野良ビトたちの燃え上がる肖像

著者 :
  • 新潮社
3.69
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本棚登録 : 121
感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (170ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103361329

作品紹介・あらすじ

「生きてるうちは、生きなきゃなんねぇからな」怒りと希望に満ちた世界を描く問題作。河川敷で猫と暮らす柳さんは、アルミ缶を集めて生活費とキャットフード代を稼いでいる。あちこちでホームレスが増えてきたある日、「野良ビトに缶を与えないでください」という看板を見つける。やがて国ぐるみで野宿者を隔離しようとする計画が……。ほんの少しだけ未来の日本を舞台に、格差、貧困、差別の問題に迫る新鋭の力作。

感想・レビュー・書評

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  • この本を読んで可哀そうな人たちだと思える人は、曇りなく自分の人生を歩んでいる人々なんだろう。僕はこれを読んでいて不安で不安で仕方が無かった。住む所も家族も居るけれど、持ち家とはいえ借金は払っていかなければいけないし、日々の生活で掛かるお金はびっくりするほど掛かっている。昔よりも明らかに贅沢な生活をしている自覚が有ります。
    いつでも無一文からやり直せるつもりで生きていたけれど、だんだんと年を取ってきて再就職もそんなに簡単には出来ないと思います。
    日本は次第に力を失っていき、豊かな生活を送れる人も一握りになって来ています。綱渡りのような生活をして、病気や怪我をする事で一気に急坂を滑り落ちるように路上に放り出される事も有るかもしれません。
    そう思って読むと非常に辛い。「野良ビト」という造語もとても気持ち悪いですが、では自分の心の中に、路上生活の人々を同じ人間だと見ているのか。そう問いかけた時、後ろ暗い気持ちになります。どこか違う次元で生きている人たちのように思っている自分がいるからです。
    「野良ビト」になってしまう事が怖いのか、野良ビトを人ではないと思ってしまう事が怖いのか・・・。

  • ふむ

  • なんとも哀しい話
    ありそうで怖い
    ムスビが気になる

  • 「野良ビトに缶を与えないでください」
    一気に増えたホームレス対策として掲げられた看板。

    P106
    「おれらもう、人扱いされてねぇんだな」

    嫌なものは見ないようにして、楽しいことだけに目を向け
    日々を過ごせるのなら、その方がいい、と思ってしまう。
    でも、この本を読むと、いろいろ問われている気がする。
    考えろ。
    自分の頭で考えろ。
    そう言われているのかもしれない。

  • 終盤、えっ、となる。フィクションか否か…。

  • 113

  • 読み進めていくうちに息苦しく怖くなってきた。今の日本も着実にこのようになっていくんではないかと予感させるフィクションであるのにノンフィクションのような小説。昔から格差を作り上にいる人達は下のやつらを蔑み搾りとり優越感に浸る。そういう事は行われてきたけど、平等を謳う今のこの世もまたそこに戻っていくのだろうか?不気味でならない。私もホームレスを見れば社会の落伍者って見てしまっている所があるけれどいつ自分がそうなるかもわからない。この本を読んでホームレスも柳さんみたいにルールを守りながら猫と共存していっている人達もいるんだってわかったし、何とかそういう人達の居場所を私達も作ってあげないといけないのに一方的に排除しようとするなんて酷すぎる。私はこの本の中のムスビのいく末が気になる。柳さんと再会して気ままなホームレス生活を新たな地で送れている事を深く願うばかりだ。読んで良かった

  • コミュニティーが喪失した社会では、ひとりひとりの行動の身勝手さがエスカレートして、自分以外の人に攻撃的になり破壊していく。
    そんな社会はすぐ近くまで来ているのかもしれない。

  • 多摩川周辺のホームレスののどか?な日常の話かと思えば、話は急転する。

    設定はやや強引か。

  • ブログ更新:『野良ビトたちの燃え上がる肖像』木村友祐
    http://earthcooler.ti-da.net/e9312768.html
    主人公の「柳さん」は東京都と神奈川県の境を流れる弧間川に接した、神奈川県側の河川敷に暮らす、中年から壮年にさしかかる古参のホームレスだ。ホームレスがよくそうするように雄猫を可愛がり、ムスビと名づけている。二十代後半の新参者木下の面倒をみるようになり、つるんで空き缶回収もする。不況故か河川敷には新しいホームレスが目立って増えるようになり、これをよく思わない近隣住民は排除しようとする。そしてある日、ホームレスの住居に火がつけられる。

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著者プロフィール

1970年、青森県八戸市生まれ。2009年、「海猫ツリーハウス」で第33回すばる文学賞を受賞しデビュー。小説に『聖地Cs』(新潮社、2014年)、『イサの氾濫』(未來社、2016年)、『野良ビトたちの燃え上がる肖像』(新潮社、2016年)、『幸福な水夫』(未來社、2017年)、『幼な子の聖戦』(集英社、2020年、芥川賞候補)。

「2020年 『私とあなたのあいだ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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