書物変身譚

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103357919

作品紹介・あらすじ

生命と記憶の集積として、電脳化に抗して生き続ける、書物の魅力の本質を探る。〈書物〉とは地質学的時間と歴史的時間を結んで生じた、大いなる変身の産物である。原初の〈書物〉を求めての探索は、記憶の種子を孕む叡智の森へ、惑星地球を包む孤高の氷山へ、地層を成す琥珀に眠る虫たちを沈黙とともに宿す洞窟へ――生命の変身と連鎖の物語を、変幻自在な〈書物〉の魂として追体験し、その力を語り継ぐ。

感想・レビュー・書評

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  • 書物に魅せられし人なら心震わすに違いない、書物の変身譚、または自伝。私は本を読む。自分が生まれる以前の、はたまた死後の未来の、生命の記憶を五感で捉え、はらわたに吸収させるがために。それが内臓に蓄積し、変容し、生きることに繋がる。ソロー、バルト、ソンタグ、ストロース、ベンヤミン、カフカ、ナボコフ、ジョン・ケージ、私の思い入れ強い金芝河からアンゼルム・キーファーまで、書き切れないくらい多くの作家の言葉や作品を織り込みつつ、単なる事例ではなく、書物のざわめきを響かせ、余韻を残し、余韻後をも考えさせる力を齎す。

  • 書物に関する話をまとめている。
    書物についていろいろな角度から切り込んだ様々な人の考えをまとめている。
    興味深い部分が多かったが言語と言語のつながり(「踏み」と「文」等)には多少強引さを感じた。

  • 今福龍太の「書物変身譚 - 琥珀のアーカイブ」を読んだ。古今東西の思想家の「書物にまつわる考察」を集め、批評した本の本。

    どうも最近本当に偶然にテーマがつながることが多い。

    「ここでの私の関心は、むしろ、書物という形=イデアへの原初的・本質的想像力を生み出した自然界のエレメントが何であったか、という存在論的な問いである。そしてその問いにたいしては、書物の起源が人類の植物世界、とりわけ樹木世界への原初的な感覚にもとづいていたことを否定することはできないように思われる」p. 39

    書籍は紙でできていて、やがて朽ちる(羊皮紙でも竹でもそう)。1枚1枚のページは葉であり、編集、つまり知識を体系的にまとめることはいえば「樹形図」をまとめることだ。貫く幹があり、連関する枝々のネットワークが全体像をつくる。

    ニュートンがリンゴの木を見て万有引力を発見したというのはどうやら作り話のようだが、それでも人類は植物、とりわけ樹木によって知的進歩してきた。

    つい先日、「ゆきすぎた科学過信」に森林の再生力を対置する宮崎駿の作品思想について触れ、その翌日に思考のフレームとしての「樹形図」の歴史をまとめた本を読んで、体系化された知識のメタファーとしての樹木について考えた。そこへきて、今福龍太の読み解くヘンリー・D・ソロー。

    「この本のすべてのページが、ウォールデンの氷のように純粋であれば、私は人にどういわれようと満足だ」-ヘンリー・D・ソローp.36

    また、この本の中にはレイ・ブラッドベリの「華氏451」が取り上げられる。書物を読むことが禁じられた近未来、書物の価値に気付いた人々が、深い森の奥で「一冊の書物として生きる」アレ。

    しかし、一方でレヴィ=ストロースは次のようにいう。

    「本は死んだもの、すでに終わったものです。私には無縁の死体のようなもの」p.88

    結局、本は生きているのか、死んでいるのか。書き手にとっては死体であろうと、読み手にとってはそれは生き物だと思う。

    スーザン・ソンタグとロラン・バルト、ゲーリー・スナイダー、ジョン・ケージ、鈴木大拙、ナボコフ、カフカとアドルフ・ロース、ジャック・デリダとヴァルター・ベンヤミン。

    次々と紹介される作家の書物はお互いに呼応し、その意味は変性していく。それはまるで森の木々が会話をするように。

    電子書籍やネットのテキストも便利でいいけど、書架に並んだ本の背は、自分の思考の変遷を思い起こさせてくれる。はたして人は電脳の世界に生きることはできるのか?

    それとも古代の樹脂に閉じ込められた昆虫を記憶を辿るように、実態としての琥珀、その記憶のアーカイブに触れることでしか得られないものがあるのだろうか……?

  • 文化人類学的に見た本の話かな?

    新潮社のPR
    http://www.shinchosha.co.jp/book/335791/

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著者プロフィール

1955年生まれ。文化人類学者・批評家。1980年代初頭から、メキシコ、ブラジル、キューバなどで調査研究に携わる。奄美自由大学を主宰する。著書に『クレオール主義』『ヘンリー・ソロー 野生の学舎』『宮沢賢治 デクノボーの叡知』など多数。

「2021年 『ぼくの昆虫学の先生たちへ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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