祖国の選択:あの戦争の果て、日本と中国の狭間で

著者 :
  • 新潮社
3.42
  • (1)
  • (5)
  • (4)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 40
感想 : 7
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103380719

作品紹介・あらすじ

戦中の満州や戦後の中国を生き抜いた日本人が強いられた究極の決断とは? 帰国を果たした中国残留孤児の日本での苦境。家族を殺された国で日本帰国か中国残留かを迫られた女性の選択。元従軍看護婦にとっての「海の向こう」。逃避行のため子を殺すよう迫られた母が抱いた決意。三度「九死に一生を得た」兵士の運命の分かれ道。戦争孤児だった父の中国への熱い想い――。六つの「落葉帰根」の物語。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「中国残留孤児」の聞き書き。

  • 自分の知らない戦後がこんなにあったなんて。辛い過去を語りたくない人たちもたくさんいると思うけど、著者の取材力はすごいな。

  • 『あの戦争から遠く離れて』の著者の続編。
    聞き語りをした人々の話が胸を打つ。

    ただ決して暗い話だけではない。残留孤児だった父親の中国の友人や養父母の親族との触れ合いは、とかく難しくなる日中間に希望をもたせる。

    プロローグから
    人は人生において、さまざまな選択をし、生きている。
    ・・・略・・・本来ならする必要のない「選択」をせざるを得なかった人もいる。・・・略・・・「祖国」を選択するという重大な決断を迫られた人々だ。

  • 本としてのまとまりは欠けるかもしれないが、戦争の終わった後に中国に残されてしまった人、残ってしまった人のだいたいにおいて凄まじい人生の分かれ目を幾つかのケースについて描いている。共産党の八路軍が日本人の医者や看護婦などを使っていたことが個人的には驚きだった。

  • 「あの戦争から遠く離れて」の事実上の続編。
    城戸さんの父、幹さんが引き揚げ中に親とはぐれ、残留孤児となり、養父母に育てられ、独力で帰国する様子。そしてそれを調べ上げていくというのが、「あの戦争~」の構成だった。今回は、さらに同じような体験をした人たちへと取材範囲を広げていく。そこには結婚と出産、子育てという著者の変化も交えてある。

    二作を通して感じるのは、彼女の文章ってミニマムミュージックのようだな、ということ。同じ旋律・リズムを繰り返しつつも、少しずつ差異が生じていく。そこにミニマムミュージックの音楽としての面白みというか醍醐味がある。城戸さんの場合、敗戦・満州からの引き揚げ・残留孤児・帰国後の苦境といったテーマが話し手を変えて、何度も何度も現れる。読者はそうしたテーマを読み進めていくうちに引き込まれ、理解を深めていく。読んでいて何とも言えない迫力があり、思わず引き込まれた。
    惜しむらくは各章の締めが単調で紋切り型ぽかったということ。そのあたりは編集者と相談して、少しずつ表現を変えたほうがよかった。

    満州は満州でやってもらうとして、城戸さんにはそろそろ別のテーマにも取り組んでもらいたいところ。

  • ★2015年4月7日読了『祖国の選択 あの戦争の果て、日本と中国の狭間で』城戸久枝著 評価B+

    日中戦争によって引き起こされた中国残留孤児の体験とその後をつづる作品。この著者は、『あの戦争から遠く離れて』で2008年に大宅壮一ノンフィクション賞を受賞している。

    この作品も同様に中国に残された残留孤児がどのような過酷で悲惨な体験をして、どのような思いでかの地を生き抜いたのか、その時の日本への思いはどうだったのか、また、夢かなって日本へ戻ってどのような思いで日々を過ごして来たのかを丹念に取材により描いている。

    想像を絶する幼い頃の体験をトラウマのように抱えながら、それでも生き抜いてきた孤児達。彼らに対する故国日本の人々のあまりに冷たい仕打ち、逆に予想外に温かく孤児を育ててくれた例もあった中国人の育ての親。それでも帰りたかった祖国日本。平和な時代、何の生存や食べ物の心配もなく育った我々には想像も出来ない世界がここには描かれていた。

  • 壮絶。
    国民レベルでの戦争の凄惨さを思い知らされる。
    安易な反中感情は控えなければいけない。
    生きようとする気持ちは持ち続けないと。

全7件中 1 - 7件を表示

著者プロフィール

城戸久枝
1976年、愛媛県松山市生まれ、伊予市育ち。徳島大学総合科学部卒業。出版社勤務を経てノンフィクションライター。『あの戦争から遠く離れて── 私につながる歴史をたどる旅』(2007年/情報センター出版局)で大宅壮一ノンフィクション賞、講談社ノンフィクション賞ほか受賞。その他の著書に『祖国の選択──あの戦争の果て、日本と中国の狭間で』などがある。一児の母で、戦争の記憶を次の世代に語りつぐことをライフワークとしている。http://saitasae.jugem.jp/

「2019年 『じいじが迷子になっちゃった』 で使われていた紹介文から引用しています。」

城戸久枝の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×