な西アフリカ社会を伝える側面に、強く心を惹かれました。
    ・最終となるエピローグにおいて、ネタバレ禁止の大胆な仮説が提示されており、納豆について長きに渡って世界各地を訪ね歩いた著者の考察が導き出した仮説に辿り着くこと自体が、本書を通読するうえでの最重要ポイントとなっています。

  • わたしは納豆がまったく食べられなくて、納豆にはまーーーったく興味がないんだけれど、おもしろかった。
    確かに、納豆って日本特有の食べ物って思ってて、まあ韓国とかアジアにあったっていうのは可能性はありそうと思えるけど、さすがに西アフリカにもあった(大豆じゃないけど)っていうのは驚く。

    けっこう納豆研究として文化人類学的?学術的?な話も多かったけれど、でもやっぱり、読んでいておもしろい!と思うのは、現地でのハラハラするような経験で。西アフリカで憲兵隊に調べられる、とか、納豆できてないかもしれない、とか。あからさまには言わないけど、取材許可にお金が必要と言われて、案内してくれる人と、「いくら?」「あなたの好きな額で」「〇フラン?」「それじゃ少なすぎる」「じゃあいくら?」「好きな額で」みたいなやりとりとか。あと、納豆をつくってみせてくれる人にお金を要求されてその額の交渉とか興味深い。あまり他にこういう世界の奥地僻地での探検・冒険モノみたいなノンフィクションは読んでいないからわからないけど、こういうことよくあるのかな。
    あと、いつも高野さんの本を読むと思うけど、現地で案内してくれる人たちがだれもかれも個性的で、高野さんとその人たちとのあれこれ、仲良くなったり、ときにはちょっと気まずくなったりていうのがおもしろかった。

  • 納豆追いかけてアフリカに行くのがこの人のすごいところ。ツルマメ納豆は感動。ひきわりなら野生でも納豆になる、そこから栽培化にいくというのはちょっと逆ぽい気もしないでもないが、この人の話の流れに乗って読むのがいいのだろう。今はなかなかどこにもいかれないから。

  • いやあ、凄かった。壮大と言うにふさわしい。
    前作も「納豆は日本の食文化」という思い込みを打ち砕くには十分であったが、この本の最後のサピエンス納豆という仮説は学者が検証するに値するのではないか。
    高野さんは学者ではないけど、この行動力、頭の回転、発想力はそんじょそこらの学者がかなうものではないからなあ。しかし、学者のようにひとつのことだけをやるには才能がありすぎるのだ。ここまでくると、ただの「ノンフィクション作家」でいいのか?とすら思う。
    『謎のアジア納豆』とあわせて高野秀行の代表作だろう。
    本当に感動した。

    でも、冷静に考えたらソマリアのときも、これは高野さんの代表作!と思ったのよね。他の人には決して書けないものだったから。
    だから、私的にはソマリア2冊と納豆2冊が代表作。今のところ。
    まだまだ代表作が書けそうな高野さんから目が離せない。どうかお元気で。

  • 高野作品の1ファンですが、今作も本当に面白かったです。面白かった、と一言で片付けられない労力をヒシヒシと感じてはおりますが、その言葉しかありません。1日1食は必須で、たまに3食食べる大大大好き納豆の話なのでいつも以上に興味深く読ませていただきました。「ソマリランド」で講談社ノンフィクション賞受賞されましたが、結構真面目で深刻な主題にしかノンフィクション賞をあげない風潮には大いに憤りを感じます。このような日常的なものを追いかける労作にこそ大宅賞をあげてもよいのではと感じます。

  • 大人になるまで、納豆と言えば甘納豆でした。。。

    プロローグ | 高野秀行『幻のアフリカ納豆を追え!』試し読み | 高野秀行 | 本の試し読み | 考える人 | 新潮社
    https://kangaeruhito.jp/trial/16101

    高野秀行 『幻のアフリカ納豆を追え!―そして現れた〈サピエンス納豆〉―』 | 新潮社
    https://www.shinchosha.co.jp/book/340072/

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著者プロフィール

1966年、東京都八王子市生まれ。ノンフィクション作家。早稲田大学探検部在籍時に書いた『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)をきっかけに文筆活動を開始。「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」がモットー。アジア、アフリカなどの辺境地をテーマとしたノンフィクションのほか、東京を舞台にしたエッセイや小説も多数発表している。

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